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クラウド型ERP導入に必要な準備、期間、作業、定番シナリオIT導入完全ガイド(1/3 ページ)

クラウド型ERP、使うにはどんな準備が必要か。サービス提供者に頼める作業はどんなものがあるか。部分導入から全体導入まで定番シナリオをまとめた。

» 2017年06月26日 10時00分 公開
[西山 毅レッドオウル]

 これまで人事給与・会計パッケージ製品や、Excelを使っていた中堅中小企業が、制度変更への対応や事業拡大などをきっかけに、低コスト、短期間でスモールスタートできるクラウド型ERPに目を向け始めている。当初は1モジュールだけの利用で始めた企業が、日々使い続けていく中で、他モジュールへも活用の幅を広げていくというケースもあるようだ。

 ERPは、全社業務の統合や業務の標準化、ガバナンス強化といったメリットを提供してくれる一方で、導入ハードルが高いというイメージも付きまとう。ここでは「クラウド型ERP」をフル活用するための導入ステップについて見ていくことにする。

クラウド型ERPの導入ステップ

 クラウド型ERPの導入を検討する企業の動機としては、(1)利用中の個別業務パッケージから総合的なERPに移行したい、(2)迅速に、かつコストをかけずに新たな制度改正に対応したい、といったものが挙げられる。

 多くの場合、既に人事給与や会計などの個別業務パッケージを使っていたり、あるいはExcelシートを駆使して業務を遂行していたりするものの、使い勝手の悪さに課題を抱えており、ライセンスの切り替えや事業拡大をきっかけに新たな製品の導入を検討することになる。

「個別業務パッケージからクラウド型ERPへ」が定番コース

 まず、移行シナリオとして最も一般的なのが、人事給与や会計など個別の業務パッケージ、もしくはExcel利用から、まずはクラウド型ERPの当該機能モジュールに移行するケースだ。

 あるクラウド型ERPサービスプロバイダーの話では、特に税制などのルール変更への対応が煩雑になりやすい人事給与システムで、まずクラウド化を進めたいと考える企業が多いという。パッケージで購入したソフトウェアやExcelなどの手集計の場合は、制度変更のたびに改修やアップデートが必要となり、手間も時間も掛かりがちだが、クラウド型のERPを利用しておけば、入力データはそのまま生かしつつも最新の制度に対応した処理を自動で適用できる。

 この場合の移行ステップは通常、以下のような手順で行う。ここでは最もニーズが多い人事給与の場合を例に挙げるが、会計などでも同じと考えて良いだろう。

  1. 企業側が人事データのバックアップ(=テスト用データ)を取って、サービスプロバイダーに渡す
  2. テスト用データを受け取ったサービスプロバイダーが、データをクラウド環境に展開する
  3. ユーザー企業は用意されたクラウド上で、サービスの機能や使い勝手を確認する

 クラウド型ERPの利用までの流れとして、特にハードルが高い項目はないが、ただ(1)におけるデータのバックアップを取得する作業については、通常は取引のあるシステムインテグレーターに依頼して代行してもらうことが一般的だ。また、サービスプロバイダーに直接依頼してデータを取得してもらうこともできる。

 ちなみにERPに限らずクラウドサービスでは、上記(1)の前段として、2週間〜1カ月程度の無料体験(評価)期間を提供しているケースが多い。実際に自社データを切り出す前に、まずは無料体験を試してみて、自社に合うかどうかを感覚的につかんでから、より本番に近い環境で試用を行う、というのがスムーズな導入につながる。

図1 クラウド型ERPで提供される業務モジュールの機能例(人事給与) 図1 クラウド型ERPで提供される業務モジュールの機能例(人事給与)(出典:富士通マーケティング)
図2 クラウド型ERPで提供される業務モジュールの機能例(会計) 図2 クラウド型ERPで提供される業務モジュールの機能例(会計)(出典:富士通マーケティング)
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