ビッグデータは「どこから」の見極めが重要

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掲載日 2013/10/16

ザ・キーマンインタビュー ビッグデータ活用は「どこから」の見極めが成否を左右する

ビッグデータという言葉に、もはや新奇な印象を持つ人はいないと言っていいだろう。しかし、その半面、ビッグデータ活用が多くの企業に浸透したかと言えば、おそらくそうではないだろう。ビッグデータ活用が本当に広く普及していくためには何が必要と言えるのだろうか。

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城田真琴氏

情報技術本部 先端ITイノベーション部
上級研究員
城田真琴氏

「確実に成果が見込める分野でのスモールスタート」が成功を生む

Question

2年前にもビッグデータ活用に関するインタビューにご協力いただきましたが、その後、日本企業への浸透はどのようなスピードで進んでいると感じていますでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:城田真琴氏

ビッグデータに関しては、ある程度「活用できる企業を選ぶ」ことは確かでしょう。クラウドコンピューティングの場合は、むしろ中小規模の企業のほうがメリットが出やすいという側面もありますから、規模を問わず、幅広い層で導入が広がっている状況です。しかし、ビッグデータに関しては、基本的には規模の大きな企業ほど活用に適していると言えます。そのため、日本の企業全体で見た場合には浸透が進んでいないという印象を受けがちですが、大企業に限って見れば、順調に活用が広がっていると言えるのではないでしょうか。弊社が今年2月に実施した調査でも、従業員規模1000人以上の企業の約2割は、既に何らかの活用や実証実験を開始済みだという結果が出ています。

Question

大企業でも取り組みに慎重なところは少なくないようですが、その要因としてはどのようなことが考えられますでしょうか?

Answer

ご存じのとおり、個人情報やプライバシーの扱いに関する懸念もあるでしょう。それが要因となって、ビッグデータ活用の中でも分かりやすい例と言える大規模店舗や駅などでの行動分析などが思うように進まないという状況も見受けられます。きちんと手順を踏めばクリアできるはずですが、配慮すべきことも多く、なかなか簡単には済まない。更に、それだけではなく、例えば、まずは社内でビッグデータを活用してみようと考えた企業が、社員同士のコミュニケーションを分析して、生産性向上につなげようというケースなどでもプライバシーの侵害ではないかと問題になる場合もあります。

 ただ、それより何より、費用対効果の部分が大きいのではないでしょうか。よく言われるのは、何千万円、何億円もかけて大規模なデータウェアハウスを構築しても、はたしてそれに見合う価値が得られるのかということです。データ分析に必要な人材を集めたり、外部の専門家に依頼するなど、そのほかにも多くのコストがかかるのではないか。そこからようやくデータ分析に取り掛かったとしても、普通に考えれば分かるという程度の結果しか出ないのではないか。経営的な視点から見れば、ビッグデータ活用にはそうした多くの懸念材料があることは事実だと思います。

Question

費用対効果の問題は、どのように解決すべきだと言えますでしょうか?

Answer

単純な答えではありますが、やはり最初はある程度コストを抑えたかたちで始め、その上で効果をしっかりと測るしかないと思います。先ほど話したように、大規模なデータウェアハウスの構築に何千万円もの費用がかかるというイメージがあるかもしれませんが、クラウド上で提供されているデータウェアハウスなどを活用すれば、意外なほど低コストで済ませられます。そもそも、一部の企業を除けば、いきなりペタ単位、テラ単位のデータ分析を行うはずはないのですから、本質的にはそんなに膨大な初期投資が必要になるわけではありません。

 つまり、スモールスタートを行うのは現実問題としてさほど難しくはないと言えるのですが、重要なのは「どこから始めるか」ということです。じっくり吟味した上で、「短期的に、しかも確実に成果が出そうな分野」に対象を定めて、そこからスモールスタートすべきなのです。いくらスモールスタートでも成果が出なければ経営層は納得してくれませんし、「限定的なデータを分析しただけでも、これだけの成果が出ました」という報告ができれば、逆に賛同が得られるはずです。その後、徐々に様々な分野へと活用を広めていくのが正攻法だと考えます。


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最低限必要なのは業務を理解している人材。そのほかは外部委託でもかまわない

Question

最初に取り組む分野を見極める上で、成果が出やすいこと以外に、留意すべき点はありますでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:城田真琴氏

