IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜

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IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜

運用管理 2013/01/17

今月は、クラウドコンピューティングとIT運用の関わりについて取り上げてみたい。
クラウドがブームとなってからもう何年も経つが、今日においてクラウドは新たなトレンドというよりも、私達の身の回りに定着しつつある現実として捉えた方が良いだろう。
これからクラウドコンピューティングについて考えるにあたって、まず始めにクラウドコンピューティングにはどのようなものがあるのか概観してみよう。

御存じの方も多いと思うが、クラウドコンピューティングには大まかに分けて「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」がある。パブリッククラウドは、クラウドサービスのプロバイダーが基本的にインターネット越しに提供するもので、ユーザ企業は料金を支払ってサービスを利用するだけである。一方でプライベートクラウドは、ユーザ企業自身が仮想環境を構築し自社専用のクラウドサービスを利用するものである。

さらに、パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用した利用形態を「ハイブリッドクラウド」という。今まである程度のIT機構を自社内に構築してきたユーザ企業は、ハイブリッドを選択する事になるであろう。セキュリティ等への懸念からデータを外部におけないシステムや、或いは大規模な演算処理等を行うシステムは、自社内(プライベートクラウド上、或いは旧来の独立したサーバ・メインフレーム上)に持ち、それ以外のシステム(所謂フロントエンド系のシステム)はパブリッククラウドを利用するという形態が、現実的に最も多くなると考えられる。

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「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」という分類は、提供者が誰であるかという視点での分類であったが、これ以外にもクラウドサービスには「SaaS」「PaaS」「IaaS」といった分類もある。

SaaSは、クラウドプロバイダーが様々なアプリーケーションをサービスとして提供するものであり、例えばERPやCRMのようなものから、メールやグループウェアのようなものまで多種多様なものが既に市場で提供されている。
PaaSは、アプリケーションの開発基盤をサービスとして提供するもので、システム・アプリケーションの開発に必要なOS・ミドルウェア・開発ツールをパッケージ化して提供する。
IaaSは、ITインフラ(仮想化されたサーバ・ネットワーク・ストレージ・ミドルウェア等)をサービスとして提供するものである。これらの分類方法は提供されるサービスの内容で分けたものである。

さて、私はここ数年ユーザ企業の方々とクラウドについて意見交換をして来たが、利用者であるユーザ企業側の視点で最も期待されていたものはパブリッククラウドであり、その中でもSaaSであった。

クラウドコンピューティングという概念自体が 「持たざるIT」 という要素を有しているが、ユーザ企業としては(特に経営の立場から見ると)、サーバやネットワーク・アプリケーションと言ったIT自体が欲しい訳ではなく、それを活用して得られる経営上の成果が欲しいわけなので、経営上の成果を得る上でIT自体に対する支出は少ない方が良い筈である。
従って、わざわざ自社でITインフラを所有しアプリケーションを開発するよりも、既に利用できるものが外部(パブリック上)でSaaS提供されており、自社保有と比べて低価格に利用できるのであれば、SaaSを利用したいと当然ながら考える。

PaaSでは、ハードウェア・OS・ミドルウェア等に対する配慮は省略できるが、開発行為は存在する。IaaSとなるとOSやミドルウェアの管理行為までも一定の範囲で残存してしまう。
さらにプライベートクラウドでは、仮想システムについてハードウェアの管理から含めて全てユーザ自身が行わなければならない。
プライベートクラウドは、それ以前に購入した雑多なIT資産(サーバ等々)を集約してコストを下げるとか、パブリッククラウドのIaaSではさらにそれを資産から経費に転換するといったメリットが謳われているが、これらはクラウドコンピューティングの到達点としては高いものとは言えない。
ユーザ企業の側でも、これらプライベートクラウドやIaaSについては、ベンダーによる新たなハードウェア販売手法であるとか、新たなベンダーロックインの手法であるとか冷めた見方をする方も既におられる。

