ワークスタイル変革で実現…女性の活躍促進

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

ワークスタイルの変革で実現する女性の活躍促進

2014/05/15

ワークスタイル変革は女性活用やダイバーシティ・マネジメントにおいても重要な要素となりうる。どのような問題意識を持ちつつ、変革に取り組んでいくべきか。日本IBMで長年ソフトウェア開発にたずさわり、1995年に同社で初の女性取締役に就任後、常務取締役、取締役専務執行役員を歴任し、現在では、企業における女性活躍推進を支援しているNPO法人J-Winの内永ゆか子理事長にお話を伺った。

NPO法人J-Win(特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク) 企業サイトへ

内永 ゆか子 氏

理事長
内永 ゆか子 氏

まず、「ホワイトカラーの生産性が低い」という問題の大きさを認識すべき

Question

日本企業のダイバーシティ・マネジメントを支援・推進する立場として、ワークスタイル変革に対してはどのような考えをお持ちでしょうか?

Answer

NPO法人J-Win:内永 ゆか子 氏

日本の企業の多くにおいては、仕事は勤務先のオフィスなどですることが基本で、9時から5時まで、更には残業も含めれば、オフィスにずっと居続けることがめずらしくありません。外資系企業の働き方がすべていいとは考えていませんが、例えば、私が働いていた企業では、ITを使ったEワークはきわめて当たり前になっており、普通に自宅や外出先で仕事をしていました。なぜ、そういう環境が整っていたかというと、グローバル企業では地球の裏側にいる相手と仕事する機会も多く、時差の関係で、こちらが勤務時間であったとしても、相手がそうとは限らない。むしろ、真夜中だったりしますから、社員に対して「必ずオフィスで働く」といった制約をかけてしまうと、仕事にならないわけです。どんな状態でも働ける環境を作っておかないと、グローバルでビジネスを進めるのは非常に難しいため、必然的に、柔軟な働き方、場所や時間にとらわれない働き方にせざるをえないのです。

そんな中、日本の企業の大きな問題として、「世界の水準と比較して、特に日本の企業では、ホワイトカラーの生産性が低い」ということがあります。決して能力がないわけではなく、むしろ優秀な人が多く、しかも、長い時間働いているにもかかわらず、なぜ、そうした問題が存在してしまうのか。ワークスタイル変革の必要性を論じる際には、ここが大事なポイントになるのではないでしょうか。

Question

日本の企業では、柔軟な働き方がまだまだ浸透していないということですよね?

Answer

近年では日本でもテレワークなどの制度を取り入れて、比較的柔軟な働き方を実現しようという動きは出てきていると思います。ただ、新しい働き方としてテレワークなどの制度を作ったはずなのに、それが有効に活用されないという事態になってしまっているようです。企業側は、キャリアを目指す女性に結婚や育児などをうまく乗り越えてほしいからこそ、制度を導入しているのに、キャリアを目指そうとする女性ほど、あまり積極的に活用していない印象を受けます。キャリア志向の女性はむしろ「何が何でも出社しよう」という考え方だったりするわけです。なぜそうなるのかというと、オフィスに出社し上司の目の前で夜遅くまで働く人を評価し登用していく、といった旧態依然とした企業の評価システムに問題があると思います。

Question

そのほかには、どういった問題があるでしょうか?

Answer

個人のジョブ・ディスクリプション、更にはレスポンシビリティもはっきりしていないという点です。仕事を行うにあたって、誰が提案して、誰が決断し、誰が実行するか、そして、その実行を誰がチェックするのかという、仕事のワークフローがはっきりしていない上、それぞれのポイントごとに誰が「Go」を判断するかという、承認権限も明確ではありません。つまり、各々の社員の職務内容があまり明確になっておらず、「やるべきこと」がグループでまとまってしまっているからではないでしょうか。皆が集まって検討を行い、自然発生的に「まあ、いいんじゃないの」と、誰が承認したかははっきりしないままで、全員で判断したという進め方が基本になっている印象を受けますが、私はそこが一番の問題ではないかと思っています。


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個人のジョブ・ディスクリプションや責任領域、業務プロセスの不明確さがボトルネックに

Question

日本の企業でも働き方変革の必要性への問題意識は持っていると思うのですが、なぜ、なかなか定着しないのでしょうか?

Answer

NPO法人J-Win:内永 ゆか子 氏

先ほどもお話した通り、柔軟な働き方を阻害する要因として、「個人のジョブ・ディスクリプション」「業務プロセス」「個人の責任領域」の3つが明確に規定されていないということが大きな問題です。それぞれの個人の職務の範囲や責任、仕事をどのように進行していくのか、どこでチェックするのか、誰が承認するのかが決まっていれば、ワークフロー・マネジメントも明確になりますから、出社して直接顔を合わせる必要性は最小限に抑えられます。そういう意味では、これらのポイントが明確でないことこそが、柔軟な働き方が可能な環境を構築していく上で大きなボトルネックになっていると私は思います。

