実践企業に聞く!人事制度改革の進め方

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

実践企業に聞く!人事制度改革の進め方

2014/04/10

ネットワンシステムズでは2010年頃からワークスタイル変革に取り組んできたが、情報システム部門とともに大きな役割を果たしたのが人事部だ。人事制度改革を進める上で直面した課題とは?また、それに対して、どのような方法で改善を図り、現在ではどれほどの導入効果が得られているのか。同社の経営企画本部 人事部 シニアエキスパートである下田英樹氏にお話を伺った。

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下田 英樹 氏

経営企画本部
人事部 シニアエキスパート
下田 英樹 氏

人事部の課題解決を図るためには、ワークスタイル改革が欠かせなかった

Question

貴社では2010年頃からワークスタイル変革を推進されてきたようですが、人事部としては、どういった考え方で取り組まれたのでしょうか?

Answer

ネットワンシステムズ株式会社:下田 英樹 氏

弊社がワークスタイル変革に取り組んだ理由は、まず、お客様のビジネスをICTソリューションで支援するという立場から、自ら率先してICTを活用した「どこでもオフィス」を実現すべきだということです。更に、それに加えて、人事部が抱えていた3つの課題の解決にもつなげたいという狙いがありました。その課題とは「成果創出をもっと加速する」「お客様と社員のニーズに対応する」「過重労働を削減する」というものです。

 特に、1番目の成果創出の加速に関しては、「営業利益率10%達成に向けた1人ひとりの生産性アップ」「時間“思考”から成果“志向”へのマインドチェンジ」という目標を掲げ、そのためには「働き方の見直し」なくしては実現できないと考えました。また、こうした取り組みを開始したのは東日本大震災直後で、当時は電力不足の影響により、弊社のお客様の間でも工場の稼働日・時間をシフトするなど、休日・深夜勤務に対応せざるをえないといった状況がありました。旧来の勤務体制のままで対応していては、残業時間ばかり増えてしまうので、ICTの活用で何とか解決できないかという声も寄せられました。ワークスタイル変革の実現はまさしく、こうしたお客様のニーズに応えるものだと言えます。更に、弊社の社員はエンジニアも多いのですが、どうしても過重労働になりがちだという傾向があり、何とかして、そうした状況を改善しなければならないと受け止めていました。その課題に対しても、ワークスタイルを変えることで対応できるのではないかと考えたわけです。

Question

そうした課題解決を図るために、どのような戦略を立てられたのでしょうか?

Answer

この3つの課題解決を踏まえた上で、「生産性の向上」「社員満足度の向上」「顧客満足度の向上」の好循環を実現するための環境を作るということを全体的なビジョンとして描きました。自分の働き方を見直すことが、結果的にお客様のためにもなるという考え方です。つまり、1人ひとりの働き方を見直すことで業務効率化が図れれば、ワークライフバランスの実践につながってきます。そして、私生活が充実し、社員が活き活きと働くことによって、よりいっそうお客様のお役に立てるのではないかということです。

図1 ワークスタイルのビジョン〜好循環を実現するための環境をつくる
図1 ワークスタイルのビジョン〜好循環を実現するための環境をつくる
出典:ネットワンシステムズ、2014年4月

そして、このビジョンを実現するための戦略を、「なくす」「減らす」「増やす」「創る」というアクションマトリクスに仕立てたのですが、その中で最も重要なポイントとしたのが「増やす」、具体的には「成果基準の意識・報酬」です。日本企業では長時間働けば働くほど「がんばった」ととらえられる文化、時間にもとづいて報酬が高くなる仕組みになりがちですが、ICTをベースとしたイノベーションによってワークスタイル変革を推進していく中で、やはり、こうした点は違和感が増してきました。会社に朝から夜までいればいいのではなく、生み出される価値を重視しようという方向へのシフトが必要だと考えたわけです。

 ただ、そのような戦略を立てたとしても、阻害要因は出てきます。それは「そもそも人間は変化を好まない」ということです。人事を預かる身として常日頃から実感していることですが、社内で何か新しいことを進めようとすると、どのようなかたちにせよ、ネガティブな反応があるのは当然だと言えます。しかし、現在はスピードを要求される時代ですし、特に弊社のようなICT業界に身を置く企業としては、そうも言ってられません。そこで、仕組みや制度のほうをまず先に変えてしまうというやり方をとりました。仕組みが変われば、それに適応せざるをえないということを利用して、ワークスタイル変革をとにかく早く進めようということです。更に、その一方で、人事部や情報システム部門が率先して変化を起こす、つまり、自らワークスタイル変革に関連するICT技術を試し、それにより、どのような働き方が実現されるのかを身をもって体験することに取り組みました。その後、毎年毎年変化を続け、言わば「走りながら考える」というかたちで、スピード重視の運用を行ってきたわけです。


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新制度導入で失敗を経験したからこそ、現状の最適解を見出せた

Question

新たな人事制度へと切り替えていく中で、何か問題などは生じたのでしょうか?

