Hyper-Vが大規模環境にも浸透し始めた理由

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掲載日 2013/07/22

ザ・キーマンインタビュー Hyper-Vが大規模環境にも浸透し始めた理由

Windows Server 2012 Hyper-Vは仮想化プラットフォームとしての機能・性能が従来バージョンから大幅に向上しているが、実際のところ、エンタープライズレベルでの利用にも十分な内容を有していると言えるのだろうか。また、大規模システムへの導入案件は増えているのだろうか。

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小川 大地 氏

プリセールス統括本部 サーバ技術本部
インダストリスタンダードサーバ技術部 ITスペシャリスト
小川 大地 氏

コストダウンに加えて、「安心して仮想化できる」ことが重要

Question

Windows Server 2012 Hyper-Vは中堅・中小規模の環境を中心に利用が広がっているようですが、その一方で大規模システムへの導入案件は増えていると言えますでしょうか?

Answer

日本ヒューレット・パッカード株式会社:小川 大地 氏

私はプリセールス、いわゆる営業エンジニアとして、お客様に仮想化の提案を行ったり、システム設計を手がけているのですが、そうした立場から見て、Windows Server 2012 Hyper-Vの導入検討はエンタープライズでも着実に増えているという印象を持っています。その理由としては、やはりコストダウンのニーズが挙げられるでしょう。特に大規模システムを抱える企業では、3年前、あるいはそれ以上前から仮想化を既に実施済みで、現在はそのリプレースのタイミングを迎えつつあります。その際、より高度な機能を求めるというよりは、現状を維持しつつ更なるコスト削減を図りたいというお客様が多くなっているのです。

 正直に言って、性能面に関しては、どの仮想化プラットフォームもほとんど違いはなくなっており、例えば、同じOSをVMwareで仮想化しても、Windows Server 2012 Hyper-Vで仮想化しても、基本的には変わらないものです。従来のHyper-VではゲストにCPUを4コアまでしか割り当てられませんでしたが、Windows Server 2012 Hyper-VではVMwareと同様に最大64コアまで対応したため、6コアもしくは8コアを要求するようなミドルウェアなどにも十分に対応可能です。結果として、機能も性能も十分で、ROIに優れた仮想化プラットフォームとして、Windows Server 2012 Hyper-Vを検討されるケースが増えているのではないかというわけです。ただ、その半面、エンタープライズ規模に対応するための設計や構築情報、ノウハウがまだまだ少ないため、実際に本格導入が進むにはもう少し時間がかかるかもしれません。

Question

ただ、ROIに優れているからというだけでは、導入に踏み切れない企業も少なくないのではないでしょうか?

Answer

そうですね。ここで言う大規模システムは、いわゆる統合基盤として構築されているものですから、従来のように「仮想化できるサーバを仮想化する」だけではなく、どんなシステムも仮想化でスタートさせることが前提になってきます。そのため、エンタープライズでの仮想化設計においては、当然ながら性能も求められますが、最も重要なのは「安心して仮想化できること」だと言えます。Windows Server 2012 Hyper-Vでは、そうした可用性・信頼性を高めるための機能に関しても、かなり増えたという点にも注目すべきでしょう。

 仮想マシンの可用性を高めるための手段として、従来からHyper-VではWSFC(Windows Server Failover Clustering)ベースで、ホストクラスタ及びゲストクラスタという2種類のクラスタリングを用意していますが、Windows Server 2012 Hyper-Vではそのカバー範囲が広がり、よりSLAの高いシステムにも対応可能になっています。従来のHyper-Vでは、ゲストOS上のアプリのサービス障害などを把握できなかったため、サーバ管理者はハイパーバイザーやホストOSまでは監視しているものの、ゲストOSには実質的にはノータッチで、部門ごとの管理に任せるしかありませんでした。Windows Server 2012 Hyper-Vではホスト側のWSFCでゲストOS内のサービスを監視可能になっており、ゲストOS内でサービスが異常終了した場合などには、ゲスト内でサービス再起動を試行するだけではなく、自動的に同一ホストでゲストを再起動させたり、別のホストでゲストの再起動を行うことが可能です。

 また、Windows Serverにおいては、クラスタリングをMSCS(Microsoft Cluster Service)で行っているケースも少なからずあり、様々な事情で仮想化への移行後もMSCSを使い続けたいというお客様が結構いらっしゃいます。そういうケースではやはりマイクロソフトが強いと言いますか、特にWindows Server 2012 Hyper-Vでは制約なしに、MSCSのどのような構成でも組めるようになっており、ライブマイグレーションにも対応しています。


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Hyper-Vを用いた仮想化設計では10GbEの使い方がポイント

Question

Windows Server 2012 Hyper-Vの導入を検討している企業が特に注目すべき機能などはありますでしょうか?

Answer

日本ヒューレット・パッカード株式会社:小川 大地 氏

ストレージのコピーを高速化する「ODX(Offloaded Data Transfers)」が挙げられます。これはSCSIを策定しているT10 委員会が定義したSCSI XCOPYコマンドをサポートするもので、VMwareも既にVAAI Full Copyとして実装済みです。ただ、このODXはハイパーバイザーではなくWindows OSレベルで実装されたため、仮想マシンクローンやストレージ移行の超高速化などの用途に限定されることなく、通常のエクスプローラでの作業なども含めて、すべてのコピーをホストやストレージパスに負荷をかけることなく、高速に実行できるようになります。もちろん、ストレージ側が対応している必要はありますが、弊社のHP 3PAR StoreServをはじめ、多くのベンダが対応ストレージをリリース済みです。

Question

Windows Server 2012 Hyper-Vを用いた仮想化のシステム設計において、留意すべき点を挙げていただけますでしょうか?

