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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

異国の地に根付く“東芝DNA”に迫る!
高品質なモノづくりを支えるマネジメントの原点

2016/09/07

 洗練されたデザインと品質の高さが法人マーケットの中で支持されているdynabookブランド。10年以上前から生産拠点の中核となっているのは、中国・浙江省杭州市にある東芝情報機器杭州社だ。その現場では、日本人スタッフと中国人スタッフが“徹底した高品質へのこだわり”を持って日々改善を繰り返しており、高度な技術力に裏付けられた高レベルなモノづくりが行われている。今回は東芝情報機器杭州社(以下TIH)で陣頭指揮を執っている総経理(社長)である中原 泰氏に、高品質なモノづくりを支えるマネジメントのポイントを伺った。あわせて現場で働くスタッフの方にも登場してもらい、そもそも東芝で働くことになったきっかけや仕事におけるやりがい、これからの夢などについてお聞きした。

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東芝情報機器杭州社

東芝情報機器杭州社
総経理(社長)
中原 泰氏

Question

中国で工場を運営していくにあたってどんなところに苦労しましたか。

Answer

 日本と中国ではそもそも労働環境が大きく異なるため、その違いをしっかりと意識することが大切です。日本の場合は終身雇用が一般的で、一度入社頂くと長く働いてもらうことが前提です。製造ラインを例に挙げると、10〜15年という長期間にわたって同じチームでラインを担当している工場も珍しくない日本においては、ラインをコントロールするリーダーは、メンバーの家族構成や趣味、性格などを詳細に把握したうえで、メンバーを支えながらうまくラインに配置していきます。そういった現場であれば、われわれが目指すモノづくりの考え方を現場に意識付けしていくことはさほど難しいことではありません。しかし、中国の工場での働き方は「遠方から出てきて一定期間働き、お金をためたら地元に戻る」というサイクルが一般的です。そのため会社によっては人材も部品のように割り切って採用し、ラインに配置して運用するケースも少なくないようですが、それでは良い製品ができないとわれわれは考えています。良いものを作ろうという意識を持って頂くことから始め、必要なトレーニングを経てスペシャリストを育成する。その中で製造を効率よく行う方法を模索し、かつ品質をきちんと上げていく、そういったモノづくりのプロセスを確立していく必要があります。その面では確かに苦労する場面もあります。

Question

モノづくりのプロセスを確立させていくための工夫はどんなところにありますか。

Answer

 技術力のある人材に高い意識を持って定着してもらえる仕組みを提供し続けることが重要です。少しでも良い人材を獲得するために、われわれよりも多額の給料を提示してくる企業も少なくありません。確かにお金は重要ですが、働く人がわれわれの目指すところに共感し、この工場で働けばより成長できるということを感じてもらう。それがうまくいっているからこそ、長年働き続けてくれている方が増えているのです。

 また重要なのは、私1人が「ああしなさい、こうしなさい」と日本流を押し付けても決してうまくいきません。1500人を超える規模の工場ですので、実際に現場をマネジメントしている中国人の幹部が“東芝のモノづくり”の考え方を理解し、それを中国で実現するにはどうするのかを彼ら自身が考え、現場に合わせて実行していくことが必要です。例えば全能工(製造ラインの全ての作業ができて管理や改善、若手指導なども担当する選抜された人材)やIOD(組立工程における定量的な難易度指標と作業者のスキルとのマッチング)の仕組みなどは、彼らがこうすべきということをプランニングして実行した形の一例です。東芝が考えるモノづくり、東芝のDNAを彼ら自身が理解し実行に落とし込んでくれているからこそ今のモノづくりの姿があると思っています。こうした現場に根付いた幹部の自主性を大切にすることが、海外におけるモノづくりの現場には欠かせないと考えています。

Question

東芝情報機器杭州社における強みはどんなところにあるとお考えですか。

Answer

 まずは1つの工場の中に開発部隊をはじめ、生産や品質、製造技術、調達など全ての機能が備わっているところが挙げられるでしょう。距離の離れた別々のところに機能が分散している、あるいは違う国で機能を分担しているようでは、われわれのようなスピード感のある対応と思います。ここでは現場で何か問題があれば、担当者に声をかけるだけで問題解決に必要な人間がすぐ集まって方針を決め、実行に移すことができます。

 ちなみにこの辺りは国民性も影響しているかもしれませんが、中国人の方々は結構白熱した議論になる事が多いような気がします。しかしその分、「こうしよう!」と決めた後の実行力は日本人に比べて相当馬力があると感じています。日本では実行に移すまで1週間はかかるかだろうと思うことも中国では3日後には既に実行している、そんなスピード感があります。例えば忘年会などの際に部門単位で行う余興の完成度をとってみても非常に高いですよ。1カ月前から昼休みに集まって練習するなんてことも多く、やると決めたことに対する団結力は目を見張るものがあるな、と感じます。

