いつどこからでも改善 第一回「ITIL(R) CSIに学ぶ」

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IT現場の道先案内人 Key Conductors

いつどこからでも改善 第一回「ITIL(R) CSIに学ぶ」

運用管理 2013/02/08

ITILは英国The Minister for the Cabinet Officeの登録商標および共同体登録商標であって、米国特許商標庁にて登録されています。

サービス改善は多くの組織で取り組んでいるテーマであるが、サービス提供後に改善の取り組みを開始することが多く、ともすると「顧客満足度調査に基づくシステム改修」といった一過性の対応になってしまうことも多い。ITIL「継続的サービス改善(CSI)」書籍は、顧客に価値を提供するためのサービスとその管理プロセスをサービス・ライフサイクルの視点で捉え、戦略から設計、移行から運用まで、どの段階を起点としてでも改善できることを主張している。本稿「いつどこからでも改善」は、CSIが提唱する測定と評価のアプローチに学び、「待っていてはならない! 今すぐに改善を始めるのだ!」というエールに応えるため、まず第一回でCSIの概念とフレームワークを説明する。第二回以降で、サービス・ライフサイクルの各フェーズにおける改善機会の発掘と改善の適用に役立ついくつかのテクニックを紹介し、それを実践するためのアプローチと実際の適用事例を紹介する。

ITIL CSIとは

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図1 「ITIL V3 サービスライフサイクル」
ITIL V3では、サービスのライフサイクル(ゆりかごから墓場まで)に焦点を当て、フェーズ単位にサービスマネジメントのベストプラクティスを解説している。フェーズとは、サービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジション、サービスオペレーション、そして継続的サービス改善の5つの段階を言う。(図1)
サービスが立案されてから廃止されるまでを戦略から運用までのフェーズに分けることで、その段階で取り組みを開始するべきサービスマネジメントの機能とプロセスを明確にすることができる。また、フェーズ間のインプットとアウトプットを定義することで、サービスに対してそのフェーズで達成するべき要件と評価ができるようになる。
ITIL V3 サービス・ライフサイクルの5つのフェーズ

1.

サービスストラテジ(Service Strategy:以降「SS」と略記) 「どのようにサービスを提供するか」を考える戦略段階。

2.

サービスデザイン(Service Design:以降「SD」と略記) 「どのようにサービスを設計するか」を定義する設計段階。

3.

サービストランジション(Service Transition:以降「ST」と略記) 「どのようにサービスを本番稼働させるか」を実装する移行段階。

4.

サービスオペレーション(Service Operation:以降「SO」と略記) 「サービスによる価値を提供」を実現する運用段階。

5.

継続的サービス改善(Continual Service Improvement:以降「CSI」と略記) すべてのフェーズで継続的にサービスを改善する。

CSIは、これらのフェーズの5番目に位置するが、実際にはCSIという単独のフェーズは無い。ITIL V3のサービス・ライフサイクルは、SS(戦略)を軸として、新規/変更のITサービスを成功裏に本番稼動させるためにSD(設計)、ST(移行)を行い、通常通りのビジネス(business as usual)のためにSO(運用)を行い、それらすべてのフェーズにおいて、サービスとプロセスを対象とした継続的な改善(CSI)の機会を発掘し実現することを提唱している。

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図2  「サービス改善に対する機会のレベル」
(Barnard-Doppler)

ITIL CSI書籍では、CSIとは「プロセスの有効性、効率性、および費用対効果の改善方法を探すことである。」(CSI第二章)と定義されている。この観点で、CSIは時間的な流れの中で区切りがある他のフェーズとは異なる性質を持つ。 CSIの活動と取り組みは、ITIL CSI書籍を読むだけで開始しても大きな成果を得られないことは明らかである。
CSIは、運用(SO)業務での改善活動に始まり、安定した移行(ST)手順を確立し、より価値をもたらすITサービスを設計(SD)し、変化するビジネス環境に応じたIT戦略(SS)の立案を促進するといった、実際のITサービスのライフサイクルのフェーズを下流から上流へ遡るようにしてCSIの活動と取り組みができるようにしてこそ、期待される成果が得られるのである。 Barnard-Dopplerによる「サービス改善に対する機会のレベル」は、各フェーズをリンクしてCSIを肉付けするにつれて事業に対する価値が増していくことを表している。(図2)

