お隣“韓国”にみるITサービスマネジメントからの考察

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お隣“韓国”にみるITサービスマネジメントからの考察

運用管理 2012/12/12

 今回コラムを連載で書くにあたり、この数年間ITサービスを含め、日本のITの今後について、私がかなり印象に残った事を書いていくことにしたい。

IT知識以前に語学力で相当の違いが

 私は韓国にこの10年間毎年itSMFコンフェレンスなどのイベントに招かれて訪問をしている。
 ITILをベースにしたITサービスの導入については、日本と韓国は欧米からはやや遅れたものの、ほぼ同時期(2004年)に組織を立ち上げ活動を開始した。同じマネジメントのシステムを同時期に活用し始めた訳だが、まず私が驚愕したのはITサービスの事でなく日本と韓国の大きな語学力の差である。日本ではITILの5冊を全て日本語に翻訳して広めたが、韓国では英語のままで学習に励んでいた。日本の特に保守と運用に携わる人財は普段英語で仕事をする必要があまりないと言われていたが、そのITILの5冊書籍を読みこなす語学能力にはかなりの差があり、ITの知識レベル以前に語学力で相当の違いがあるのを当時実感した。英語の原書を読めるということは、ITの分野に限らず長期的に見れば情報の広さと厚さが大きく差がつくと思う。

 話が少しそれるが、数年前お隣の台湾へも2回ほど政府の招聘で訪問しITサービスと調達マネジメントについて講演する機会があったが、参加者150名程度全て通訳無しで英語のままでOKであった。残念ながら、日本人の英語力が他のアジア諸国に比べて上がっていないのはどうやら事実のようだ。

 私は現在毎年大学で教鞭も取っているので学生にいつも何時間英語を勉強して来ているか必ず聞く。平均的学生は2000時間以上は学習をしている。2000時間学習して身につかないものは英語以外にはないのではないかと思うがどうだろうか。貴重な人生においてこれだけ時間とお金を費やして成果が出ない英語教育とは正に「Why we cannot use English?」と言いたくなる。

日本が学ぶべきサムスン社のITIL導入事例

 話を戻して、少し前の話になるがまだ2008年ITILがバージョン2のころ当時日本では、ITサービスマネジメントの上級資格であるマネージャ資格の取得者数が5年でやっと350名になったが、韓国では英語の試験で資格を取得した人が250名程度はいると言われていた。当時試験は選択式ではなく論述の筆記試験なので、知識と同時にかなりの英語力が求められる。もうひとつ有名なエピソードは、韓国のトップ企業グループのサムソンはITILが韓国に紹介されると数十名を選抜してITILのマネージャ資格取得を命じた。なかなか難しい試験なのだが、サムソンの合格率が非常に高く(ほぼ全員が1回目の試験で合格したようだ)世界のitSMFでも注目を集めた。合格率の高い理由は、彼らはITILを3ヵ月間ほかの仕事をせずに集中して学習し、きちんと自分のものにして、その人財がサムソンの各社でITサービス導入の推進をする役目を担えとの指示であったそうだ。本当にITILを使いこなす人財をまずは育成して徹底して導入を行うモデルは日本も学ぶべきことだと思う。

 日本はV3になっても費用などが足かせになり、上級資格取得は伸び悩んでいる。試験が日本語であっても取得者少なく、日本のICT予算及びそれに関わる人間は韓国に比べて膨大だが、それを支える人財について日本は残念ながら大いに貧困と言わざるを得ないだろう。

日本とお隣“韓国”にみる、IT活用成熟度レベル

 そしてもっと危惧すべきことは、ITサービスが日本では大学人でこの学際分野についてきちんと研究している方が皆無であり、その為に日本での本格的な高等教育機関の関与が進んでいないことだ。韓国では複数回にわたってitSMF Koreaの理事長に有名大学の経営学部や大学院の教授が就任しており、政府からの支援も受けて研究を続けている。韓国のサービス品質の重要性についての考えと政府の実行プログラムには驚くことが実に多い。
 2009年に韓国を訪問したときにも、政府は20億円を注ぎ込んで大学と企業連携でサービスサイエンスをはじめとした研究を進めていると聞いた。
 私もitSMFの副理事長として、設立以来理事長ともに日本の学際にITサービスを推進するようなことができないかと考え働きかけたが、工学部は興味がなく、経営学部系も駄目であった。私の知る限り、今日現在この分野を研究している大学の先生は1人もいない。

 調査結果は若干古いが、韓国は下記のようにITの活用成熟度レベルでも健闘している。多分現在もそんなに大きく変化はしていないのではないかと思う。日本は投資額、就労者数ともに多いのにその活用結果は寂しい限りである。

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 製造業の分野で韓国に追い上げられ、自動車、家電など日本の代表的な産業が良く物まねに負けたという話をする方がいるが、私はそのステージは既に超えてグローバルな競争の中で製造・マーケティング・販売・IT・カスタマーサービスなど多くの分野で先進的な事例を作り始めている韓国に対して我々は認識を新たにすべきと思う。

 次回はカスタマーサービスやその他の分野での実情を両国で比較したい。

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1991年 株式会社プロシード代表取締役に就任 プロジェクトマネジメント研究所日本支部 初代会長及び理事、経済産業省「政府調達におけるサービスモデルアグリーメントガイドライン研究会」委員、総務省「ITサービスマネジメント研究会」委員itSMF Japan副理事長、日本コンタクトセンター教育検定協会初代理事長及び理事等を歴任

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