GEの「デジタル化」がすぐに立ち上がる理由

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

GEが目指す「生産現場のデジタル化」と「リアルタイム情報に基づく経営者」の増やし方

2017/01/17

 交通や輸送、エネルギー分野や精密医療機器など多様な製品を市場に展開する米ゼネラル・エレクトリック(GE)では「デジタル・インダストリアル・カンパニー」をスローガンに掲げ、「ブリリアント・ファクトリー」プロジェクトなど、企業のデジタル化を推進している。ITソリューションのユーザーと見られてきた製造業の代表的な企業の1社であるGEが、ソフトウェア領域に注力し、企業のデジタル化を推進する側にまわった意図はどこにあるのだろうか? また、ブリリアント・ファクトリーは現場に定着可能なアプローチなのだろうか? GE Digital(デジタル事業部) 沢近房雄氏を取材した。

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GE Digital
Regional Manager
沢近 房雄氏

自社工場の近代化を目指す「ブリリアント・ファクトリー」プロジェクト

Question

GEというと製造業として、モノの価値を提供する企業というイメージがありましたが、数年前よりソフトウェア領域に注力されていると聞いています。モノではなくソフトウェアやその成果物による価値づくりに方針を転換されたのでしょうか? その背景を伺えますか?

Answer

 われわれは米GEのジェフ・イメルト会長が打ち出した大方針に沿って動いています。その大方針の中核を担うものが、2012年に打ち出した「インダストリアル・インターネット」というコンセプトです。「これまでお客さまに提供してきたハードウェアベースのソリューションにデジタル技術で付加価値をつけよう」という考えです。例えば、ジェット機のエンジンから大量のデータを取得し、分析することで最適な保守を提供するソリューションや、そこから派生してパイロットに最適な航路を提案するシステムなどは、デジタル技術があればこそ実現する新たな付加価値といえます。デジタル化による付加価値の創造という全社的な活動は、私の所属するデジタル事業部が中心となって推進しており、社内のさまざまな部署に、ベースとなるプラットフォームやアプリケーションを提供しています。

 一方で、われわれ自身の業務を「インダストリアル・インターネット」の観点で振り返ると、自分たちの工場や社内プロセスでも「デジタル技術で改善する余地が大きい」という事実がありました。そこで、私たちは自社内で「ブリリアント・ファクトリー」プロジェクトを発足させました。このプロジェクトでは、世界に450以上ある自社工場を、3Dプリンタや最新のロボティクス技術など、さまざまな技術を適用して効率化する取り組みを進めているところです。

「Get Connected」「Get Insights」「Get Optimized」、3つの導入ステップとデジタル化

Question

社内向けに提供しているプラットフォームやアプリケーションとは具体的にどういったものなのでしょうか?

Answer

 ここでいうプラットフォームとは、クラウドサービスを活用した「PREDIX」と呼ばれるインダストリアルIoTのためのプラットフォームです。また、アプリケーションとは「ブリリアント・マニュファクチャリング・スイート」および「アセット・パフォーマンス・マネージメント」と呼ばれるものです。

 「ブリリアント・マニュファクチャリング・スイート」は、3つのモジュールで構成されているのですが、段階的な導入が可能です。最初のステップとしては工場の見える化を実現する(1)「Get Connected」があります。そして次に、クオリティーアシュアランス(QA、品質保証)やトラッキング(トレーサビリティ)など、いわゆるMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の機能を実現する(2)「Get Insights」があります。



 これを導入することで、例えばクレームがあったときに「どのサプライヤーから提供されたのどのロットの部品でトラブルが多く発生しているのか」をすぐに特定できるようになります。そしてロットから製品のシリアル番号を導き出し、影響が出る可能性のあるお客さまに、事前にトラブルが発生する可能性が高いことをお伝えするような対応が可能になります。全ての部品や生産工程をトラッキングできるため、万が一、リコールが必要な場合でも速やかに対応できるようになります。  3つ目が機械学習やAIと連動し、動的に工程の組み替えまでを行う(3)「Get Optimized」です。「あるマシンだけ負荷が高いと、保守時期が早まるため別のマシンに作業を振り分けて負荷を均等化しよう」「ある装置が故障した。たまっていた仕掛品は、代わりに既存の異なる違う装置を組み合わせることで生産できるのでそちらに回そう」など生産計画の調整まで自動で行います。そして、納期遅延の情報を基幹システム経由で営業に通知するなど、オペレーションを最適化・効率化していきます。トランザクション系の「ブリリアント・マニュファクチャリング・スイート」が生産設備を稼働させているところを、非トランザクション系の「アセット・パフォーマンス・マネージメント」が「横から監視」することで、予兆保全など、さらに高度なデータ分析に基づく効率化が可能となるのです。

