韓国のコンタクトセンターサービス事情

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韓国のコンタクトセンターサービス事情

運用管理 2013/01/07

 前回のコラムで韓国のITサービスの実情について話したが、今回は顧客中心型の経営モデルが重要な中カスタマーサポートを行っているコンタクトセンターから韓国実情を見つめてみたい。

韓国のコンタクトセンターで見た3つの驚き

 まず、韓国では政府も産業側も日本とは大きく違いカスタマーコンタクト部門を重要視している。残念ながら日本は、何人コンタクトセンターに就業しているかも分からなし、過去に統計を取ったこともない。皆さんの生活や仕事に不可欠になっている業務になっているのだが、「その他サービス業」に分類されており、正確な統計は取られたことがない。英国は90数万人、米国は海外のアウトソースで大きく数字が変動するが、150万人から230万人と言われており、韓国は大体40万人就業しているようだ。17万5000人が情報通信関係で、この業界は多くのサポートデスクが不可欠な分野と言える。
 また、私も仕事柄知っているが日本の経営者でコンタクトセンターに工場や販売会社訪問と同じように時間を割いてサポートセンターに訪問する方はまだまだ少ないのが実情だ。また、企画やマーケティング部の方々がコンタクトセンターに訪問して、お客様の声をエクセルシートやワードの報告書でない形でオペレータと懇談する人がどれだけいるだろう。以下では、韓国がそれを確実に政府、企業の最重要課題として捉えて行動しているという実情を報告する。

 私が韓国訪問時にコンタクトセンターの実情を調べ始めたのは5年ほど前。その当時からかなり成長が進み、コンタクトセンターの所在地も日本と同様ソウル中心から釜山、慶州、大邱などの主要都市に拡大をしていた。私が韓国のコンタクトセンターに驚いたのは以下の3つの事実である。

(1)コンタクトセンターの企業での位置づけと正規雇用重視

 国も産業も重要な組織活動と位置付けて、国も企業もコンタクトセンターの品質、雇用、人財育成、IT活用などを重要政策課題として官民挙げて取り組んでいる点である。コンタクトセンターの位置づけが、顧客中心型の事業モデルに重要な点であると認識をしている。その為にその職能を専門的知識と能力が必要な就業モデルが必要であり、正規雇用を増やしている。現在50%以上が正規雇用となり始めている。日本は15%、欧米は85%が正規雇用だ。配偶者控除などの税金面の理由で正規雇用を避ける傾向があるものの、日本は突出して正規雇用が低く、主婦のパートやアルバイトが中心の状況のイメージが強い状況である。また、品質規格もコンタクトとセンター分野でKOS規格(日本のJIS規格)があり、多くの企業が挑戦をしている。日本は雑誌などが行う何が品質基準なのか不明のランキングがあるだけである。

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出展:A Global Benchmarking Survey of Human Resource Practices,Customer Management, and Performance in Call Centres Copyright David Holman, Stephen Wood and Rosemary Batt

(2)コンタクトセンターは専門性の高い職業の位置づけ、多くの大学でも人財育成

 人財育成は相当な違いがある。短期大学レベルだが14もの専門学科を設置する大学がある。日本は大学レベル、専門学校レベルでも1つもない。日本においては多分弊社が一番多くの時間数のコンタクトセンター人財教育の教材を保有していると思うが、400時間程度だと思う。大学レベルで専門教育を行うには1000時間以上のカリキュラムが必要である。教育レベルはやはりその産業レベルを表していると思う。私がこの件を話すと、「何を1000時間以上も教えているのですか?」という質問を受ける。何を教えているか想像も出来ない訳である。多分日本の経営者も想像できないのでないかと思う。「日本からはほとんど何も学ぶべきことはないし、コンタクトセンター要員の専門職としての位置づけがない日本は大きな問題だ」と韓国の方々に言われたが、返す言葉もなかった。

(3)次世代テレビの価値はサービスサポート

 3年前の韓国滞在中に、ITサービスメントフォーラム韓国の理事長の家に招待され、前理事長と共に訪問する機会を得た。先に述べたように彼らは大学の先生だが、その暮らしは裕福で、高級マンションに住み子供たちも全員米国留学中である。家に入ると欧米式の部屋があり、そこに50型のテレビが鎮座していた。

