営業改革を実現するための、生産性の考え方

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

営業現場の改革を実現するための「生産性の考え方」

2014/12/18

少し前に「タブレット端末で営業改革」と意気込んだものの、結局はうまく定着できなかったという企業は少なくない。新たなツールの活用、ワークスタイルの変革などによって「営業現場の業務効率化・生産性向上」を図るためには、本来、どのような進め方が望ましいのだろうか。そのためには、「営業の効率化」が意味するところを改めて考える必要がありそうだ。

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株式会社野村総合研究所:田口 孝紀 氏

コンサルティング事業本部 経営情報コンサルティング部
ビジネス・テクノロジーグループ グループマネージャー
田口 孝紀 氏

何らかの「トリガー」がなければ、ワークスタイル改革を進めるのは難しい

Question

貴社では、様々な企業に対してコンサルティングを実施されているかと思いますが、近年ではどういった課題や意識を持った企業が目立っていると感じられるでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:田口 孝紀 氏

私は経営情報コンサルティング部という部署で、業界を問わず、全社レベルでの業務改革やワークスタイル改革、あるいは、それらにともなうシステム設計・開発の上流工程のコンサルティングに従事しています。そうした立場から見て、最近は景気動向もあって前向きな動きが目立つようになってきたという印象を持っています。例えば、ワークスタイル改革に関しては、3〜4年ほど前から引き合いをいただくようになっていましたが、当時はコスト削減を目的とするケースがほとんどでした。フリーアドレス化を行うにしても、その分、オフィススペースを縮小したい、あるいは、ペーパーレス化も経費削減の一環だという意識が多かったのですが、昨今では比較的前向きな考え方、つまり、働きやすい環境を提供することで生産性を高めたい、ナレッジ共有の効率化を図りたいといった形が増えてきているイメージがあります。

その中で、タブレット端末の活用などに目を向けると、全社、あるいは部門内の全員にとりあえず配布してみようという営業改革の取り組みも、3〜4年前に盛り上がりました。ただ、そういう展開の仕方では、一時的には皆が興味を持って使ってみるのですが、結局のところは「うまく業務活用できなかった」「時期尚早だった」と結論付け、改革を実行できなかった企業も多いのではないかと思います。しかし、最近はタブレット端末だけを無責任に展開するのではなく、裏側のシステムやチェンジマネジメントの施策、研修制度なども整備しないと効果は出ないという意識を多くの方が持たれており、きちんと「果実をとる」ようなタブレット活用、あるいは、それを基点としたワークスタイル改革に取り組むようになってきています。

Question

ワークスタイル改革の案件は数年前から出てきているということですが、日本企業全般などで見た場合の普及度や意識の浸透といった点に関しては、どのような印象をお持ちでしょうか?

Answer

業種・業界単位で傾向が分かれるかと思います。例えば、医薬品のMR(Medical Representatives)や金融機関の営業担当、更にはメーカーであれば、例えば飲料系の営業部門などでは早い時期から取り組みが始まっていました。そうした業界の中では、どの企業も同じような問題意識を抱えているものですから、どこかの企業がいち早く取り組むと、同じ業界内の企業へと徐々に波及していくという流れになります。ただ、日本企業全般で見た場合には、やはり、まだごく一部でしか取り組まれていないテーマであると言えると思います。

その理由の1つには、「何もないところから、いきなりワークスタイル改革をやろう」と言い出すのは難しいということが挙げられると思います。何らかの「トリガー」、例えば、本社移転、経営統合、業務統合などといった企業全体での大きなプロジェクトに着手するタイミングに合わせて、ワークスタイルについても改めて考えてみようというのが、よくある1つの流れではないでしょうか。また、もう1つのトリガーとしては、トップの鶴の一声というものもありえます。経営企画、総務、情報システム部門などから声を上げて推進していくには、大きく、難しすぎるテーマですが、トップ主導で「社員がもっと効率的に働けるようにしたい」「ワークスタイル改革というものを検討せよ」と発信した場合には、比較的スムーズに進んでいくというケースが多いようです。


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ワークスタイル改革を成功に導くための「4つのステップ」

Question

ワークスタイル変革に取り組む場合、どのような手順で取り組むのが望ましいと言えるでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:田口 孝紀 氏

ワークスタイル改革を進める際には、大きく分けて、「診断」「構想策定」「仕組み設計」「現場定着」という4つのステップで進めるべきだと私たちは提言しています。まず、業務量や紙使用量の調査などを実施した上で、企業風土なども配慮しつつ、現状を把握する。それから、何をやりたいのかという構想をきちんと練る。その上で、実現するための仕組みを設計する。そして、最後のステップは、完成した仕組みを現場に定着させるための様々な取り組みということになります。

