この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

掲載日: 2015/12/16

企業におけるiPad、iPhone活用の最適アプローチ

 iPhoneやiPadなどコンシューマ市場での人気を背景に、Apple製品の導入を進めている企業も少なくない。エンタープライズ市場を主戦場にしている各ベンダも、Appleとの連携を深めている。そんな企業の1つが、仮想化ソフトで市場を席巻しているヴイエムウェア株式会社だ。今回は、同社が描くビジネスモビリティの将来像とともに、iOS、OS XなどApple製品への取り組みについて、ヴイエムウェア株式会社 マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャ 本田 豊氏に伺った。

VMwareが目指すビジネスモビリティ

■ 貴社が提唱しているビジネスモビリティとは一体どんなものですか?

 もともと我々は、Windows デスクトップやアプリケーションの仮想化、そしてEMM(Enterprise Mobility Management)製品であるAirWatchなどのモバイルデバイス管理を含めた一連のソリューションをエンドユーザコンピューティングと呼んでいますが、現在は増加し続けるモバイルデバイスへの対応を強化することが急務となっています。このビジネスモビリティを実現するためには、「エンドユーザ向け」「事業部門向け」「IT部門向け」それぞれに環境を整備していく必要があると考えています。

 まずエンドユーザ(従業員)向けに必要なのは、デスクトップやアプリケーションを問わず、業務に必要な全てのリソースに安全かつスムーズにアクセスできる環境を構築することです。我々は「One Cloud, Any Application, Any Device」というコアメッセージを掲げていますが、エンドユーザコンピューティングの部分については「Any Application, Any Device」が該当します。最近では様々なデバイスが仕事で活用され、使用するアプリケーションも多種多様です。これらを安全に活用できるようにすることが必要です。

 次に事業部門向けには、新たなビジネスオペレーションやプロセスの導入を通じて、例えば新しい顧客との関係性を構築できる環境作りが求められ、その際には、システムがその新たな環境に対応していく必要があります。それは、柔軟性という視点だけでなく、状況に応じてスケールアップ・ダウンできるような環境を整えていくことが重要になってきます。

 そしてIT部門向けには、従来からあるクライアントサーバのアーキテクチャではなく、「モバイルクラウド」と呼ばれる新しいアーキテクチャを検討することが、ビジネスモビリティの実現には必要不可欠です。モバイルクラウドとは、すべてのアプリケーションやユーザデータ、プロファイル情報がクラウド上に展開され、ユーザは様々なデバイスでアクセスすることで、場所やデバイス、時間を問わず一貫した操作性が得られるような環境を指しています。かつ、それはセキュアでなければいけませんし、管理が簡素化されているべきです。そのための環境作りがIT部門には求められてくるでしょう。

 ビジネスモビリティは前述した3つの実現が中心となりますが、単純に言えば「信頼性の高いインフラをベースにコンシューマ製品のようなシンプルさとエンタープライズクラスのセキュリティ」を実現しましょうというメッセージに集約されます。

■ 確かにセキュリティはエンタープライズに欠かせない要素です。

 非常に重要だと我々も考えています。もともとエンタープライズ向けのアプリケーションはさほど使い勝手がよくない印象がありますが、ここ数年でDropboxやBoxなどコンシューマ領域で使いやすいサービスが次々と登場しています。iPhoneやiPadなどiOSデバイスは広くコンシューマに活用されていますし、他のアプリケーションも使い勝手のいいものがたくさんあります。エンタープライズの世界でも、そういった使い勝手の良いものやシンプルかつ簡単にアクセスできるものが必要とされています。これが、「コンシューマ製品のようなシンプルさ」の意味です。ただ、それがセキュリティとトレードオフの関係になってしまっては本末転倒です。よりセキュアでありながら、使い勝手が良くアクセスしやすい環境作りが重要になってくるのではないでしょうか。

■ Windows中心だったエンタープライズ領域で「Any Application, Any Device」を実現するためには、やはりiOSやOS X向けのソリューションも強化していかなければいけないということでしょうか。

 おっしゃる通りですが、必ずしもそれだけはありません。「One Cloud」で新しいアプリやレガシーアプリもホスティングできる環境を提供していくことも我々の役割です。当社が提唱するSDDC(Software-Defined Data Center)というアーキテクチャにより、業界をリードする仮想化技術をサーバーだけでなく、ストレージやネットワークにまで広げることで、データセンター全体の管理がソフトウェアによって自動化されます。そして、その先にビジネスモビリティにおけるエンドユーザコンピューティングがあります。そこでフォーカスしているのが「Any Application, Any Device」なのです。ある特定OSの対応だけにとどまっているわけではありません。

