2017年日本のサービス開発市場はどう動く?

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

2017年、日本のサービス開発市場はどう動く?
KDDIウェブコミュニケーションズのトップに聞いた

2017/01/05

 長年展開してきたレンタルサーバ事業に加え、PBXの機能をクラウド上で提供し、API経由で呼び出して通話やビデオ会議といった機能を利用できる「Twilio」や無料のWebサイト作成サービス「Jimdo」など、海外で話題を集めるサービスを日本で展開しているKDDIウェブコミュニケーションズ。同社は2016年に「会社に行きたくなるオフィス」をテーマに新オフィスに移転したが、その背後には、スピーディに新たな事業をリリースしたいという意図があるという。同社代表取締役社長の山崎雅人氏自ら、その意図を語った。

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KDDI ウェブコミュニケーションズ

KDDI ウェブコミュニケーションズ
代表取締役社長
山崎 雅人氏

「働く環境が変われば人の行動も変わる」、オフィス移転の効果

Question

2016年にはオフィスを移転し、従業員の働き方改革にも取り組みましたが、その狙いは何ですか?

Answer

 今はちょうど踊り場、事業の転換期にあると考えています。KDDIウェブコミュニケーションズは創業30周年で、実はIT業界では超老舗です。主力のレンタルサーバやホスティング事業も20年を迎え、順調に事業を継続していますが、市場もどんどん変化していると肌で感じています。例えば、なかなかブレイクしなかったクラウドがここ数年で市場に急激に受け入れられたように、変化のスピードはめまぐるしく、読み切れない。そんな中、この先何をしていかなければならないかを、この数年考えてきました。

 強みの1つはTwilioやJimdoのような海外のサービスをローカライズし、日本で展開していることですが、やはり海外発のサービスである分、日本のお客さまとちょっと要求されることが違うんです。となると、自分たちでお客さまのニーズに合うものづくりをし、場合によっては海外に出ていこう、という考えも必要となります。

 この目的を実現し、ものづくりを行って収益を生み続ける会社にするには、働き方も変えていかなくてはならない。会社をそういう体質に変えていくには、仕事の仕方やコミュニケーションの仕方も変えていかなくてはならない、という思いが移転の背景にあります。実際移転してみて、働く場所や環境がここまで人の行動を変えるのか、と感心しています。

Question

それまではどんな働き方だったのですか?

Answer

 以前のオフィスでは、ホスティング事業と海外サービスのローカライズなどを展開するウェブサービス事業、経営・管理部門が3フロアに分かれていました。同じ会社なのに、隣の人の仕事に興味を持たなくても、自分の持ち分の中で業務を進めることができた。つまり、社内のリソースを組み合わせると新しいことができるという感覚が社内に湧きにくい、もったいない状態でした。

 そこで新しいオフィスでは、「ワンフロア化」にこだわりました。打ち合わせスペースはオープンにし、必ず誰かが横を通るような場所に設置したり、オフィス全体の49%をフリースペースに取ったりして、社員がみんな、隣の人の仕事を見ざるを得ない環境を作りたいと考えたのです。オフィス内の動線も考えて、社員が必ず立ち寄るロッカーや自動販売機のコーナーは、コの字型のオフィスの片方にしか用意せず、移動しなくてはならない状態にしました。

 この機会にクラウド電話システムも導入したのですが、移転の結果、内線電話の量はかなり減りました。今まではフロアが異なっていたので電話で話をするケースが多かったのですが、今は姿が見えれば声を掛けて捕まえれば済みます。ITを駆使して仕事をしようといいながら、電話もチャットの量も減り、むしろリアルなコミュニケーションの量が増えていますね。

Question

一般には、ワークスタイル変革を掲げ、「会社に来なくても仕事ができるオフィス」を目指す動きが多いようですが、あえて会社に来たくなるようにしたことに対し、従業員の反応はどうでしたか?

Answer

 実は両面があり、「会社に来なくても完璧に仕事ができる環境」を作った上で、さらに「会社に来たくなるオフィス」というコンセプトになっています。実際、今も産休などでリモートワークをしている社員もいます。BCPのような災害時だけでなく、会社の制度として普段からリモートワークが可能な形です。その上で会社に来れば、いろんな人と会話をしたり、仕事がやりやすくなる環境を作っています。

 要は、仕事の効果が出るのであれば、手段は選ばないから好きにしてほしい、ということを制度として整えています。結果として、今のところリモートワーク、テレワークの利用率はそんなに上がっていないですね。

Question

テレワークを活用している比率はどのくらいでしょう。

Answer

 常時テレワークで仕事をしている人は、3〜4人くらいでしょうか。それ以外のスタッフは朝起きて、その日打ち合わせがなければ「今日はリモートワークにします」とすることもできます。2017年には、成果をコミットすれば、子育てや介護などをしながらでも1日何時間と決めずに働ける制度を作る予定です。

Question

オフィス移転の結果、生産性は上がりましたか?

Answer

 経営陣も含め、生産性はかなり上がっています。例えば、会議室を予約して会議をするってひと仕事ですよね。1時間といった単位で時間が固定され、誰それの予定を調整して、となると1週間やそこら待たされることもあります。その点、新オフィスでは見渡して人を捕まえて、やりたいことを確認すればいいので。私もみんなに混ざってフロアに座っていますから、呼ばれればそこに行って、その場で意志決定しています。

 もう1つ、KDDIウェブコミュニケーションズには多数決で決めるという文化があまりないんです。「オレが後押しするぜ」と応援する人が少しでも居れば、新事業を検討してみようというところがあります。それも相まって、オフィスを変えて話しかけやすい雰囲気を作っているのは役に立っていると思います。

「APIエコノミー」、実は日本市場で苦戦中……しかし潮目に変化も?

