IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜

IT・IT製品TOP > Key Conductors > 松本 浩彰(BMCソフトウェア株式会社) > IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜
この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

IT現場の道先案内人 Key Conductors

IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜

運用管理 2012/12/20

今回は前回の論旨を受けて「IT運用の将来像を考える」と題して、「より使いやすく」「より早く」「より安く」ITサービスをビジネスに対して提供するには、どのような施策がこれから考えられるのかを考えてみたいと思う。  

前回は、工場を例にとってIT運用においてのITILの位置づけをお伝えし、ITILというサービスマネジメントフレームワークは、「より使いやすく」「より早く」「より安く」ITサービスをビジネスに対して提供する上での基礎的な考え方・エッセンスを述べたものにすぎず、実際にITサービスを「より使いやすく」「より早く」「より安く」する為には、他の具体的な施策が必要である事を述べた。

※会員登録いただくと図をご覧いただけます。
会員登録はこちら(無料)

では、ITサービスを「より使いやすく」「より早く」「より安く」する具体的な施策には、どのようなものが考えられるだろうか?  
前回の工場の例では、「より短いラインを構想する(そうすると1台の車が早く出来上がる)。その短縮化した生産ラインに対応する為に作業手順を変更する。さらにその手順に対応する為に製造ロボットを改造する。」というイメージをお伝えした。  

では、これをITに当てはめて考えてみよう。

古いIT構築の手法であれば、ビジネスユーザからニーズを細かく汲み上げ、これをベンダーと共に延々とウォーターフォール型で構築(ハードウェアやアプリケーション開発)していく。
これを工場の生産ラインとしてイメージしてみると、納期を短縮し開発コストを安くするという観点の施策では、アジャイル開発(生産手法の変更)やシステム環境の仮想化(新たな技術の導入)などが、最近流行りの手段として思い浮かぶだろう。また、最近はパブリッククラウドが躍進しているので、開発そのものが余り行われずパブリッククラウド上のサービス(SaaS)をそのまま利用する(或いはPaaS上で素早く開発する)といった手段も現実的に選択できるようになって来ている。

ここで登場したシステム環境の仮想化 (プライベートクラウドやパブリッククラウドの利用) に関しては、ここ数年の間に多くのインフラ管理部門がプロビジョニング技術(自動的なインフラ環境の構築技術)を利用してIT基盤やITサービスをより短納期で提供する施策に着手していると思う。

※会員登録いただくと図をご覧いただけます。
会員登録はこちら(無料)

しかし、仮想化基盤の構築から提供までのプロセスを構想する場合には、ITIL が紹介している変更管理・リリース管理・構成管理・可用性管理・キャパシティ管理・サービス要求実現等への考察が必要となってくる。
さらには、サービスストラテジで紹介されるサービスポートフォリオの概念や要求管理と言ったサービスそのものの規定や管理概念も必要である。
単に先進的な技術を利用すれば良いわけではない。それを継続的に使いこなしていく際に必要となる基本的な管理フレームワークを ITIL は示しているのである。

また、日々の運用オペレーションに目を向けて「問い合わせ」や「障害」への対応についても考えてみよう。
今まで考えられていた障害や問い合わせへの対応(ITILで言うとサービスデスクやインシデント管理)では、電話やメールを集約して一カ所で受け付けるという手法が一般的だった。

ところが、最近は問い合わせをWebポータルから受け付けたり、社内SNSを活用してコミュニケーションを取ったりする手法が広まって来ている。
特にITに関わる仕事をしていない人々も、自宅で Face book を利用し、Twitter(ツイッター)を使い、モバイルデバイスを手元に置いて生活するようになってきている。コミュニケーションの手段・スピード・質自体が感覚的に大きく変化してきている中で、これからの障害や問い合わせへの対応も旧来のやり方から変化しつつある。 

Webポータルを使った問い合わせ機構の優れた点は、IT運用管理側から見ると、電話対応の頻度が下がる為、業務時間を拘束される事が少なくなり、一方でユーザ側から見ると、電話をかけなくてもPCや携帯端末から問い合わせを何時でも何所からでも行う事が出来、且つ進捗が常に公開されているのでわざわざ電話で経過を問い合わせる必要もないと言った事が挙げられる。

※会員登録いただくと図をご覧いただけます。
会員登録はこちら(無料)

また、SNSを使った例には、ユーザがITに関して問題を抱えた際にSNSを通じてリアルタイムに会話しながら(画面共有等も併用)サポートしたり、復旧作業中に対応者と設計担当者がSNSで直接会話しながら、場合によっては携帯端末で現場の画像を送りつつ共同で作業を進めたりといったものがある。
以前なら、電話やメールで全て伝えなければならず(何往復もかかる)時間を消費していたが、テクノロジの応用でコミュニケーションの質とスピードを大幅に改善する事ができるようになって来ている。
企業内SNSはクラウドの発展に伴って最近注目され始めているので、少し注目しておくと良いと思う。(ソーシャル・エンタープライズ等のキーワードが盛んに取り上げられつつある。)

