サービスマネジメントを実現するための5つのステップ(3/3)

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サービスマネジメントを実現するための5つのステップ(3/3)

運用管理 2012/12/26

今回、ITIL V3をベースにしたサービスマネジメントの導入を、ドラッカー流のマネジメントアプローチに沿って実施してきたが、以下に現在までに得られた効果と苦労したことをまとめた。

1) アセスメントの効果と苦労したこと

■効果

ITIL V3およびISO/IEC15504をベースにしたTIPA for ITILアセスメントでは、プロセスのあるべき姿(ToBeモデル)がプロセスアセスメントモデルとして提供されており、更にプロセスの成熟度レベルに沿ったあるべき姿がインタビューを行う際の具体的な質問項目になっている。したがって、インタビューを受ける人は現状できていることと、できていないことを体系的に把握する機会となるとともに、具体的にどんなことを改善すべきかを理解する機会となるため、自発的な改善活動につながった。

■苦労したこと

社員の中にはアセスメントにより自分自身の人事評価への影響を懸念する者がいたため、本当の問題や改善点をあぶりだせないことが想定された。そこで、アセスメントを開始する前に、アセスメントの目的とアセスメント結果の使われ方について十分時間をかけて説明するとともに、アセスメントの担当者とアセスメントを受ける者との間でNDA(Non Disclosure Agreement)を結び、アセスメントで知り得た情報の情報源を明かさないことを約束することにした。

2) コーポレート・ガバナンスに組み込んだ効果と苦労したこと

■効果

サービスマネジメントに関わる社員は、これまでプロセス活動という視点で自分たちの業務をとらえていたが、コーポレート・ガバナンスのフレームワークの中での位置付けを理解したことで、事業活動というマクロの視点で業務をとらえるようになった。結果としてプロセスの目標だけでなく、事業目標の達成を意識して業務を行うようになったことで、社員のモチベーション向上にもつながった。

■苦労したこと

組織横断的な機能となるサービスマネジメントオフィス(SMO)の立ち上げに際して、その機能が持つ意思決定の権限について経営者の理解を得ることで苦労した。そのために、経営資源の変更を伴う改善に関する意思決定を経営者に集約することで理解を得た。

3) 体系的な人材開発プログラムの効果と苦労したこと

■効果

全社員にITIL V3基礎研修を実施したことで、日々の業務においても「自分が提供する価値」や「自分の業務の目的」を意識するというカルチャーが社内に浸透してきた。また、日々の業務の中で発生する問題に対して、ITILというベースラインに回帰して考えるということが習慣化されてきた。
「7つの習慣」研修では、受講を完了した社員はまだ一部だが、参加した社員からは、「業務上で関わる人とのコミュニケーションにおいて直面している様々な問題の解決の糸口になった」「意見が異なる人との付き合い方を変えるきっかけとなった」など、組織内への効果的なサービスマネジメントの実現が期待される。

■苦労したこと

「7つの習慣」研修によって得られた気付きを実生活の中で習慣化させるために、社内講師を養成し、研修後も継続的に習慣化をサポートする体制を整えた。

4) 組織をITIL V3に合わせて再編成した効果と苦労したこと

■効果

業務において何か課題や問題が出てきた場合、ITIL V3のプラクティスが判断基準(ベースライン)となることで、特定の人の意見に振り回されたり、意見がまとまらないということが減った。

■苦労したこと

ITIL V3をバイブルや法律と同じで絶対に守らねばならないものと誤解している人がいたこと。そのような人に対しては、ITIL V3が言っていることを全てそのまま採用する必要はなく、自社の事業目標の達成のために取捨選択をし、必要であればカスタマイズして利用するというアプローチが重要であることを啓蒙した。

5) サービスマネジメント導入事例紹介の効果と苦労したこと

■効果

弊社のお客様に対して、弊社でのサービスマネジメント導入のアプローチをご紹介するプライベートセミナーを実施し、お客様の社内でのサービスマネジメント導入において参考になったと好評いただいた。

■苦労したこと

弊社でのサービスマネジメント導入のアプローチは、あくまでも弊社でのベストプラクティスであり、単に弊社での事例を紹介するだけでなく、お客様の事業において期待する結果を導き出すためのヒントにしていただけるよう、セミナー内容をカスタマイズするのに苦労した。そのために、まずお客様の事業と期待する結果を理解することから始めた。

今後の取り組み

2013年は、2011年から2012年の2年間で整備したサービスマネジメントの仕組みにより、事業に対して、そしてお客様に対して、どれだけ価値が提供できているかを評価するための効果測定の仕組みを整備する予定である。
更に、サービスマネジメントの評価結果を社員の人事評価にリンクさせることで、お客様への価値提供により自分自身にも価値がもたらされることを体感できる仕組みを整備したいと考えている。

<参考文献等>
・『7つの習慣』 スティーブン・R・コヴィー著 キングベアー出版発行
・『マネジメント【エッセンシャル版】基本と原則』 P.F.ドラッカー著 ダイヤモンド社発行
・TIPA (Tudor IT Process Assessment) for ITILは、プロセスアセスメントのISO標準であるISO/IEC15504とITIL V3をベースにした、サービスマネジメントのプロセスアセスメントのためのフレームワークである。
・ITIL is a Registered Trade Mark, and a Registered Community Trade Mark of the Office of Government Commerce, and is Registered in the U.S. Patent and Trademark Office
・TIPA is an initiative of the Centre de Recherche Public Henri Tudor

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キーマンズネットとは
KVH株式会社において、BPRやComplianceなどガバナンス強化を主要業務とし、ITILをベースにしたサービスマネジメント導入では推進役として従事。KVHの電気通信主任技術者としても責任を持つ。ITIL V2 ManagerおよびITIL V3 Expert、TIPA Lead Assessor for ITIL資格を保有。

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