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| 掲載日 2012/01/24 |

ERPにおいては、クラウドへの移行はなかなか進んでいない状況と言えるだろうが、それでも、カスタマイズ志向からパッケージ利用という段階を経て、近いうちにクラウド化が一挙に進む可能性もある。中堅・中小企業におけるERPの現状、そして、クラウド、あるいはモバイルデバイスとの連携などといった今後の流れも含めて、ノークリサーチの代表取締役社長である伊嶋 謙二氏にお話を伺った。
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まず、中堅・中小企業におけるERPの利用動向の概要についてお聞かせいただけますでしょうか?

中堅・中小企業ではまだまだ、厳密にはERPではないシステム(アプリケーション)が多く使われている状況だと思います。もともとはいわゆるオフコンの流れとしての業務システムであり、完全なカスタムメイドの業務システムが中心だったので、会計は会計、販売管理は販売管理というふうに各々の業務モジュールもあまり連携されてこなかった。つまり、業務システムが個別に作り込まれている状況ですから、すべてのデータベースを連携させて、一元管理するというような体制に移ることは難しかった、あるいは避けられていたというわけですが、ここにきてようやく、ERPパッケージの導入・利用も少しずつ進んでいるという段階だとは言えると思います。
図1 「ERP」製品/サービス活用における運用形態(2011年調査) |
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実際の業務などをERPパッケージに合わせにくいといった事情もあるのでしょうか?

2つの問題があると思います。1つは日本の企業においては業務をパッケージ(アプリケーション)に合わせることを避ける風土があるということ。経営者を中心に、やはり自社の業務に合わせてシステムを構築してほしいという意識や要望が伝統的にありますから、なかなかパッケージへ移行できません。そして、もう1つはパッケージを提供する側の問題ですね。本来、ERPパッケージは企業戦略的な使われ方をされるべきものだと思いますが、なかなかそうしたかたちでの提案がなされていない。しかも、実際にそういう使い方をするためには、現状ではかなり大規模なシステムとして構築しなければならないものが多く、中堅・中小には敷居が高い存在になっている。その結果、現状では“ERP的なパッケージ化”は進んでいるものの、本来のERPではなく、各モジュールが“緩く”連携するというようなレベルにとどまっているように感じます。

会計や人事・給与だけは連携しているというような導入のされ方ですか?

まず会計から導入という企業は多いですね。とりあえず会計モジュールを入れて、そこに紐づけるかたちでデータの一元管理を始め、人事・給与なども連携させていくというような流れでしょう。製品形態としても、すべての業務システムを一気にERPとして展開するのではなく、会計などの入れやすい部分から導入して、そこにほかの業務システムを付加していくというものが多いと思います。一方で、各企業で固有の部分が多い生産管理や販売管理などはパッケージ化しにくく、ERPパッケージのような形態をとっていても、実際にはかなりカスタマイズされた上で利用することが前提になっているものも少なくないようです。

本来のERPではないものの、その方向を目指して連携を図っている企業が増えているのは、昔のままのシステムでずっといくわけにはいかないという意識があるからでしょうか?

ハードウェアのコストがどんどん下がってきていますから、システム全体の予算も当然のごとく抑えられるだろうという意識が強まっています。そうした中で、バランスの問題として、カスタマイズされたシステムの維持コスト、特にソフトウェアの改修などに、これほどお金をかけていていいのかという疑問が出るのも自然の流れでしょう。そうしたコストを抑えるためには、ある程度標準化されたパッケージを導入していかざるをえないという事情もあるかと思います。

ERP市場全体を概観した場合には、何か新しい動向などは感じますでしょうか?

やはりクラウドは無視できない流れになっています。ITシステム全体で「所有から利用へ」という意識が強まる中で、利用する側でもERPにおけるクラウド化への関心は高まっていくでしょう。そうすると当然、ERPベンダ側も取り組んでいかざるをえない。1〜2年で一挙に状況が変わるというわけではないでしょうが、パッケージ製品の提供を続ける一方で、SaaS型ERPなども推進させていくという流れになると思います。ERPという名前がそのまま残るかどうかは別にして、業務サービス系も相当な割合で何らかのクラウド利用形態へシフトしていくだろうと予想しています。

貴社では幅広い製品分野で市場調査を実施されています。クラウドの話題では、この分野はクラウド化に適している、ここはそうでもないといったことも言われますが、特に中堅・中小企業では実際にどういう状況なのでしょう?