Answer

ネットワンシステムズ株式会社:下田 英樹 氏

最初の課題として浮上したのは、先ほどお話ししたように、時間思考を成果志向へとシフトするために「裁量労働制の拡大」を優先したものの、うまく実現にいたらなかったという点です。人事的な言い方では、専門業務型裁量労働制という働き方があるのですが、いわゆる成果型の報酬体系を技術系社員へと導入し、主任クラスまで拡大していくつもりでした。しかし、弊社を取り巻く業界や技術は非常に多様化しており、その中でイノベーションを起こしていくためには、常に最新の技術をエンジニアが吸収し、それらを適切に組み合わせることで、お客様にとって最良なサービスに転換していく必要があります。そういう状況においては、技術を学べば学ぶほど、腕を磨けば磨くほど、そのエンジニアへのお客様からの引き合いや案件の依頼などが当然増えていきますから、自分の裁量権で働くという制度がはたして適しているのか、エンジニアにとっては負荷が高くなりすぎるだけではないかという疑問の声が上がりました。

 つまり、裁量労働制を拡大していくと、マネージャの視点では「新技術に対応しにくくなる」「リソースが足りない」「特定社員に案件が集中してしまう」、その一方で社員の視点では「突発対応が多い」「業務平準化に対する不安」「処遇の不公平感」といった問題が浮上するというわけです。結果としてこうした事態を招いてしまったことは、人事部としても反省しており、スピード重視で仕組みや制度を先に変えてしまったものの、いささか性急すぎたかもしれないと感じました。お客様に対して自分の時間をいとわずに対応しているエンジニアの働き方というものは急にはなくせないし、逆に、そういう部分がエンジニアの働く意欲にもつながっていると思います。そうした声を受けて、当時は、裁量労働制への制度変更の説明会を全国支社へ展開し始めていたタイミングだったのですが、急遽ストップをかけて、もう一度、経営陣と社員協議会とで最善策を話し合う機会を何度か設けました。

 そこで浮上してきたのが、フレックスタイムの活用です。フレックスタイムの最も大きなメリットは日々の柔軟性がある点と言えます。つまり、1ヵ月の総労働時間管理の範囲内で、社員が毎日の始業時間と終業時間や、日ごとの労働時間をフレキシブルタイムに調整できるのです。また、時間外手当に関しても、時間管理と調整を個人の裁量に委ねる裁量労働制の場合は、労使協定にもとづく固定手当となりますが、フレックスタイムは1ヵ月の所定労働時間を超える分を実績に応じて支給する仕組みです。そして、2つの制度を比較した結果、最初に進めていた裁量労働制のほうが、方針の明確性が強く、時間外の削減効果も非常に高いものの、フレックスタイムの方が社員との親和性が高いという結論に達し、フレックスタイムの採用を決断したのです。更に、最も大きな違いは適用範囲の広さにあります。専門業務型裁量労働制はエンジニアなどの技術系社員のみの適用となりますが、フレックスタイムであれば営業職や事務職にも対応可能です。

Question

フレックスタイムとテレワークはどのように使い分けられているのでしょうか?

Answer

弊社では現在、「テレワーク」「フレックスタイム」「シフト勤務」という3つの制度が、ワークスタイル変革の中核になっており、それぞれ「働く場所」「働く時間」「働く時間帯」を工夫するものととらえています。まず、テレワーク制度に関しては、基本的にはセルフマネジメントが徹底でき、コミットした成果が創出できる人が使えるものと条件を定義しています。部署や職位などで制限しておらず、条件さえ整えば新入社員でも使えるという間口の広い制度です。また、東日本大震災の経験を受け、生活事情、交通事情により出勤が難しい場合もテレワーク活用の対象としています。例えば、災害時などには無理をして出社をしてもらっても、交通マヒに巻き込まれるようでは時間がもったいないということです。また、利用可能な回数などは特に設けていませんが、その一方で、テレワークの際は長時間労働になる傾向が強いため、原則として残業は禁止としています。


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社内アンケート結果で示された、社員が実感している具体的な効果とは?

Question

制度が定着してからは、やはり、社員の意識をいかに変えていくかという点が課題になると言えますでしょうか?

