仮想ネットワークでクラウドはどう変わる?

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掲載日 2013/11/06
仮想ネットワークの活用拡大でクラウドはここまで変わる!

10月24日〜25日にザ・プリンス パークタワー東京で開催された「NTT Communications Forum 2013」は、NTTコミュニケーションズ主催のプライベートイベントだ。ただ、プライベートイベントと言っても、同社の製品・サービスの展示、技術研究や戦略などの発表にとどまるものではない。主要ITベンダ、アナリスト、大手顧客企業など、幅広い立場のICTのプロたちが一同に介し、クラウドのあるべき姿を浮き彫りにする「特別講演」、11ヵ国/地域の最新ICT事情や導入事例を紹介する「グローバルセミナー」などにより、まさしく“ICTの今”を広い視野で紹介するイベントとなっていた。この記事では、NTTコミュニケーションズの代表取締役社長である有馬彰氏が同社の“グローバルクラウドビジョン”を語った基調講演、及び、ガートナー ジャパンの田崎堅志氏(リサーチ部門 バイスプレジデント)、IDC Japanの寄藤幸治氏(ITサービス/コミュニケーションズ/ユーザーサーベイ グループディレクター )による特別講演の模様を紹介する。





 日本の企業においても、クラウド利用は着実に浸透しつつある。そういうイメージは多くの人が抱いているものの、実際にはどういう状態なのか。有馬氏はまず、IDC Japanのレポートを引用し、現在の国内におけるクラウド利用状況を説明した。2013年の調査結果では、クラウド導入済み企業が全体の21%を占め、検討中/興味ありという回答を含めた場合には58%に及ぶという。有馬氏は、クラウド導入はやはり進んでいるとする一方、ガートナーによる北米のクラウド導入状況(クラウド導入済み企業が44%、検討中という回答を含めた場合には89%)を引き合いに出し、今後の成長の余地もかなり大きいという見解を示した。活用範囲に関しても、従来のノンコアシステム主体から、事業活動の根幹を担うコアシステム、つまり、会計/財務管理、サプライチェーンマネージメントなどへと拡大していると言う。更に、有馬氏は実際の顧客事例を紹介しつつ、クラウド導入目的についても、コスト削減やICTシステム効率化のみならず、「新規事業の拡大、グローバル展開の更なる加速化、事業継続性の強化といった“経営基盤の強化”」を図りたいという企業が増えていると有馬氏は語った。

 ただ、こうしたクラウド利用の広がりを今後も継続させていくためには、サービス提供者側の“発展”や“進化”も不可欠だ。現在、クラウド専業事業者に加えて、SI事業者、SaaS事業者など、多様な事業者がクラウドサービスを手がけている。当然ながら、NTTコミュニケーションズのような通信事業者も主要なプレーヤーであり、2年前に開催した「NTT Communications Forum 2011」の基調講演において、「グローバルクラウドビジョン」を発表済みだ。これは同社の強みであるネットワークやデータセンタから、サーバ、アプリケーションまでを、エンドツーエンドかつワンストップで、しかも、グローバルシームレスなクラウドサービスとして提供していくという構想(ビジョン)である。


顧客企業への提供価値を向上させるための「3つの取り組み」

 有馬氏は、「グローバルクラウドビジョン」を実現し、顧客企業への提供価値向上を図るべく、同社では3つの取り組みを進めてきたと語る。まず1つ目は、「通信事業者ならではのクラウドの展開」、つまり、キャリア・クラウドとしての強みの追求である。クラウドの利用にはネットワークが必要だが、グローバルIPバックボーンをはじめ、ネットワークの規模や品質に関して確固たる自信を持つNTTコミュニケーションズだからこそ、「グローバルネットワークと直結した高品質/高信頼クラウド」が提供可能というわけだ。更に、キャリア・クラウドでは「クラウドとネットワークを一体的に運用/保守できる」という点も、顧客企業にとって非常に有益だとアピールした。

 2つ目は「グローバルでのサービス提供力の強化」で、同社では日本・米国・アジア主要国間を極めて低遅延で接続する海底ケーブルに加え、米国、欧州、APAC(アジア太平洋)を含む150拠点にデータセンタの設置を行っている。海外拠点の数も2013年には100に達しており、ネットワークサービスは世界160ヵ国/地域、クラウドサービスも10ヵ国/地域で展開。その上で、今後は海外企業のM&Aを更に加速させていくことで、グローバルシームレスなサービス提供の地盤をいっそう固めていく計画だという(その戦略の一環として、イベント直後の10月28日には、米国のデータセンタ事業者であるRagingWire Data Centersの株式取得も発表された)。