業務系よりも情報系が先行しているというのは事実ですね。グループウェア、メール、あるいはバックアップなど、情報系の中でも企業にとってあまりクリティカルではないと考えられている部分をテスト導入してみるというケースが多い。いずれにせよ、まだ本格的な利用には至っていない段階だととらえています。また、導入する企業側にとっては実際には利用形態は何でもいいという意識も少なくないと思います。仮にグループウェアがクラウドとの親和性が高かったとしても、グループウェアというものは既に導入済みの企業がほとんどですから、それをあえてSaaS型に切り替えるかというと、単純にそうはならない。トータルコストが抑えられるといっても、もともとそんなに極端に費用がかかるものではないですし。もちろん、全くグループウェアを利用していない企業にとっては、SaaS型グループウェアは手軽に導入が可能な形態であることは間違いないと思います。

ERPの場合は、まずはERPそのものの導入検討を行う必要があるという段階の企業も多いので、本格的なSaaS型ERPが出てきさえすれば、一挙に広まる可能性もあると言えるでしょうか?

まだまだモジュール単位で売れているような状態ですが、少なくともカスタマイズ(個別の作り込み)からパッケージ系へのシフトが動きとして見えてきている段階には入ったので、その土壌は整いつつあるかなと思います。クラウドの利用に関しては、外部にシステムやデータを委ねるという点に抵抗があるのでないかという考え方も以前はありましたが、中堅・中小企業においては「じゃあ、自分たちで情報システムを完璧に守れるのか」と考えた際に、しっかりとしたところに預かってもらったほうがむしろ安全だと認識するところが多くなっています。あとは、提供する側がきちんとしたクラウドサービスを提供すれば、一気に普及が進む可能性は高いでしょう。

クラウドへの流れが、モバイルデバイスでのERP利用などを促進するといったことも考えられるでしょうか?

会計情報などを出先で確認して何か作業をするといったことはあまり考えられないわけですが、何らかの特定用途でモバイルデバイスとの連携が進むということはありえますよね。例えば、販売管理や生産管理などではシステムのパッケージ化があまり進んでいないという状況ではあるものの、そうした問題さえクリアされれば、現場に近い人間が情報を扱うことが多いことから、モバイルデバイスとの連携が進むかもしれません。
図2 「ERP」製品/サービス活用における端末環境(2011年調査) |
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例えば、データ入力などの作業がモバイルデバイスとの連携によって、これまで以上に効率化・高度化するといったかたちでしょうか?

そうしたこともあるかもしれませんね。いずれにせよ、特にERPにおいてということではなく、今年以降、スマートフォン、タブレットといったモバイルデバイスのビジネス利用は間違いなく広がるし、Windows系のモバイルデバイスが今年は存在感を増していくのではないかというのは、誰しも予測していることでしょう。以前はこうした新たなデバイスや仕組みなどはステップ・バイ・ステップで徐々に浸透していくものでしたが、現在は技術そのものは先行して進んでいたり、あらかじめコストもこなれている場合が多いので、突如として新しいデバイスがデファクトとして広まる可能性はあります。
図3 業務システムにおけるスマートフォン/タブレット活用割合(2011年調査) |
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順序を追うのではなく、ものさえ揃えば一気に使われ出す可能性も高いということですか?

ただセキュリティ上の問題がきちんと解決される、整備されることが前提条件になります。今までは個人レベルのクラウド利用がほとんどでしたので、問題は個人として発生するだけでした。しかし、クラウドを企業として利用するわけですから、情報の安全性の担保は絶対的な前提条件になります。企業ではクラウドへの移行に際して、モバイル利用によるセキュリティ上の不安を感じている企業が多いのが実態です。また、PCの代替のような使われ方ではあまり意味がないと思われますので、情報漏洩を防ぐ仕組みなどの安全性やデータの保全を担保する一方で、モバイルデバイスならではの機能を活かした新しい業務端末としての様々な使われ方が試みられていくのではないかと考えます。
●ありがとうございました。
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特に中堅・中小企業における市場調査を得意とする、IT市場に特化したリサーチ、コンサルティング企業。年商、業種、従業員数、地域といった基本企業属性は もちろん、ハードウェア/ミドルウェア/ソフトウェア/サービスといった情報システムを構成するレイヤ、更に販社/ディストリビュータ/SIerといったチャネル構造まで、様々な角度からの調査・分析と各クライアント企業に最適化されたコンサルティングを通じて、中堅・中小企業におけるITビジネスを支援している。 |
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