アサヒビールのiPad活用、“極意”に迫る

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

効果を見極めながら進めたアサヒビールのiPad活用、その“極意”に迫る

2016/02/23

 国内酒造業最大手のアサヒビールでは、営業効率向上を目指して2011年より営業担当者によるiPad活用を推進している。単にタブレットを一斉配布するのではなく、利用状況を検証しながら段階的に利用範囲を拡大していった背景などについて、同社経営企画本部デジタル戦略部の担当課長、森本可南子氏と、グループIT企業であるアサヒビジネスソリューションズのソリューション本部システム技術統括部ネットワークサービスグループ、佐藤秀之氏に話を聞いた。

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アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社
経営企画本部 デジタル戦略部
担当課長
森本 可南子氏

アサヒビジネスソリューションズ株式会社
ソリューション本部 システム技術統括部
ネットワークサービスグループ
佐藤 秀之氏

営業生産性向上をねらいとしてスモールスタートでiPadを導入

Question

日本企業の中ではかなり早い時期にiPadを導入していますが、きっかけは何だったのでしょうか。

Answer

 ビール市場では競合各社との激しいシェア争いが繰り広げられており、経営層から「新しい営業スタイルを確立するためにIT部門で何か変革を起こせないか」という問いかけがありました。そうした声を受けて、営業側はITとはどういうものなのか、そしてIT側は営業の業務はどんなプロセスで進められているのか、お互い学びながら一緒になって働き方を変える方法を探っていこうということになったのです。そこでIT部門と営業部に経営企画部や人事部なども加わって、iPad導入プロジェクトがスタートし、進めてまいりました。結果たどり着いたのが、当時発売したばかりのiPadを活用して営業担当者の移動時間や内勤作業を削減することで、営業の効率化を目指そうというものでした。

Question

その後iPad導入プロジェクトをどう進めていきましたか。

Answer

 まず2011年初頭に営業現場の担当者2人とマネジャー1人による試験的な利用でスタートしました。しかしテスト展開を拡大しようとした矢先に東日本大震災が発生したため、テスト展開拡大はすぐには進められなかったのですが、2012年に入り、東京の飲食店と販売店などを担当する東京・中央支店のメンバー10人程が加わってパイロット展開へとこぎつけることができました。営業担当者の1日の働き方などを確認しながら、ITで業務の何をサポートできるかをプロジェクトメンバーでアイデアを出しながら進めてまいりました。

 その後、2012年中に大阪、名古屋でもiPadを導入して、翌2013年からは、首都圏は横浜、千葉、埼玉、関西は神戸、京都へと拡大していき、九州の福岡でも導入しています。当初は50人からはじまり、現段階では約500台の展開となっております。

Question

当面のiPadの導入を大都市圏に絞ったのはどういった理由からでしょうか。

Answer

 基本的な方針として、まず市場の大きなところからスモールスタートし、ユーザの声を聞きながら順次拡大していくという方針がありました。特に若手の営業担当者を中心に、自分たちも使いたいという声は地方の都市でも多かったのですが、当時はまだ3Gのモデルだったため、大都市圏以外だと通信環境があまり良くなかったという点もありますね。

 もう1つ、iPad導入と合わせて営業車両を削減しようという取り組みも進めていたのですが、地方都市だと営業車両が必要になるため、この点についてはiPadの導入効果があまり見込めないという理由も大きかったです。なぜかと言うと、大都市圏は電車などを利用し得意先を訪問することができるので、iPadがあればその移動の合間に日報を送り、そのまま直帰したり、あるいは夜に飲食店に営業に行ったりすることもできます。対して車両での営業活動スタイルの場合は夜に飲食店を回るとなると、たとえiPadを持ち歩いていたとしても、一旦会社に営業車両を戻す必要があります。


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iPadの利用率と年齢は関係ない?

Question

順調に拡大できた理由はどこにあると考えていますか。

Answer

森本 可南子氏

 パイロット展開の東京・中央支店を皮切りに、先にiPadを活用している営業からの活用事例が他地区へと伝わって行ったのが大きかったのではないでしょうか。営業部門のプロジェクトメンバーも、iPadの活用推進を継続的に働きかけたことも影響したと思います。また、同じ部門内でも最初のうちはiPadを使用することに対する温度差があるものですが、こういう使い方をしたら成約率が上がったよ、といった成功体験を耳にすると、自分たちもうまく使おうという意識に変わってくるようです。やはり、私たちプロジェクトチームから“使ってね”と言うよりも、近くにいる同僚がインフルエンサーとなるほうが、影響力があると感じましたね。

 そうした一方で、トップダウンでの波及効果もあったと思います。営業部門には10の統括本部が存在しているのですが、導入初期にそれぞれの本部長にiPadを配布しました。各トップが率先して活用いただくことで意思決定のスピードアップにつながるという効果も生まれ、また、統括本部長会議は、ペーパーレス運営にしようという流れにもなりました。そうなると今度は地区ごとの会議でも利用が進むというように、どんどん利用率が上がっていきました。やはりリーダーが率先して使うというのは効果がありますね。ただ端末を配るだけというのでは、ここまで現場に定着させることはできなかっただろうなと思っています。

