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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

業務システムとの連携、iBeacon…
iOSにおける業務アプリケーション開発の勘所

2016/01/18

 日常的に利用しているiPhoneやiPadを業務の中でも活用したいと考える企業は増えており、情報システム部門はそのためのアプリ開発にもリソースを振り分けていく必要がある。ただし、既存の業務アプリケーション開発と同じような考え方では必ずしもうまくいくとは限らない。今回は、iOSで活用する業務アプリケーション開発を手掛ける株式会社ジェナ 代表取締役社長 手塚 康夫氏および執行役員 コンサルティング事業部 兼 新規事業部 マネージャー 岡村 正太氏にお話を伺い、アプリ開発における注意点やその勘所などについてお聞きした。

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株式会社ジェナ

代表取締役社長
手塚 康夫 氏

執行役員 コンサルティング事業部 兼 新規事業部 マネージャー
岡村 正太 氏

iOSにおける業務アプリの変遷と開発のコツ

Question

iPhoneやiPadに関するビジネスアプリ開発の変遷について振り返っていただけますか。

Answer

手塚 康夫 氏

 元々iPhoneをビジネスで活用するという流れは2009年頃から始まったと記憶しています。当時はプレゼンやアンケートを取るといったシンプルなアプリが中心でしたが、その後2011〜2013年頃になってくると、徐々にクラウドと連携するアプリが増加。ただし、その段階では社内システムとは繋ぐことなく、クラウドと連携してスマートデバイスを便利に活用しようという使い方が中心でした。そして2015年現在、企業で働く人達が日常的にスマートデバイスを使うようになったことで、社内システムと連携することへの敷居が下がり、今では社内システムと連携するアプリが非常に増えている状況です。

Question

社内連携するアプリケーションとは具体的にどんなものになりますか?

Answer

 単純に言えば、基幹システムと連携して何かの情報を表出させるといったものです。他にも、例えば、お客様情報を持つCRMやSFAと紐づけて何かの業務に役立てるといったアプリなどが具体的な例としては増えています。最近登場しているクラウド系のサービスでは最初からスマートデバイス対応しており、我々にご依頼いただくのは、クラウドに対応していない業務に特化したシステムのほうが多いのが現実です。

Question

業務に特化したアプリを開発する際に、どんな点に注意すべきだとお考えですか。

Answer

 従来の開発手法の場合、画面のような“目に見えるもの”は後工程で仕様が固められます。要件定義を経てからというのが一般的ですが、スマートデバイス向けのアプリでは目に見える部分を早い段階から作るようにしています。最初の要件を決定する段階からワイヤーフレームやデザインなどを持ち込むことで手戻りが圧倒的に少なくなることもあり、UIやUXの設計部分を最初から考えていくことがより重要になってきます。我々の場合は、プロジェクトが始まるところからクリエイティブディレクターをアサインしますし、システム開発もデザインも理解しているメンバーがプロジェクトの初期工程から入っていくケースが一般的です。

Question

ユーザ企業の方でも、最初から利用者部門がプロジェクトに参加し、プロトタイプUIを早い段階で確認していくような体制のほうが望ましいのでしょうか。

Answer

 おっしゃる通りで、この手のプロジェクトは利用部門の方が主導しているケースが多く、早い段階で利用者の方に見て判断していただくことが可能です。これまでのPCをベースにしたシステムでは、マウスやキーボードなどを駆使すればUI部分が多少使いづらくても何とかなったのですが、スマートデバイスでは画面のサイズや入力インターフェースに制限があるため、使いにくいと、結局定着しない可能性も出てきます。

Question

業務システムとの連携については、プロセス改善も含めたBPRとして取り組むケースが多いのでしょうか。

Answer

 フロントエンドとバックエンドの開発に分けて考えると、バックエンドは従来通りのやり方を踏襲し、フロント部分の開発を中心に請け負うケースが多いと思います。バックエンド側に手を入れるのは至難の業ですし、最近ではMBaaSなどの仕組みを使って社内のバックエンド側の共通部分はできる限り構築しないという流れになってきており、必要な部分だけを作り込むケースが増えています。

Question

具体的にはどんなアプローチをとっていくのでしょうか。

Answer

手塚 康夫 氏

 元々既存業務を行うためのPC画面がすでに存在しているお客さまの場合は、こういったアプリを作りたいとうワイヤーを提示いただくことが増えています。しかし、我々はいただいたものに固執せず、また、前提条件にとらわれえることなく、本当に必要なことだけに絞って画面設計を行います。当然ながら、我々の視点で最適だと思われるものを提示すると、業務プロセス上重要なフローが抜け押してしまうケースもあります。そこで互いに懸念点を何度もぶつけていくことで、最適なUI、UXに近づけていくことが可能になるのです。

 ただし注意したいのは、グラフィカルデザインに着目するのではなく、なぜこの画面やボタンが必要なのか、このレイアウトにする意図は何なのかなど、デザインの背景にあるロジックの方にしっかりと目を向けることです。出来上がったものには必ず理由があり、その根拠を我々も示していく必要がありますし、同時に、お客さまの方でもロジックが正しいかを検証していただくことが重要です。