 最後の3つ目は「ネットワーク仮想化技術を用いた、新たな付加価値の提供」で、これは今後の展開においても極めて重要な役割を果たすものとなる。仮想ネットワークをクラウドへ導入するメリットについては、カスタマポータルを通じて個々のネットワーク機器の設定/変更などが可能となり、経営環境の変化に即応可能なICTを実現できるという点がまず挙げられる。実際、NTTコミュニケーションズの「Bizホスティング Enterprise Cloud」では、2012年6月にいち早く、データセンタ内の仮想ネットワーク商用導入を果たしており、ネットワーク機器の煩雑な設定/変更作業の自動化を実現済みだ。しかし、同社では仮想ネットワークの適用領域をデータセンタ内にとどまらず、データセンタ間、WAN、そして、LANにまで拡大していく予定で、これにより「新たなICTのかたちを提供していく」と有馬氏は語った。


データセンタ上のクラウドとコロケーションを仮想ネットワークでつなぐ

 その具体的な展開の1つとして紹介されたのが、「仮想ネットワークを用いた、クラウド/コロケーションのハイブリットサービス」の提供だ。同社が新たな構想として掲げた「グローバルクラウドビジョン2013」では、オンプレミスで構築・運用されているシステム(アプリケーション/サーバ/ネットワーク)を容易に移行できる受け皿として、この「クラウド/コロケーションのハイブリッドサービス」を位置づけている。これにより、顧客企業内で拠点や国ごとに分散しているシステムのグローバル統合を実現しつつ、セキュリティやシステム全体の運用管理なども同社に任せられる、すなわち、「グローバルトータルICTアウトソーシングによって、ICT環境の改革をしていただける」と有馬氏は説明した。

 なぜ、「クラウド/コロケーションのハイブリッドサービス」は多くの企業にとってクラウド移行の受け皿となりうるのか。その鍵となるのが、2014年4月から提供開始される予定の「コロケーション接続オプション」だ。実は「Bizホスティング Enterprise Cloud」では今年6月から、仮想ネットワークを用いた「オンプレミス接続サービス」を提供済みだ。これはオンプレミスからクラウドへの移行を支援するマイグレーションサービスで、オンプレミスのサーバに設定しているIPアドレスを、そのまま「Bizホスティング Enterprise Cloud」のクラウド環境でも利用可能にすることで、これまで必要だったネットワークやサーバなどに対する設定変更作業やデータ移行作業を大幅に削減できるというもの。

 同様に「コロケーション接続オプション」はその名のとおり、データセンタ上の「Bizホスティング Enterprise Cloud」と「コロケーション」を仮想ネットワークで接続するサービスだ。オンプレミスからクラウドへの移行にあたっては、様々な要因でクラウド化できない、もしくは、クラウド化したくないシステムなども出てくるものだが、今後はそれらを物理サーバとしてオンプレミスに残すのではなく、データセンタのコロケーションを利用するケースが増えてくることが見込まれるという。

 そこで、既存オンプレミスシステムのうち、クラウド移行が可能なものについては「Bizホスティング Enterprise Cloud」へ移行しつつ、クラウド移行が困難なものに関しては、同じデータセンタ内のコロケーションへ物理サーバを移行させることを想定し、既存オンプレミスシステムのネットワークセグメントやIPアドレスを変更することなく利用可能にする仕組みを用意したというわけだ。更に、この「コロケーション接続オプション」では、同じデータセンタ内での接続に加えて、異なるデータセンタ間での接続も実現予定で、この場合、複数のデータセンタをあたかも1つのデータセンタのように運用可能だという。


多彩なクラウドソリューションを届けるためには、パートナーシップの強化が不可欠

 仮想ネットワーク技術の活用によって、NTTコミュニケーションズが生み出そうとしている「新たなICTのかたち」はこれだけにとどまらない。同社ではセキュアで高品質かつクラウド利用に最適なネットワークサービス(VPN)として「Arcstar Universal One」を世界160ヵ国/地域で展開しているが、2014年3月には仮想ネットワークオーバーレイ機能を実装する予定だ。これにより、例えば、「Arcstar Universal One」のVPN経由でクラウドを利用しているA社が、M&Aなどを実施したことで、他社VPNでネットワークを構築済みのB社を新たな拠点として追加した場合でも、既存物理ネットワーク構成を変更することなく、セキュアな通信を実現できるという。あるいは、海外に小規模拠点を新規で立ち上げる際、通常のインターネット接続しか利用できないというケースにも有効だ。

