JALが実践したデータドリブンなチームの作り方

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SNSのブラックボックスをどう開く?
JALが実践したデータドリブンなチームの作り方

データ分析 2017/07/27

 日本航空(JAL)のWebコミュニケーショングループでは、顧客エンゲージメント向上を目指し、SNSやソーシャルリスニングの分析にBIツールを活用している。導入の経緯や選定理由、活用方法をグループ長の山名氏に聞いた。

「顧客エンゲージメント」のためのツールは何十個ある?

 「挑戦、そして成長へ」をテーマに、2020年までに「フルサービスキャリア(FSC)事業」を磨き上げ、事業領域の拡大を目指すJALグループ。その取り組みの詳細は、JALコーポレートサイトやSNSの公式アカウントで幅広く紹介されている。

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(JALの公式Webサイトより)

 例えば、企業公式サイトである「www.jal.com(http://www.jal.com/ja/)」では、中期経営計画やJALが提供する商品・サービス、社員が持つべき意識や価値観、考え方である「JALフィロソフィ」を紹介するページや、安全運航を支えるスタッフへのインタビュー、CSRの取り組みなどを詳しく知ることができる。
  
 このような自社の商品やサービスに対する情報を広く発信し、顧客の声に耳を傾けることは、いまや企業広報やブランド力向上に欠かせない取り組みだ。JALグループも公式Webサイトの他、さまざまなSNSを駆使して顧客との積極的なコミュニケーションを図っている。

 この活動をリードしているのが、日本航空 コミュニケーション本部コーポレートブランド推進部のWebコミュニケーショングループだ。グループ長の山名敏雄氏は、同グループのミッションを「公式サイトへのアクセスやSNSの反響、第三者機関の評価などを分析しながら、お客さまとのエンゲージメントを作り上げていくこと」と話す。

 当然だが、顧客とのエンゲージメント構築やソーシャルリスニングは、PVやリツイート数、「いいね」「Like」の数を評価するだけでは実現しない。

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(日本航空 コミュニケーション本部コーポレートブランド推進部のWebコミュニケーショングループ グループ長の山名敏雄氏)

 情報発信の方法やオーディエンスの活動状況の分析など、さまざまな仮説を基に施策を検証し、その結果を次の施策に生かすような日々の改善活動も、成果を高めるには必要な作業だ。WebサイトだけでなくSNSの取り組みも対象となるため、見るべきチャネルは膨大になる。そして、多くの場合、サービスごとに専用の分析ツールを閲覧する必要がある。サービスごとに固有の指標があったり、分析の粒度が異なったりするため、全体像の把握は非常に困難だ。    

 「必要な機能がなかったり、データを組み合わせるのに手間がかかったりと、既存のツールだけでは思ったような分析ができないことが悩みだった」と山名氏は明かす。

共通指標で評価できる環境が必要だった

 課題はデータの取り扱いだった。SNSはサービスが変われば取得するための指標や取得できるデータも変わる。例えば、Aという施策とBという施策を実行したときは、FacebookやInstagramとTwitterとでは異なる反応が起こることがあるため、それらを評価する指標やデータが変わってくる。

InstagramとTwitterでの情報発信の例

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 InstagramとTwitterでの情報発信の例
画像左から、Instagramの公式アカウント、Twitterの公式アカウント、Twitterの運行情報発信用アカウント。複数のチャネルで目的ごとに情報を発信している
(SNSアカウントの画面を編集部で加工)

 「まず、A、Bそれぞれの施策について、異なる機能やサービスを持つSNSを横断してどう違うのかを可視化する作業に難しさがある。また、それらを施策単位でまとめて定量的に比較するのも難しい。共通の指標やスコアを作るには、手動でのデータ収集や加工が必要だった」と山名氏は振り返る。    

 従来は、詳細な分析が必要な場合は、SNSやソーシャルリスニングツールなどからデータをダウンロードして、その都度Excelで加工してから分析にかけていたという。分析に時間と手間がかかることもあり、分析よりも都度の投稿作業に関心が向いてしまうことも弊害になっていたという。    

