社内の日本型データサイエンティストを探せ

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掲載日 2014/01/15

ザ・キーマンインタビュー 社内に埋もれた日本型データサイエンティストを探せ!

野村総合研究所が、2018年度までに企業などでデータ分析のビジネス活用動向がどのように進展するかを予測した「ITロードマップ」をとりまとめた。そして、その中で特に強調されているのが、「日本型データサイエンティスト」と呼ばれる存在だ。その登場・活躍こそが、ビジネスにおけるデータ分析の普及、そして成功の鍵を握るというのだが、具体的にどのようなスキルを持った人材を指しているのだろうか。

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中村 博之 氏

情報技術本部 先端ITイノベーション部
上級研究員
中村 博之 氏

データサイエンティストが必要だと感じている企業は多いか、少ないか

Question

先日、データ分析のビジネス活用動向に関するITロードマップを発表されましたが、その概要をお聞かせいただけますでしょうか。

Answer

株式会社野村総合研究所:中村 博之 氏

これは、企業などにおけるデータ分析のビジネス活用動向が、2018年度までにどのように進展するかを予測したものです。現在は社内の一部門の活動が中心の「データ活用の黎明期」と言えますが、2015〜2016年度頃には「全社的なデータガバナンスへの発展期」となり、日本企業でもCDO(最高データ責任者)やCAO(最高分析責任者)を設置して全社的な取り組みに移行する企業が増えるでしょう。また、2017年度以降は「戦略的なデータ活用の普及期」となり、社内外のデータを自在に連係させ、ビジネスへの活用が一段と進むと見ています。

Question

その参考資料として発表された「データサイエンティストに関連する調査結果」では、既に社内にデータ分析の専門家を抱えている企業も含めて、データサイエンティストの育成・採用に何らかの関心がある企業は全体の半数だったことが示されていますが、これは意外に多いと言えますか?

Answer

そういう見方もあるかもしれません。ただ、細かい内訳では、既に「データサイエンティストという呼称の人がいる」企業はわずか0.9%、「呼称は異なるがデータ分析の専門家がいる」企業も7.4%にとどまります。また、育成・採用に関しても、具体的に「計画がある」企業は3.6%のみです。何らかの関心がある企業まで含めて全体の半数と言っても、「計画はないが、関心を持っている」という企業が38.4%と多数派のわけですから、どんな効果があるのかと悩み始めている段階、つまり、ようやく出発点に立ちつつある企業が大部分です。その一方で、「データ分析自体に関心がない」企業も全体の29.5%に及んでいますから、必要性の認識としては、まだまだこれからの段階と言えるでしょう。

図1 貴社には、いわゆる「データサイエンティスト」(データ分析の専門家)がいますか?
図1 貴社には、いわゆる「データサイエンティスト」(データ分析の専門家)がいますか?
(N=664、有効回収945から無回答を除く)

出典:「データ・サイエンティストの虚像と実像〜データ分析をビジネスに結びつけるための人材と体制〜」野村総合研究所、2013年11月

Question

「データ分析は外部に依頼するので、育成・採用に関心がない」と回答した企業も9.9%に及びますが、これはどう見るべきでしょうか?

Answer

データサイエンティストの定義は様々ですが、例えばデータ分析をもとに何をするか、つまり、ビジネス上のアクションが明確な場合には、「データ分析の専門家」が必要なのかもしれません。それならば、分析専門会社のプロフェッショナルに任せればよく、必ずしも企業内に置く必要はないという考え方もあるでしょう。ただ、そもそも、データサイエンティストに求められるスキルは、業種や対象業務によって異なるものです。そして、これは大まかに見れば、「ビジネス上のアクションが明確か、不明か」「有効なデータを保有しているか、不足しているか」という2つの軸で分類できると考えています。


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今後、どのようなスキルを持った人材を社内に確保すべきか

Question

その分類で見た場合、データサイエンティストにはそれぞれどのようなスキルが求められるのでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:中村 博之 氏

例えば、ネットビジネスや小売、通信といった業種で、ビジネス上のアクションが明確、かつ、有効なデータを保有しているのであれば、やるべきことははっきりしているわけですから、高度な分析スキルやITスキルが第一に求められるでしょう。実際、大手のネット通販事業者では高度な分析に注力し、機械学習によるクラスタリングなどの分析スキルを有するデータサイエンティストが数十名規模で在籍する企業なども存在します。また、大規模データを扱うことを前提にした場合には、Hadoopによる大規模並列処理、データ加工などのIT面も重要ですから、高いITスキルを持った技術チームの確保を優先しているケースも少なくありません。ただ、これらはある意味では狭義のデータサイエンティストに求められるスキルだと考えています。

 逆に、金融、製造などの業種では、有効なデータは保有しているものの、ビジネス上のアクションは不明な場合も多く、また、サービス、B2Bといった業種では、ビジネス上のアクションが不明なだけではなく、有効なデータも不足していたりします。そういうケースでは、むしろ分析やIT以外のスキルが求められ、特に業務知識に基づく仮説構築スキルが重要だと考えています。日本の多くの企業はこれらに該当する場合が多いのではないでしょうか。そうなると、データサイエンティストはもう少し広い意味で、仮説を立案して、現場と一緒になってアクションを起こしていく、更には「データ駆動型経営」の推進という部分まで担うことも求められます。そうした人材はアウトソースしにくく、やはり社内に必要ということになるでしょう。

Question

ロードマップの中で「日本型データサイエンティストの台頭」を見込まれていますが、そうした仮説構築スキルを持ち、しかも、アクションにつなげられる人材を意味しているのでしょうか?