以前は、インシデント管理と言えば障害の内容に応じて段階的にエスカレーションするイメージであったが、これからは新たな技術を利用しながら如何にリアルタイムに関係者がコミュニケーションし、素早く且つ効率的に対応できるかを議論していくことになるだろう。

※会員登録いただくと図をご覧いただけます。
会員登録はこちら(無料)

幾つか簡単な例を挙げて見たが、ITサービスを「より使いやすく」「より早く」「より安く」変革していくには、時代の進行に合わせて登場するテクノロジを応用する事が重要に見える。
工場の例を振り返ってみれば、製造ライン上で車を組上げる作業をロボットが行っていた。ロボットは手作業よりも圧倒的に早く正確に製品を組み立てるだろう。従って製造ラインで最も華々しく変化をもたらしたものはロボットに見える。
ただ、ロボットがスピードや生産量を飛躍的に向上させたとしても、生産ラインの設計者は製造ミスを防ぐ為に品質管理の理論を背後に用いている筈である。  

同じように、ITILの位置づけもITサービスを「より使いやすく」「より早く」「より安く」を変革する為の具体的な施策の背後に存在する基礎的な管理上のアイデアを提供してくれるのだと理解すべきだと思う。

※会員登録いただくと図をご覧いただけます。
会員登録はこちら(無料)

技術は日々進歩する。それを用いていく際に ITIL の考え方が部分的に古びて見える事もあるだろう。そのような場合は、理論優先で ITIL の細部にこだわるのではなく、どのようにしたらITサービスを「より使いやすく」「より早く」「より安く」できるのかという原点に立ち返り、最善の方法を考案すれば良いのである。

実はITILもプロセス・人・テクノロジ・パートナーを有機的に利用する事をそもそも謳っている。
ただ、過去10年の国内のITILについて見ればプロセスと人にばかり議論が集中してしまい、テクノロジは必要悪程度に語られていたと思う。特にITILが登場した初期の時点では今程テクノロジも進歩していなかった為、ITILにまつわるテクノロジと言えばサービスデスクツール(インシデント・問題・変更・リリース管理・構成管理のワークフローを提供するツール)程度しかなく、且つ高価なものばかりでIT管理者から見ても魅力的に映らなかったと思う。  

私もソリューションの提供側の立場から多くの提案に関わったが、殆どのITILツール(サービスデスクツール)の導入要件はITILが規定したプロセスに合わせて業務を行う為の牽制を目的としており、ツールは品質管理や統制上の必要悪のような扱いであったと思う。(ITILを強制するギブスのような扱いであった。)  

現在では、IT運用管理に関わるテクノロジの中でサービスデスクツールは部分的な位置づけでしかない。きちんとしたベンダーであれば、サービスデスクツールと自動化ツール(作業手順の自動化や、プロビジョニング等)、またモバイルやSNSのような仕組みを既に深くインテグレーションさせている。

※会員登録いただくと図をご覧いただけます。
会員登録はこちら(無料)

現在のIT運用管理テクノロジのトレンドは、ITサービスの提供に関わるプロセスを標準化し、且つこれを自動化する事で、人的介在を最小化しより短納期でミスなく日々のIT運用を継続していけるような方向に進んでいる。
将来のIT運用管理の姿は今日よりも、ずっと人手に頼らないものになっていくだろう。また、そのように変革していく事がビジネスユーザの期待や、経営者の期待に必ず合致する筈である。  

前回の記事で述べたとおり、日本には10万人以上の技術者がITILの基礎知識を有している。その基礎知識を底辺に置きながら、これから具体的に自分達が日々直面しているIT運用管理業務を標準化し且つ自動化して行って頂きたいと思う。
あるITに関する講演で、これからの時代「作業者」は「戦術家」に変わるだろうと述べていた。まさに、いままで運用の現場で日々格闘されてきた皆さんが、次の時代では新たなプロセス(極限まで標準化され自動化されたプロセス)を考案していく戦術家になっていかれたら素晴らしいだろうと思っている。  

前回と今回で、IT運用とITILの関わりをトピックとして取り上げた。次回からはIT運用とクラウドコンピューティングの広まりに関して取り上げたいと思う。次回も是非ご覧いただきたい。

会員限定で「読者からのコメント」が読み書きできます! 「読者からのコメント」は会員限定の機能。会員登録を行い、ログインすると読者からのコメントが読み書きできるようになります。

会員登録(無料)・ログイン

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この寄稿記事に掲載している情報は、掲載日時点での情報となります。内容は変更となる場合がございますのでご了承下さい。また、「Key Conductors」の寄稿記事及び当該記事に寄せられたコメントについては、執筆者及びコメント投稿者の責任のもと掲載されているものであり、当社が、内容の最新性、真実性、合法性、安全性、適切性、有用性等を保証するものではありません。


30005337


IT・IT製品TOP > Key Conductors > 松本 浩彰(BMCソフトウェア株式会社) > IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜

このページの先頭へ

キーマンズネットとは
1997年BMCソフトウェア株式会社に入社。以降15年に渉り、IT運用に関する様々な領域でソリューションの提案やコンサルティング業務を行ってきました。2004年以降数年間 itSMF の分科会活動(事例研究分科会・SLA分科会・ガバナンス分科会)にも参加させて頂きました。

ページトップへ