第4回 ワークスタイル変革の実践、人事制度とファシリティ

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第4回 「ワークスタイル変革」実践編 資料で見る「人事制度」と「ファシリティ」の考え方

オフィス機器 2017/10/26

 近年、生産性向上に加えて、育児や介護と仕事の両立、女性活躍の推進を目的として、ワークスタイル変革を検討する企業が増えてきている。直近では長時間労働にまつわる諸問題も注目を集めており、企業のワークスタイル変革を後押ししている状況だ。    

 私たちネットワンシステムズでは、ワークスタイル変革の実現には「ICTツールの導入」だけでは不十分で、「人事制度の変革」と「オフィスファシリティの整備」の要素も必要だと考え、自社でさまざまな取り組みを進めている。    

 今回は、ネットワンシステムズが実践している「人事制度の変革」と「オフィスファシリティの整備」およびその導入効果について紹介する。    

 ネットワンシステムズがワークスタイル変革を実践するにあたり、最も重視した点は、「(1)社員の働き方や意識を『時間思考』から『成果志向』へと切り替えること」「(2)個々の社員が自律して働き方を工夫できる環境を整備することで、生産性を向上させる働き方を推進すること」の2点である。

「人事制度の変革」と「オフィスファシリティの整備」の効果

 具体的な取り組み方を紹介の前に、われわれが実施した「人事制度の変革」と「オフィスファシリティの整備」がもたらした成果を示しておこう。ここでは、分かりやすいものとして次の3つを具体的な数値と共に挙げておく。

生産性の向上(残業時間、過重労働者比率の低減)

 代表的な指標として、各企業で本年の大きなテーマになると思われる「残業時間(月平均法定時間外労働時間数)」と「過重労働者比率(残業時間が月40時間を超過した社員の比率)」の推移を示した(図1)。    

 なお、2016年度については4月〜9月までの数字を使用している(図1)。   

 核となる人事制度として、テレワーク制度およびフレックスタイム制度を導入した2011年度以降、双方の指標が減少していることが見て取れる。ネットワンシステムズでは、残業時間全般の削減に加えて、特定の社員に負荷が集中しないように、≪過重労働者比率の削減≫にも注力している。また、2013年度には本社オフィスを移転し、ファシリティを大幅に改善した。この影響も寄与しているものと思われる。

図1 残業時間数と過重労働者比率の年次推移

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図1 残業時間数と過重労働者比率の年次推移
(ネットワンシステムズ調べ、以下同様)

社員満足度への即効性

 テレワークおよびフレックス導入直後に実施した社内調査で顕著にあらわれたのは「社員満足度を高める即効性」である(図2)。定性的なコメントを見てみると「通勤時間を自分のやりたいことに充てられる」「移動時間を節約できる」「業務に集中できる」といった点が特に好評だった。

図2 社員満足度(2011年度実施アンケート結果)

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図2 社員満足度(2011年度実施アンケート結果)

ワークライフバランスの促進

 この調査では、世間一般の意見と比較するために、あるネットリサーチ会社が実施するワークライフバランスのアンケートと全く同じ設問形式としている(この調査では社会人世代の約1万2000人を調査対象としており、ネットワンシステムズ社員と同程度の世代構成と推察できる)。ワークライフバランスが「実現できている」「やや実現できている」というポジティブな回答の比率を見てみると、ネットリサーチでは約3割であるのに対し、弊社は約5割となり、年次推移でみても徐々に割合が高まっている。

図3 ワークライフバランス実現度の年次推移

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図3 ワークライフバランス実現度の年次推移

 このように、ひとことで「ワークスタイル変革」といっても、ICTツールだけではなく、人事制度とオフィスファシリティの改善を伴う複合的な改革によって実現する効果がある。では、われわれが具体的にどのような取り組みを進めていったのかを順に紹介していく。

