ITIL(※)による価値創出を実現するには(3/3)

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ITIL(※)による価値創出を実現するには(3/3)

運用管理 2013/02/01

※ITIL is a Registered Trade Mark of the Cabinet Office.

3.価値創出プロセスの実践

第ー稿では、価値創出のための三つの要件を、前回の第ニ稿では、価値創出への課題とその解決策を記述しました。今回は、それらの解決策を、ITIL®v3のサービスレベル管理プロセス(以降はSLMプロセス)にどのように適合させるかを記述します。具体的には以下の項目について配慮すべき点を記述し、価値創出の実践を目指します。

アクテビティ (プロセスを細分化)

成果物 (作成すべきアウトプット)

役割 

3.1 価値創出のためのSLMアクティビティ

ITIL®v3におけるSLMプロセスのアクティビティは、PDCAサイクルに即して考えることができる。PDCAの局面ごとに、SLMおよび価値創出アクティビティの一覧を表4に掲げる。

表4.価値創出のためのSLMおよび追加アクティビティ

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表4.価値創出のためのSLMおよび追加アクティビティ

前稿で記述した2つの対策は、SLMでのPLAN時のアクティビティとして位置づけられる。
対策のうち「ビジネスKGI/KPIの策定」は、ITIL®v3のサービスストラテジ段階で概要が作成され、SLA策定時に詳細化を実施することになる。
またもう一方の対策である「KGI/KPIの組織的な評価と対処」の一環として、SLA策定時には評価/対処をどのように実施していくかを立案し、ステークホルダと合意する。
以降のアクティビティはSLAの策定後に実施される。これらは"DO"局面での策定したKPI/KGIを測定、"CHECK"局面でレポートするとともに、"ACTION"局面では予め決定した評価サブプロセスにしたがって改善活動を実施するという内容である。

3.2 価値創出に必要な成果物

ITIL®v3で記述されたSLMのアウトプットのほか、価値創出アクティビティに必要と考えられる成果物をPDCA局面別に挙げる。なお表内の"KRB"は、前稿でご紹介した、筆者の造語である"KPI Review Board"の略である。

表5 価値創出アクティビティに必要な成果物

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表5 価値創出アクティビティに必要な成果物

これら一連の成果物は、「3.1 価値創出のためのSLMアクティビティ」の結果作成されるべきものである。PLAN時の「ビジネスKGI/KPIの策定」「KGI/KPIの組織的な評価と対処」の結果、KGI/KPIとオーナー一覧、オーナーへのレポート仕様、レビュープロセスが決定される。以降の成果物はごく一般的なSLMプロセスにも共通するものである。

3.3 価値創出に必要な役割

ITIL®で記述される主要な役割として、プロセス・マネージャ、プロセス・オーナ、顧客などが挙げられる。しかし価値創出の最大化を目指すためには、一部の役割をさらに細分化、具体化することが好ましいと考える。いろいろなベンダーが、ITILのプロセスを拡張したフレームワークを提供している。一例として、IBMのITサービス管理フレームワークであるPRM-IT(*8)では、SLM関連の役割として以下を追加し定義している。

*8 PRM-ITはProcess Reference Model for ITの略。ITIL®を拡張したITサービス管理モデルの体系

顧客リエゾン:顧客を助言しサービスレベル要件の策定に責任を持つ

サービスレべル・アナリスト: レポートを分析し、達成度の評価報告、改善策の助言を行う

サービスレベル・アドミニストレータ: サービス状況のモニタを行う

3.1および3.2節の内容を踏まえ、筆者はこれらのほか、「顧客」を細分化しKGIおよびKPIオーナを選定すべきと考える。KGI/KPIオーナはそれぞれKGI/KPI評価結果を元に改善策を実施する責任を負う。
またPRM-ITでは「顧客リエゾン」(顧客担当のプロバイダ側技術者)がサービスレベル要件の策定を行うとされるが、ビジネス視点でのKPI策定のためには、ビジネスアナリスト的な役割も必要と考える。これらをRACIマトリクス化し(*9)、表6で整理する。

*9 RACIマトリクスとはステークホルダーの役割を記述するマトリクス。R(Responsible)は実行責任者、A(Accontable)は説明責任者(アクティビティごとに唯一)、C(Consulted)は協議先、I(Informed)は報告先を示す。

表6 価値創出のためのステークホルダのRACIマトリクス

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表6 価値創出のためのステークホルダのRACIマトリクス
凡例:R=実行責任者、A=説明責任者(アクティビティごとに唯一)、C=協議先、I=報告先

4.終わりに〜さらに大きな価値創出を目指すには

当稿では、ビジネスの観点からKGI/KPIを設定し、その結果をSLMプロセスを通してビジネスにフィードバックするための施策につき記述した。
一般的なソフトウェア開発技法やアーキテクチャー技法では、「いかに要件に合致したシステムを作成するか」につき、Vモデルをはじめとする幅広い検討が行われている。しかし「サービスを実施した結果をいかに次の計画に結びつけるか」についての論議は、ソフトウェア設計開発技法としてはそれほど重視されているとは言えず、そこでITIL®の継続的サービス改善の考え方が有用になるといえる。

また価値(有用性)を最大化しようとすれば、個々のサービスについてビジネス分析を行うのではなく、企業/組織の視点から全体最適化を図るべきである。エンタープライズ・アーキテクチャはまさにそのような位置づけにあるが、であれば当稿で挙げたKRBによる組織的なKPI評価と対処も、企業/組織の長期的な計画・活動に組み込むことにより更に価値創出を推進することができよう。

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キーマンズネットとは
1986年日本アイ・ビー・エム(株)入社。1994年以降、日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング(株)にてITサービス管理分野でシステム設計・構築やプロセス設計に従事。2012年6月、日本アイ・ビー・エム(株)を早期定年退職。同年8月から(株)ビーシーエスに勤務。ITIL v3 Expert、ITIL v2 Manager。

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