私は、クラウドコンピューティングはユーザ企業がITに対する考え方を大きく転換する上でとても重要だと考えている。
電力や水道のような他のインフラ設備と比べて考えてみよう。現在のITはユーザ企業が自社内に発電所や浄水・配水施設を丸ごと抱えているようなものである。電力や水道では限られた企業(電力会社や水道会社)が殆どのインフラを持ち、ユーザとなる企業や私達個人が保有するのは、末端の設備だけで後はサービス(電気や水)を利用するだけである。
これからはITにおいても、クラウドの利用を通じて、自社で保有する必要のないITは外部化してしまい、これに伴いユーザ企業内のIT環境を簡素化・単純化していくべきである。この結果、ユーザ企業が担うべきITの管理業務も簡素化・単純化でき、全体としてITに対する経営上の負担を削減する事ができる筈である。

とは言え、残念ながら現時点において直ぐにこれらが全て可能なわけではない。
今日のパブリッククラウド市場は未だ発展途中の段階にある。SaaS/PaaS/IaaSの全てにおいて様々なベンダーが乱立しており、まさに玉石混淆の有様である。クラウドサービスを利用する場合、当然ながらユーザ企業はサービス提供者側が十分な力量を持っているか見極めなければならない。昨年はパブリッククラウドで幾つか大きな事故(データ消失など)が発生し話題になったが、可用性やパフォーマンス、サービスの継続性、セキュリティの堅牢性等を十分な背景を持って担保しているかを見極める必要がある。
率直に言って、クラウドサービスのビジネスモデルではスケールメリットが必要な為、グローバルレベルで大手ベンダーによる寡占化・集約化が起こることは間違いがないと思われる。
(例えばパブリッククラウドのSaaS/PaaS分野での草分け的存在であるSalesforce社のような大手ベンダーは、優れたクラウドシステムのアーキテクチャを有しており、さらにシステム運用やセキュリティに対して驚くほど巨額のコストを投じている。)

また他にも、提供されるサービスのバリエーションの充実や、プロバイダーとユーザ企業間でのSLA(サービスレベルアグリーメント)の締結概念や、トラブルが発生した際の損害賠償等の考え方など、今後超えるべきハードルは幾つもある。これからクラウドの市場では、激しい淘汰が行われるであろうが、その淘汰の過程でこれらの課題が徐々に克服されていくであろう。この淘汰を勝ち抜くだけの裏付けのあるサービス提供ベンダーが将来のITを担うものとして市場を牽引するのだろうが、ユーザ企業はそういったサービス提供者と共に企業経営に必要なITの調達方法を大きく変えていく事になるであろう。

一方で、クラウドの発展段階では様々な副作用も出ると考えられる。
企業がITを外部化するという事は企業内でのITビジネスの規模が縮小する事を意味する。例えばSI開発業務はクラウド上の発展に合わせて縮小するであろうし、ユーザ企業向けのハードウェアビジネスも縮小するであろう。その他にも縮小しそうなビジネスは様々に考えられる。このようなビジネスを主としてきたベンダーは既に方向性の転換を求められているが、実際には上手く転換しきれずにいるのが現状ではないだろうか。また、日本に多々存在するIT子会社にとってみても、アプリケーション開発が減少しシステムの保守範囲も狭まるのでビジネスの縮小として跳ね返る可能性がある。

とは言え、クラウドコンピューティングの広まり自体は、経営の観点から見た合理性があるが故に止まること無く進んでいくだろう。そして、これはユーザ企業の中のITを今までよりも簡素化する可能性をもたらす。しかし、いくらクラウドが発展してもITの運用が全て無くなる訳ではない。クラウドに対応する為の新たな視点でのIT運用の姿が求められる筈である。
次回は、さらに詳しくクラウドに対応する為のIT運用の変化について考えてみたいと思う。次回も是非ご覧頂きたい。

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キーマンズネットとは
1997年BMCソフトウェア株式会社に入社。以降15年に渉り、IT運用に関する様々な領域でソリューションの提案やコンサルティング業務を行ってきました。2004年以降数年間 itSMF の分科会活動(事例研究分科会・SLA分科会・ガバナンス分科会)にも参加させて頂きました。

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