タレントマネジメントで組織のリスクを回避

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

組織運営のリスクを回避するためのタレントマネジメントとは

2014/04/17

デロイト トーマツ コンサルティングでは、今年3月に日本企業におけるワークスタイル改革に関する調査結果を発表。そこから見えた実態とは?更に、阻害要因の1つである組織運営のリスクを乗り越えるために、今必要な手立てとは?デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー 鵜澤慎一郎氏に伺った。

デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 企業サイトへ

鵜澤 慎一郎 氏

シニアマネジャー
鵜澤 慎一郎 氏

ワークスタイル変革というムーブメントは実際に起こっているのか

Question

貴社では先日、『2013年度ワークスタイル実態調査』の結果概要を発表されましたが、どういった目的で実施されたのでしょうか?

Answer

デロイト トーマツ コンサルティング株式会社:鵜澤 慎一郎 氏

 弊社は企業をコンサルティングしていく立場ですので、ワークスタイル変革というムーブメントが実際に起こっているのかを曖昧な印象論でなく、定量的に把握する必要があります。また、テクノロジーやスマートデバイスの側面からだけでなく、労働生産性やダイバーシティ、企業文化等の多面的視点で捉えてみたいとも考えました。データで実際の企業動向を客観的に把握すべく、今回の調査を実施したわけです。その結果、鍵になる示唆が3点ほど見受けられました。

 まず1つは、メディアなどで言われている感覚値と、実際のデータから見た企業の動向には「ギャップがある」ということです。具体的には、今回調査を行った企業のうちの50%は「変革へのニーズを感じているが、実施には至っていない」と回答しています。つまり、多くの企業がワークスタイル変革に対しては、依然として様子見のスタンスのままであり、本格的な施策に打って出ていないことが示されました。

 また、もう1つの大きなポイントとしては、いわゆるスマートワークの活用に関しては、簡易的なものは既に広く認めつつも、本格的なスマートワークの導入までには「大きな壁」があるということです。スマートフォンやタブレットを利用して、社外でメールやスケジュールの確認、あるいは社内決裁・承認などの簡単な業務を行うことは多くの企業が許容しているものの、ノートPCなどを使って時間や場所を問わずに働いてくれていいというような、本格的なスマートワークに移行している企業はごく少数にとどまっています。

 そして、3点目は、業界ごとに「大きな差」が生じているということです。端的に言えば、医薬品業界などはかなり先行している一方で、製造業などでは慎重な動きになっています。また、内資と外資の資本別で分析した場合には、内資の慎重な姿勢とは対照的に外資系では簡易的なスマートワークは100%、本格的なスマートワークに関しても80%の企業が認めているという結果が出ました。もはや日本におけるワークスタイル変革は全体的・総論的に語ることが難しくなっており、業界や個社別に課題や対応段階を語る段階に来ているのだと思います。

図1 ワークスタイル変革の目的・取り組み姿勢
図1 ワークスタイル変革の目的・取り組み姿勢
出典:デロイト トーマツ コンサルティング、2014年4月

Question

簡易的なスマートワークは許容するものの、本格的な段階への移行は躊躇する企業が多いというのは、どのような理由が影響していると考えられますか?

Answer

 今回の調査では、日本企業は2つの大きな懸念を持っていることが見受けられました。情報漏洩を含めたセキュリティのリスクと、組織運営のリスクです。セキュリティリスクに関しては、ITベンダの方々などが啓発的に活動しており、もちろん、ゼロにはできないものの、「賢くリスクを取る」という観点で十分に技術的な対応を行うことで、かなり低減できるようになっています。ところが、もう1つの、組織の運営や部下の管理に関しては、技術的な対応でも解消可能な部分はあるものの、本質的には企業が自ら何らかの答えを出して取り組んでいかないと、なかなか解決が難しい問題だと思います。そのため、現在はワークスタイル変革の障壁としてセキュリティリスクが第1に挙げられるケースが多いかもしれませんが、今後は組織運営のリスクのほうがより大きなトピックになるはずです。解決の方向性として、遠隔管理でも正しい成果管理や人事処遇ができるようにするために、人事制度改革で職務や成果に応じた評価・報酬体系に移行することやマネージャの部下育成スキルや業務管理スキルを向上させることが求められます。


このページの先頭へ

ワークスタイル変革のテーマは「女性の活用」だけではない

Question

ワークスタイル変革はイメージ先行で、実際の企業における取り組み状況とは乖離している印象を持ったということですが、ワークスタイル変革の必要性に関しては、どのように感じられているでしょうか?