Answer

これは仮想化製品全般に言えることですが、ネットワークに関しては10GbEをきちんと活用することがポイントになると思います。多数のゲストOSを集約・統合していく中で、何がボトルネックになるかということを考えると、CPUやメモリは既に余裕があり、ネットワークやストレージが不足する可能性がむしろ高いという状況になっています。特にHyper-Vではネットワークのセグメント数を多く必要とする傾向があり、HA環境ではホスト管理用、CSV&クラスタハートビート用、ライブマイグレーション用、仮想マシン用、そしてストレージ用と、サーバあたり最低4+1系統が推奨されており、実際にNICを挿して対応する場合なら8〜10枚以上を用意する必要があるのです。2ポートの10GbEを用いて、LBFOからのダウンリンクを一旦すべて仮想スイッチに接続し、仮想スイッチの親パーティションポートを増やしてマップするという方法も考えられますが、この場合、CPU負荷に注意する必要があります。

 このあたりはHyper-Vの弱い部分とも言えるのですが、ただ、必ずしもHyper-Vの機能だけですべてをまかなう必要はなく、足りない部分はハードウェアで補完すればいいと考えます。具体的には、各社のブレードサーバなどに搭載されているNICパーティショニング機能を利用することで、CPUに負担をかけることなく、設定もシンプルに済ませることが可能です。また、この場合、GbE NICを10枚増設して、束ねて使うよりも安価だというコストメリットもあります。弊社の製品では「バーチャルコネクト」という名称でNIC分割機能を実装していますが、大規模システムにおいては、仮想化によるサーバ集約・統合に加えて、将来的には自動化を見据えることになるでしょうから、そうした観点からもブレードシステムをうまく活用していただきたいと考えています。これまでブレードシステムはコンパクトに収まる、ケーブリングがシンプルになるといった側面が主に訴求されていたかと思いますが、現在ではむしろ、シャーシ内のサーバとネットワークスイッチを密に連携させたり、一元管理できるという点に注目が集まっています。そうしたメリットは今後、Microsoft System Center 2012などを用いて、仮想環境におけるサーバやネットワークの運用管理を自動化していく上で非常に重要になっていくでしょう。

図1 Hyper-Vネットワーク設計のベストプラクティス〜3つの視点での考慮が必要
図1 Hyper-Vネットワーク設計のベストプラクティス〜3つの視点での考慮が必要
出典:日本ヒューレット・パッカード、2013年4月

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アプリケーションごとに仮想OSを用意する時代へ

Question

Windows Server 2012 R2ではHyper-Vもバージョンアップが図られるようですが、注目している点などはありますか?

Answer

現在のWindows Server 2012 Hyper-Vでは、例えば仮想マシンのフォーマットなどに、前身のMicrosoft Virtual Serverから続いてきたレガシーな部分が少なからず残っていました。Windows Server 2012 R2のHyper-Vは、BIOSベースからUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)ベースへの変更や、CPUを無駄遣いするエミュレーションデバイスの撤廃など、そうしたレガシーな足かせからの排除が図られており、様々な制約や問題から解放されるのではないかと見ています。

Question

ハードウェアベンダとして、また、仮想化を提案する立場として、今後どのような取り組みを進めていくことになるのでしょうか?

Answer

日本ヒューレット・パッカード株式会社:小川 大地 氏

先ほど、仮想化が前提になっており、どんなシステムでも仮想化していく時代になってきたというお話をしましたが、それにともなって、予想以上にゲストOSの数が増えていくという問題が生じつつあります。仮想化以前は、1つのOSに様々なアプリケーションを載せる、1つのサーバに様々な役割をこなさせるというアプローチもあったわけですが、「仮想化前提」という状況下においては、逆にアプリケーションごとにゲストOSを分けるという手法が主流になってきました。そのほうが相性問題も避けられるわけですし、また、Windows Server 2012のDatacenterエディションには無制限の仮想化権限が含まれており、いくらでもゲストOSを作成できるということも、その流れを後押ししているように感じられます。

 ただ、それは同時に、管理者が予測していた以上のスピードで、管理対象となるOSの数が増えていくことを示しています。例えば、現在稼働している50台のサーバをそのまま仮想化するだけであれば、ゲストOSも50個で済むと管理者の方も思いがちなのですが、実際には仮想化の際に複数のOSに分けることになるため、ゲストOSは100から200個、あるいはそれ以上になっていく可能性があるのです。管理すべき物理サーバの台数は確かに減るのですが、仮想マシンやゲストOSの数としては圧倒的に増えてしまう上、IPアドレスの確保など、様々な面に影響が生じてきます。そうした3桁を超える対象を管理するためには、やはり自動化が欠かせません。また、弊社はハードウェアベンダですから、やはり、何でもかんでも仮想化という方向性だけで済むわけではなく、物理も残したいというお客様にもきっちりと対応していきます。また、HP ProLiantサーバはWindows Server OSの開発に採用いただいていることもあり、驚くほど深い部分に至るまでマイクロソフト社と技術連携を行っています。今後もWindows Server 2012の魅力を最大限に活かしたソリューションをお客様に設計・提案していきたいと思います。


●ありがとうございました。


取材協力

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