より精密な人の流れの解析が収益拡大を生む

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掲載日 2013/12/25

ザ・キーマンインタビュー より精密な「人の流れ」の解析で、顧客企業の収益拡大を

日本マイクロソフトとの協業で、スマートフォンのアプリケーションから蓄積されるビッグデータから抽出した流動人口データを、Windows Azureベースで提供するサービス事業を発表したAgoop。実は同社は、通信事業のエリア対策改善を目的としたモバイル事業関連分析を、ソフトバンクモバイル向けに提供してきた企業でもある。同社のサービスではスマートフォンからどのようなデータを収集しており、どんな分析が可能なのか。

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Agoop:柴山 和久 氏

代表取締役社長
柴山 和久 氏

通信改善を目的に開発し、完成度を高めてきたエリア解析システムを汎用化

Question

位置情報サービスをベースとした事業を展開されていますが、どのような経緯で現在のようなビジネスに取り組まれるようになったのでしょうか?

Answer

Agoop:柴山 和久 氏

もともとは、ソフトバンクモバイルの情報企画部という部署で、エリア解析システムの自社開発を行っていました。当時の主な目的は通信事業のエリア対策改善で、2004年頃からはADSL事業関連分析、2006年頃からは光事業関連分析を手がけ、2009年にAgoopを設立し、現在もモバイル事業関連分析をソフトバンクモバイル向けに提供しております。

 具体的には、例えば、ADSLの接続状況を収集して、ダウンリンクの弱いところに対しては光サービスの展開を提案する。携帯電話の電波が入りにくいエリアをピンポイントで見つけ出して、基地局設営などの対策を提案するといった業務です。従来、こういった調査を実施するためには多大なコストを要しました。また、当時から既存のGIS(Geographic Information System)ツールなども存在していましたが、それらを用いて、通信改善を目的としたエリア解析し、更に見える化を行うのは効率的ではありません。そのため、自社で様々なシステムの開発に取り組んできたわけです。例えば、シンプルな「つながる/つながらない」という簡易的な情報でも膨大に集めて、多角的に分析すれば、有効な原因解析を実現できます。われわれはそういうノウハウを蓄積してきたのです。

 要するに、今で言うところのビッグデータをずっと以前から活用していたわけですが、その完成度を高めてきた結果、他社から「エリア解析システムとして販売してほしい」という声も寄せられるようになりました。また、われわれとしても、エリアプランニングにとどまらず、ビッグデータを見える化し、誰にでも扱えるような情報解析システムなども提供できるのではないかという自信が芽生え始めていましたから、それまで社内で展開してきたGISやビッグデータ解析の技術をプロフィット化すべく、株式会社Agoopを設立したという経緯です。

Question

現在ではビッグデータ解析に注力されているということでしょうか?

Answer

通信改善を目的としたエリア解析に関しては、今後は海外のモバイルオペレータを対象としたグローバルなビジネスに成長していくと考えています。日本では各モバイルオペレータの技術力が非常に高く、既に主要3社ともに接続率98%程度という状況になっていますが、国外ではまだまだそのような高いレベルには到達していないケースがほとんどです。そのため、弊社の関連解析ノウハウを提供し、世界中のモバイルオペレータをサポートするというビジネスも、今後は重要な事業の柱となってきます。

 その一方で、国内向けのビジネスとしては、これまで自分たちが培ってきた豊富な実績をもとに、他社にサービスやソリューションを提供する、すなわち、ビジネスインテリジェンスプロバイダとしての事業を展開しています。つまり、ビッグデータを活用して、ただ解析を行うだけではなく、それを事業収益につなげていく、そのお手伝いをしたいと考えているのです。そして、その中心になるのが「人の流れを把握する」ことです。


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国勢調査などでは見えない「人の流れ」をより確実に把握できる

Question

先日、日本マイクロソフトとの協業として発表された、流動人口データをWindows Azureベースで提供するサービスもその一環ということですよね?

Answer

Agoop:柴山 和久 氏

流動人口に関しては、Agoop設立以前、主に通信改善に取り組んでいた時期から既に意識していました。実際の「人の流れ」というものは、国勢調査などでは見えてこないため、より確実に把握できる手段を求めていたのです。例えば、戸籍上では人気テーマパークの人口などは非常に低くなってしまうでしょうが、それは実際の人口密度を示したものとは言えません。なぜ、そうした流動人口のデータが必要になってきたかというと、特にモバイル事業関連分析においては、ただ単に電波状況を把握するだけでなく、なぜ、そこで携帯電話が使われるのかという部分まで解析しないと、本当の意味での顧客満足度の向上を果たせないからです。そうした経緯から、エリア分析から行動分析へと取り組むようになりました。

 そこで2012年から実施してきたのが、スマートフォンのアプリケーションから蓄積されるビッグデータから、流動人口データを抽出するという取り組みです。弊社ではWi-Fiスポットやラーメン店など、特定の何かを探すことに特化したiOS/Android向けアプリとして、「電波つながりチェッカー」「Wi-Fiチェッカー」「コンビニチェッカー」「病院チェッカー」などの各種チェッカーアプリを無料で提供しており、これらのアプリが測定したGPSデータをもとに、特定地点における流動人口を算出することで、非常に精度の高い流動人口データを得られるようになっています。例えば、従来の計測方法では人の通行量の多い通りと少ない通りが交わる交差点がある場合、その交差点全体が通行量の多い場所として表現される場合がありましたが、今回の仕組みでは通行量の多い通りと少ない通りを判別できるようになっています。

