選択型人事制度で継続的に強いチームを作る

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アナタに代わって聞いてきました!ザ・キーマンインタビュー

継続的に強いチームを作るための「選択型人事制度」とは?

2014/08/21

グループウェアを主力製品とするサイボウズでは、その事業を通じて、「自社のチームワークを高めることで、成果を生み出したい」という企業を支援する一方で、自らも“継続的に強い”チーム作りに取り組んでいる。そして、その原動力となっているのが、独自の人事制度だという。サイボウズが作り上げた「選択型人事制度」とは?

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サイボウズ株式会社:中根 弓佳 氏

事業支援本部長
中根 弓佳 氏

いち早くワークスタイル変革に取り組み始めたきっかけとは?

Question

グループウェアをはじめ、主にチームワークを支えるソフトウェア製品やサービスを手がける立場として、貴社では顧客企業、あるいは日本企業全般におけるワークスタイル変革の現状・意識に関して、どのような印象やお考えをお持ちでしょうか?

Answer

サイボウズ株式会社:中根 弓佳 氏

弊社では、グループウェアという製品やサービスを提供するだけではなく、お客様がチームワークを高めていくことをお手伝いしたいと考えています。あくまでも、そのためのツールの1つがグループウェアというわけです。ただ、グループウェアを導入して、組織のあり方や働き方を劇的に変えられたお客様もいらっしゃる一方で、残念なことに、情報共有にはあまり活用できていないケースもまだまだ少なくないようです。こうした状況はあまり望ましいとは言えず、スケジュールをはじめ、あらゆる情報をグループウェア上で共有することで「チームワークの効果・効率・満足・学習」を高めていただくことが重要だと考えます。

チームというのはただ単なる「人の集まり」ではなく、共通の目標・理想を達成するために集まった人たちの集合体であって、その人たちが役割分担をして協働することによって生まれるのが「チームワーク」だと思うのです。また、そこから得られるアウトプットに関しては、従来からフォーカスされていた「効果」「効率」、例えば、売上貢献やコスト削減にとどまらず、これからは「満足」「学習」といった要素が重要になっているのではないでしょうか。この会社で働いていてよかったと感じることは、社員の定着につながりますし、社員や組織自体が成長していくことでイノベーションが生まれるものです。

Question

貴社では自らも、早い時期からワークスタイル変革に取り組まれているようですが、その理由はどういったことなのでしょうか?

Answer

きっかけは「人不足」です。弊社はベンチャー企業として事業を開始し、その後、企業の成長に沿うかたちで、人事制度も変化してきました。創業時には人事制度は定まっておらず、個別評価を行っていましたが、その後、人員の増加を受けて、評価制度の検討を始め、目標管理型の成果主義人事制度を導入しました。ただ、不平等さが生じがちだったため、評価の納得性を検討した結果、達成度評価に加えて、(社内)市場評価、360度評価という3つの軸で行うかたちに変更し、その比率を6:3:1としました。その後、市場評価、360度評価、相対評価へと移行したのですが、今度は相対結果評価の弊害として、社内の一体感が希薄化してしまうという問題が生じ、だったらシンプルにしようということで、原点に戻るかたちで、絶対能力評価へと1本化したのです。

この段階で、人の流出はある程度止められるようになったかと安心していたのですが、今度は別の問題が浮上してきました。女性社員の出産が相次いだわけです。当時のサイボウズは、知名度がまだまだ高くはなかったので、新規に社員を採用することもままならず、産休に入ってしまう社員が増えれば増えるほど、その分、勤務可能な社員数が減っていくという状況でした。そうした中で、新規採用で1から教育するよりも、出産で多少の期間は休まざるをえなくても、サイボウズという会社が好きで、ノウハウも持っている社員がきちんと帰ってきてくれる環境を整えたほうが望ましいだろうという考え方に変わっていきました。当時のIT業界は、「きつい」「帰れない」「給料が安い」「休暇が取れない」「規則が厳しい」「化粧がのらない」「結婚できない」の“7K”だと揶揄する風潮もありましたが、弊社はまずそこから脱却しようと、ワークスタイル変革への取り組みを始めたわけです。


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どんな「時間」「場所」で働きたいのかを社員自身に選ばせる

Question

具体的にどのようなワークスタイルや人事制度を実現しているのでしょうか?

Answer

サイボウズ株式会社:中根 弓佳 氏

各社員が自分のライフスタイルに合わせて働き方を選択できる選択型人事制度を採用しています。当初は「時間」の選択肢のみで、ワーク重視型で「長時間働いてもかまわない」のであれば裁量労働で、育児・介護などによるライフ重視型であれば「残業なし、または短時間勤務でいい」、ワークライフバランス型の人は「残業はできるが、ある程度に抑えられる」という働き方を自分で選べるようにしました。ただ、その後、「時間」という軸では不十分だと考え、在宅勤務制度を本格的に導入した上で、働く「場所」も選べるようにして、基本の「9分類の働き方」を設けたわけです。各社員はその中から選択し、概ね「どんな時間×場所」で働きたいかを、上司や周囲に宣言しています。更に、日々の変化に対応して、一時的に時間×場所を制約しない働き方ができるウルトラワークという制度も導入しています。こちらは、都度申請・承認を行うようにしています。

