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ID管理の課題とその対処法

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ID管理の課題とその対処法

2010/08/26


 J-SOXが施行されてから、早くも3回目の年度に入った。しかし、内部統制に必要な施策を完全に実施できず、依然として対応への取り組みを進めている企業も少なくない。社団法人日本監査役協会が2010年1月に発表した「第3回財務報告に係る内部統制報告制度に関するインターネット・アンケート調査結果」内の「適用初年度において重要な欠陥には至らなかった不備の内容」では「IT統制」が35.9%と最も多く挙げられている。つまり、内部統制の不備をなくす上で、IT統制への取り組みは非常に重要なポイントであることがわかる。そこで本稿ではIT統制の概要について触れた後、IT統制の中でも最も重要なポイントであるID管理について詳しく述べていくことにする。

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アナリストプロフィール

岩上 由高

シニアアナリスト 岩上 由高(Yutaka Iwakami)

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アナリストファイル #045

早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業などでIT製品及びビジネスの企画/開発/マネジメントに携わる。ノークリサーチでは技術面での経験を生かしたリサーチ/コンサル/執筆活動を担当。



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隙のないアクセス制御を左右するのは網羅的なID管理

 実は、上記の「不正アクセスの防止」には大きな盲点がある。1-1ではID保護について述べたが、そもそも不正アクセスを目的として悪意のある社員がIDを申請したらどうなるのか?といった問題がある。2-1のログにしても、悪意のある社員が特権IDを使ってログ自体を削除してしまうかも知れない。このように考えると、アクセス制御を漏れなく統制するためにはID管理そのものを厳しく見直す必要が生じてくる。以下ではID管理において発生しやすい問題とそれに対する対処について述べる。

1.ID申請内容がチェックされない

 「新しいIDが必要になった時には必要事項をメールに記載して情シス部門に送る」といった運用をしているケースも少なくないのではないだろうか?しかし、そのIDは本当に必要なのか?そこに記載されている権限は誰が許可したものか?といったことが保証されなければならない。特に限られた期間内のみの利用を想定してIDを発行する場合は急ぎの対応が求められることもあって、確認/承認のプロセスが抜け落ちてしまいやすい。ID発行における申請/承認のプロセスを明確にしておくことが重要である。

2.同一のIDを複数社員で共有する

 「ヒトは変わるが、業務内容や利用するPCは変わらない」といったケースも企業では多々ある。場合によっては複数の人間が日替わりで同一の業務を同一のPC上で行うといったこともあるだろう。システム上の管理だけを考えれば、「PCが同じなのだから、IDも共有で構わない」と考えがちだ。だが、これもIT統制の観点では問題となる。統制上支障がないことが明らかである場合を除き、IDは個人単位で発行して管理することが望ましい。

3.特権IDが適切に管理/運用されていない

 ID管理において厄介なのが特権ID(rootやadministrator)の扱いである。各自の業務に必要な権限に限定したIDを与え、特権IDの利用は可能な限り避けるべきであることは言うまでもない。しかし、システム管理においては特権IDが必要になる場面がある。その場合も1.で述べたような申請/承認のプロセスを明確にすることが大切だ。可能であれば、特権IDを利用する度にIDの授与/返還を義務付けるとIT統制上はさらに堅固なものとなる。だが、業務システムによっては特権IDが一つしか作成できずに共有を余儀なくされることもある。こうした場合にはID代替機能を持ったID管理/アクセス制御を利用するという方法がある。先に述べたシングルサインオンと同様に特権IDの代わりとなるIDを発行し、ユーザにはそれを使わせるといった対策である。

4.不要になったIDが残存している

 「退社した社員のIDが削除されずに残っている」というのもID管理で良く取り上げられる問題だ。これには大きく二つの要因がある。まず一つ目は単に削除を忘れてしまっているケースだ。これは社員が退社した時に行うべき業務をフロー化し、それを徹底することで対処が可能だ。二つ目は退社した社員が業務引き継ぎをしっかり行っておらず、当該社員のIDでないとアクセスできないメールデータがある、顧客から当該社員のメールアドレスに連絡が届く可能性が高いなどといったケースである。多くの場合、パスワードを変更した上でしばらくの間IDを維持することになるが、IDを削除した時のリスクを懸念する気持ちも働いて長期間に渡ってIDが維持されてしまうこともある。こうした場合のために各種業務システムにおけるデータのインポート/エキスポートの方法などを確認しておくと良いだろう。

5.必要以上の権限がIDに付与される

 パスワードと並んで重要なIDの要素が「権限」だ。必要以上の権限が付与されてしまえば、不正アクセスが可能となってしまう。様々な業務システムが存在する昨今、適切な権限設定はID管理において最も難しく負担の大きい要素といえる。IT統制を意識する企業ならば、可能な限り権限設定を細分化して、不必要な権限を与えないID管理を既に実施済みだろう。ここで注意すべきなのは業務システム改変によって当該業務システムの権限項目が変更された場合である。例えば、新しく権限が追加された場合、IDにはデフォルト設定が適用される。デフォルト設定が一つしかないと、全社員にその設定が適用されてしまう。変更管理システムなども活用し、業務システム改変がID管理に与える影響を常に把握しておくことが重要だ。

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INDEX

【1】IT統制の中で特に注意が必要なのはアクセス制御

【2】まず抑えるべきは不正アクセスの防止

【3】隙のないアクセス制御を左右するのは網羅的なID管理

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