Answer

デロイト トーマツ コンサルティング株式会社:鵜澤 慎一郎 氏

 何のためにワークスタイル変革に取り組むかというテーマに関しては、コスト削減やグローバル対応などの様々な目的がありうるかと思いますが、現在では「優秀な人材の確保」を強く推す企業が非常に多くなっています。2020年の未来予測では、日本はGDPでインドにも抜かれ、ブラジルにもほぼ並ばれてしまうなど、日本の経済力は相対的に落ちているはずです。人口減少や高齢化が進む中で、企業は限られた優秀なタレントを惹きつけ、辞めさせないための施策を今から考えて、他社に先駆けて行動に移すことの大切さや危機感を感じていただきたいです。また、これまではワークスタイル変革と言えば「女性の活用」というテーマで、育児・介護支援として取り上げられることが多かったと思いますが、実際に最近よく耳にするのは、役員や部長層といった重要な管理職に就かれている方が抱える介護問題です。そうした本当に優秀な人材が、会議への参加、毎日の出社など、「物理的にその場にいるのが難しい」という理由だけで、企業を離れてしまうことを避けるための取り組みが、今後いっそう重要になっていくと思います。

 また、デロイトがオーストラリアで別に実施したワークスタイル変革の調査では、若年層の離職率を抑えるために取り組んでいるケースが多いという結果が出ています。オーストラリアの若年層はフラットな組織で働くことを望んでおり、多くの制約に縛られているような職場は敬遠されます。従業員に対してフラットな組織で自由に働けるような環境を与え続けられるか否かが、採用コストやリテンションコストに大きな影響を与えると考えているというわけです。まだ日本ではそれほど離職率が高くないため、そういう意識は薄いかもしれませんが、今後は外国人労働者の雇用や協業が増えてきますので、そのような価値観や環境変化の違いを理解し、ワークスタイルの柔軟性や多様性を受容したほうが合理的ですし、企業の競争力にも直結してくるはずです。そういう意味で、特に企業の経営層の方に気づいていただきたい点が2つあります。

 1つは、新しいテクノロジーのビジネス活用に際しては、どうしても慎重に様子見をせざるをえない状況もあるでしょうが、やはり、積極的かつ迅速に追従すべきだという意識は常に持っていてほしいということです。ご存じのとおり、ソーシャルメディアやタブレットといったツール/ハードウェアの活用を見ても、個人のほうがどんどん先行してしまっており、そのことによってシャドーITなどの問題が出てきています。そうした課題を解決するためには、個人活用と企業活用の間で大きなラグを生じさせないことが重要ではないでしょうか。

 そして、もう1つは、自社はどこと戦っているのかと考えたときに、これまでのように狭い同業他社だけを意識していればいい時代ではないということです。コンサルティングビジネスを通して、様々な業界の企業の経営者、人事部門や情報システム部門の方々とお話をする機会が多いのですが、その際に必ず聞かれるのが、「よそ(同業他社)ではどうしているの?」ということです。ただ、よく考えてみれば、例えば人材確保の面においても、就職活動・転職活動をしている人たちからすれば、決して同じ業界の中といった枠組みだけでは比べていないことは明らかでしょう。自分がしたい仕事を軸にしつつも、複数の業界を視野に入れつつ、「どこが働きやすいか」「自分に適しているか」を見極めているはずです。企業で自然と培われてきた既成概念や枠組みなどを意識的に取り払っていかないと、優秀な人材は確保できないし、維持できないと考えるべき時期にあると言えるのではないでしょうか。


このページの先頭へ

困難になりがちな「部下の管理」は情報管理/活用で回避

Question

ワークスタイル変革の障壁として組織運営のリスクを挙げられましたが、特に日本企業で進んでいないのは、リーダシップやマネジメントに関して固有の問題を抱えているからと考えるべきでしょうか?

Answer

デロイト トーマツ コンサルティング株式会社:鵜澤 慎一郎 氏

 たしかに、日本企業ではとりわけ、グローバルに活躍できるリーダがいない、育成できないという課題を抱えているイメージがあるかもしれません。しかし、デロイトが世界94ヵ国を対象に実施したグローバルヒューマンキャピタルトレンド2014の調査では非常に興味深い結果が示されています。経営上あるいは人事上の最優先課題をたずねたところ、国や地域に限らず、大部分の企業が「リーダシップ」と答えているのです。つまり、米国や欧州各国の企業でも同じように課題認識を持っているわけですから、決して日本だけが特別だとは感じていません。ただ、やらなければならないという意識は同じだったとしても、解決のためのアプローチや対応準備ができているかという意味で見れば、非常に出遅れていることはたしかです。