しかし、多くの企業では個々人の業務領域の規定をすると「担当を決めた仕事と仕事の狭間に落ちてしまった事柄は誰がやるのか」という拒否的な反応を示されるようで、「日本はそうした部分を皆で支え合うからうまく行っている」という意見をいただくことが少なくありません。たしかにそうかもしれませんが、そこも含めてジョブ・ディスクリプションで決めておけばいいわけです。しかも、実際にはそうした事態が生じる確率は決して高いわけではなく、更に言えば「狭間に落ちる」ことによって生じるリスクよりも、今の状態のまま手をこまねいているだけで「効率性の悪さ」を改善できないリスクのほうがずっと大きいと考えます。

もう1つ非常に重要なのは、評価システムの見直しと構築です。フレキシブルな働き方を導入するのであれば、「アウトプットで評価する」という評価方法が必須になります。つまり、オフィスで朝から晩まで長時間目の前で働き続けている人を評価するのでなく、実際にどのような成果・結果を出したのかによって評価をするということです。働き方変革を制度として取り入れても、実際には長時間労働や年功序列といった評価基準のままでは、結局は制度があっても利用できないという、先ほどお話したような女性達を生んでしまいます。また、これは女性に限った問題ではなく、介護問題なども想定すると、すべての社員にかかわる問題なのです。

Question

具体的にはどのように進めていくべきだと思われますか?

Answer

もちろん、こうして口で言うのは簡単ですが、実際に仕事のやり方を変えていくのは非常に難しいことも事実です。全社一斉は難しいですから、ジョブ・ディスクリプションなどの規定を取り入れやすい部門・部署から少しずつ取り組んでいくことが有効でしょう。また、もう1つ大きなきっかけになるのが、やはり「IT化」だと思います。つまり、IT化するタイミングで仕事のやり方を変える。従来は不明瞭になっていた業務をプロセス化し、システムに乗せていくタイミングに合わせて、意思決定の流れや職務内容も決めていくということです。「わが社では既にIT化はできているが、仕事のやり方は変わっていない」というケースもあるかもしれませんが、それはそれで、ワークフロー自体がしっかりと規定されていないといった問題が残されている可能性が高いですから、改めて見直していく必要があるかと思います。


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ライフイベントは「女性活用が進まない」ことの言い訳にはならない

Question

日本の企業においては「女性の活用」が進んでいない、むしろ遅れていると言われますが、その要因としては、日本の企業、そして社会全体にどのような問題・課題があると考えられるでしょうか?

Answer

NPO法人J-Win:内永 ゆか子 氏

私どもJ-Winの活動の中でも、いろいろな企業の方々に、「なぜ、貴社では女性活用が進まないのか」と質問させていただく機会は多いのですが、多くの場合、「ライフイベントが問題」だと答えられます。要するに、女性の場合は結婚、育児などが障害となって、活用が思うように進められないというわけです。しかし、当然ながら、日本の女性だけにライフイベントがあるのではなく、世界中の働く女性が結婚して出産し、育児に励んでいます。それにもかかわらず、世界135ヵ国で集計された女性活用のランキングで見れば、日本は105位にとどまっているのは、どうしてなのか。ライフイベントを言い訳にするのではなく、その理由をきちんと追求するべきでしょう。これはやはり、「働き方が固定化している」ことに起因していると思います。

もちろん、保育施設など、育児を補完する仕組みが不十分ではないといった社会的な問題などもありますが、柔軟な働き方が実現すれば、それだけでも女性活用の状況は飛躍的に変わっていくでしょう。物理的に毎日オフィスに必ず出社して長時間働かなければならない、というのは特に育児中の方にはかなり難しいことだと言えます。赤ちゃんはITに乗せて運ぶわけにはいきませんが、情報はITに乗せて運ぶことができます。ですから、企業にはIT活用で柔軟な働き方を実現することで、女性が育児と仕事の双方をこなせるような環境を是非とも作っていただきたいと思います。

最初に述べたように、グローバルマーケットで日本企業がビジネスをしていくにあたって、日本の企業の「ホワイトカラーの生産性の悪さ」は致命傷です。解決のための1つの方法として、まずはワークスタイル変革を検討すべきでしょう。更に、同じく女性の活用を進めていくためにも、柔軟な働き方への対応が求められます。すでに多くの日本の企業のトップの方々は企業の競争力を高め維持するために、働き方についても、更なる変革の必要性に気づいていることと思います。あとは「やるか、やらないか」という決断次第で、経営層の方のコミットメントも企業が改革を推進していくには大変重要です。また、企業側の制度面などの支援とあわせて、アウトプットでの評価が定着してくると、女性・男性にかかわらず働く人たちの意識の改革も必要になります。働き方の自由度が高まるというのは、その一方で、どのような働き方をしても各人が結果を出し、それぞれの立場で企業に貢献することが求められるということを、改めて働く人たちにもしっかり認識してほしいと思います。


●ありがとうございました。


取材協力

NPO法人J-Win(特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク) 企業サイトへ

2007年4月、企業におけるダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援することを目的に設立した企業会員制の団体。女性活用に関する勉強会、セミナーや講演、調査など企業におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進をサポートする各種活動を展開。業種や業態の枠を越えた女性企業人の相互研鑚の機会を提供し、ネットワーキングの構築を支援することにより、女性リーダの育成・能力開発を図る。性別や国籍、年齢などにかかわりなく、多様な個性が力を発揮し、活躍できるダイバーシティ社会の実現への寄与を目指している。


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