産学連携がビッグデータ活用にもたらす成果

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掲載日 2014/02/12

ザ・キーマンインタビュー 産学共同研究がビッグデータ活用にもたらした成果

ソフトバンクグループの中でICTサービス事業を担いつつ、イービジネスサービス/ソリューション事業を展開するソフトバンク・テクノロジー。同社では、昨年6月に東京理科大学とビッグデータを活用した共同研究契約を締結し、ECサイトにおける顧客の解約防止を目的とした予測数理モデルの開発に着手した。この取り組みは現在、どのような段階にあるのか、また、今後どのようなサービス/ソリューションへと結実させていくのだろうか。

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ソフトバンク・テクノロジー:五嶋 英明 氏、小松 一也 氏、江原 圭司 氏

イービジネスサービス事業部
Webインテリジェンス本部
データサイエンス部 部長

五嶋 英明 氏

Webインテリジェンス本部
データサイエンス部
テクニカルマーケティングBグループ

小松 一也 氏

Webインテリジェンス本部
データサイエンス部
コンサルティンググループ

江原 圭司 氏

ビッグデータ関連事業のベースとなっているのは、Webアクセス解析

Question

様々なICTサービス/ソリューションの提供を行っている貴社では、ビッグデータ活用分野に関して、どのような戦略で取り組まれているのでしょうか?

Answer

ソフトバンク・テクノロジー:五嶋 英明 氏

弊社はClouderaのパートナー企業として、ビックデータに関わるコンサルティングサービスやシステムインテグレーション、サポートサービスを提供していますし、Apache Hadoopの開発者向け認定資格「Cloudera Certified Developer for Apache Hadoop」や管理者向け認定資格「Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoop」を取得した技術者が多く在籍しています。そして、そうした技術者が既に、ソフトバンクグループの各企業におけるビッグデータ基盤の構築支援といった“実際の業務に携わってきた”という点で、他社と一線を画するシステムインテグレーション/サービスインテグレーション技術・実績を有していると考えています。

 更に、いわゆるデータサイエンティストと呼ばれる人員に関しても同様のことが言えます。そもそも弊社では、各種ソリューション/サービスでECサイトなどのイービジネスを支援する「イービジネスサービス」を主要事業の1つとしており、アクセス解析などのコンサルティングサービスも提供しています。つまり、既に15年以上前から、「アクセス解析データをいかに収集し、分析するか」「分析結果をどのように具体的な施策に展開して、その効果をどう検証するか」といったことに取り組んでいるのです。そして現在では、それらの人員を結集させるかたちでデータサイエンス部を新たに設置し、ビッグデータ関連分野でデータ分析・活用に関わる業務に従事しています。

Question

古くから取り組んできたWebサイトのアクセス解析の延長線上として、ビッグデータ関連事業を展開されているということでしょうか?

Answer

ご存じのとおり、Webサイト上のデータというものは、まず量的にも非常に大きくなります。しかも、効果的なWebマーケティングを実施するには、アクセス解析データはもちろん、Webコンテンツ、更には会員情報や商品データベースなどとも合わせて、統合的な分析を行う必要があるのです。弊社で扱っている案件では、月間で数億レコード、年間で数十億レコードに及ぶものもめずらしくありませんから、そういう大規模なデータを処理するためには、やはりビッグデータ関連のインフラやノウハウを活用する必要があるのです。

 また、例えば150kmと書かれたデータがある場合、速度を示しているのかもしれないということは推察できますが、そのデータの意味、例えば、センサによる計測データなのか、人が適当に入力した情報なのかは容易には判断できません。これに対して、弊社では「Webのデータをうまく活用して、適切な施策を提案する」というビジネスに専門的に取り組んできた結果、データの粒度を判断し、データの意味をきちんと理解した上で詳しい分析を行うというノウハウを蓄積できているわけです。

Question

そうしたイービジネスサービスの対象は、ECサイトが中心になっているのでしょうか?

Answer

いえ、Webサイト全般です。たしかに、ビッグデータ活用の事例としては、ECサイトが分かりやすいのですが、それ以外の分野で活用されていないわけではありません。例えば、Webサイト上では商材を販売していないBtoCのお客様などでは、Webアクセス解析と実店舗の来客データを組み合わせて分析して成果を引き出しているケースもあります。また、不動産や自動車といった高価な商材では、Webサイトを何回も訪問されて、何度も検討を繰り返して、ようやく購入に至ることになります。そういう案件でも、過去の訪問履歴を網羅的・多角的に分析することで、最も効果的な施策を導き出すといったかたちで、様々な企業のWebサイト運用を支援しています。


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東京理科大学との産学共同研究に踏み切った狙いとは?

Question

昨年6月には「ビッグデータを活用したデータマイニング」に関して、東京理科大学との産学共同研究を開始すると発表されましたが、こちらはどのような動きになっているのでしょうか?