■ 考え方としては、ソフトウェアで抽象化された世界、つまりOSに依存しない環境を提供していくわけですね。

 流れとしてはおっしゃる通りで、基本的にはHTML5対応のブラウザを使ったSaaSのアプリケーションやモバイルデバイスのさらなる普及により、モバイル用アプリケーションを利用する機会が増えてくることでしょう。ただし、Windowsに代表されるようなOS依存の部分がすぐになくなるわけではないと考えています。AndroidにしろiOSにしろ、ストアから配信される仕組みが存在しており、これからも便利になっていくことでしょう。これはマイクロソフトも同様です。ただ、どうしてもWindowsで作られたレガシーアプリケーションは残ってくると思っています。

企業がiOSやOS Xを活用する際に注意すべきポイント

■ エンタープライズ領域でiOSやOS X搭載の環境が増えている印象はありますか。

 我々が言及することではありませんが、確かにiPhoneやiPadをはじめとしたモバイルデバイスを導入している、導入したいと考えているお客様は確実に増えている印象です。なかでもiOSは確かに目立ちますが、OS Xは、外資系の企業を除いてはあまり増えているという印象はありません。
 Macを外見上“かっこいい”と考える方が多くいるようですし、技術者の方は特にMacを好む傾向にあります。開発環境として必要になるということもありますし、MacでもWindowsを使える環境が整います。それでも、日本の企業ではまだまだWindowsが好まれているのではないでしょうか。

■ やはりモバイルデバイスではiOSが多い状況でしょうか。

 数については言及できませんが、多くの企業で採用は進んでいるように見受けられます。日本ではiPhoneの人気が高く、企業が導入する際にもiOSのほうが管理上楽な面があることは否めません。セキュリティについての話題もありますが、Googleにも「Android for Work」などがありますので、今後は変わってくる部分もあるかと思われます。

■ 日本企業でMacが増えていかないのは、Windows系の運用管理にそぐわない部分があるからでしょうか。

 そういうことも考え方としてはあります。その他にも、例えば米国では、BYODが進んでいて、従業員が自分の好きなデバイスが使えない企業には入社しないという理由もあるようで、優秀な人材獲得のためにBYODを進め、Macなど好きなデバイスを使用しているケースもあります。また、同じく米国での例ですが、一度に大量採用した上で、激しい競争のなかで1年後には半分ぐらいの人しか残らないような証券会社や保険会社などの業界では、会社からデバイスを支給するのではなく、自分でデバイスを持ち込んでもらうといったユースケースも聞いています。その場合、我々のソリューションであれば、Macなら「VMware Fusion 8 Pro」、Windowsなら「VMware Workstation 12 Player」などを導入し、そのうえで会社のWindowsイメージを動かして使ってもらうということが現実的に行われています。また、「Horizon FLEX」を導入いただくことで、前述のFusionやWorkstation Player上で動くWindowsイメージをポリシーベースで管理いただくこともできます。

■ 今後日本の企業ではBYODなどの環境が広がってくるとお考えでしょうか。

 日本の場合、セキュリティへの懸念から展開を躊躇する企業は多いのではないでしょうか。BYODの文化は、基本的に通勤途中や自宅など、オフィス以外で仕事をする文化とセットだと思っています。実は2年前に調査をしたことがあるのですが、日本企業のうち約70%が社内の業務端末の持ち出しを禁止しているという結果が出ています。これは3年前に行った調査でも同様の状況であり、現状でもあまり大きく変化していないと考えられます。
 またセキュリティだけでなく、労務的な問題も大きく横たわっています。労働組合がしっかりしている日本企業では、たとえ経営者が環境を整えたいと考えても「就労時間はいったい何時から何時までなのか」と問われると、どうしても前に踏み出せない。個人的には、小さいお子さんがいる家庭のように、自宅で働けた方がいいと考えている方は少なくないと思います。

