コミュニケーションを重視したオフィス整備

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

コミュニケーション戦略に基づく次世代オフィスの作り方

2014/12/11

ワークスタイル変革においては、モバイルワーク/テレワーク環境の整備だけでなく、オフィス環境の見直しも求められる。しかし、明確な戦略や思想がなく、漫然とオフィス整備に取り掛かるようでは、かえって従業員の生産性を下げてしまう要因にもなりかねない。「組織と個人の関係性」を重視したコミュニケーション戦略の考え方とは?

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大倉 清教 氏

代表
大倉 清教 氏

オフィスのデザインは、ワークスタイル計画と同義

Question

オフィス環境が社員1人ひとりの意識や業務効率、ひいてはチーム全体、そして、企業全体の生産性に影響を与えることは誰しも概ねは理解しているものと思いますが、改めて整理するとすれば、具体的にはどのような関係性でとらえるべきだと言えますでしょうか?

Answer

ケプラデザインスタジオ:大倉 清教 氏

通常、建築のデザイン・設計というものは、例えば、土地の面積や建ぺい率・容積率がどれほどか、出入り口はどの方角になるかなど、まずは“外側”から考えていくことになります。しかし、用途などもきちんと考慮しなければ、非常に使いにくい空間構成や間取り、動線になりかねません。逆に言えば、建物の間仕切りの角度や部屋の明るさなど、ちょっとした違いで、中の人の動きや心理状態まで変化してしまうわけです。もちろん、実際にはなかなか意図通りにはいかないのですが、少なくとも、制御できる可能性がある、力を持っているとは言えるでしょう。そういう観点から、オフィスのデザインに関しては、空間や情報システムをどのように使うかというワークスタイル計画と同義であると認識すべきであり、企業活動に基づいて、その中で働く人々の活動を反映する必要があります。つまり、オフィスを“内側”からデザイン・設計するということです。

“内側”から考えるということは、当然ながら、その時代のビジネス戦略を反映したものとなるはずです。従来は、オフィスで働く人たちは、“労働力”、極端に言えば、生産設備と同じようにとらえられていたという面が少なからずあったと思います。そのため、合理化などの企業側の考え1つで、人事異動で人を動かしたり、レイアウト変更で部署ごと場所を移動させたりといったことも頻繁に行われていたかもしれません。しかし、現在では、正当な理由がなく、勝手に動かすようでは、働く人のモチベーションを下げたり、チームワークを乱すことになります。また、多くの企業では従来の生産性や効率だけを求めたコスト削減への行き詰まり感を抱いており、根本的に事業を見直すことで、今までと異なった付加価値を生み出し、社会的意義のある「変革=イノベーション」をもたらしたいという指向も強まっています。こうした背景のもと、オフィスに新しい考え方と仕組みを取り入れ、人のつながりを作り上げるための“場”を作るということが非常に重要視されるようになってきているのだと思います。

Question

コストメリットよりも、働きやすい場所を作ることが重要だと考えられるでしょうか?

Answer

いいえ。私たちの仕事は、働く人のための空間はどうあるべきかを考えるわけですが、その一方で、企業はオフィスに投資を行うわけですから、それに見合った結果を求めることも当然だと思います。そのため、社員の方々の働きやすさを追求しつつ、企業全体でどれだけ生産性を高めて、収益向上につなげられるかということを常に相乗的に考えています。

従来、ファシリティマネジメントの目的は、オフィスビルのライフサイクルコストを圧縮し、経営に貢献するためにオフィスの計画から移転、施工コストなどのイニシャルコストを抑え、更に維持メンテナンスなどの運用コストを最小化することでした。例えば、約600人収容、床面積6500平方メートルのオフィスビルのコストを試算した場合、初期コストは約15億円、それを60年間使用した場合の維持運営コストは約72億円となり、維持運営コストは初期コストの5倍ほど必要になります。このコストをいかに圧縮するかは、確かに経営にとって重要なテーマと言えるでしょう。

しかし、一方で、そこで働く人々に支払われる人件費が、オフィスビルの初期コストと維持運営コストを合計したランニングコストの約20倍近くに及ぶことを考えれば、ワーカーの知的生産性を高めることが、企業にとって重要課題だと理解できるはずです。いささか乱暴な計算でありますが、ワーカーの知的生産性を5%向上させるだけで、ライフサイクルコストをペイしてしまうわけですから。もちろん、これは何も今に始まったことではないはずですが、従来はワーカーの知的生産性とオフィス環境のかかわりを投資対効果で明確化することが難しかったため、数値で表しやすい「経費削減」だけが、管理者の評価につながり、知的生活やコミュニケーション活動を支援するオフィス環境の質的整備は後回しにされてきたと言えるのではないでしょうか。


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「正確な情報を決断力のある受け手に渡す」ための仕組みづくり

Question

人のつながりを作り上げるための“場”という話がありましたが、コミュニケーションを重視したオフィス作りが求められるということでしょうか?