経営戦略からしきい値監視まで 〜CSIに学ぶ8階層の測定と評価〜

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図3  「CSIを通じた測定とフィードバック」

ITIL CSI書籍には、サービスとプロセスを対象とした継続的改善に関して、複数の組織で成功している、実績のある活動またはプロセス=ベストプラクティスが解説されている。CSIで紹介されている手法の代表的なものに、「デミング・サイクル(PDCA※1)」、「7ステップの改善プロセス」、「CSIモデル」、「組織と役割(RACI※2)」、「CMMI※3やBSC※4などのアセスメントや測定と報告」などがある。
CSIはこれらの手法によって、各フェーズにおけるサービスとプロセスを改善することを目的としている。つまり、CSIの本質は、測定し、評価し、それをフィードバックすることで、フェーズに沿ったサービスとプロセスの改善を促進し、改善の成功を推進力として改善活動を継続的に繰り返すことである。(図3)
※1 PDCA:エドワーズ・デミング考案のプロセス管理の4つ(Plan-Do-Check-Act/計画・実施・点検・処置 )のサイクル
※2 RACI:利害関係者の役割を記述するマトリクス。R(Responsible)は実行責任者、A(Accontable)は説明責任者(アクティビティごとに唯一)、C(Consulted)は協議先、I(Informed)は報告先を示し、タスク/活動の登場人物をマトリクス形式で役割定義する
※3 CMMI:Capability Maturity Model Integration/能力成熟度モデル統合。ソフトウェア開発の能力を5つのレベルで分類した成熟度モデル
※4 BSC:Balanced ScoreCard/バランス・スコアカード。経営戦略立案・実行評価のフレームワーク。企業や組織の戦略を、4つの視点(財務、顧客、内部業務プロセス、イノベーションと学習)から評価、策定する

CSIの測定と評価およびフィードバックの範囲は、サービスストラテジからサービスオペレーションまでのすべてのフェーズに及ぶ。経営戦略のような企業の中長期的な方針や計画といったものから、ITシステムを構成する一つのコンポーネント、例えばサーバーのディスク使用率のようなしきい値監視に至るまで、CSIの対象とするものは広範囲に渡る。CSIではこれらを8階層のレベルに分類し、測定と評価に一貫性を持たすことができるようにしている。(図4)

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図4  「8階層の測定と評価レベル」

各レベルの項目はITIL用語集※5で次のように定義されている。

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表1 「階層ごとの項目の解説」
※5 ITIL用語集:「ITIL®日本語版用語集、v1.0、2011 年10 月13 日」
http://www.itil-officialsite.com/nmsruntime/saveasdialog.aspx?lID=1222&sID=242

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図5 「CSIを中心としたサービス・ライフサイクルの改善ループ」
以上のように、CSIはサービス・ライフサイクルを通じた測定と評価のフレームワークとして活用できる。測定・評価により得られた改善をフィードバックすることで、継続的にサービスを改善し、ビジネスと顧客への価値提供を促進する。(図5) このCSIを中心としたサービス・ライフサイクルの改善ループを形成するために、ITIL CSI書籍が主張しているのは、CSIの全側面を定めることではなく、フェーズや特定の測定と評価で得られた教訓をすぐに改善のためにフィードバックすることであり、書籍では「待っていてはならない! 今すぐに改善を始めるのだ!」という言葉で表現している。

本稿『いつどこからでも改善』では、以降3回にわたり、サービスライフサイクルの各フェーズにおける改善機会の発掘と改善の適用に役立ついくつかのテクニックを紹介し、それを実践するためのアプローチと実際の適用事例を紹介することにする。次回以降は次のテーマを予定している。
第二回「重大トラブル解決からCSI」(サービスオペレーション起点)
第三回「統合運用サービスの改善」(サービスデザインとサービスストラテジ起点)
第四回「DevOpsに備えたプロセス自動化」(サービストランジション起点)

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キーマンズネットとは
IBMサービスマネジメント・エバンリジェリスト。日本IBMシステムズ・エンジニアリング(株)にて、15年にわたりサービスマネジメントのためのシステム設計や構築、プロセス確立案件をリード。ITIL V2 ManagerおよびITIL V3 Expert資格を保有。

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