■ 企業でiOSやOS Xを活用する際に役立つ貴社のソリューションについて、数年前と比べて変化はありますか。

 これまではさほど大きな変化はないようですが、これから変わっていく部分はあると考えています。OS XやWindows10などがEMMに対してAPIを提供し始めているからです。つまり、我々のEMM製品であるAirWatchを用いることで、モバイルデバイスだけでなく、OS XやWindows環境も同じ管理のもとで運用することが可能になってきます。そうなれば、これまでとは異なるパラダイムになるのではないでしょうか。従来ならWindowsであれば例えば「Microsoft System Center Configuration Manager(SCCM)」などで管理し、モバイルデバイスはAirWatchで、という複数の管理環境が必要でした。これが一本化されてくると、企業でも選択肢が増えることになります。これは大きな変化が起こる可能性を秘めています。

■ AirWatchのお話がありましたが、他にAppleとの連携での中でよく利用されるソリューションは具体的にどんなものでしょうか。

 冒頭でもお話した、Windowsで作られたレガシーアプリケーションをいかに新しい環境で使うのかという部分です。どの会社もモバイルデバイスで生産性を高めたい、効率化したいとお考えですが、どうしてもネックになるのがWindowsのレガシーアプリケーションです。例えばファミリーマートさんでは、店舗を巡回するエリアマネージャーがオフィスに戻ることなく業務できるよう、特定のWindowsアプリケーションを画面転送でiPad上に展開する方式を採用されています。モバイルデバイスの管理はAirWatchですが、プラスアルファという部分で仮想デスクトップやアプリケーション仮想化のソリューションが利用されています。

■ アプリケーション仮想化とデスクトップ仮想化はどう使い分けているのでしょうか。

 お客さまがWindowsの環境をどこまで使うのかによってきます。Windowsのアプリケーションが1〜2個であればアプリケーション仮想化で十分ですが、それ以上になるとWindowsデスクトップに入った上でアプリケーションを利用するデスクトップ仮想化のほうが使いやすいケースもあります。
 ただし、iPadなどでWindowsを使う場合、どうしても使いづらさが出てくることがあると思います。そんな時には、画面上にメニューバーが表示でき、タッチインターフェースでWindowsやWindowsアプリが使えるUnity Touchと呼ばれる機能を活用いただいています。いわゆるインターフェースの仮想化のような仕組みで、タブレットであっても使いやすい画面が提供できます。

■ iOSやOS Xを企業で導入する際に注意するポイントについて教えてください。

 OSが異なれば当然使い勝手も変わってきます。トレーニングなどいろいろ考えていくべきことはありますが、見ている限りデバイスへのチャレンジというよりは、デバイス以外の部分で注意しておくべきポイントがあると考えています。例えば、モバイルデバイスを導入してユーザにどう使わせたいのか、どう使いたいのか、またIT部門としてどのようにサービス提供していくのかなど、実は詰め切れていない部分が結構あるように見受けられます。結果としてユーザの方の意見を聞きすぎてしまったがために、当初考えていたことから大きくぶれてしまう、なんてこともよく聞く話です。導入した環境が当初の想定とまったく違うものになってしまったり、プロジェクト期間が無駄に長くなってしまったりなど、いろいろ弊害が出てくることもあります。このあたりはしっかり念頭においておきたいところです。

■ 最後に、読者である情報システム部門の方にアドバイスをいただけますか。

 一般的な傾向として、短期的な視点でシステム選定せざるを得ないパターンが多いように見受けられます。例えばWindows XPのサポートが終了します、IE6が終わりますといったときに、結果としてIE8ベースに移行してしまうといったケースです。本来であれば、HTML5対応のブラウザ環境に移行したほうが長い目で見るとメリットが多いはずです。ロングスパンで見ていただいたほうが、ユーザも説得しやすいのではないかと考えています。
 個人的な印象ではありますが、長期的な視点で考えづらいのは、初期投資の費用を重視する企業が多いからかもしれません。例えば5年スパンで初期投資とオペレーションコストを見てみると、視点が変わってくるはずです。どうしても初期コストを抑えたいというプレッシャーが社内にあるのかもしれません。また、人件費を変動費と捉えるアメリカと違い、日本では限りなく固定費に近いものとして扱われるという背景もあります。オペレーションはどれだけ時間がかかっても固定費のまま変わらない、という考え方の違いも影響している可能性があります。いずれにせよ、少しでも長期的な視野を持って課題に取り組んでいただければと思います。

取材協力

ヴイエムウェア株式会社 企業サイトへ


このページの先頭へ





Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この記事に掲載している情報は、掲載日時点のものです。変更となる場合がございますのでご了承下さい。


30008433


IT・IT製品TOP > スマートデバイス > リモートアクセス > リモートアクセスのIT特集 > 特集詳細

このページの先頭へ

キーマンズネットとは

ページトップへ