Question

工場運営において注意していることはありますか。

Answer

 私がこちらに来て感じているのは、中国の方は上下関係をとても大切にする、年次や年齢が上の方を敬うことが国民性として根付いているということです。これは良い点でもありますが、あまり度が過ぎると上司がこうしなさいと言えば、たとえ変だと思っていても命令に従ってしまう可能性があるので、この点は十分に注意すべきと思っています。私の立場で「こうしたらどうだろう」と軽く言ったつもりでも、向こうからすれば至上命令のように聞こえてしまうかもしれません。だからこそ、それぞれのメンバーがどうしたいのか、何をしたいのかを自ら考えて、そして実行に移していけるような環境を作っていく必要があります。大きな方向性を共有する際には、キーメンバーが集まって議論し、結論は全員が納得した形で決めていく。そうでないと、全員が1つになって実行することはなかなかできないと考えています。

 「自ら考え実行する」人材を育てるためには、少しぐらい失敗してもそれを恐れずにやれる環境を作ってあげることが大事だと信じています。例えばラインで起きた問題を改善する際も、その道のエキスパートを他所から連れてくればすぐに解決できてしまうかもしれません。しかしそうではなく、まずそれぞれのチームで考えてもらう、そして管理職も現場で実際に問題となっている作業を見ながら議論に参加して、一緒に改善策を検討してみる。こうして自分たちで試行錯誤を繰り返していくことで、改善点が明確になっていくわけです。このプロセスを経たあとでの結論は彼らの中にも納得感があり、それを実行するスピードはとても迅速です。このようなプロセスを地道にしっかりと進めていく必要があるのではないでしょうか。

Question

高い品質を維持するために意識していることはありますか。

Answer

 「お客さまに高い品質の製品を届けることが一番大事だ」という思いをみんなで共有することです。その上で、高品質な製品を届けるためにそれぞれの持ち場で何ができるのか、それを考え、実行していくことが重要だと考えています。例えば部品の品質を高めるのであれば、メーカーから入ってきた部品をチェックしているだけだと100%の品質にはなかなか近づきません。であれば、部品メーカーに直接出向いて一緒に上流工程から見直すことで、高品質な部品がわれわれのもとに届くようになります。つまり自分たちの守備範囲を広げていく、全工程を対象に、まじめに、貪欲に「高品質」を突き詰める活動をしていくのが1つの方法だと考えています。

Question

ほかにも品質維持のために重要な視点があれば教えてください。

Answer

 繰り返しになりますが、一人一人の作業についても決められたことをやるだけでなく、さらに良くするためにはどうしたら良いかを自らで考えてもらうことです。実際には、現場でどんなに小さな事でも良いので作業の中で気づいた点を付箋紙に書き出してもらっています。そして問題点を現場の管理者が拾い上げ、みんなで解決策を議論し、改善する。そういったサイクルをスピード感をもって回していくことで、自分も会社に貢献しているという意識が高まるのです。




 また、全ての機能が備わっているこの工場であれば、すぐに他の部署に対して改善を依頼することもできます。多くの企業ではセクショナリズムがあって、部門を超えた活動が難しいケースもあるとよく聞きますが、われわれには幸いにしてそういった壁がありません。例えばコネクターを挿入する方向が良くないために、現場で働く女性が一生懸命爪で押して挿入せざるを得ず、その結果きれいなマニキュアが欠けてしまったことがありました。それを見たラインの責任者が設計の担当者のもとにすぐに出向き、何とかしてくれと訴えるわけです。そして現場での作業を見て、すぐに設計サイドで作業性を改善してみようという議論が始まる、そういったことが日常的にできるのがわれわれの良いところです。特に各部門の管理者が、メンバーに対して“高品質な製品をお客さまに提供するための仲間”だという意識を持つことも、部門間の垣根を作らない重要なポイントだと思っています。

Question

現場では、改善提案や自身のスキルマップなどいろいろなものを「見せる化」している印象があります。どのような意図があるのでしょうか?

Answer

 「見せる化」については、中国人の幹部が考えて始めた、中国の文化や風習を考慮した制度です。スキルマップは個々人の技術力などのスキルをグラフやチャートにしているもので、日本でいう通信簿のようなものです。日本では一般的にそれぞれの通信簿を見せ合うことをしたいとは思いませんが、中国ではフェアな基準で個々人を評価しているのであればオープンにしたほうが納得感を得られるというのが一般的な考え方のようです。他者と比べて自分のどこが足りないのかを知ることができたり、自分が提案した結果がどうなっているのかが見える形になっていれば、「私の提案はきちんと採用されたんだな」「このスキルを伸ばすために、こういったことを意識して仕事に取り組もう」といった形で、次のフィードバックにもつながります。中国ではこのように「見せる化」の運用がフィットしていると思っています。

