北欧ではなぜ高い労働生産性を維持できる?

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

北欧ではなぜ“高い労働生産性”を維持できるのか

2014/10/16

海外では自由度の高い働き方が浸透している印象があるが、特に北欧には“ワークスタイル変革先進国”が数多く存在するという。昨年、北欧の人材マネジメント研究に従事し、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドへの現地取材も実施されたリクルートワークス研究所の長島一由氏に、そうした北欧のワークスタイル事情や日本が参考にすべき点などについて伺った。

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長島 一由 氏

株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所
主幹研究員兼編集長
長島 一由 氏

世界幸福度ランキングで上位を占める北欧の国々

Question

長島さんは、逗子市長や衆議院議員として政治に携わったのち、リクルートワークス研究所で昨年は、北欧の人材マネジメント研究、今年度は次世代シニア(バブル大量採用世代、団塊ジュニア)研究に従事されていますが、雇用・労働環境に関してはどのような考えをお持ちでしょうか?

Answer

リクルートワークス研究所:長島 一由 氏

リクルートワークス研究所では、新しい時代の「経営」「人事」「キャリア」をテーマに、半歩先の情報を掲載する機関誌として「Works」を隔月で発行しています。私はその編集長であるとともに、主幹研究員も兼務しており、現在はシニアの雇用・労働政策、1年前は北欧の教育や雇用・労働政策に関する研究・調査活動を担当していました。そして、いずれのテーマにおいても、「キャリア自律」ということが共通のキーワードになると考えています。

昨年にはスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドを訪問し、その成果を特集「北欧流時間価値の創造」として昨年12月発行のWorks(121号)にも掲載したのですが、特に印象的だったのは、各国とも共通してキャリア自律しやすい仕組みが確立されており、「時間価値を最大化する社会デザイン」になっているということです。そのための重要なポイントとなっているのが、教育と就業の連携によるマッチング、そして、セーフティネットだと言えるでしょう。就職や転職を「教育と就業の大きな山」ととらえ、1度目の就職はもちろん、2度目以降の転職に関しても、手厚い失業保険と充実した職業訓練というかたちでセーフティネットをしっかり提供することで、人生で3回、あるいは4回以上、転職を繰り返して「適職」探しができる社会デザインになっているというわけです。

Question

北欧に着目されたのは、どのような理由からなのでしょうか?

Answer

2011年にブータンのワンチュク国王夫妻が来日された際に、同国が指針とする「国民総幸福量」というものが話題になりましたが、その一方で、国連がまとめた2013年の世界幸福度ランキングを参照すると、デンマーク、ノルウェーが1位と2位を占め、スウェーデン、フィンランド、そして、アイスランドも10位以内に入っています。また、OECD(経済協力開発機構)の世界幸福度ランキングではスウェーデンが1位で、ほかの各国も10位以内に収まっているのです。それ以降、「なぜ、北欧では幸福度が高いのか」というテーマに関心を持ち、研究・調査を行ううちに、「1時間あたりの労働生産性」と「年間総労働時間」などとも関連があるのではないかと考えました。

デンマーク、スウェーデン、フィンランドは、日本よりも労働時間が短く、1時間あたりの労働生産性は高くなっています。ノルウェーは更にその傾向が強くなりますが、これは産油国であるという事情も関連しているでしょう。いずれにせよ、デンマーク、スウェーデン、フィンランドでは、前述のような傾向があり、人材マネジメントや働く側の意識、あるいは社会や政治などの制度面を見ても、非常に合理的になっています。幸福度と労働生産性に科学的な関係性があると言い切れるほどのデータが揃っているわけでありませんが、日本では国連の世界幸福度ランキングで43位、OECDのランキングでも21位ですから、大いに参考になる部分もあるのではないか、考え方や仕組みなどを取り入れる価値があるのではないかと考えたのです。


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3要素によるプラスのスパイラルが高い労働生産性を生み出す

Question

なぜ、北欧各国ではそのような高い労働生産性を実現できていると考えますか?

Answer

リクルートワークス研究所:長島 一由 氏

まず、先ほど述べたように、多くの人が「適職」に就けるような社会構造になっていれば、社員1人ひとりが自分の関心やスキルに見合った仕事ができるため、要領を得やすく、それだけ1人ひとりの労働生産性も高くなるということは容易に想像がつくでしょう。それに加えて、職場環境における「自由度」の高さ、そして、効率的・合理的な「タイムマネジメント」という3要素によるプラスのスパイラルが時間価値の最大化、つまりは高い労働生産性を生み出していると考えます。

Question

自由度の高い職場環境の構築に関しては、日本の企業でも、テレワークやモバイルワークなどの活用により、働く場所や時間に柔軟性を持たせようという、いわゆるワークスタイル変革が注目されていますが、そういう観点で参考にすべきところなどはありますでしょうか?