 「投稿することに集中して分析を怠ると、次にどんな投稿をすれば高い効果を期待できるかといった判断がつかない。投稿への反応を簡単に分かるようにしたり、必要な場合は自分たちで作り込みができたりする環境の整備が必須だと感じた」(山名氏)    

 そこで目をつけたのが、SNSやソーシャルリスニングなどのデータなどを統合して分析できるツールだ。2016年11月頃から実際に利用しているユーザーに話を聞いたり、セミナーに参加したりして情報を収集、まずは7製品ほどに絞り込んで評価を始めた。    

 選定にあたって重視したのは、クラウド(SaaS)型で簡単に利用できること、必要な場合は独自にデータ加工ができること、ツールベンダーのコンサルタントがSNSのAPIに対する知見を持っており、かつ独自の作り込みをサポートしてもらえる体制があること、対象データの種類や件数が増えてもコストがかさまないこと、などだ。    

 選定の過程で2候補にまで絞り、PoCを実施。その結果を受けて採用されたのが「Domo」だった。

BIツールを選ぶときのポイント:山名氏の場合

 山名氏は、Domoを採用した理由について「概念実証(Proof of Concept:PoC)の段階で懸念していた点を全てクリアできると確認できたことが大きなポイントだった」とし、こう話す。    

 「懸念していたのは『どこまで必要なカスタマイズを実現できるか』というところ。具体的には、GUIで自由に分析グラフを作成したり、必要に応じてソート条件やフィルタリングができるだけでなく、従来Excelを使って行っていたようなやや複雑なデータ加工をクラウドBIツールで実現できるか、データ取得に必要なAPIコネクタは装備されているか、また、そのためのコンサルティングやサポートを提供してくれるか、だ。Domoはこれらの懸念を全てクリアしたので、導入の決定は速かった」(山名氏)

DOMOの特徴

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DOMOの特徴
多様なサービスと接続でき、データ同士を掛け合わせる処理もGUI操作で完了する
(資料提供:DOMO)

 Domoの特徴の1つとして、「カード」と呼ばれる特定の指標に基づいた分析を簡単にダッシュボード上にまとめて表示できる点が挙げられる。例えば、SNSでの反応を数値化してグラフを作成し、カード上に目標値やしきい値を示すバーと共に表示させる。すると、記事を公開したあと、バーを超えているかどうかを見るだけで「記事単体でKPIを達成したか」かどうかが一目瞭然になる。

 また、指標の平均値を参照して、当月の進捗(しんちょく)達成率などもひと目で把握できるようになる。視覚情報として課題を把握できれば「進捗(しんちょく)が思わしくない分野に、高い反響が期待できる記事を投稿して結果を評価する」といった分析から施策までのPDCAが回しやすくなるわけだ。

DOMOの可視化例

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DOMOの可視化例
図は営業業績を評価する場合のサンプル画面。指標ごとに色分けや時系列での比較も可能だ。このグラフやリスト1つずつが「カード」である
(資料提供:DOMO)

 「こうした分析では、定量的に比較するためにデータを加工する作業は必須と言っても過言ではない。各SNSからAPIなどを介してデータを集め、Domo上のデータベース機能を使って、データを加工、独自の指標で一貫した評価ができるようにしている」    

 複数のデータソースを組み合わせるだけでなく、それぞれのデータの重複や正規化といった前処理もDomo上で行い、そのまま分析にかけたで、結果をカードで表示する。一度こうしたフローを作成しておけば、それをコピーして次の新しい分析を作ることも簡単にできることもDomoの魅力だという。    