Answer

ソフトバンク・テクノロジー:小松 一也 氏

そもそも今回のプロジェクトは、弊社が運営するアクティブユーザー数が約500万という大規模ECサイトにおいて、データマイニングを活用して、会員の解約率の低下、ひいては売上の維持・向上を図りたい、そうしたサイト運営企業様のニーズに応えたいというところからスタートしました。解約率を下げるためには、例えば、会員全員に対して割引クーポンを発行するという手段も考えられますが、1割あるいは2割程度の解約顧客を引き止めるために、それだけのコストをかけるのは運営側にとっても現実的ではありませんし、最終的に全体的な販売価格へと上乗せされるとすれば、ユーザ側にとっても好ましくないでしょう。

 そこで、あらかじめ「どのお客様が解約しそうか」をより正確に絞り込めるようにしたい、そのためにはデータマイニングが最適な方法だということです。前述のとおり、Webマーケティング/アクセス解析分野において、弊社は豊富な技術/実践ノウハウを有しています。しかし、更に高いレベルを目指すべく、データマイニングにより得られた知識を人々の生活やビジネスに活かす研究・開発に取り組まれている東京理科大学様と産学共同研究させていただくことになりました。

 将来的には幅広いWebサイトへの応用を考えていますが、今回のプロジェクトではまず、「ECサイトの運営活動及び顧客の購買活動」をテーマとした上で、関連するあらゆるデータを複合的に分析することで、顧客行動における傾向を調査し、予測モデルを構築することを目的としています。具体的には、ECサイトの運営においては、アクセスデータに加えて、顧客が購入した購買実績データや会員向けのメールマガジン配信データ、更にはコールセンタのデータ、キャンペーンなどのイベントデータといった様々なデータが介在しています。データの統合、セグメントの統一といった課題を乗り越えて、データを連携して分析できれば、顧客の行動の傾向を導き出せます。更にそれらを予測モデルに落とし込むことで、より実践的なECサイトの経営戦略に応用できる可能性も持ち合わせているのです。

Question

プロジェクトを開始してから約1年ということですが、現在はどのような段階にあるのでしょうか?

Answer

まずは、東京理科大学と共同で、機械学習を用いた解約顧客予測の数理モデルを開発しています。あとは、その計算式をもとに実際のデータから顧客の絞り込みを行い、解約防止に有効な施策をいくつか考えてトライ&エラーで実施、そして、効果を測定した上で、数理モデルへフィードバックしながら精度を高めていくという流れになります。


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Webマーケティングを主体としつつ、意外な分野での応用も狙う

Question

様々なITビジネスの中でもビッグデータ活用という分野は、実践的な側面と学術的な側面が密接に交じり合っている印象が特にありますが、そういう意味でも産学連携に適していると言えるでしょうか?

Answer

ソフトバンク・テクノロジー: 江原 圭司 氏

そうですね。グローバルなIT企業の中には自らが学術的な試みを積極的に実践しているところも多いと感じます。事業展開を通じて蓄積してきた実践的なノウハウを理論で裏付けたり、学術的な要素を取り入れようとした場合、弊社では産学連携というかたちが結果を出しやすいと考えたわけです。大学側にとっても、やはり“実際のデータ”を扱えることは大きな意味があると思いますし、今回のようなプロジェクトによって、研究にリアリティをもたらすことができるというのは、非常に重要なポイントだと言えるのではないでしょうか。

Question

プロジェクトの結果は事業活動へとフィードバックされていくことになるのでしょうが、今後、どのようなサービス展開を考えていますでしょうか?

Answer

やはり、産学連携で得たロジックを活かすかたちで、データマイニングや機械学習などをコアにしたサービスに力を入れていこうとしているのですが、あまりにも高尚と言いますか、技術寄りで分かりにくいものにはすべきでないと考えています。お客様にとっては、結局のところ、分析した結果で何ができるのか、どんな役に立つのか、どういった成果があるのかが重要なわけですから、そういうことが見えやすいサービスに仕立てるのが望ましいでしょう。また、その一方で、ビッグデータをスモールスタートで始められる、まずは小規模な投資で効果を測れるようなサービスを提供したいと考えており、こうした分野も来年度には事業の主軸の1つになってくるのではないかと思います。

Question

ビッグデータ活用の適用分野としては、今後もWebマーケティング周辺ということになりますでしょうか。それとも、ビッグデータ関連であれば何でもやるといったかたちで、幅広く展開していくことになるのでしょうか?

Answer

基本的には、弊社ではイービジネスを事業の柱としていますから、あくまでもWebのデータを確固たる背骨とした上で、そこにどういうデータを組み合わせれば何ができるのかというかたちで進めていくことになると思います。ただ、主体はWebマーケティングだとしても、そこから思いがけない分野へつながっていく可能性もあるかもしれません。例えば、弊社ではソリューションビジネスも手がけていますから、Webマーケティングのデータ解析で得た何らかのノウハウを、セキュリティ/ネットワーク機器のログデータの分析に活用し、不正検知に役立てられるのではないかなどといった具合です。


●ありがとうございました。


取材協力

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ソフトバンクグループのICT事業会社として、創業期からのシステムインテグレーションビジネスに加えて、2000年にはWebマーケティングビジネスを事業化。ソフトバンクグループのYahoo!Japanの運用経験、ビッグデータ黎明期からのソフトバンク通信各社へのHadoopなど先端技術の構築支援実績をもとに、国内約130社の顧客企業を支援している。


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