 そのテレビについて彼らから、「西野さん、このテレビは韓国製ですが、私が何故これを買ったかわかりますか?」と質問された。私が「もちろんここは韓国だから韓国製のTVを買ったのでしょう。」と答えたところ、彼らは、「日本製はおそらく今後は買わないでしょう。韓国でも金持ちはソニーやパナソニックがいまだに好んでいます。車の購入時に外車を好むのと同じような感じです。しかしながら今後は、韓国製か日本製かは関係ないのです。品質と価格に大きな差がなくなってきた今、選択の基準として大事なのはサービスです。」と言うのだ。彼らの説明によると、今後のテレビはブルーレイやインターネットへの接続、多チャンネルなどますます複雑になるため、故障や相談が増えることが目に見えているので、どこの製品を買うかはメーカーのサービス対応レベルで決めるとのことだ。事実、彼の家のテレビが故障して日本のメーカーに電話をしたところ、なんとテレビを自分で修理受付まで持ってくるように言われたそうだ。その上、修理には預けてから1週間もかかり、その間、代替機の貸し出しもなかったとのこと。韓国のLGやサムソンの対応は、その日のうちに家に訪問して修理してくれるのが普通のようだ。これには私も驚いた。

顧客サポートの質が企業の未来を決める時代へ

 これまでの20年間、韓国の企業はコストや品質などを日本に追いつけ追い越せとやってきたが、これから先の未来の重要戦略については完全に彼らのほうがわかっていると感じた。サービスの重要性を認識しITを駆使してカスタマーサポートや修理サービスのレベルを上げている事実は、今後彼らが何を重要ポイントと考えているかを示している。その辺は先に説明したコンタクトセンターの位置づけや人財育成からも明確に見えると思う。

 私がエピソードとして書いた、ITサービスメントフォーラム理事長の家から一人ホテルへ戻り、コスト、品質、デザインにおいて、当時日本メーカーに劣らない韓国企業がなぜ日本に本格的に進出しないのかと改めて考えた。彼らはあえて日本には積極的に進出せず、まず周りの国々をどんどん攻めて大きな実績を作ることを優先し、日本人にはその脅威を知らせないということを戦略にしているのではないだろうか。一般の日本人はやはり海外の実情には弱いので、韓国企業は戦略的なマーケティングやサービスの重要性を重視した進化を我々に気付かせないことが重要だと考えているのではないか。日本のメーカーは、日本の消費者の多くが韓国製の商品を選択するといった本格的な脅威にまださらされていないので、韓国勢に対する見方が甘いのではないだろうか。理事長の家でのエピソードを思い返しながら、私は、日本の大手メーカーの経営者はこのサービスレベルの違いを知っているのだろうかと、大きな疑問を抱いた。後日談だが、ある大手家電のカスタマーサポートの責任者に韓国話をしたところ大変驚かれ、実は副社長に指示を受けて韓国のサービスサポート調査に行かれると聞いた。やはり大きな問題になりつつあったのだと思われる。

製造業中心志向は新技術と生産管理

 日本で顧客マネジメントの位置づけが低く、変化が起きない最大の理由として、日本が製造業、輸出業中心主義からなかなか抜け出せないという事実があると考える。5年ほど前からはじまったサービス産業の振興施策の最初のスローガンは「製造業に学ぶサービス業の高度化」だった。私は当時の経産省の課長に、「製造業から日本はあえて学んではいけないのではないか」と何度か意見をさせていただいた。私どももITサービスやコンタクトセンター分野で日本の主要製造業との関わりがあるが、残念ながらそのサービスレベルが必ずしも高いという結果は出てこない。経済がますますサービス化する中で、製造業をはじめとしてあらゆる産業がそのサービス品質の向上を求められているが、製造業がその先端を走っていると果たして言えるだろうか。今一度考えてみる必要がある。情報通信関係のITのサービスデスクのレベルも国際的なベンチマーキングが少ない中でのサービスが行われている事実からも一度立ち止まって考える必要があると思う。

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キーマンズネットとは
1991年 株式会社プロシード代表取締役に就任 プロジェクトマネジメント研究所日本支部 初代会長及び理事、経済産業省「政府調達におけるサービスモデルアグリーメントガイドライン研究会」委員、総務省「ITサービスマネジメント研究会」委員itSMF Japan副理事長、日本コンタクトセンター教育検定協会初代理事長及び理事等を歴任

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