Answer

ネットワンシステムズ株式会社:下田 英樹 氏

特にテレワークについては、マネージャの方々は「どう評価すればいいのか分からない」「組織運営に支障が出るのではないか」という課題、また、一般社員の方々は「職場にいないと上司が良く思わないのではないか」「紙文化、ICTツール不足、会議が多いといった多くの理由から、そもそも無理」という不安が生じていました。その解決策としては、「ガイドラインの策定」「運用の工夫」、そして、ビデオメッセージ、メルマガ、社内報などによる「社内啓蒙」を行っています。

 ガイドラインの例としては、まず、社員がとまどう3つのキーワードとして、「コミュニケーション」「評価」「時間管理」を挙げた上で、マネージャやテレワーカーがそれぞれに注意すべき点を示しています。また、特にマネージャのとまどいは大きく、どこまで管理していいのか分からないという傾向にあるようですから、人事部から法的な問題やマネジメントに関する知識なども積極的に伝えるとともに、上司のマネジメント責任を明文化しています。例えば、テレワークをしている社員に対しては、出席して欲しい会議があったり、チームの運営に支障をきたすようであれば、「マネージャの判断でテレワークの日時を変更してもかまわない」、急なトラブル対応の依頼、緊急に重要な会議を行いたい場合など、必要であれば「当日に急な出社命令をかけても問題はない」といったことです。

 弊社で取り組んでいる運用上の工夫の一例を挙げると、テレワークを1日フルで行う場合には、当日に突然決めるのではなく、事前にきちんと計画を立てて、上司や周囲のメンバーに宣言するようにしています。前日までに仕事内容を皆に知らせておいて、それをもとに実行した上で、予定どおりに仕事をこなせた、あるいは、何らかの理由で進まなかったということも報告してもらいます。そのレポーティングに関しては、作成したドキュメントなどを添付することで、基本的には作業内容の見える化を図ってもらうようにしていますが、それが困難なケースもありますので、ここは少し柔軟に運用するようにしています。

 先ほどのマネージャに対するガイドラインでは、もう1つの重要な点として、「テレワークの利用停止」という項目を記載しています。これは上記のようなテレワークの事前申請やレポーティングがない、テレワークの成果が見えないなど、自己管理ができていない社員などに対しては、マネージャがきちんとテレワークの利用停止を告げる必要があるということです。

図2 ガイドラインの例〜社員がとまどう 「3つのキーワード」
図2 ガイドラインの例〜社員がとまどう 「3つのキーワード」
出典:ネットワンシステムズ、2014年4月

Question

ワークスタイル変革でもたらされた効果としては、どのようなことを実感されていますでしょうか?

Answer

導入直後に実施した社員満足度に関するアンケートの結果では、私生活の満足度が良くなったという回答が80%、仕事に対する満足度が良くなったという回答も70%に達しました。その理由としては、やはり、通勤時間を色々な時間に転用できるという意見が最も多いようです。つまり、社員満足度を上げるという点については、非常に即効性が高いととらえられ、社員の引き留めやリテンションなど、満足度を上げる施策を検討されている企業では、参考にしていただけるのではないかと思います。同じく、生産性の向上に関するアンケート結果では、現在の仕事に対する生産性が良くなったという回答が54%を占めていましたが、その一方で、紙文化やICT環境への適応不足から「悪くなった」と感じている社員も13%となっていました。

 その後、制度導入から2年半が経過した現在、勤務諸制度の活用度については、60%の社員が活用できていると回答しています。その一方で、活用できていないという社員も2割程度いますが、活用が進まない理由に関しては、導入直後の「紙文化やICTへの適応不足」は減少しており、「リアルコミュニケーションの重要性・効率性の重視」「他者、周囲への配慮」といった点が現在は最大の阻害要因になっているようです。つまり、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの重要性を改めて認識したり、これまで以上に周囲とのチームワークを考えなければならないなど、各々の社員が様々な点に配慮しつつあるということです。これは、成果に対するマインドから社員が自己調整している姿だととらえられますので、今後に向けて、非常に良い過程を踏んでいると考えています。


●ありがとうございました。


取材協力

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ネットワークインテグレーションのプロフェッショナルとして、長年にわたり、“つなぐ”ことをコアビジネスに、顧客企業のビジネスや人々の生活を支えるネットワークという新しい社会インフラの構築に貢献してきたが、昨今のクラウドコンピューティング環境の整備加速にともない、提供価値を“つなぐこと”から“利活用を提案すること”にシフト。最先端の製品と技術を組み合わせた次世代ICT基盤を活用したワークスタイル変革を自ら実践した上で、リアルな効果を提示しつつ、顧客企業のビジネスを支援することに取り組んでいる。


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