図1 ワークスタイル改革の進め方「成功の4ステップ」
図1 ワークスタイル改革の進め方「成功の4ステップ」
出典:野村総合研究所、2014年12月

よくありがちな失敗として、「もの」ありきで入ってしまうということが挙げられます。例えば、何の狙いもなくオフィスの環境だけを変えてみよう、あるいは、先ほども触れたようなタブレット端末などを入れてみようという現場展開の仕方です。その結果、実際に何が起きるかというと、瞬間的には一定の効果が得られます。ただ、そもそも業務をどう変えたいのか、どういう狙いがあったのかといった、4ステップのうちの上流工程のビジョンが固められていないため、最終的には迷走し、新たなワークスタイルは定着せずに、必ず“リバウンド”、つまり、一度は顕在化した効果が水泡に帰してしまうものです。

当然ながら、ワークスタイル改革の目指すところは瞬間的な効果ではなく、新しい働き方が現場の方々の間で根付くことにあります。そのためにはやはり、説明した4つのステップで進めるということが重要でしょう。更に、もう1つ、最後の現場定着については、長い目で見るということも求められますから、計画に沿って推進できているか、一定の効果が上がっているかといったPDCAを管理するための体制づくりも必要になるかと思います。

Question

専任の部署を設けるといったことが求められるのでしょうか?

Answer

なかなか片手間でやるのは難しいと思います。実際、私たちが依頼を受けたり、提案を行った案件では、業務改革○○部、業務プロセス○○部といった名称で、トップ直属の全社横断型の専任組織を作り、そこでプロジェクトの全体的な推進とともに、PDCAの管理を行うというケースが多くなっています。


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そもそも営業の効率化とはどういうことなのかを改めて考えるべき

Question

特に「営業現場の業務効率化・生産性向上」などを目指す場合には、どのような点に留意すべきだと言えるでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:田口 孝紀 氏

どの業務でも同様ですが、特に営業部門に関しては、現場のことは現場にしか分からないという“こだわり”が強いと思います。そのため、「構想策定」「仕組み設計」といった作り込みの段階から、現場の方々のニーズをしっかりと汲み上げた上で、施策を練っていくということがより重要です。実際、営業の効率化を図るために企画部門でそれなりに熱心に検討した上で、タブレット端末上で電子カタログや試算シミュレーションツールなどを使えるようにして現場へ展開したものの、実際に営業現場へヒアリングしたら「ほとんどグーグルマップしか使っていない」という笑えない話も多々あります。もちろん、その現場の方にとっては、営業周りの業務に電子地図を活用することは、ある意味で革新的であり、効率化も実感されているのですが、もともと想定していた効果ではないという点では、あまり望ましい結果とは言えないでしょう。

そもそも営業の効率化とはどういうことなのか。端的に言えば、総投入時間あたりの付加価値、つまり、営業生産性を向上させるという話になります。しかし、もう少し細かく見ていくと、「総投入時間におけるノンコアタイムを減らし営業時間を増やす」「営業時間あたりの訪問件数を増やす」「訪問件数あたりの成約件数を増やす」「成約件数あたりの粗利率を増やす」といったプロセス指標に要素分解できます。ただ単に生産性向上と言っても人により解釈が異なる可能性が高いため、これらのプロセス指標の中でどの部分の改善に取り組むのかということについて、営業の現場としっかり議論する必要があります。

図2 営業生産性の考え方
図2 営業生産性の考え方
出典:野村総合研究所、2014年12月

例えば、「外部からの情報アクセスやペーパーレス化により、総投入時間に対して営業時間に割ける時間を増加」させるのか、「営業稼働率の向上により、訪問できる営業先を増加」させるのか、「営業の高度化、つまり、商品の適切なレコメンデーションや社内成功事例の活用により、成約件数を増加」させるのか、あるいは「商品の適切なレコメンデーションや遠隔地からの技術営業支援により、クロスセル・アップセルが増え粗利額も増加」させるのか。営業生産性というものをプロセス指標に要素分解し、「何を実現したいのか」を明確にした上で、営業現場に分かりやすい施策として落とし込む必要があるというわけです。

また、営業活動に関しては、業務効率や生産性が向上して終わりというわけではなく、自分たちの顧客にメリットを提供し、顧客満足度を向上させることが本当のゴールだと思います。例えば、顧客にとって適切なタイミングで提案する、商品説明などを短い時間で効率よく行う、あるいは、技術的な質問、見積もりの内容変更なども持ち帰りではなく、その場ですぐに回答できるようにすることで、お客様の時間を浪費しないようにする。そうした、自分たちの時間だけではなく、お客様の時間も無駄にしないという観点も欠かせないのではないでしょうか。


●ありがとうございました。


取材協力

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企業理念に「未来創発」を掲げ、流通や金融など各産業分野の研究、消費者動向調査、未来予測などを行い、その成果を広く社会に発信。リサーチ、マネジメントコンサルティング、システムコンサルティングなどからなる「ナビゲーション」と、情報システムの開発・製品販売、運用サービス及び関連するサービス商品販売からなる「ソリューション」を一貫して提供するサービスを展開している。


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