IT運用の将来像を考える〜今後の標準化と自動化の進展〜

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IT運用の将来像を考える〜今後の標準化と自動化の進展〜

運用管理 2012/12/12

筆者は、かれこれ15年近く運用管理の分野でソリューション提供のコンサルタントを行ってきた。この間、運用管理の分野には様々な変化があったが、この度記事を掲載する機会を得たので、私なりに思う事を今回から3か月にわたって「IT運用の将来像を考える」と題して掲載していきたい。全体の記事の流れとしては以下のようなものを構想している。

(1)

IT運用とITILの関わりについて(今月)

(2)

IT運用とクラウドの関わりについて(来月)

(3)

IT運用の将来について(再来月)

今月は、今日の目から見たIT運用とITILの関わりを(多少批判的な見地から)トピックとして取り上げ、来月はIT運用とクラウドコンピューティングの広まりに関して取り上げたい。そして最後(再来月)には、これらのトピックを踏まえて今後のIT運用(今まで以上の標準化や自動化の進展)について私なりに考えてみたいと思う。

IT運用とITIL

2000年代に日本のIT運用に起こった大きな変化の一つが、ITILの登場と普及ではないだろうか。
ITILは1980年代から西欧特にイギリスを中心に発展したIT運用管理のマネージメントフレームワークである。2003年に日本でもITILを推進するNPOであるitSMF Japanが設立され、2003年からの数年間は大きなブームとなった。
国内でも基本的な知識習得レベルのFoundation資格を有している方は10万人を超えた。IT運用管理の領域では既に日本においても十分に認知されていると考えて良いだろう。

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ただ、今日の時点で日本のITILの過去10年を振り返ると、その認知度の向上とは裏腹に、ITILがIT運用に与えた影響は当初期待された程ではないように思えてならない。私が国内のIT管理者の方々とお会いすると、多くの方がITILを認知しており感覚的にその大切さを理解しておられる。しかし、ITIL自体を組織の変革や改善にどうつなげていくのかについてはぼんやりとしたイメージしか持てない方が多いように思える。  
最近ではITILも一時のブームに過ぎず、これから廃れていくのではとの声まで聞こえてくる。実際に将来そのような悲しい結果になってしまうのだろうか?その可能性も少しあるかも知れない。ただ、そのように考える前に日本のIT運用の将来を見つめつつ、今日何故このような結果に陥っているのか考えてみよう。  

ITILに対する捉え方の誤り

IT運用管理とITILの関わりを日本において見た場合、最大の誤謬は先ほど私が述べた論旨の展開自体にあるのではないだろうか。それは「ITILを利用したら、何が変わるのか?」という発想の仕方である。

車の生産ラインを例にとって比喩的に考えてみよう。工場の中にはラインがあり、車がそのライン上を進んで行く。その両側には製造ロボットがあり、自動車を素早く組み立てて行く。この工場の中には製造自体に関わるメンバーの他に、品質管理者やラインの設計を行うメンバーもいる。この例の中でITILに相当するものは、品質管理者や生産ラインの設計者が参考にする基本的なアイデア(品質管理の基礎的な理論)といったところだろう。車をより良く作る為に基礎的な品質理論は必要だろうが、それ自体が車を作るわけではない。車の生産ラインを差別化しているものは、その工場独自のラインの組み方であり、製造工程の独自性である。工場が目指しているのは、より品質の良い車を、より多く(計画通りに)生産する事であり、品質管理理論上から見た充足性を追求する事ではない。

これと同様に考えてみると、IT組織においてのゴールは、ビジネス部門の求めに応じて「より使いやすく」「より早く」「より安く」必要なITサービスを提供する事である。この目的において必要な施策は可能な範囲で全て検討し取り組まなくてはいけないが、その中でITILは施策の一部分にすぎないのだ。  

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ただ、すばらしい生産ラインは凡そ品質管理の理論から見ても合理的に出来あがっている筈である。生産ラインを設計する場合には、やはり基礎的な品質管理に関する理解は前提となるだろう。こう考えると、国内におけるITILの広範な認知というものはとても前向きに考える事ができる。多くのIT管理者は基礎的な学習は終えている訳である。  

発想を原点に戻す。

これからのIT管理者にとって、大切な事は学習した理論(ITIL)を土台にしつつも、それに束縛されずに「より使いやすく」「より早く」「より安く」ITをビジネスユーザに届けるには、どのような工夫が必要かを捉えなおす事だと私は思っている。  

生産ラインに例えれば、より短いラインを構想する(そうすると1台の車が早く出来上がる)。その短縮化した生産ラインに対応する為に作業手順を変更する。さらにその手順に対応する為に製造ロボットを改造する。工場では、概ねこのような取り組みを毎日必死に行っているだろう。なぜなら、日々、競合の工場と生産力を争っているからである。  

同様にIT組織にとっても、ビジネス上の競争を勝ち抜く為にビジネスユーザに対して「よりよいIT」を「速やかに」調達し、且つ調達コスト及び維持コストを「可能な限り低く」抑える事が、企業内での課せられた役割である。IT組織は、この役割を果たす為に、常に必要な施策を探し出し、挑戦し続ける必要がある。  

ITIL等の理論が説く事柄(プロセスや役割)をそのまま実践して行く (自社プロセスのITIL準拠レベルを上げる事に情熱を注いで行く) というアプローチではもう古いと思う。
このアプローチでは、手段自体(ITIL)が目的と化している。
むしろ、「より使いやすく」「より早く」「より安く」ITサービスを提供するにあたって、概要レベルのエッセンスがそこに散りばめられていると考えて参考にする方が適当ではないかと私は思っている。  

次回は、「より使いやすく」「より早く」「より安く」ITサービスを提供するにあたってITILも含めてどのような施策がこれから考えられるのかを考えてみたいと思う。是非次回もご覧いただきたい。

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キーマンズネットとは
1997年BMCソフトウェア株式会社に入社。以降15年に渉り、IT運用に関する様々な領域でソリューションの提案やコンサルティング業務を行ってきました。2004年以降数年間 itSMF の分科会活動(事例研究分科会・SLA分科会・ガバナンス分科会)にも参加させて頂きました。

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