 「Arcstar Universal One」ではこのほかにも、2014年夏頃には仮想ネットワークと独自開発の新ゲートウェイを組み合わせることで、クラウドとネットワークの接続をカスタマポータル経由で自動化を実現することを予定。更に、2014年秋頃には仮想アプライアンス機能(NFV=Network Functions Virtualization)を実装し、従来は企業が拠点ごとに設置していたWAN高速化装置やファイアウォールなど、LANのネットワーク機器をArcstar Universal One上でソフトウェアにより仮想化することで、低価格で利用可能になるという。

 今回の基調講演では、仮想ネットワーク関連のみならず、多彩なクラウドソリューションが次々に紹介された。しかし、優れたソリューションをいくら送り出したとしても、それが顧客企業のもとにまで届かなければ意味がない。その点はNTTコミュニケーションズでも十分に理解しており、コンサルティング企業との連携でIT戦略/業務改革を含めた提案を行ったり、SI事業者などと連携して個別業務アプリケーションを開発するといったことにも積極的に取り組んでいくという。有馬氏も講演の締めくくりとして、「アプリケーション事業者、ビジネスコンサルティング会社、SI事業者、そして、NTTグループ各社やほかの通信事業者も含めた、国内外事業者とのパートナーシップの更なる強化を図り、お客様の役に立つクラウドソリューションを作り、届けていきたい」と語っている。


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 ガートナー ジャパンの田崎堅志氏による特別講演は、キャリア系IaaSの優位性、そして、課題を明らかにすることで、ユーザ企業が見るべきIaaS選択のポイントを見極めていく内容となった。市場に様々なクラウドが溢れており、ユーザ企業はその中からどれを選ぶべきかが分かりにくくなっている。自社にとって最適なクラウドを見つけ出すには、クラウド・ネイティブ、テクノロジ・プロバイダ、通信事業者(キャリア)、データセンタ事業者といった、クラウドを手がける各プレーヤーの特性を理解し、その特長を見極めることが必要だ。その上で、特にネットワークサービスを展開している通信事業者が提供しているクラウド・インフラストラクチャ・サービス(IaaS)、すなわち「キャリア・クラウド」に着目すべきだと田崎氏は提案した。

 その理由としては、「(1)スケール・ビジネス」「(2)ユーティリティ・サービスの提供能力」「(3)新たな成長へのフォーカス」の3つが挙げられるという。つまり、キャリアが手がけてきたネットワーク・ビジネスというものは、標準化したサービスを低い利益率で提供する、いわゆる薄利多売にならざるをえないクラウド・ビジネスと類似しており、スケールメリットを引き出すことにも長けているだろうということだ(=1)。しかも、キャリアはもともと、光ファイバや伝送設備、データセンタなどのネットワークインフラを保有しており、また、サービスを継続的に供給するための運用体制も整えている(=2)。更に、クラウド・ビジネスの推進というものは、これまで従来型のICTビジネスで得ていた利益を潰しかねない側面もあり、「クラウドを手がけるプレーヤーにとって非常に破壊的な意味を持ってしまうというジレンマもあるが、キャリアにはそのしがらみが少ないため、クラウドIaaS本来の価値提供にフォーカスできる可能性があることが利点(=3)」(田崎氏)だと指摘した。


キャリア・クラウドの選択が必須ではなく、視野を広げることが重要

 ただし、田崎氏はキャリア・クラウドの選択が必須だと言いたいわけではない。あくまでも「キャリアを選択肢に加える」ことで、上記のような観点でクラウドを眺めれば、クラウドに対する理解がより一層深まる、視野が広がるということだ。そう述べた上で、田崎氏はキャリア・クラウドの懸念点についても解説した。

 1つは、IaaS関連テクノロジ開発力に関しては、キャリアは発展途上のプレーヤーだということ。「ネットワーク・インフラストラクチャ」「データセンタ・ファシリティ」といった、いわゆる下層領域の経験と実績は豊富な一方で、より上位の「アプリケーション」「ITインフラストラクチャ」の経験については、クラウド・ネイティブ、テクノロジ・プロバイダなどに比べれば少ないと言え、今後のチャレンジも欠かせない。ただし、発展途上であるがゆえに、もともとキャリアが持つ特長と絡み合って急激に伸びる可能性もある。そのため、選択肢にキャリアを加えることは必要だが、あまり過度に期待してもいけないし、逆に過小評価すべきではない。注意深く、しかも継続的に実行能力を見極めていくことが必要だという。