Answer

自由には責任がともなうものですが、最も重要なのは、従業員自身の自由意思に基づいて働く「自律性」と、企業の風土やルールという「他律性」との折り合いをいかにつけるかだと思います。北欧での取材では、この両者のバランスをうまく保っている企業が非常に多かったのですが、日本では細かな縛りにとらわれすぎていて、「他律性が強すぎる」傾向があるのではないでしょうか。

また、関連する問題として、日本では成果主義はうまく定着しないとも言われますが、もし、成果主義が機能していれば、「しっかり結果を出せるなら、働く場所や時間は自由でかまわない」という流れになっていくものです。日本で成果主義が成功しづらい理由の1つとしては、「退出ルールがない」という点も挙げられるでしょう。海外では、自分にとって適職でなかったり、自分に合った職場でなければ、ほかの企業へ転職すればいいという社会だからこそ、成果主義もうまくいくわけですが、そうではなく、退出ルールがしっかり確立されていない状態で成果主義を導入しても、成果が低い人はずっと低いままになってしまいかねず、結果として失敗に終わってしまうというわけです。


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休暇制度の活用もキャリア自律を支える重要な要素に

Question

そのほかに、北欧では日本と比較してどのような違いがあると言えますでしょうか?

Answer

リクルートワークス研究所:長島 一由 氏

「働き方」とは言いますが、その裏返しで「休み方」も重要なのではないかと思います。特にサバティカル、つまり、長期休暇に関する違いは大きいでしょう。休み方が非常にうまいという印象です。もちろん、気候や日照時間などの違いも多少は関係しているでしょうが、長期間の休みをしっかりとって、人生の中での時間の使い方を上手にできるための仕組みができあがっているのです。例えば、フィンランドには「交代休暇制度」というものがあります。勤続10年以上の従業員は、目的は問わずに休職することができ、その間、国から給与の60%が支給されるのです。しかも、必ず同じ職に復帰できる権利も保証されています。

この制度は従業員のモチベーション向上と、失業者に対する就労機会の提供という目的のもとに実施されており、企業にとっては、従業員が休職期間中のコスト負担は必要ないものの、休職した社員の穴埋めとして無職者を必ず雇用しなければなりません。これは終身雇用のあり方の違いとも言えるでしょう。日本では終身雇用を享受しようとすれば、基本的には退職することなく、一生同じ会社に勤務する必要があります。しかし、交代休暇制度のもとでは、一度休職しても、また復職できるというかたちで、終身雇用が貫かれているわけです。また、スウェーデンなどでも同様の法的な制度があったようですが、現在では企業が自発的に行うようになっています。

単純に休んでもいいし、今の職業が適職かどうかの検討にも活用でき、更に驚いたのは、休職期間中に起業して、事業がある程度軌道に乗った時点で兼業しながら復職するといったケースもあるということです。しかも、そうしたケースにおいては、起業を通じて新たなスキルを積んだという理由から、その社員を昇格させることも少なくありません。長期休暇はもちろん、兼業などに対する考え方や文化も全く異なると言えるでしょう。

Question

そうしたキャリアに対する考え方を日本ではどのようなかたちで取り入れていくべきだと言えるでしょうか?

Answer

長期休暇などの制度が整備されていれば、次のキャリアのための準備として、新たなスキルを積むことにもつながるというのは、あくまでも1つの例にすぎません。しかし、大きな考え方として、いつでも自分に合ったキャリアを選択できるような仕組みを整えておくということは、日本にとっても非常に大事だと思います。

シニアというテーマにおいてもキャリア自律が重要となるという話をしましたが、平均寿命の伸びや年金開始年齢の引き上げといった要因もあって、今後は従来の定年にとらわれることなく、75歳、あるいはそれ以上の年齢まで働くことがめずらしくない時代が来ると思います。そういう意味では、若い人たちはもちろん、定年後の方々も難なくセカンドキャリアへと踏み出せるような人材マネジメントの仕組み、キャリア自律ができる仕組みを、日本企業も積極的に取り入れていく必要があると感じます。旧来型の日本的な雇用環境のままでは、いずれ立ち行かなくなってしまうのではないでしょうか。


●ありがとうございました。


取材協力

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株式会社リクルートホールディングスの中にある、1999年1月に設立された、人と組織の「新しいコンセプト」を提起する研究機関。リクルートグループの中・長期人材ビジネスの基礎研究、及び、「人材マネジメント」や「労働市場」における情報発信・提言活動の推進などを行っている。


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