Question

アプリ開発をうまく進めるコツはありますか。

Answer

 よくあるのが、考えているうちに機能を数多く盛り込んでしまうケースです。このケースは、ほとんどの場合失敗します。PCと違い、スマートデバイスを業務に活用し始めたのはここ5年ぐらいのものなので、お客様自身も多くのノウハウを持っているわけではありません。実際に開発したものを現場で使ってもらうと「ここが使いにくい」といった声は必ず出てきますので、最初は最小限の機能に絞ってリリースし、それ以降も小刻みにバージョンアップを繰り返すのがコツです。最初に小さく失敗して、その失敗を改善していく“fail fast”という考え方が成功のポイントになってきます。成功する企業は、一度作って終わりではなく2〜3年かけてバージョンアップし、最適なものに育てていく傾向にあります。

Question

PC環境との相違点として、iOSのバージョンアップが頻繁に行われることもアプリ開発に影響する部分になりますか。

Answer

 メジャーバージョンアップはおおよそ1年に1度のペースですし、大枠で更新タイミングも一定です。WWDCで発表されて、その何ヶ月後には正式版がリリースされる形になるため、その時期に合わせて改修するといった開発計画や保守計画を立てて対応していきます。

 日本企業の場合はBYODの環境が普及しておらず、管理部門でコントロールしやすく改修計画も立てやすいのが一般的です。ただし、禁止しても必ずバージョンアップしてしまう人は後を絶ちません。そういう意味では、バージョンアップは防げないという前提に立ち、最新OSに対応したアプリを提供し続けることが必要です。

 ただし、最近のiOSは劇的に変化するようなバージョンアップは以前に比べて少なくなっています。エンタープライズが意識されているのかはわかりませんが、以前に比べてやりやすくなっているのは事実です。

Question

アプリの世界は今後どう広がっていくとお考えですか。

Answer

 おそらく、スマートデバイスのアプリはすでに成熟している市場だというのが正直なところです。スマートデバイスで情報にアクセスするデジタルの世界は成熟産業になってきていますので、今度はリアルな現実の世界を知りたいというニーズがこれまで以上に高まってくるはずです。そこで、リアルな世界とデジタルの世界を繋ぐための手法として、「Beacon」や「IoT」と呼ばれるテクノロジーが注目されています。


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Beaconを活用したアプリ開発の意外な落とし穴

Question

Beaconの話題が出ましたが、Beaconはどんな領域で活用されているのでしょうか。

Answer

岡村 正太 氏

 活用例としては大きく2つあります。1つが「エリアの制限」、そしてもう1つが「証跡」として活用する用途です。

 エリアの制限については、特定の場所を訪れて初めて機能が有効になるといった使い方です。一番多いのはカメラの制限で、MDMとプロファイルを連携することで撮影許可エリアと禁止エリアを制御することが可能になります。具体的には、通常はカメラを禁止にした状態で使ってもらい、特定のエリアだけはテレビ会議のアプリを使えるようにする、といったものが例として挙げられます。また、コンテンツの提供という使い方もエリアの制限によって可能になります。例えば美術館内の特定エリアにいけば情報が入手でき、そこから離れると30分でコンテンツが消えるといった使い方です。

 証跡については、きちんとその場所に訪れたかどうかをチェックする所在確認に利用する使い方です。例えば広大な敷地にあるプラント内の点検管理業務に応用すると、本当にその場所に行って点検管理しているのかどうかが正確に判断できるようになります。最近では日本の企業も海外進出する機会が増えていますが、海外に建設した工場の点検作業は現地の方が行うのが一般的。その場合、サボる人が出てきてしまうケースがあるため、本当にその場所にいってチェックしているのかを証跡から辿るということが有効になってきます。なお、iOSの場合はiBeaconと呼ばれる規格が採用されており、今は多くの企業が自社の業務に適用できるかを検証している段階です。これから具体的な実例も数多く登場してくることでしょう。

Question

法人向けにiBeaconのソリューションを提供しようと考えたのはなぜですか。

Answer

 以前から業務アプリを構築してきた実績があるというのが前提ですが、個人と比べて法人向けであればBluetoothを強制的にONすることが容易であり、アイデア次第で様々な業務に応用できると考えたからです。逆に、OFFの状態ではカメラなど使いたい機能が十分に活用できないという状態におくことも可能です。今はBluetooth Low Energy(BLE)に対応したデバイスも多く、電源もそれほど消費せずに使えるようになっているのも大きなポイントです。

Question

iBeaconを活用したアプリ開発で注意すべきことはありますか。

Answer

 特にセキュリティ対策は重要だと考えています。世の中にはBeaconを検知する仕組みが数多くあり、Androidアプリの中にはUUIDなどBeaconの発する情報をそのまま見ることが可能なアプリも出回っています。そういったことが可能なことをしっかり認識した上で、アプリケーション側で工夫するなり暗号化するなりして、業務のトリガーに変えるということが必要です。