 その後、田崎氏はいくつかのキャリア・クラウドの例を挙げつつ、サービス・ポートフォリオは同じだったとしても、根本の考え方は各キャリアで異なるため、その差異を慎重に見極め、イメージにまどわされることなく、具体的に評価するという点に注意してほしいと説明。「機能だけではなく、各プレーヤーのビジョン、サービスやテクノロジへの投資姿勢を評価の基準に加え、ビジネスモデル、サービスの提供力、市場環境の3点をポイントに選定を行うべきだ」とまとめた。


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 IDC Japanの寄藤幸治氏による特別講演では、IDCがこれまでに行ったグローバルITやクラウドに関する調査結果をもとに、あるべきグローバルITガバナンスの姿と、クラウドの利用が語られた。まず、寄藤氏は国内企業の海外進出/地域別の動向、海外での今後の事業展開などの調査結果を用いながら、海外進出を本格化させている企業は着実に増加しており、中国、ASEANが今後の注力エリアになると示した。そして、この「海外進出の本格化」によって、IT課題の多様化が生じている。実際、IDCが今年6月に実施した「国内企業の海外ITに関する調査」においても、グローバル規模での「システム構築」「業務プロセス標準化」「ITガバナンス強化」「アプリ標準化」「ITインフラ集約」など、標準化、ガバナンス、集約に関する課題が散見されたと言う。

 これは要するに、企業のグローバル化によって社内ITがバラバラになってしまうことを意味するが、なぜ、そのような事態が生じるのか。その理由としては、まず、進出先の地域や国が多様化していることが挙げられ、また、従来は生産拠点としての海外進出が多かったのに対して、現在ではむしろ、販売市場拡大のほうが主体となりつつある。そうしたケースにおいては、全社的な利益極大化よりも、まずは「海外売上高の増大」が経営目標となるものだ。その売上拡大をより容易にするには、本社のやり方ではなく、現地の商慣習や文化に合わせたほうが手っ取り早い。そして、現地の業務プロセスに合わせてシステム構築を行った結果として、ITのマルチナショナル化が“ほぼ必然的”に起きてしまっているのだという。


ITガバナンスの強化と、グローバルITの実現を可能にするのは、やはりクラウド

 当然ながら、この「ITの分散」は「投資の分散」を引き起こし、非効率な投資/運用につながってしまう。特に、海外進出の中期には、本社が把握していない海外IT予算が増加するという調査結果を寄藤氏は示した。海外売上高比率が10%に満たない企業では、本社が全体的な予算をきちんと把握しているという割合が高くなっている。こうした企業では海外進出を始めたばかりで、進出している地域もまだ限られているため、日本の本社からも目が届きやすい。しかし、海外売上高比率が10%〜30%、30%〜60%といった企業では本社が把握できていないという回答が大幅に増え、海外進出の拡大によって、まさしく、ガバナンスが危機に瀕しているという状況が示されている。「ただ、興味深いことに、海外売上高比率が60%を超えるような企業では、逆に、予算を本社がきちんと把握している、ガバナンスを効かせているケースが多いのです」(寄藤氏)。

 こうした集約が進んでいる例として、大手流通業と大手製造業の2社を取り上げ、両者に共通している点として、「ITが経営にしっかり組み込まれている」「ITに関する意思決定を自分自身で行っている」「本社からのガバナンスが効いている」ことが挙げられた。本社によるリーダーシップ、ガバナンスこそが、「グローバルIT」を実現し、戦略的かつ効率的なIT投資を実現するカギとなるというわけだ。

 寄藤氏は続けて、ITガバナンスの強化と、グローバルITの実現を可能にするのは、やはりクラウドだと示した。現実には、集約や標準化に対する現場の抵抗や成果の不明確さから、うまく進まないこともありうるが、企業の状況に合わせて、例えば、インフラから先行して、スモールスタートでクラウドを使った集約を実現することも考えるべきだろう。これによって、成果を「見える化」し、更なる集約/統合/標準化へのインセンティブにすべきというわけだ。

 こうした流れにおいて、重要なのは、やはりIT部門の考え方や姿勢だと寄藤氏はとらえている。「ITは企業の方針に従うものであり、ビジネス戦略がなければITは構築できない。それは確かなのですが、これからは逆に、IT部門の見方や考えがビジネス戦略を、ひいては経営そのものを動かしていく。そういった方向も持たなければいけないと思います。言われたものを、言われたとおりに作るだけではなく、自らが企業や経営のあり方を変える、企業を変革する部門としての役割を担っていく。そのために活用すべき要素の1つがクラウドだと私は考えています」と締めくくった。


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