当然ながら全くデータがないというゼロの状態からスタートするのでは、時間もコストもかかって、頓挫してしまう可能性があります。既にある程度のデータが蓄積されているのはもちろんのこと、その中にあまり“ゴミ”が混じっていないきれいな状態のものを対象にできれば、すんなりとデータ分析を始められるでしょう。あとは、そのビジネスをよく理解していて、なおかつデータ分析の素養がある人が存在すれば、理想的なパターンと言えます。

 ビッグデータ活用においては、データサイエンティストの必要性などが話題に上ることも多く、「うちにはそんな人材はいないから、ビッグデータ活用は無理だね」と考える企業もあるかと思います。しかし、少なくとも現時点では、多くの日本企業にとって本当に必要なのは、データサイエンティスト以前に、データを用いてどのようなビジネスやサービスを展開していくかという企画を立てられる人材ではないでしょうか。データをどう活用するのかが定まっていれば、データサイエンティストの役割は外注などに委ねてもいいわけですから。社内のどこにデータが蓄積されていて、それをどのように活用すれば自社にとって有意義なのかということから、きちんと考えないといけないわけで、そのためには自社のビジネスをしっかり理解している人に最初の段階から関与してもらうということが何より重要なのです。

 統計の知識を持った社員だけでは、そもそも何のためにやっているのかという目的を途中で見失うことにもなりがちです。最低限として社内に必要なのはそうした業務をよく理解している人であり、適切なKPIを設定できる人です。次に必要となる、データを使ったビジネスやサービスを企画立案できる人はコンサルティング会社などに依頼するということでもかまわないと思います。その次のステップとして、実際にデータ分析を行う人員に関しても同様です。

Question

理想を言えば、情報システム部門の中に自社の業務を理解している人材が揃っていればいいわけですよね?

Answer

これまでは必要に応じてITインフラを用意したり、維持することがメインの業務だったわけですから、いきなりビッグデータ活用で中心的な役割を担ってくれというのは少し無茶振りな感じはあるでしょう。ただ、企業の中には部門間でローテーションさせることで、うまく人材の育成を図っているところもあります。情報システム部門の社員も一度は業務部門で1年なり2年なりの経験を積み、現場を学んだ上で情報システム部門へ戻す。そうすることで、業務部門の課題などをしっかりと分かった上でインフラ整備を行うことができるというわけです。ただ、現実にはそこまでできている企業はごく一部ですし、情報システム部門の人員がビッグデータ活用のプロジェクトに参加すれば、自社のビジネスへの理解をより深めるいいきっかけにもなるかと思います。


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まずはビッグデータ市場におけるミスマッチが解消されるべき

Question

今後、ビッグデータ活用が日本のビジネスにきちんと根付いていくためには、どのような条件が整うことが必要だと思いますか?

Answer

株式会社野村総合研究所:城田真琴氏

利用する側の企業としては、今欲しているのは、高価なハードウェアでもソフトウェアでもないと思います。その一方で、多くのITベンダでは、ハードウェアやソフトウェアといった商材を最初の段階から売り込みたいと考えているのではないでしょうか。ITベンダの立場からすれば当然なのですが、そこでミスマッチが生じていることも事実です。ビッグデータを商機ととらえ、大きな目標を立てているITベンダも少なくないでしょうが、この新しい市場でいきなり、何十億、何百億円もの売り上げを達成するのは難しいのではないかと考えます。

 もちろん、クラウドに続く大きなトレンドとして、期待も大きくなりがちかと思いますが、目先の短期的な売り上げのみを追求するのではなく、顧客のメリットを第一に考え、ビッグデータ活用を多くの企業に広め、きちんと根付かせることが、最終的にはITベンダ側の利益にもなるはずです。そのために必要なのは、ユーザ企業にとって本当に必要なものを提供し、きちんと成果が見込める提案を考え、地道に行っていくことでしょう。そして、顧客側で成果が上がれば、扱うデータの量、そして、ビッグデータ活用の適用分野が拡大していく。そういう利益拡大の道筋こそが、ユーザ企業にとってもITベンダにとっても本当に有益なものだと言えるのではないでしょうか。


●ありがとうございました。


取材協力

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流通や金融など各産業分野の研究、消費者動向調査、未来予測などを行い、その成果を広く社会に発信。予測、分析、政策提言などによって問題発見から解決策を導くまでの「ナビゲーション」と、その解決策を業務改革やシステムの設計、構築、運用によって実現する「ソリューション」を相乗的に機能させることを軸に、「未来創発」に取り組んでいる


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