 こうした流動人口の情報は、当然ながら、通信改善などの目的にとどまらず、様々なビジネスに活用可能です。今回のサービスを利用していただくことで、画一的に扱われてきたエリアの流動人口による価値をより細かい区画や通りといった単位で把握可能となりますから、例えば、「人の流れ」をもとに流通・飲食チェーンの出店計画といった経営・投資判断を行えるようになります。そのほか、自治体の都市計画、観光地における動的な人口情報の把握などにも役立てていただけると思います。

図1 東京23区周辺の流動人口のビッグデータ解析例(3Dメッシュ表示)
図1 東京23区周辺の流動人口のビッグデータ解析例(3Dメッシュ表示)
出典:Agoop、2013年12月

Question

個人情報を用いていないという点も特長になっているようですが、どのような仕組みになっているのでしょうか?

Answer

収集しているのは位置情報のみで、統計情報にも個人情報は一切含まないため、安心して利用いただけます。更にそれだけではなく、きちんと事前にユーザから使用許諾も得ています。先ほど、「簡易的な情報でも膨大に集めて多角的に分析すれば、有効な解析が可能」という話をしましたが、同様に、位置情報だけでも非常に多くのことが分かります。例えば、「いつ、どこにいたのか」という情報から、どの地域に住んでいるのか、どの地域へ通勤しているのか、あるいは休日にはどこへ買い物などに出かけていることが多いのかといった属性を推測することは可能です。

 具体的には、Microsoft SQL Serverのデータマイニングエンジンを利用して、位置情報によるクラスタ化を行い、属性情報の割り当てを行っています。このマイニング技術により、年齢・性別・住所といった実プロファイルを利用することなく、位置情報履歴だけで様々な属性情報を推察することを可能にしているのです。人の流れは、ある意味でそれ自体がマーケットであり、とらえ方としては、時間変動や曜日変動もあるし、季節変動もあるでしょう。そうした点で、今回のサービスは、商圏の潜在的なポテンシャルを探ったり、店舗の時間別稼働率と周辺の流動人口を比較するなど、ビジネス戦略の根拠として非常に有効だと考えます。


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重要なのは行動履歴による特性把握であり、個人情報はむしろ必要ない

Question

1つの考え方としては、モバイルアプリから情報を収集するのであれば、氏名や住所などは論外なものの、年齢・性別といったデータ程度は位置情報と組み合わせて収集したほうが、効率的に分析が行えるのではないかとも思うのですが、いかがでしょうか?

Answer

Agoop: 柴山 和久 氏

そういう点に関しては、むしろ、より慎重に考えています。これはコンプライアンス的な問題と言うよりも、情報を提供していただいている方々の心情を考えると、非常にセンシティブな問題になりうるため、あまり範囲を広げたくない。それと、もう1つ大きな理由があります。それは、年齢・性別などに属性を求める時代は既に終わりつつあるのではないかということです。最近では、男女や年齢による分類が通用しないケースは多く、例えば、40代の男性でもスイーツ好きはたくさん存在します。そのため、行動履歴から特性を把握してクラスタ分けをすればいい、逆に、リスクにつながる可能性もある個人情報などは必要ないという考え方です。

図2 流動人口データ提供サービスの製品イメージ
図2 流動人口データ提供サービスの製品イメージ
出典:Agoop、2013年12月

Question

サービスの提供対象としては、どのような業種が中心になるのでしょうか?

Answer

まずは特に人の流れの影響する部分になります。サービス開始前に、既に複数企業に対してパイロットサービスの提供を行っており、飲食チェーン店、大手スーパーマーケット、家電量販店での新規出店計画用データ、大手スポーツジム経営における新規出店計画と既存店のポテンシャル見直し、大学の研究機関でのパーソントリップ調査と連動した研究用途、銀行ATM設置個所の立地調査などに活用いただいています。今後は、小売流通業を主体としつつ、様々なクライアントと話し合いながら、データ提供や活用のための提案を行い、一緒にビジネスを成長させていきたいと考えています。

 更に、今回のサービスでは、Microsoft Excelから直接そのデータを活用でき、地図サービス「Bing Map」上でデータの可視化も行えます。これにより、いわゆるデータサイエンティストではない、一般の従業員や職員でも簡単な操作でビッグデータ活用が可能になります。つまり、マーケティングや経営などの担当者自身が「データサイエンティストになれる」というのが大きなポイントなのです。ビッグデータ活用において最も重要なのは、データ解析だけではなくて、情報の見える化ではないでしょうか。見える化ができなければ、実行にもつながらない。次のアクションにつなげるための情報の見える化、それを現場の人間が自らできることが非常に重要だと考えています。


●ありがとうございました。


取材協力

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いつでも、どこでも、誰にでも利用できる位置情報サービスをコンセプトとし、情報・ソリューションを提供する企業として2009年4月に設立。ビッグデータを収集し、更に顧客企業のビッグデータを価値ある情報に変える解析ノウハウと活用実績を有するビジネスインテリジェンスプロバイダとして、幅広い事業を展開している。


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