 これが「ブリリアント・ファクトリー」で目指す姿です。


ブリリアント・ファクトリーを構成する3つのモジュールとブリリアント・マニュファクチャリング・ソフトウェア スイート(資料提供:GEジャパン)

紙とExcelが残る理由はデータの分断にあり――「工場の見える化」推進の障壁と打開策

Question

確かにこういったことができれば理想ですが、多くの企業では難しいように思います。実現できるものなのでしょうか?

Answer

 規模の大小にかかわらず、Excelや紙などの手作業で対応しているところが多いのが現状です。私どもの工場でもそうでした。例えば、「工場に入った注文を工程に展開し、部材を調達し、ラインに落とし込む」といった一連の作業が紙で動いていたりします。この状況では、工場に足を運び、作業中の現物と紙の伝票を確認しなければ「どこまで工程が進んでいるのか」「どこに仕掛かり品があるのか」が分からない。ですから、まずは「工場の見える化」を推進することが重要です。

Question

「見える化」が実現していない原因をどこに見いだしていますか?

Answer

 ERPやSCMなどの基幹系システムとモノを作っている現場の装置やその管理システムの間には大きな隔たりがある、ということは以前より指摘されている問題です。それを解決する方法として15年ほど前からMESやSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition:監視制御システム)の必要性が語られてきました。基幹系と現場をできるだけリアルタイム性を損なわないように結び付けていく仕組みですね。

 具体的には各種装置がミリ秒単位のオペレーションでモノを作り、それを秒単位でSCADAが監視します。さらにそれを分単位でMESが管理します。最終的にこれを、1時間単位で基幹システムが「見える化」する、というような仕組みです。しかし、この理想的な仕組みを実現するには大きな障壁がありました。MESパッケージソフトという概念ができる約15年前までは、基幹パッケージのオプション機能で代用するか、スクラッチ開発するしか選択肢がなかったのです。また、MESパッケージが提供されるようになってからも、大掛かりなシステム実装が必要なため、予算化し難く、導入期間も半年〜一年以上もかかる状態でした。これでは「見える化」は進みません。

 こういった状況を解消するにはMESの仕組みを導入しやすくするしかありません。ですから、私どもは自社でシンプルかつコンパクトなモジュール型MES「ブリリアント・マニュファクチャリング・スイート」を開発したのです。

 特に「Get Connected」の見える化モジュールはシンプルな構成で、現場に設置したセットアップボックスが各種装置と通信してデータを集め、設定によりクラウド上のテンプレートに割り当てるだけで監視用の画面が自動で完成します。つまり、新規の設備投資を最小限にして、既存の環境を生かしながら導入できる仕組みになっているわけです。

 このパッケージは2016年2月から外販もスタートしています。月額課金型のサブスクリプションモデルで提供しているため、ライセンス買い取りに比べて初期導入コストを最小限に抑えられます。また、スケーラブルな導入が可能です。例えば1ラインだけお試しで導入してみたい、マシン5台分から始めて段階的に適用範囲を広げたい、といったご要望にも柔軟に応えられるようになっています。なにより2〜6週間という「見える化」短期導入を実現したのは、モジュール化に依る大きな効果です。

1日→15分。「工場の見える化」で得られるメリット、日本GE日野工場の場合

Question

MES導入のハードルが下がったことは理解できましたが、具体的に日本国内で「ブリリアント・マニュファクチャリング・スイート」を使って「工場の見える化」を実現した例はあるのでしょうか?

