赤外線でも発電できる、太陽電池の新色素

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赤外線でも発電できる、太陽電池の新色素

本記事はモノづくりスペシャリストのための情報ポータル MONOist から転載しています。

田中貴金属は色素増感太陽電池用の色素「DX(ダイエックス)」の製造を2015年1月から開始、年初から販売する。特徴は従来の色素が利用できなかった近赤外光を吸収し、電力に変えることができること。電流値が25%増加するため、色素増感太陽電池として最高性能を狙うことができる色素だという。

TANAKAホールディングスは、グループで製造事業を展開する田中貴金属が太陽電池用の色素の製造を2015年1月から開始、販売を2015年年初に始めると発表した。
 田中貴金属が製造するのは色素増感太陽電池用の色素「DX(ダイエックス)」。東京大学先端科学技術研究センターの瀬川浩司教授のグループが開発したものだ。同大学からライセンスを受けて、DXの特許を共同出願し、製造、粉末の形で販売する*1)。
 目に見える可視光以外に、目に見えない近赤外光を発電に利用できることがDXの特徴。取り出すことが可能な電流が増え、変換効率も高くなる。これまで色素増感太陽電池は室内光で有利だとされてきたが、DXを利用すると屋外光に強い太陽電池を開発できる。
 2014年9月時点で公的に認められている色素増感太陽電池の世界記録(変換効率)はシャープの11.9%。「この記録が目標である。ルテニウム錯体色素であるDXを利用すると10.0%以上の変換効率を実現できる。室内光ならば15〜20%を狙うことが可能だ。太陽光の2分の1の強度の光で高性能という太陽電池を作り上げることもできる」(TANAKAホールディングス、図1)。
*1)「現在DX1〜DX3などの分子を用意している。いずれも分子の骨格は同じであり、末端の構造が多少異なる。このうちどれを販売するかは未定である」(TANAKAホールディングス)。

図1 東京大学で試作した色素増感太陽電池モジュール 寸法は10cm角。 [ 出典 ] TANAKAホールディングス
吸収できる光の幅が広い

色素増感太陽電池(図2)は、シリコン太陽電池などとは異なり、色素分子の構造を最適設計することによって、変換効率を高めることができる*2)。今回は色素増感太陽電池で広く使われているルテニウム錯体色素の欠点をうまくカバーした形。欠点とは近赤外光を吸収できないことだ。
 図3に太陽光のスペクトル(青線)と、色素が吸収可能な波長(黄色の網掛け)を示した*3)。従来の色素が吸収できる波長は800nmが限界だった。DXは800nm〜1200nmの近赤外光を吸収できることが分かる(効率的に利用できるのは1000nmまで)。スピン反転励起を利用して長波長側に200nm程度拡張できたことが大きいという*4)。
 その結果、太陽電池が生み出すことのできる光電流値が25%増加し、有機系太陽電池として世界最高の電流値、30mA/cm2を実現できたと主張する。
*2)色素増感太陽電池では電極の他に二酸化チタン(TiO2)と色素、電解液、ヨウ化物イオン(I−、I3−)を利用する。「色素の量は一般に太陽電池の面積1m2当たり、1g弱だ」(同社)。
*3)太陽光にはさまざまな波長の光が、異なる強度で含まれている(スペクトル)。波長が短い近紫外光(波長300nm程度から)の強度は低く、波長380nm〜770nmの可視光が最も強い。2100nmまでの近赤外光の強度は可視光よりは低いものの、発電に利用できる強度を備えている。
*4)分子が光を吸収して励起(エネルギーが高い状態)されると、電子スピンの向きが保たれた励起一重項を生じる。励起の際に電子スピンが反転して励起三重項を直接生じる遷移がスピン反転励起。

図2 色素増感太陽電池の一般的な構造 [ 出典 ] TANAKAホールディングス
図3 太陽スペクトルと色素が吸収可能な波長 [ 出典 ] TANAKAホールディングス

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