また、弊社ならではの特長だと言えるかもしれませんが、どの働き方を選択するにも特に目的は問いません。育児でも介護でも、あるいは語学学習でもかまわないですし、更には副業も解禁しました。会社の資産を毀損する仕事ではないこと、会社の情報やブランドなどを使う場合は事前に承認を得ることといった、最低限のルールを守っていれば、自己責任のもとで自由にやってもらってかまいません。もちろん、本来の業務に影響があれば、評価に影響するわけで、そのあたりは自己責任となります。

図1 9分類の働き方から自分に合ったものを選択
図1 9分類の働き方から自分に合ったものを選択
出典:サイボウズ、2014年8月

Question

9分類のうちのいずれを選ぶかによって、報酬にも違いが出てくるのでしょうか?

Answer

そうですね。分かりやすく言えば、会社の指定場所であるオフィスに来て、長い時間にわたって働くのであれば、チームに対して時間を長くコミットするわけですから、「チームとしての報酬」、つまり給与は多くなります。逆に、働く場所は自由にしたい、時間も短くしたいという人は「チームとしての報酬」は減ってしまいますが、その分、生活面での充実や作業効率向上といった「個人としての報酬」が得られるでしょう。もちろん、それだけではなく、時間あたりの生産性がほかの人よりも高くなるのであれば、給与の金額面でも十分にカバーできるかもしれない。単純に、どの働き方が悪い、良いというわけではないのです。


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最大で28%に達していた離職率が3.9%に

Question

在宅勤務や選択制人事制度を導入する上で障壁などはなかったのでしょうか?

Answer

サイボウズ株式会社:中根 弓佳 氏

様々な企業の人事担当の方に話を伺うと、やはり時短よりも在宅勤務のほうが導入しにくいと考えられている企業が多いようです。その際、「誰が何の仕事しているのか分からない」「アウトプットが見えない」「管理・評価できない」といった理由を挙げられるのですが、弊社の場合はグループウェアの活用、グループウェア上での情報共有が全社員にしっかりと浸透しているため、個々のすべての業務がほぼ「見える化」されており、そもそも場所にとらわれずに働くことができる、在宅勤務を取り入れやすい環境だったというのは大きなポイントかと思います。

また、在宅勤務の正式導入にあたっては、その目的をきちんと整理し、「雇用機会の創出」「業務効率の向上」「ライフ重視の支援」という3つを掲げました。1番目は、例えば「足をけがして、仕事はできるが出社できない」など、個別の事情でオフィス勤務できない人に就業機会を提供するもので、障がい者雇用などにもつながるかと思います。2番目は「自宅で集中して資料作成を行いたい」など、オフィス以外の就業場所を提供することにより、個人の業務効率を向上させるもの。3番目は「子供と一緒にいる時間を多くしたい」など、出社はできるが、家で働きたい人の支援をするということです。また、正式導入後に東日本大震災が発生して、全員が在宅勤務という期間を経験したことで、危機管理という目的も新たに加わりました。

Question

同僚どうし、あるいは上司と部下が直接顔を合わせる機会が少なくなることで、生じるデメリットなどに関してはどのように考えますか?

Answer

先ほど、グループウェアというオンライン上のコミュニケーションが確立された環境だったからこそ、在宅勤務の導入も容易だったという話をしましたが、それ以外にも様々なかたちでコミュニケーションを図りやすい、あるいは気軽に相談などができる土壌を作ってあげることが重要だと思います。弊社でも、多様な働き方を支える社内コミュニケーション活性化を目的に、例えば、スポーツなどのクラブ活動支援制度や、リラックスした雰囲気の中で真面目に仕事の話をする活動費、つまり、飲食費を支援する仕事Bar制度、更にはテレビ番組「プロジェクトX」のように「社内にある多くの感動」をビデオ上映や社内新聞で伝えていこうという人事部感動課の創設など、様々な施策を行っています。

Question

現在、ワークスタイル変革はどのような効果をもたらしているのでしょうか?

Answer

社員数が増加している中で、離職率に関しては、最も多い時期には28%に及んでいたのですが、現在では3.9%まで低下しました。また、これは今後の展望でもあるのですが、お客様のチームワークを支援する一方で、自らも理想のチームを追求していくために、チームワークの更なる向上を図るとともに、“継続的に強い”チーム作りに取り組んでいかなければならないと考えています。そのためには、やはり、働いている1人ひとりが幸福な状態であることが必要でしょう。つまり、「チームワークの向上」と「個人の幸福」を両立させていく、場所や働き方など、個々の適度な距離感を許容するチームにしていくことが、長期的にチームの生産性を高めることにつながってきます。そして、それを支える理想の人事制度とは、100人100通りの働き方に対応するものではないでしょうか。人事制度は、過去に何度も試行錯誤を繰り返しながら現在に至っています。今後はそれを変えていくのではなく、むしろ、増やしていく、幅を広げていくべきだと考えています。


●ありがとうございました。


取材協力

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世界中の「成果を生み出すチーム」を支援すべく、グループウェアをはじめとする、チーム・コラボレーションに役立つソフトウェア製品やクラウドサービスなどを開発・提供している。


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