「そして誰も使わなくなった」放置BIツールを「牛角」はどうした

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「そして誰も使わなくなった…」放置されたBIツール、「牛角」チェーンの復活劇とは

データ分析 2018/03/12

 日々、経営の宝となるデータは集まるものの、大量のデータをExcel上で加工し、集計することに限界を感じている企業は多い。しかし、いざBIツールを使おうとしても、利用者の活用促進が進まなかったり、インフラ性能の問題に頭を悩ませたりすることもあるだろう。

 「牛角」などの飲食店チェーンで知られるレインズインターナショナルもそうした問題を抱えていた。同社は一度海外製のBIツール導入に失敗、「導入1年後には誰も使わなくなった」状況に陥ったという。しかし、今はその失敗を生かし、経営スピードを大幅に上げるBI活用、利用普及に成功している。

データ分析で人間関係にもひび……?

 ウィングアーク1stが2月28日に開催した「BI導入成功企業が語る、失敗しないBIツール選定ポイントと活用ノウハウ」セミナーで、レインズインターナショナルの常務取締役 経営戦略統括本部長 大場良二氏が登壇し、同社の事例を紹介した。本稿では、同氏が語ったBIツール導入の経緯やポイントを紹介していく。

売上、受注、勤怠管理システムの相互参照で経営スピードにブレーキ

 レインズインターナショナルは社員571人、直営店アルバイト4750人(2017年12月末現在)を要する外食店舗経営、フランチャイズ、食材等の卸売を主事業とする横浜市の企業である。創業は1987年だが1996年に現在の焼肉チェーン「牛角」の全身となる店舗をオープンして以降、「しゃぶしゃぶ温野菜」や「土間土間」などのブランドを次々に立ち上げ、2003年(7年後)にはグループ1000店舗と急成長を遂げてきた(2017年末現在では国内1251店舗、海外145店舗に拡大)。

 その急成長の秘訣は「何よりもスピード重視の経営」だと大場氏は言う。朝に出した命令を夕方には変えるという意の「朝令暮改」は一般に悪いマネジメントの例だが、それを是をとする文化が同社にはある。朝決めたことでも問題があると分かれば解決策を夕方には実行する、そんなスピード感を大切にしているということだ。

 そのスピード経営を支える要素は数あるが、中でも「売り上げ」「発注」「勤怠」の情報は、経営の可視化や改善の上で非常に重要だ。しかし、1250を超える店舗から毎日収集するこれら情報は一度データセンターに集約されるものの、集計や保管などの処理は個別のアプリケーションを通して行わざるを得ないという問題があった。

 全体最適を想定したシステム構築は理想だが「店舗展開スピードが非常に速いため、現場業務の遂行を最優先した結果」個別最適なシステム導入になってしまったという。また、フランチャイズ店ではシステム導入は自店の経費となり、簡単にシステム刷新とはいかない事情もある。

DL、Excelでの加工、集計…情シスもぐったり

 各システムの情報を横串で分析するには、個別にログインして参照、データ抽出してExcelで集計する必要があった。とはいえ、売上データだけでも、商品コード単位で月あたり1900万件を超えるデータ量が集まり、そのダウンロードや単純な集計処理には多くの時間がかかる。さらに、売り上げデータをその他の発注データなどと突き合わせて複雑な集計を行うには、一層の時間がかかる上、現場スキルが足りないという問題もあった。

 また、各システムの定型帳票とは異なる軸でのデータ抽出したい場合にも、大変な工数がかかっていた。例えば、店舗ごとの日別、月別の売り上げデータだけでなく、時間帯や顧客の属性別といった細かい単位でのデータを抽出したい場合に、ユーザー部門ではどうにもならず、別途システム部門に依頼する必要がある。こうしたニーズは度々発生していたが、多忙なシステム部門にデータ抽出を依頼しても結果が出てくるまで1〜3日を要しており、結果的に部門間の人間関係にもストレスが発生していた。

図1 既存分析プロセスの問題点(1)

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図1 既存分析プロセスの問題点(1)

1年で誰も使わなくなった…海外製BIツール導入の失敗

 これらの問題点を解消する切り札として検討されたのがBIツールの導入である。しかし最初の取り組みは失敗に終わった。海外製のツールが候補となり、投資の必要性を社内に説得して導入してみたものの「導入1年後には誰も使わなくなった」という。

 要因の1つは「難しすぎた」ことだ。取り扱いには、データキューブの設計、運用管理、操作性の3つの面で専門スキルが必要とされ、現場出身のユーザーは使いこなせなかった。また、その他の要因として、当時は大量データを処理するハードウェア性能が低く、データ取り込みに時間がかるという問題もあった。エラーが発生すると当日内に復旧できず、集計が遅れる事件も発生した。