 「ベースとなる処理はDomoのエンジニアが作成、それを基にわれわれが自由に処理を追加したり、カードを作成したりしている」と山名氏は使い勝手を評価する。

ついにブラックボックスが開く〜一覧性と共通指標を獲得したチーム〜

 山名氏らは、2017年4月から約2カ月間をかけてDomoのエンジニアとともに主要機能の開発に取り組んだ。一通りの機能がそろった6月からは実際の運用を開始している。山名氏は、導入後の成果について「チームメンバー全員がPDCAサイクルをよりスピーディに回せる環境が整った」と話す。    

 「ダッシュボードを開くと、知りたいことがすぐに分かる。これまではサービスごとのデータ分析ツールがあるため個別のデータを取得するのに各ツール画面を開いたり、別のツールを使って分析したりしていたが、そうした手間が全くなくなったのが非常によかった。また、ダッシュボードに表示するカードも必要なときに必要なものをすぐに追加できる。分析で分かったことを次の投稿に生かすという流れがとてもスムーズ」    

 チーム内での反応も上々だ。特に、さまざまなSNSのデータを統合したことで、これまで見えてなかった部分が見えてきたことが大きいという。「データを組み合わせることで、今までのブラックボックスがオープンになり、『ああ、これはこういうことだったんだ』という気付きが生まれつつある」と山名氏。    

 山名氏は「こうしたツールには完成形がない。使い始めてからもどんどんと改良を続けている状態」と話す。山名氏のダッシュポードには、日々使うものから、ごくまれにしか使わないものなど含めて、これまで100を超えるカードが並んだという。    

 「今月の目標に対する達成度を%で表示したカードや、記事ごとの影響力の平均値、日別・月別のランキング、実施した施策ごとのランキングなど、使っていくうちにどんどんカードが増えていく傾向がある。どのカードをどう並べれば効率がよいのか、今はその精査を始めている」(山名氏)        

 オンラインマーケティング活動との親和性が高いのは事実だが、Domo自体はマーケティング支援ツールではなく、データを加工してつなぎ、可視化、共有することに特化したBIツール。データの取り込みと加工が容易な点は山名氏が評価したとおりだ。これを、例えば営業の業績レポートやパイプライン分析、時系列での市場需要動向チェックといった目的で採用することも十分に考えられる。   

 山名氏らの顧客エンゲージメント向上施策は、さまざまなデータを掛け併せて評価したいと考える他部門からも注目を集める。山名氏の元には他部署からの問い合わせやデモの依頼が増えているという。

BIツールはあくまでも「アイデアを具体化する箱」

 今後の取り組みについては、まずデータソースの拡大を挙げる。まずはスモールスタートという考えから、現在、分析対象としているデータソースは10件程度。公式サイトへのアクセス数やAPIで取得しているSNSのデータ、ソーシャルリスニングツールで収集するJALに関する投稿データなどが中心だ。    

 「Webの反応はメディア露出に連動するケースが多い。今はWebメディアに関するデータが中心なので、今後はWeb以外のデータソースも分析の対象に加えたい。例えば、新聞や雑誌といった紙媒体をクリッピングするサービスなどと連携することも考えられる。今までは見えなかったもの同士の相関関係を分析し、知見を得ていければと考えている」(山名氏)    

 ここで得られた知見を、新たなKPI指標としたり、あるいは今までにない分析軸でのカードを用意したりといった活動につなげ、より高い成果を出していきたいと話す。      

 こうした施策を計画する中で山名氏は、BIツールの扱い方について、こんなアドバイスをくれた。  

 「こうしたツールは、アイデアを具体化する箱でしかない。それゆえに『取りあえずツールを入れてみて」という発想だけではなかなか前に進まない。まず完成形をイメージし、目の前の課題をどう解決していくか、そのためにはどのようなカードがあればよいのか、またそのカードを作成するためにはどのようなデータがあれば良いのか、できるだけけ具体的なイメージを描かないと具現化するのは難しいだろう」    

 顧客エンゲージメントやブランド向上に向けたJALのWebコミュニケーションの取り組みもはじまったばかり。これからどんな成果を挙げるのか注目していきたい。

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