 同じ調査での重要な示唆として、グローバル全体で最も人事対応が遅れている領域は人事のデータ分析マネジメントであることが明らかになりました。マーケティングやサプライチェーンマネジメントにおけるビッグデータ活用のように、人事の世界も科学的なアプローチの方向へ進まなければいけないという流れで、その問題はいっそう顕在化しています。例えば、人事部では採用時の面接評価内容と入社後の成果の相関性をとっている企業などはまだ少ないのではないでしょうか。入社後にパフォーマンスを大きく伸ばしている従業員たちの間には何か共通する傾向があるのか、自社にとって本当に最適な人材はどのようなスペックなのか、そうした分析にきちんと取り組めば、採用はもっと戦略的なものになるはずです。またリテンション局面でも、退職時に辞める理由を本人からインタビューやアンケートで取っている企業は増えてきました。ワークログなどからどのような働き方をしている従業員の退職リスクが高いのかを把握している企業はほとんどありませんが、ビッグデータ分析などによって今後予見できる可能性が広がっています。

Question

個々の従業員の成果や働きをデータ分析していくことで、企業としてのパフォーマンスを高めていくということでしょうか?

Answer

 もちろん、そういう側面はありますが、マネージャやリーダといった立場にある人たちを支えるという視点も重要だと思います。現在では、従業員1人ひとりの価値観の違い、家庭環境の差異などの要因により、従来よりも部下の管理の難易度が高い時代になっています。そういう状況の中で組織運営のあり方も、部下に対して個として対応する、1人ひとりに向き合うといった方向へ変わりつつあるのではないでしょうか。ただ、そうは言っても、マネージャやリーダが何人もの部下のプロファイルやキャリアなどの膨大なデータを自前で管理し、裁量を図っていくというのは無理がありますから、必要に応じて、タレントマネジメントソリューションなどのツール活用も検討すべきだと思います。

 自分の部下に対して、それぞれに適した仕事を割り振る、最適なチーム構成を考えるといった作業はシミュレーションだと言えますし、その判断材料はやはり情報だということは今も昔も変わらないはずです。ただ、先ほどのような流れで、情報の量が大幅に増加していく状況ですから、何らかの手段で一元管理を図っていかないと、管理職としては情報過多に陥るだけで、かえって何も判断できなくなります。そうした膨大な情報を整理し、扱いやすくしてあげるというのも、ITの役割だと言えるのではないでしょうか。ITの活用で情報過多に陥り、マネジメントの質を下げてしまっては本末転倒です。テクノロジーの進歩に合わせて、今こそ、人間としてのマネジメント力の向上が求められています。


●ありがとうございました。


取材協力

デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 企業サイトへ

国際的なビジネスプロフェッショナルのネットワークDeloitte(デロイト)のメンバーで、有限責任監査法人トーマツのグループ会社であるマネジメントコンサルティングファーム。デロイトの一員として日本におけるコンサルティングサービスを担い、デロイト及びトーマツグループで有する監査・税務・コンサルティング・ファイナンシャル アドバイザリーの総合力と国際力を活かし、日本国内・海外で、企業経営における戦略立案からその導入・実現に至るまでを一貫して支援している。


このページの先頭へ



タレントマネジメント/タレントマネジメントで組織のリスクを回避」関連の情報を、チョイスしてお届けします

※キーマンズネット内の「タレントマネジメント」関連情報をランダムに表示しています。

タレントマネジメント」関連の製品

POSITIVE(タレントマネジメント、人事給与、勤怠管理) 【電通国際情報サービス】
人事管理システム
1400社導入実績で培ったノウハウを活かした製品。人事・給与・就業管理だけでなく、タレントマネジメント支援やグローバル人事など広範な機能を網羅した統合人事パッケージ

タレントマネジメント」関連の特集


タレントマネジメントをすでに自社の人材マネジメントの中に採り入れ、個人のタレントを活かそうとしている…



タレントマネジメントは、「設計」「活用」「開発」「運用」の4つのフェーズを経て、またこれらの4つフェ…



タレントマネジメントを推進していく上で、何をタレントとして把握し、管理していくのであろうか。タレント…


「情報共有システム・コミュニケーションツール」関連 製品レポート一覧

このページの先頭へ

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この記事に掲載している情報は、掲載日時点のものです。変更となる場合がございますのでご了承下さい。


30007251


IT・IT製品TOP > ワークスタイルの変革(IT部門向け) > 情報共有システム・コミュニケーションツール > その他情報共有システム関連 > その他情報共有システム関連のIT特集 > 特集詳細

このページの先頭へ

キーマンズネットとは

ページトップへ