失敗からの復活劇、BIツール導入のポイント

反省を生かした6つの条件

同社は過去の失敗から得た教訓をもとにツール選定に6つの条件を設定した。

・1カ月あたり1900万件超のデータを高速で処理できること
・特別な訓練をしなくても各ユーザーが独自の分析を行えること
・ユーザー、店舗スタッフでもすぐに使えるよう、クライアントPCにインストールせずに、Web環境でも使用可能なこと
・初期費用、運用費などのコスト)を極力抑えること
・汎用的なデータベースで、さまざまなデータ抽出ができること
・日々の運用管理に大きな負荷がかからないこと

 これらの条件を満たすツールを検討した結果、選定されたのが「Dr.Sum EA Premium」だった。同ツールオプションのOLAP・レポーティングツールである「Datalizer for Web」と「Datalizer Express for Excel」も同時に導入することとなった。

非Enterprise版で成功したワケ

 Dr.Sum EAには利用ユーザー数やデータ量などの運用規模に応じて異なるエディションを用意している。同社が選定したDr.Sum EA Premiumには、上位のEnterprise版があり、これは年間2億件の明細データを1つのテーブルに格納可能という点で理想的だった。しかし、同社はコストパフォーマンスの面でPremium版を選び十分な分析のパフォーマンスを実現しているという。

 「当初は、Premium版だと年間データが1つのテーブルに収まらないという懸念がありました。しかし、ユーザー部門にヒアリングしたところ、飲食店のメニューは月単位で変化しているため、新メニューの成功、失敗などは数週間分のデータを分析することで判断できるというのです。1年はもとより数カ月間のデータ分析もあまりニーズがなく、それなら安価なPremium版でよいという判断となりました」(大場氏)

3ステップで段階的に導入

 この導入により、売上、勤怠、仕入れの3種データはそれぞれのデータベースに格納され、Dr.Sum EAサーバで一元管理できることとなった。ユーザーは、1つのアプリケーションからデータの管理、加工が可能になる。これをユーザーに活用してもらわなければならない。同社は導入の際に次の3つのステップを踏むことで、ユーザーの利用を促進している。

 まずは、Web版ツール(Datalizer for Web)を全員に利用してもらうステップを第一段階とした。この段階で30以上の汎用帳票(現在は100以上に増加)も用意し、多くの帳票作成のニーズに応えられるようにした。部門の代表者を選んで1〜2時間の操作説明を行い、マニュアルを渡して従業員への説明を促した。するとほぼ全従業員が必要なデータ抽出ができるようになり、1カ月ほどで独自分析を行う社員も出てきたという。

 次のステップとして、独自の分析軸を作りたいパワーユーザーには、Excel版(Datalizer for Excel)を解放した。Excel版はデータベース構造をある程度理解して利用する必要があるが、操作は「Web版より圧倒的に早くてラク」なので、経営企画、経理、マーケティングスタッフはExcel版を好むという。

 また、最終的には従業員全員がExcel版を活用して独自に分析を行えるよう工夫をしている。「この先は毎日、毎週の会議のための資料を自動的に生成できるようにし、会議準備のための工数を軽減したいと考えています」と大場氏は話す。

図2 導入後のシステム利用環境

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図2 導入後のシステム利用環境

国産新BIツールで1900件のデータ処理が数秒へ

 新BIツール導入効果はすぐに表れた。手間と分析時間が大幅に軽減したことが第1の効果だ。まずデータのダウンロードやPCでの処理の手間がなくなり、1250店舗、月あたり1900万件のデータの粗利集計ならExcel版を使えばたった数秒で完了するようになった。

 また帳票はユーザー部門が自由に指標を選んで作成できるため、必要に応じた分析が可能になった。これが第2の効果だ。例えばレシートデータから顧客が会計した時点の時刻を抽出し、顧客の最初の注文時刻と突き合わせた帳票では、時間帯ごとに店舗の繁閑状況が正確に判断できる。

 あらかじめクロス集計した帳票を作っておけば、ユーザーのデータ加工の手間も省ける。また、同じ指標でデータを見たい場合でも、「グロス値を把握したい人」と「明細データを参照したい人」に分かれることがあるが、帳票の項目にリンクを設定し、ドリルダウンやドリルスルーで詳細を辿れるようにすることでそれぞれの要求を満たせる。

ユーザーからの評判も上々だ。システム部門を通さずに、手元のPCで速く、しかも技術スキルも要求されず、必要な分析ができるようになったという声が届いたという。一方のシステム部門へのデータ抽出依頼は月間数件程度に激減し、同部門の負荷減少にもつながった。

 ちなみに、導入1カ月ほどで安定稼働したのちはシステム的なエラーが発生しておらず、運用管理にかかる人的コストはほぼゼロだという。

図3 ユーザー作成による必要に応じた分析軸での帳票例

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図3 ユーザー作成による必要に応じた分析軸での帳票例
図4 ユーザー作成による必要に応じた分析軸での帳票例2

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図4 ユーザー作成による必要に応じた分析軸での帳票例2

 同社の「何よりもスピード」重視の社風と新BIツールは相性がよさそうだ。今後は同社を含むコロワイドグループ各社への浸透も考えているとのことである。

                               (執筆、土肥正弘)

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