Answer

そうですね。今回の調査では、データ分析の専門家が社内にいると答えた企業に対して、「社内のデータ分析の専門家にどのような専門性を期待するか」という質問も行いました。「統計や機械学習などに関する知識を持ち、高度なデータ分析を行う」という回答をはじめ、データ分析スキル、ITスキルを示す回答も少なくありませんでしたが、最も多い回答は「業務知識を持ち、データ分析に基づく仮説立案と検証を通して業務改善を提案する」というものでした。日本企業においてデータ分析が広く定着していくためには、やはり、社内外の関係者との連携、すなわち、現場力をもって、アクションを実行可能にする人材が求められると言えるのではないでしょうか。


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なぜ、日本では独自のデータサイエンティストが求められるのか?

Question

そうした日本型データサイエンティストは決して自然発生的に出てくる、増えるというわけではないですよね?

Answer

株式会社野村総合研究所:中村 博之 氏

そうですね。鶏が先か、卵が先かの議論ですが、まず、そうした人材が出てきて、活躍してくれないと、データ分析、ビッグデータ活用といった分野が普及しない、盛り上がってこないという面はあります。先ほど述べた、アクション仮説の発見・実証、そしてデータの調達などに取り組むための必要スキルとは、現場力に加えて、ロジカルシンキング、仮説構築、コミュニケーション、意思決定支援などになりますが、これらはいわゆるコンサルタントのコアスキルに該当します。多くの日本企業には、MBA取得などでこうしたスキルを持っているにも関わらず、これまで活躍の場を持たなかった方々も多くいらっしゃると感じており、そうした人材に「日本型データサイエンティスト」になっていただくのが1つのシナリオだと考えています。また、コンサルティング会社の出身者などで適切な方を外部から採用することも選択肢となるでしょう。

  ただもう1つ、今回のロードマップで日本型データサイエンティスト、あるいは現場志向といったキーワードをあえて強調した理由の1つには、日本ではデータ分析のビジネス活用が経営からのトップダウンで進みにくいという問題が挙げられます。米国などの経営層には、MBA出身者やコンサルタント経験を持つ方も多く、「データ駆動型経営」がトップダウンで推進されることも多いのですが、日本ではそういう企業は決して多いとは言えませんから。

Question

つまり、米国などとは異なる進展シナリオが必要となるということでしょうか?

Answer

はい。そのため、日本の企業における1つの進展シナリオとしては、例えば現場管理職クラスなど、ある程度の実行力を持った有志が集まり、分析とアクションを積み重ねて、小さなビジネス成果を早く出し、データ駆動型経営の効果をボトムアップで経営層に働きかけていくという流れが考えられます。あるいは、現場型・コンサル型人材などをリーダとし、そのほかはエンジニア型人材で構成されたチームを作ってもよいでしょう。また、アクション効果の実証とひと口に言っても、ネットビジネスなどであれば比較的容易ですが、そのほかの大部分の企業ではリアル環境も含まれますから、必要に応じてアクションの実証環境を整備していく必要もあります。

 このようにクリアすべき点も多いのですが、うまくデータ分析によってビジネス成果が得られる成功事例が各企業で出始めれば、その後は全社的な取り組みとするために、CDOやCAOを設置して全社的なデータの管理・分析・展開を進める企業も増えるだろうと考えられます。更に、アクションの幅を広げるためには、外部データとの融合も有効ですから、自社内のデータの整備、データ間の連係・融合技術の進化、外部のデータ提供サービスなども活発化していくのではないでしょうか。


●ありがとうございました。

図2 データ分析のビジネス活用動向に関するロードマップ
図2 データ分析のビジネス活用動向に関するロードマップ
出典:「データ・サイエンティストの虚像と実像〜データ分析をビジネスに結びつけるための人材と体制〜」野村総合研究所、2013年11月

取材協力

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流通や金融など各産業分野の研究、消費者動向調査、未来予測などを行い、その成果を広く社会に発信。予測、分析、政策提言などによって問題発見から解決策を導くまでの「ナビゲーション」と、その解決策を業務改革やシステムの設計、構築、運用によって実現する「ソリューション」を相乗的に機能させることを軸に、「未来創発」に取り組んでいる


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