人事制度の変革

 ネットワンシステムズでは、ワークスタイル変革推進の中核をになう施策として、テレワーク制度とフレックスタイム制度を導入している。導入の背景にはさまざまな要素があるが、ワークスタイル変革の支援につながるICTツールを導入したことで、働く時間や場所を柔軟に選ぶことができるようになったため、人事評価制度についても考え直す必要が出てきたことも、一因である。

図4 テレワーク制度とフレックス制度の概要

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図4 テレワーク制度とフレックス制度の概要

テレワーク制度導入のポイントと成果

 ネットワンシステムズが定めている「テレワーク」は、自宅で仕事をする「在宅勤務」だけではなく、自宅やオフィス以外の場所(顧客先や移動先)で仕事をする「リモートワーク」の双方を組み合わせた働き方だ。いわゆる「どこでもオフィス」である。    

 この制度の特徴は、制度の利用対象者や利用回数に制限を加えていない点だ。社員一人一人の自律的な工夫や有効活用を促し、制度や会社としての可能性を広げていくためである。そのため、利用条件は「自己管理が徹底でき、コミットした成果を創出できる人」と定義した。つまり、アウトプットをコミットすること以外の制限は加えておらず、ふさわしい仕事さえあれば新入社員でも利用が可能だ。これを判断するのは職場のマネジャーであり、互いの信頼関係が強く求められる。    

 さらに東日本大震災を機に、「生活事情、交通事情によって出社が難しい人」といった条件も追加し、事業継続対策としても機能するようにした。これによって、台風や大雪などの悪天候や、公共交通機関が遅延したりマヒしたりすることがあっても、全社員が効率的に業務を遂行できるようになった。

フレックスタイム制度導入のポイントと成果

 フレックスタイム制度は、「1カ月の総労働時間の枠の中で自律的に計画を立てて時間効率を上げる工夫をする(労働時間を削減する)」という趣旨で、時間外手当の対象となる非管理職層を対象に導入した。当社の場合は、出社を義務付けるコアタイムを10時〜15時、始業および終業時刻を選べるフレキシブルタイムを7時〜22時としている。    

 ただし、24時間365日体制で顧客のICT基盤の保守業務を預かる部門や、育児・介護などの理由によって時間を制限して働く短時間勤務社員に対しては適用除外としている。    

 実は、当社がフレックスタイム制度を導入した2011年当時は、他の企業では逆にフレックスタイム制度が業務効率を下げてしまうという判断をして、制度を廃止する企業が増えていた時期だったと記憶している。しかし、当社社員には1カ月の中の繁忙期や閑散期に応じて働く時間を工夫するという前向きな取り組みを進めて欲しいという思いと、ネットワンシステムズの社風にも合っているという判断で導入を進めていった。

なぜ最初から全社員向けの制度にしたのか

 人事部としては当初、利用回数や対象者などの条件を絞り、小規模で制度をスタートすることを考えていた。しかし、経営層との議論を踏まえて、この制限を取り払った。その理由は、≪社員が工夫できる余地を最大限に残したかった≫からだ。性悪説を取り、デメリットを完全に排除した上で導入するのではなくて、≪性善説でまず導入して、問題があったら対応すればいい≫という考えだ。実際に始めると分かるのだが、この方法は非常にメリットが多かった。もちろん問題も多少生じたが、導入から約5年たった今も、当初の方針のまま、性善説で運用できている。    

 全社員を対象にしたことのメリットもある。育児中の社員からは、「自分だけが特別扱いされているわけではないから、後ろめたさを感じなくて済む」という声が上がっている。また、育児中の社員が早いタイミングで復職できたり、時短勤務ではなくフルタイム勤務で働けたりといったメリットも生まれている。    

 また、「定年までネットワンシステムズで働きたい」といった勤続意識の向上にも効果があった。若手社員ほど「仕事をする上で最も重視するものは何か?」という問いに対して「仕事とプライベートのバランス」と答える比率が高くなっており、ここにプラスに作用したようだ。若手社員の定着率増加は、今後の重要な課題になるだろう。

