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もう「ブラック企業」とは呼ばせない、コンプライアンス順守のための「勤怠管理」の在り方IT導入完全ガイド(1/4 ページ)

「残業代払ったのに書類送検されるの?」。監督強化が進む勤怠事情。ブラック企業のレッテルを貼られないためにもコンプライアンス強化に効く勤怠管理ツールを紹介する。

» 2016年04月11日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 過重労働、サービス残業、36協定無視、高ストレス、残業代未払い、休日が取れない。「ブラック企業」と名指しされる会社には共通した特徴がある。法令違反を犯すつもりはなくとも管理が行き届かず、気付いたらいつの間にかブラック化していることもある。

 一度不名誉なレッテルが貼られると挽回は容易なことではない。人材獲得が難しくなり従業員のモチベーションも低下する。人材が慢性的に不足する中でグローバル規模で人材流動化も進む現在、コンプライアンス順守と従業員の働きやすさを両立させるために、打つべき手だては何なのか。

 どのような対策をとるにしろ、その基礎になるのは「勤怠管理」だ。今回は最新勤怠管理ツールがコンプライアンス強化にどのように生かせるかを考える。

労働基準法と勤怠管理

 近年、労働環境の監督は厳しさを増している。2015年、厚生労働省が設置した労働法違反監督の専門チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」は、まさに「ブラック企業Gメン」のような特別チームだ)はその取り組みの1つだ。

 最初の摘発と書類送検事例となったのは、法定基準はもちろん労使協定での定めも無視して長時間(約100時間超)の残業実態が認められた大手販売業者だった。特徴的なのは、残業代が適正に支払われていたが、残業実態が労使協定と懸け離れていたことが書類送検に結びついた。

 「金さえ払えば」という姿勢が真っ向から否定されたことになる。これは厚生労働省が注力する過重労働撲滅運動の一環だ。その背景には、労基法(労働基準法)や安衛法(労働安全衛生法)違反がまん延している現状がある。

 2015年9月の厚生労働省発表資料によると、同年4月から6月までに実施された長時間労働が疑われる2362事業場に対する監督指導の結果、6割超の事業場に違法な時間外労働が確認されたという。当然該当する事業所には是正勧告が行われ、是正が認められない場合は書類送検を視野に入れた対応を行うことが明記されている。違反内容は次の通りだ。

  1. 違法な時間外労働 62.6%
  2. 賃金不払残業 10.7%
  3. 過重労働による健康障害防止措置が未実施 17.2%

 長時間の時間外労働については月に100時間超はおろか、中には250時間を超える事業場もあったという。また賃金不払残業があった事業場のうち、100時間超の残業があった事業場が46.8%もあったとのことだ。

 調査対象企業は明らかでないが、2014年には上場237社の76%が2009年以降に臨検(立入検査)を受けたことがあり、是正勧告を受けた企業が57%にのぼるという調査結果(週刊ダイヤモンド 2014/12/30)もある。大企業でも法令違反が珍しくない実態があらわになった。中小企業では言わずもがなだ。

 このような監督指導が入ることそのものが会社のブランドを損なうリスクがあるのに加え、管理の不行き届きで賃金未払いが明らかになると想定外の出費に迫られることもある。労働局の是正指導に基づいて不払い賃金を支払った企業(支払額が100万円以上の企業)は、2014年4月から2015年3月までの間に、1329企業、支払われた割増賃金合計額は142億4576万円にのぼる。

 1企業当たりにすれば1072万円、労働者1人当たりにすれば7万円(対象労働者数20万3507人)だ。1企業での最高支払額は14億1328万円(電気機械器具製造業)である。もちろん刑事罰が科される可能性も視野に入れなければならない。

 ただし、このような監督指導に対応するために労務管理を行うのは本末転倒の発想だ。法律的に問題かどうかとは別に、自社の労働環境に対して従業員が不満を抱いていないかどうか、肉体的にも精神的にも健康を保てる状況なのかどうかに、そもそも配慮した労務管理を行う必要がある。

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