Answer

 多くの工場では前日の実績をExcelで加工し、次の日掲示板に貼り出し、班長がそれを眺めながら納期や目標精算数を勘案して当日の作業指示を出すような日程管理をしていることと思います。GEヘルスケア・ジャパン工場(日野市)でも2015年までは同様の管理をしていたのです。

 その日野工場で「ブリリアント・マニュファクチャリング・スイート」が提供する「Plant Pulse Optimizer」ダッシュボードを導入したのは2016年4月のことです。

 これをきっかけに、前日の数値しか把握できなかった状況から、15分ごとにリアルタイムな情報が更新されるようになりました。つまり分単位でPDCAを回せるようになったのです。もちろん、ラインが停止してしまうようなトラブルや不良品の発生など、財務インパクトの大きな問題についても、いち早く把握できるようになります。

 さらに、GEヘルスケア・ジャパンの事例ではありませんが、例えばNC工作機械などは製造番号にひも付いた、どの部品を何個加工するかという情報、加工がいつ始まり、いつ終わったかという情報を内部に持っています。また、「100個作ったら90個は良品で、10個はスクラップだった」というような情報も併せて、「Get Connected」のステップで見える化することで、「せっかく高い投資をしたのにこの装置はほとんど使われていない」「装置Aで作るとうまくできるのに、装置Bで作る不良品の発生率が高い」といったことがつぶさに分かるようになります。しかも、サンプルによる評価ではなく、稼働中の生データから得られる、より精度の高い情報です。

 このように、詳細な情報がリアルタイムで見えるようになることで、遠隔にいても工場が抱えている潜在的な課題を明らかにしやすくなるのです。


CNC装置の状態をリアルタイムで確認するダッシュボードの例(資料提供:GEジャパン)

日本から「現場が分からない経営者」と「昨日までのことしか見えない現場」をなくす

Question

見える化だけでも一定の効果が得られるというのは納得するものがありますが、実際そういったニーズも多いのでしょうか?

Answer

 「ブリリアント・マニュファクチャリング・スイート」を社外のお客さまに提案するときに、「現場で何が起きているのか分からない」「報告書を見ても工場ごと、工程ごとにフォーマットが違い、それぞれが自分たちの業績がよく見えるよう都合のよいKPIを使っているので評価できない」といった声をよく聞きます。工場によって違うMESを導入しているので指標がバラバラで比較できないというケースもありました。なぜこういった状況になっているかというと、これまでは工場ごとの決裁で物事が決められることがほとんどだったのです。工場ごとに最適化している状態ですから、必ずしも全体最適とは言い切れない状況がありました。

 経営や管理部門からすると、指標も情報もばらばらなので評価しようがなく、潜在的な無駄や平準化できていない工程が多そうだ、とは推測できるものの、具体的な対策を検討することすら難しかったのです。

 こうした状況が続いたことで、現場で何が起こっているかを経営層が評価できなかったわけです。企業が全体として強い体力づくりを目指すならば、これからは企業レベルで共通のKPIを作って見ていく必要があります。経営者、管理職と同じ指標で現場を図り、改善につなげたいと考えている人は増えていると思います。

 実は既に私どものアプリケーションを2017年度の予算で導入したい、というお話を既にいくつかいただいています。

Question

現場が大きく変わることに対して、反対の声は?

Answer

 導入と定着において最も重要なことは「経営者や現場の意識を変えられるか」という点につきます。これまで“なんとなく”で対応してきたことなどが、よいことも悪いこともはっきりと「見える化」されてしまうため、抵抗感を持つ組織も少なくありません。しかし私どもGEにおいては、悪いところも隠さず、互いに見つめあい、どうすればより成長できるのか相談しながら決めていく企業文化や手法をもっており、それが会社を成長させるベースとなっています。

つい悪いところにフタをしたくなりますが、それを続けていくともう立ち行かないということに経営者の多くは気付き始めているでしょう。

 従来、経営者は通常の事業運営は現場に任せ、何かあった場合には情報が入るはず、というスタンスで十分でした。しかし、現場がどのように動いているかは、そのまま企業の業績に直結する問題です。例えば財務上大きなインパクトがある問題が発生した場合、経営層はその影響を最小限に抑えるために、一刻も早く現場に、状況に即した支持を下す必要があります。これには、現場も経営層も同じ指標で同じものを見ていく必要があるでしょう。

 モノづくり現場のシステム化は、現場を変えるきっかけの一つとなるはず。今、意識をどこまで変えられるかが、企業の今後を分ける境界線になるのではないでしょうか。


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取材協力

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ネットワーク化され、レスポンスと予知能力に優れた、ソフトウェア融合型の産業機器とソリューションによって各産業の新たな時代を切り拓く「デジタル・インダストリアル・カンパニー」GEの日本法人。本稿で紹介した「インダストリアル・インターネット」「ブリリアント・ファクトリー」をはじめ、企業のデジタル化を推進、新たな価値創造を支援する。


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