意識向上への取り組み

 人事制度を活用してもらうには、社内への適切かつ継続した周知が欠かせない。テレワークについては、2011年度の本格導入の前に、2010年に一部社員を対象にしたパイロット導入を実施した。その中でテレワーク制度の活用ガイドブックを策定し、導入時に不安の大きかった3要素(評価、コミュニケーション、マネジメント)について、運用ガイドラインを定めるとともに、テレワーク制度の導入に関する社内説明会を実施した。

 導入後もマネジャーとの意見交換会を継続して実施するとともに、毎年、全社員にワークスタイルに関するアンケート調査を実施し、その結果を社内イントラで報告している。また、管理職研修のメニューに「ワークスタイルマネジメント(テレワークの有効活用)」を追加し、ワークショップ形式による「有効事例の横展開」や「メンバー指導方法の共有」を図っている。

図5 ガイドラインの例

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図5 ガイドラインの例

オフィスファシリティの整備

 ワークスタイル変革を実現するためには、オフィスファシリティの整備も必要になる。従来型の1人1席の固定席型のオフィスでは、「いつでも・どこでも」を実現するさまざまなICTツールを導入しても、最大限に効果を引き出すことができない。つまり、ICTとオフィスは密接さを増しているのである。   

 ネットワンシステムズでは、社員へのヒアリングやワークショップから「ICTの利活用を通して場所にとらわれずに働ける環境を提供する」という具体的なゴールを導きだし、無線LAN環境の整備とフリーアドレスを導入して場所を選ばないワークスペースを実現することで、コミュニケーションとコラボレーションを加速させた。

図6 ネットワンシステムズのオフィス

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図6 ネットワンシステムズのオフィス

大きな契機となった2013年5月の本社オフィス移転

 ネットワンシステムズでは2013年5月の本社移転と同時に、全面的にフリーアドレス制を導入した。社員はノートPC(BYOD)やタブレットデバイスから、オフィス全域の無線LANを経由して、働きたい場所で仮想デスクトップを利用する。また、携帯電話で内線と外線双方を着信する仕組みも採用した。これらのICTツールによって、固定席・固定電話を廃止することができた。    

 さらに、ビデオ会議端末を全会議室に設置するとともに、会議室以外のフリーアドレススペースにも多くのビデオ会議端末を設置することで、予約することなく柔軟に利用が可能だ。なお、細かな話だが、プリントアウトが必要な場合にも個々のプリンタを意識することなく、最寄りのプリンタにIDカードをかざしてログインすれば全拠点どこでも印刷できる。    
 このフリーアドレス化によって、用意する座席数を従業員数の約6割まで抑制し、スペース効率の向上とともに賃貸料の削減にもつなげている。また、従来は年度単位の組織変更に応じて、座席の割り振りや人員の物理的な移動に多くの時間を割いていたが、この労力もほとんど必要なくなった。

仕事に応じてワークスペースを選択

 フリーアドレスの最大のメリットは、仕事に応じてワークスペースを選択できる点にある。ネットワンシステムズでは、「5-Style Office」というコンセプトで、(1)思考する、(2)形にする、(3)振り返る、(4)見直す、(5)集約するという五つの働き方に大別してオフィス環境を整備した。社員は随時、仕事に最も適した席を使い分けながら成果を出している。

図7 5-Style Officeの考え方とオフィスファシリティ

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図7 5-Style Officeの考え方とオフィスファシリティ

 ここまで、人事制度とオフィスファシリティの取り組みによるワークスタイル変革について紹介してきた。これらによってネットワンシステムズが目指しているのは、(1)工夫の積み重ねによる個人と会社の生産性向上、(2)それにより創出された時間を私生活の充実や社員満足度の向上に転化、(3)最終的にはお客さまのさらなる満足につなげていく、そんな好循環を実現させていくことだ。

下田 英樹(しもだ・ひでき)

ネットワンシステムズ 経営企画本部 人事部長 長年、人事政策全般の企画・設計と運用・定着に携わる。部門責任者となってからもワークスタイル変革に関わる人財戦略の加速に継続して取り組む。

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