Answer

ケプラデザインスタジオ:大倉 清教 氏

ICTの発達によって、どこにいても仕事ができるようになってくると、オフィスすら不要になるのではないかという考え方も出てくるでしょう。しかし、そうではなく、改めて「人が集まることでもたらされる効果」というものを見直していくべきだと思います。情報処理と通信技術が発達した現代のビジネス活動の拠点としてのオフィスの存在価値は、人と人が集まるコミュニケーションの場としての役割にあるのです。ビジネスに成功をもたらすためには、正確な情報を決断力のある受け手に渡すという単純な情報伝達の仕組みをあらゆる場面で展開することが不可欠だと考えます。そして、迅速で的確なコミュニケーションによって、意思決定の正確性を高めるあらゆる努力を惜しまないことが必要です。

このように考えると、オフィス計画を極論すれば、「正確な情報を決断力のある受け手に渡す」ための仕組みづくりであるといっても過言ではないでしょう。最近では同じオフィスにいる社員どうしであったとしても、やりとりの主体は効率のよいメールなど、バーチャルなものになっていることも多くなっているかと思います。もちろん、それはそれで問題ないのですが、そうした情報の正確性を高めるためには、やはり、フェイス・トゥ・フェイスをベースとしたコミュニケーションが今まで以上に重要になってきます。特に、定例会議のようなフォーマルなコミュニケーションよりも、ふとした出会いで交わされる非公式なインフォーマルコミュニケーションのほうが、タイムリーに「(正確な) 本音」の話が交わされるという意味で、その活用が模索されるようになっており、ワーカー同士が自発的に集まるサロンやリフレッシュの場として設置する企業が増えているのです。

Question

そうした様々な場を作っていく際、基本的にはどのような考え方をもとに取り組んでいくべきだと言えるでしょうか?

Answer

オフィスには基本的な3つの場が必要だと考えます。まず、個人が集中できる場、そして、ほかの人と会話をしながら新しいことを生み出すための場、更にもう1つは、いわゆるマグネットスペースと呼ばれるものですが、人が自然と引きつけられるような場です。マグネットスペースを作るためには、例えば前述のようにリフレッシュの場を設けるなど、様々なアプローチがありますが、総じて「情報が集中する場」ととらえるのがよいと考えています。コンピュータなどでも、様々な“処理を実行”するCPUのほかに、“情報の交換”を行うためのインターフェース、“情報を蓄積”するストレージが必要ですが、それと同様だと言えるでしょう。従来は、この3つの機能が執務スペース、会議室、資料室などとして、きっちり間仕切られていることが多かったわけですが、今はその間仕切りが取り払われ、1つの場になっていくという方向性になっています。ただ、当然ながら3つの機能は必要なので、サロンなどに形を変えながら、しかも、その中で互いの機能が相容れることで、全体的にはコミュニケーションのためのスペースを拡大していくというイメージになるかと思います。


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「多様な人材が交流できる場」を豊富に持つことが重要な経営資源に

Question

これからのオフィス作りにおいて、そのほかに考慮すべき点などはありますでしょうか?

Answer

ケプラデザインスタジオ:大倉 清教 氏

企業は知的生産や効率を高めたい、その一方で、働く人たちはなるべく自由に、仕事をやりやすいような環境を整えてほしい、そのことによってモチベーションを高めたいと考えます。先ほど、企業と働く人のそれぞれの立場を考えているという話をしましたが、実際には両者のギャップは非常に大きいとも言えます。しかも、現在ではICTの存在が働き方だけでなく、ワーカーの意識にも変化を与えており、大量の情報が氾濫する変化の激しい社会においては、その中の組織や個々のワーカーは、自己の存在を埋もれて見失われないようにする必要が生じています。従来のような指示命令による受動的な業務とは異なり、自ら実行し責任を持てるような、自主性を重視した仕事のしかたに変えなければならないでしょうし、また、従来にない新たな価値を創出するために、ほかの人々とジャンルを超えて連携する必要もあるでしょう。個としての存在価値を示す専門性を保持しながら、異なったジャンルが共に協業する「自律・協調」の働き方を実現できるような環境が求められるというわけです。

また、オフィスが単なる事務作業の場ではなく、独創性や創造性を持って変革を生み出す場になっていくとすれば、多様性を受け入れられるばかりか、むしろ、それを育むことが可能で、また、組織の変容にも柔軟に対応できるような、「多様な人材が交流できる場」を豊富に持つことが重要な経営資源になると言えるのではないでしょうか。具体的には、私は「工業化社会からの脱却」だと考えます。現在でも多くの企業のオフィスは工業化社会の域を脱しておらず、「ムリ」「ムダ」「ムラ」をなくした工場のような効率や生産性を求められています。しかし、オフィスで働く人間は機械ではないのですから、多少のムリをすることで独創性を育む「こだわり」を生み出し、多少のムダで変化に対応する「ゆとり」を作り、多少のムラで、豊かな発想を生む「あそび」を創出できるようにすべきではないでしょうか。

オフィス計画は、人間の五感の働きを反映し、様々なバランス感覚をもって調整されなければならず、そして、人間の能力を最大限に発揮するには常に感性を刺激する環境が必要となります。その上で、仲間との交流や連携を生み出すコミュニケーションの場が最も重要であり、このような場をいかに保有し、活用するかが、企業にとって重要課題であり、変革を指向するこれからのオフィス計画の命題になっていくと言えるでしょう。


●ありがとうございました。


取材協力

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日本全国にわたる企業のデザイン開発に携わり、空間デザインとプロダクトデザインを主体にジャンルを問わない幅広いデザイン活動を展開している。近年は、全国のオフィス計画をはじめ、官公庁庁舎、研究所などの内側から建築要件を設定する仕事に注力。特に大阪市や神戸市からの委託業務も推進し、京都府や滋賀県の伝統産業のデザインによる活性化も努めている。


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