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全員、出社義務なし、テレワークで各社員に合った働き方を実現するシックス・アパート(1/4 ページ)

「出社義務」をなくすと、社員はどんな働き方をするのか? 定期代支給まで撤廃したシックス・アパ―トの独特で先端的な働き方改革の現場をのぞいた。

» 2018年03月14日 10時00分 公開
[白谷輝英]

 働き方改革に向けた取り組みの中で、注目されている分野の1つが「テレワーク」だ。労働者側には通勤時間短縮などの利点が、企業側には、育児・介護中の優秀な人材を雇用できたり、オフィススペースを削減できたりする利点がある。

 一方、「社員を管理できるだろうか」「社内コミュニケーションが乏しくならないか」などの疑問を解消できず、導入になかなか踏み切れない企業もあるのではないだろうか。そこで今回は、テレワークにより「出社義務をなくした」という、奇抜な制度を導入したシックス・アパートの事例を紹介する。

東日本大震災後からテレワークを導入

 シックス・アパートは、HPの構築のためのCMSプラットフォーム「Movable Type(ムーバブル・タイプ)」の開発・販売を手掛ける企業だ。元は2001年に米サンフランシスコで創業した外資系企業だったが、2011年に帝人グループのインフォコムによって買収、2016年には、社員が企業の全株式を取得(EBO)して独立を果たした。シックス・アパートによると、Movable Typeをはじめとした同社の製品、サービスは国内で10万社の導入実績があり、顧客の90%以上が中小企業だという。

古賀 早氏 シックス・アパート 古賀 早氏

 同社は2016年から「SAWS(Six Apart Working Style)」と名付けた働き方改革を進めている。その中心となるのは、「いつ、どこで仕事をしてもよい」という勤務スタイルだ。代表取締役 CEOの古賀 早氏によれば、そうした考え方は2011年の東日本大震災直後から芽生えたという。

 「震災後、東京電力の管内では15%の節電要請がありました。そこで当社は『週に1日オフィスを閉めれば、20%の節電ができるのでは?』と考え、電力需要が大きくなる7〜9月に限り、水曜日をテレワークの日としたのです。VPNやセキュリティ対策環境を整えた上でスタートしたところ、大きなトラブルもなく制度は定着しました。また、社員からの評判も良かったため、翌年以降も制度を継続。さらに、他の日も必要に応じてテレワークできるようにしていきました」(古賀氏)

 そんな同社が「毎日テレワーク可能」に大きく舵を切ったのは、2016年夏のこと。EBOによって独立したのがきっかけだった。

 「社員が自社の株式を持ったことで、『個人の生活の質と業務生産性の向上を両立する働き方に変えたい』という意識が高まりました。そこで実施したのが、これまで週に一度実施していたテレワークの全面的導入でした。社員それぞれが効率の良い場所で働くために、業務システムのクラウド化や、セキュリティ対策関連のシステム刷新、毎月のテレワーク手当の支給を行いました。それらの原資はオフィス移転によって削減されたオフィス関連のコストです。それまでは約100坪のオフィスに入居していたのですが、約30坪の新オフィスに移転。賃料や光熱費などは従来と比べ、約3分の1になりました」(古賀氏)

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