Question

2013年からTwilioをローカライズして国内で販売を開始されていますが、日本市場において「APIエコノミー」という考え方は浸透してきましたでしょうか?

Answer

 APIの分野は、日本市場では非常に広がりが遅い状況が続いていると思っています。世界からはかなり遅れている状況です。

 背景には、システムインテグレーターを抱えてカスタムなシステムを外部開発するものだ、という日本独特のIT文化があると思っています。その文化がいまだに根強すぎて、クラウドやAPIといった新しい潮流が出てきても使い切れない状況が続いているのかな、と。AWSをはじめとするクラウドも、単なるフレキシブルなサーバとして使っているケースが多く、他にもっとさまざまなことができるのに使いこなせていない状況のようにみえます。

 ただ、2016年後半になって少し潮目が変わり始めてきたのを感じています。弊社では、全国でセミナーや勉強会を開催してファンを増やしていく活動をずっと続けているのですが、それまではTwilioが開催するイベントは、Tシャツを着て仕事をされているような最先端の技術に敏感なエンジニアさんが参加者の多くを占めていました。それが2016年の後半からはネクタイを締めたお堅そうな――いわゆる日本の大企業に勤められている方の参加が増え始めました。「何かできそうだな」という感触を持ちはじめていただいているようです。

 それでもAPIに注目する大きな理由は「コスト削減」で、APIエコノミーやビジネス価値を高める動きは限られています。人材や工数を頑張って削減し、これ以上削るところがないから、スクラッチで開発するより何かもっと便利なものを使わないといけない……という理由で興味を持たれる方が多いようですね。「APIを活用するとより早く、すてきなものが作れます」という感覚にはまだ至っていないのではないでしょうか。

Question

2017年、APIエコノミーは流行るでしょうか?

Answer

 流行るか流行らないかで言うと、言葉として流行ったとしても、実際に活用が浸透するのは2020年くらいになるのではと思います。その時々で流行る言葉は変わっていますが、本質的なところはなかなか変わらないのではないでしょうか。

 クラウドやAPIに関しては、海外の流れからは5年以上遅れている感じがします。ただ、先ほど申し上げた通り潮目の変化が見え始めてきた感があり、それを使うエンジニアの姿も見えてきていますから、2017年はこの領域が加速し始めるんじゃないかという予感がしています。で、そこが思惑通りに進めば、その次の年にはIoTが来るのではないかと。そのための変化の年になるといいなと思っています。

いかに素早くサービスを投入できる体制を整えるか、いよいよ実行フェーズに

Question

国内にある程度の規模の市場があるので、わざわざ外に出ていくモチベーションが日本企業にはないという見方はできませんか?

Answer

 掛け声はありますが、実際にグローバルにサービスを出している企業は多くはありませんよね。日本語の問題もあります。日本語対応がないので海外で普及しているAPIサービスが入りにくい状態ですし、日本企業側でも、何か足りない機能を使いたいとき、英語のクラウドサービスを持ってきて使うのは現実的には難しいという声をよくいただきます。TwilioやJimdoはわれわれがローカライズして提供していますが、日本にサポート態勢があるか、何かあったら日本語で対応してくれるのか、日本語のマニュアルがあるか、といった部分は大きな評価ポイントになっている状況です。そこが払拭されない限り、海外と日本の溝は埋まらないのかもしれませんね。

Question

そんな中で、逆にグローバルに打って出ようという話がありましたが、具体的にはどんなサービスを提供するのでしょうか?

Answer

 2016年5月から国内で開始したブログサービスの「g.o.a.t」は、最初から海外展開を考えて開発しています。TwilioやJimdoを日本に持ってくる中で、海外での事業展開の様子をよく見せてもらいましたから、そのノウハウを生かし、外国人のスタッフも交えていま準備を進めています。

 今後つくるサービスは、場合によっては、日本語版を作らない可能性もありますね。やはり、日本人の好みで作ったものと、海外の人に受けるものとは違うような気がします。単に日本で作ったものを外国語対応するだけでは受けないと思いますので、その可能性も含め、社内で検討しているところです。

Question

2017年に貴社が一番注力したいことは何でしょうか。

Answer

 会社の文化として、中長期的に何かを作っていきましょう、とはあまり考えないようにしています。それほど変化が激しく、1年後どころか半年後もよく分からない市場ですから。ですから2017年は、いかにコンパクトに、いかに早く市場にサービスを投入しながら正解を見つけられる体制を整えるかが課題です。環境は整えましたから、あとは実行のフェーズですね。

Question

「いかに早く」とは、どのくらいのスピード感でしょう。

Answer

 少なくとも3カ月に1回は、そのプロジェクトをやるかやらないかのジャッジを下すペースで進めたいですね。現状でももっとコンパクトに、企画から1カ月でプロトタイプを出して判断する、というものもあります。場合によっては「遅いからやめる」こともありますね。半年ほどかけていい企画を一生懸命作ってきたんだけれど、その間に他社からもっと良いものが出てきたので、形になる前につぶすこともあります。Webサービスの開発では、そのような傾向はいっそう強くなりますから、そのくらいのスピード感でなんらかのアウトプットが出せないものはやらない、ということを浸透させていくつもりです。ますますAPIの活用や企業間連携のような動きも強めていく必要があると考えています。


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取材協力

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1997 年以来ホスティング専門事業者としてサービスを提供。レンタルサーバー「CPI」、クラウドサービス「CloudCore VPS」、ウェブサイト作成サービス「Jimdo」、クラウド電話API「Twilio」、ブログサービス「g.o.a.t」を展開する。


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