 グラフやチャートにして自身のスキル状態を見せるのは、給料面での納得感もそうですが、この工場で働くことで自分がスキルアップ、キャリアアップしている実感につながるのではないかと思います。いくら高額な給料であっても、もう学ぶことがない、成長できないと感じてしまう職場であれば、他の仕事に移ってしまうでしょう。逆に給料が安くても、ここなら自分がもっと成長できるというモチベーションがあると頑張ろうと思ってもらえるのです。目に見える形にするのは、ある意味自分が頑張った証であり、次の目標が見えてくることに役立つのではないかと思っています。

 この「見せる化」は幹部たちからの提案で始めたと申し上げましたが、東芝がもつ基本的な考え方やポリシー、哲学、思いといったDNAを彼ら自身がしっかり理解・共有できたうえで、それをどうやったらメンバーに伝えられるか。それを検討した結果が、中国・杭州の文化をアレンジしたこの「見せる化」制度だったのではないでしょうか。


Question

最後に、今後この杭州工場をどのようにしていきたいのか、将来像について教えてください。

Answer

 少し漠然としていますが、「世界一の工場になろう」というのがわれわれの夢でもあり目標でもあります。生産だけでなく開発や品質の部分でも世界で1番になることで、世界中のたくさんの方々がこの工場に来て勉強したいと言っていただける、そんな工場を目指したいと考えています。もちろん、われわれの軸足はPC工場であり、PCの世界で高品質な製品を作って多くのお客さまにお届けする、これがPC事業としての夢です。ただ「東芝クライアントソリューション」という社名であることからも分かる通り、PCだけでなくさまざまなソリューションをお客さまに提供することがわれわれのミッションです。すでにIoT関係の製品開発や製造も始めていますが、PC事業で培ったノウハウを生かせば、どんなものでも作れると考えています。他にも、お客さまが新しいものを立ち上げる際にスタートアップをお手伝いするという活動もやってみたいですね。われわれのもつ高い技術力や運用ノウハウを生かして新しいクリエイティブなものを一緒に作り上げていくことで、どこもまねできない世界一の工場として認められる存在になりたいと考えています。


コラム:現場で働く作業者の思い

 OBQと呼ばれる梱包(こんぽう)後の最終検査を担当している彼女は、学校を卒業してから杭州の地にやってきた。もともとPCづくりに興味があり、5年前にTIHの門をたたいたという。現時点での彼女の仕事におけるモチベーションは「お金をいっぱい稼いで家族に仕送りすること」であり、東芝のDNAを学び、自身の技能が磨ける今の環境にとても魅力を感じているという。仕事ではつらいこともあるが、自分が教育した新人がきちんと仕事に向き合えるようになるとうれしい、とその思いを吐露する。他人の成長が自分の喜びにもなっているという。自身の夢は、この会社でもっと技能を磨き、周りから信頼され、収入も増やせるようにしたいと笑顔で語った。




 専門学校を卒業したのち、この工場で実習を受けた経験からTIHに就職した彼女は、前述したスペシャリスト「全能工」として製品の梱包および検査を担当している。TIHでは3年余り勤務しており、就職してからわずか2年で全能工になった才女だ。仕事については、普段担当している梱包や検査以外の業務にもチャレンジし、自身の能力を高めていくことがモチベーションだと語る。たくさんの製品を組み立てなければいけない時にはつらくなることもあるが、周りとの人間関係がうまくいっており、仕事自体はとても楽しいという。将来は自分の能力を高めていきながらお金をたくさん稼ぎ、いずれは実家に戻って自分の店を持ちたいと夢を語った。




 「東芝クラス」と呼ばれる教育制度を経てTIHに就職した彼女は、目視検査を担当している21歳の若者で、全能工として活躍している。普段は検査を担当するだけあって、自分が検査したものからミスが出ないようにすることが大きなやりがいだそうだ。自身の能力アップもそうだが、いずれは管理者等に昇格できるよう日々精進しているという。普段は楽しい雰囲気の中で仕事ができており、時間があれば他工程で作業させてもらうなど、自身の能力を認めてもらい挑戦をさせてくれる、成長が感じられる瞬間が楽しいという。杭州はとてもきれいな街で、この杭州で生活するためにTIHに就職したというが、今は自分自身の力でしっかりお金を稼いで、自立した生活をしていけるように頑張っていきたいと目を輝かせていた。

※東芝クラス:現地の学校と連携して、TIH入社前に一部教育の実施を行う取り組みのこと。


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取材協力

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東芝PC事業と東芝情報機器株式会社を母体に2016年4月にスタート。世界初のラップトップPCを市場投入以来31年間に蓄積した技術力、品質力、商品力をベースに、PC及びシステムソリューション商品の開発、製造、販売、サポート&サービスを国内・海外で展開する。


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