 ただし、そもそもBeacon自体から機密性の高い情報が出ているわけではありませんので、漏れてもさほど問題にはならないという前提でアプリやサーバ側の設計を行っていくことが大切です。どちらかというと、オンサイトで減衰とか干渉を考慮した電波調整をきちんと行うことの方がポイントになります。

Question

オンサイトでの調整でどんな点に注意する必要がありますか。

Answer

 少し厄介なのは、実際の処理が、電波やOSアプリなど様々なものに依存してしまうということです。これは開発者でないとわからない部分で、発注側からしたら「何秒間隔でBeaconの電波をチェックする」といった細かな部分は見えていないものです。とりあえずBeaconを検知したらアプリが反応することは事前に確認できたとしても、いざ現場に持っていくと全然認識しない、逆にかえって反応しすぎるといったことも起こりうるのです。複数のBeaconを検知した際の処理方法などもアプリの作り方次第ですので、仕様を的確に把握しながらアプリを作るというのはとても大変な作業なのです。だからこそ、我々はその部分をSDK化することで安定して使えるようなものを準備しています。ルールも仕様も理解している人がアプリの企画から担当することがとても重要なことです。

Question

他にアプリ開発での注意点はありますか。

Answer

岡村 正太 氏

 今はBeaconに関する様々なSDKが入手できるようになっており、製品によっては複数ベンダのBeaconに対応しているものもあります。ただし、Beaconといっても様々なものがあり、どういうBeaconに対応しているのかはしっかりチェックしておくべきです。オフラインでも使えるのか、オンラインでしか使えないのかといったことも見ておく必要があります。本来Beacon自体はBluetoothであり、オフラインであっても普通に情報を検知することは可能です。しかし、検知後にオンライン上で確認しないと動かないといったSDKもあり、この場合はオフラインでは使えなくなるなど、その動作はSDKによってまちまちです。

 また、Beacon自体にも注意が必要です。iBeaconに対応していると謳われているものの、実際はBluetoothを送信するタイミングが規格の推奨通りに行われていないものも少なくありません。本来であれば100mm/秒ごとに信号を出すことが推奨されているのですが、電池を長く持たせるためなのか、700mm/秒の間隔でしか信号を出さないものもあります。あくまで強制ではなく推奨ですので、規格外というわけではありませんが、そういったものが含まれていることを見越した上でアプリ開発を行っていく必要があります。

Question

他にBeacon活用で注意すべきことはありますか。

Answer

 ログが取得できることが重要なBeaconですが、どういうログが必要なのかをきちんとイメージしておくことが重要です。例えば、ある移動の履歴を詳細に取得したいのに、10秒に1度だけしか検知しないようなアプリを作ってしまうと、その間の詳細な情報は検知できません。逆に、あまり詳細にログを取りすぎるとシステム側の負荷が高まります。ログの取得結果を見て「思っていたものとは違う」とがっかりするようなことは避けたいところです。

 他にも、設置された場所にある障害物によって引き起こされる電波減衰への対策をはじめ、設置されたBeaconが持ち帰られてしまった場合や電池切れなど、Beacon自身の運用管理・死活監視など、活用については留意すべき点はいろいろありますので、ある程度運用でカバーしていくということを念頭におくべきです。電池切れなどは1年ごとにすべて電池を強制的に取り替えるという運用にしておけば、電池切れのリスクも最小限におさえることができるはずです。

Question

自社で行う業務効率化の目的でiBeaconを活用した案件はありますか。

Answer

 例えば行動解析の目的で活用したお客さまでは、店員の方がスマートフォンを持ち、バックヤードやレジ、店頭に備え付けられたBeaconからの信号を受信することで、誰がどのエリアにどれだけいたのかということを把握し、このログを解析することで業務効率化に活かそうとしています。例えば、バックヤードに長くいるということは、実は商品が店頭に足りておらず、長い間お店の裏で商品を探さざるを得なかったという仮説を導きだすことが可能です。実はこのデータはこれまでどこにも残っておらず、Beaconを導入して初めて可視化できる部分です。こういったことをつぶさに行動解析していくことで、効率化に繋げていける可能性を秘めています。

Question

リアルな行動解析については期待できる部分ですね。

Answer

 Webの世界ではアクセス解析などを用いることでデジタルにおける動線分析をしっかり行っていますが、リアルな動線分析はこれまで情報がありませんでした。つまり、店舗の中で何が起きているのかはブラックボックスだったわけです。これをきちんと分析できる手段として注目されるのがBeaconなどを用いた行動解析です。これまでWebの可視化やデジタルマーケティングに多くの時間とコストをかけてきましたが、リアルな行動の可視化についてはこれからの分野です。このブラックボックスに対する意思決定はなかなか難しい部分ですので、リアルな行動分析から得られる情報は有意義だと考えています。Beaconはこれからも様々な目的で利用が促進されることでしょう。


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取材協力

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2006年創業。スマートデバイス向けのアプリ開発では100社600アプリ以上の開発実績を持つだけでなく、法人向けにタブレット活用のためのプラットフォームやBeacon管理プラットフォームなども提供。昨今は、ウエラブル・IoT・AIにも積極的に取り組んでいる。


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