Question

Padのような新しいデバイスは、年齢層が高い方が活用に消極的かと思いましたが意外ですね。

Answer

 私たちもはじめのうちは年齢と利用率は反比例するだろうと予測していたのですが、ログをとって因果関係を分析したところ、年齢はあまり関係ないことが判明しました。年配の社員でも積極的な人は日々使いこなしていますし、若い社員でもあまり使わない人もいますから。


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7割のユーザが「働き方が変わった」と回答

Question

具体的にiPadをどのように使っているのでしょうか。

Answer

 導入当初からよく使われているのが、外出先でのメールチェック、日報作成、顧客データベースへのアクセスの3つです。加えて現在では、資料を使った商品説明でも活用されています。当社の営業先は非常に多岐に渡るので、商品説明資料も膨大な量に及びます。例えば居酒屋にしても和系か洋系かで必要な資料は異なってきます。どんな営業先にも対応できるようにするとなると、従来の紙の資料ではとても鞄に収まりません。それがすべてiPadに収まってしまうため、1回の営業活動で期待できる効果がぐんと上がりました。それと機材のデモンストレーションなどの動画コンテンツも用意してiPadから営業相手に紹介できるようにしたことで、プレゼンテーションの質も飛躍的に高めることができました。

Question

セキュリティ面ではどのような工夫をしていますか。

Answer

佐藤 秀之氏

 最初はサードベンダーのMDM(モバイルデバイス管理)ツールを使ってかなり厳しく制限をかけていたのですが、その後はユーザの自由度をもう少し上げようと、MAM(モバイルアプリケーション管理)ツールに切り替えて、ホワイトリスト形式であらかじめ許可したアプリケーションであれば自由に使えるようにしています。Google Mapsや鉄道の経路検索アプリなどの人気があるようです。

 アクセス環境について言えば、iPadからの通信が発生すると強制的にクライアント証明書を用いたVPN経由で社内ネットワークに接続して、そこからインターネットへと出るように工夫しています。一般的には通信の度にユーザがスイッチを押してVPNセッションを張るかたちになりますが、それだとどうしてもユーザの利便性を損ねてしまうので、いちいち意識せずとも通信の安全性が確保できるよう独自の設定を施しました。また、一度社内ネットワークを経由しますので、社内のセキュリティポリシーがそのまま適用できます。ブラウザもセキュアブラウザなど特殊なものを使う必要がなく、標準ブラウザのSafariから、社内クライアント端末と同じフィルタリングデータベースを用いたアクセス管理が行えるのもポイントです。

Question

毎年ユーザへのアンケートを実施しているということですが、どんな質問をしてどういった結果が出ていますか?

Answer

森本 可南子氏

 アンケートでは、iPadを使う頻度や、どのアプリをどういったシーンでどの時間帯にどれだけ使っているのかといった基本的な利用状況を尋ねており、その結果と利用ログを突き合わせることで、実態を把握するようにしています。そのほかは、欲しい機能や働き方がどう変わったなどといった記述式のヒアリングですね。

 アンケートによると、約7割のユーザが「働き方が変わった」と回答しています。具体的には、営業先から会社にいちいち戻ってこなくても済むようになったり、急ぎの仕事が生じても外出先ですぐに処理できるようになったり、といった声が多いですね。営業現場にいる時間が増えたことから、お客様との接点の最大化につながったという回答もあがってきました。また、以前であれば内勤の社員に電話で問い合わせる必要があった案件も、ネットで調べることで自力で解決できるようになったといった意見もありますね。

Question

最後に、今後の方針についてお聞かせ下さい。

Answer

 システム面から言うと、iPadで何でもできてしまうと結局それはPCと同じでしょ、ということになるので、いずれはデバイスに依存しない環境の準備が必要になるのではないかという話を関係者としているところです。社員それぞれが、自分はPCで、自分はタブレットがいいなどといったように、デバイスを自由に選べる環境が理想的なのかなと個人的にはイメージしています。ただし、すべてのデバイスから既存システムが使えなければいけないので、その辺りをどうクリアするかが課題となるかもしれません。

 今はiPadを導入する地域を少しずつ増やしているところです。一気に拡大したいところですが、PCの機能も良くなっているので、本当にタブレットが最適なのかも含めて検討していきたいですね。


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取材協力

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アサヒグループの中核事業として、「アサヒスーパードライ」をはじめとしたビール類、洋酒、ワイン、焼酎、チューハイなど様々な人気商品を世に打ち出し、多くの顧客の支持を得ている。
 営業担当者のワークスタイルを改革するため、iPadの導入を2011年より試験的な利用を開始。現在では約500台ほどの導入にまで至り、担当者の業務効率向上を見事実現させた。


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