企業に利をもたらす千葉市ビッグデータ活用

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掲載日 2013/11/27

ザ・キーマンインタビュー 企業にも利をもたらす、千葉市のビッグデータ活用とは?

オープンデータ/ビッグデータの活用においては、自治体がどのように動くのかという点にも注目が集まっている。単独での取り組みに加えて、他自治体や企業との連携・協働にも力を入れている千葉市では、どのような考えのもとに、オープンデータ/ビッグデータ活用を推進しているのか。千葉市総務局 次長 情報統括副管理者の三木浩平氏にお話を伺った。

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三木浩平氏

総務局
次長 情報統括副管理者
三木浩平氏

オープンデータ/ビッグデータは「出口戦略」が重要

Question

千葉市ではオープンデータ/ビッグデータに関する施策に力を入れているようですが、基本的にはどのような方針で取り組まれているのでしょうか?

Answer

オープンデータやビッグデータに関しては、最初に「データ化」「共有化」というステップがありますが、千葉市ではその先にある「利活用」を見据えた上で取り組みを進めています。オープンデータには一定の注目が集まっているものの、現実には「共有化」で止まっているケースが比較的多く、そのため、市民の方々から見れば、「そんなに日常生活にインパクトはない」、また、企業の方々から見れば、「実際のビジネスにつながらない」というイメージになっているのではないでしょうか。千葉市としては、特に副次利用を促す利活用フェーズが「出口戦略」として重要だと考えており、どのようなかたちで使えるのかという点にフォーカスしています。

Question

実際にはどういった利活用を見込まれているのでしょうか?

Answer

千葉市:三木浩平氏

公共分野のデータをその性格から3つに分類した上で、それぞれ利活用の方向を設定しています。先ず、「オープン(開示可能)×スモール(データ量小)」は法人に関わる登録情報や各種公共施設の位置情報、公共サービス情報などで、これまで自治体のオープンデータで主な領域とされていた部分です。次に、「オープン(開示可能)×ビッグ(データ量大)」は環境系測定データ、統計化された情報、図書・論文などの既存のアナログアーカイブなどで、国の外郭団体が蓄積しているものが多く含まれます。その中でも例えば地理情報などいくつかのデータは既に公開されているものの、有償であったり、2次利用に制限があるなど、ビジネスでの使い勝手が悪い状況です。そして、最後の「クローズド(開示不可)×ビッグ(データ量大)」は戸籍や医療・福祉・税・教育関連の個人情報が中心で、地方の自治体・公共団体が持っているデータの多くが、この領域に属していることになります。これらは既にビッグデータとして存在しているものの、センシティブな性質ゆえにおいそれとは公開できません。

図1 公共分野のデータ例
図1 公共分野のデータ例
出典:千葉市、2013年11月

これらのデータの特性から、自治体の視点から今後2〜3年で利用が想定される事業分野を整理すると、「オープン×スモール=市民協働型事業」「オープン×ビッグ=情報応用ビジネス」「クローズド×ビッグ=課題抑制型事業」になると考えています。千葉市のオープンデータ/ビッグデータ施策に関しても、これらの全事業タイプでの取り組みを行っていますが、その中でも市民協働型事業と課題抑制型事業に重点を置くことになります。

 市民協働型事業に関しては、民間企業と協働で、「ちば市民協働レポート実証実験(ちばレポ)」を平成25年7月16日から12月下旬まで実施しており、来年度中には一般市民向けサービスとして提供開始する予定です。これは具体的には、スマートフォンやPCを用いて、市民の皆さんに市内の地域課題を写真付きレポートとしてWeb上へ投稿していただくというものです。同様のアプリケーションとしては、海外では「FixMyStreet」が浸透しつつあり、アイデアとしてはこのプロジェクトでも参考にしています。ただ、今年度の実証実験では情報共有にとどまらず、その後の業務処理が重要だと考えているため、マイクロソフト社が主に北米地域で展開している「Microsoft 311」をベースにしました。

 例えば、「暴風で街路樹の枝が落ちている」「公園で雑草が伸びすぎていて危険だ」といった状況を写真で投稿していただければ、その位置情報をもとに地図上で共有されるだけではなく、市役所側ではどのように対応すべきかという処理の切り分けまでを行うことを想定しています。また、市役所のみが対応するのではなく、案件によっては、市民のボランティアの方々の力を活かせる場にもしていきたいと考えています。


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個人情報を扱いつつ、民間企業も参画可能な事業モデルとは?

Question

課題抑制型事業に関しては、どのようなものになるのでしょうか?

Answer

千葉市:三木浩平氏

「クローズド×ビッグ」に属する戸籍・医療などのデータに関しては、プライバシー面でセンシティブな性質を持つ個人情報ですから、外部に公開することはできません。そのため、あくまでも自治体が事業主体とならざるを得ないと考えています。現在、検討を進めている「けんこうコンシェル」という事業は、健診データの分析により、生活習慣病の予備軍を抽出した上で、発病を未然に防ぐための健康活動を促していくというものです。

 健康指導については、これまで多くの自治体で実施されてきましたが、参加者の活動が継続しないことが悩みでした。そこで、より魅力的な健康プログラムにするためには、フィットネスクラブや給食サービスなど民間のサービスと連携することが有効だと考えました。健康指導に加えて、市民が希望する場合は、民間が提供している運動や食事などのサービスに市民を紹介するという流れです。

Question

そうした民間のサービスを紹介した場合には手数料を取って、それを更に何らかの市民への健康対策に還元するということも考えられますよね?

Answer

そうですね。まだ検討段階ですが、民間企業から得た手数料や広告料を原資に、健康ポイントプログラムを作ることを考えています。市民はがんばって健康になれば民間サービスでも利用できるポイントを獲得することができます。一方で、健康サービスを提供する企業にとっては、千葉市に進出するとビジネスチャンスが大きいということもいえるのではないでしょうか。市民、企業、そして市役所というすべての関係者にとってメリットとなることが事業として成立・継続するかどうかに重要なポイントだと考えています。

Question

健診データの収集・分析に関しては、千葉市で行うということだと思いますが、どのような体制で取り組まれるのでしょうか?

Answer

千葉市としては、やはり全市民の方々に参加していただきたいですから、民間の健康保険加入者のデータも何らかの手段で分析対象に含めたいと考えています。ただ、国民健康保険対象者と異なり、外部の健康保険団体からデータを直接入手するための許諾を得ることにはハードルがあります。そこで、民間の健保に加入している市民でも、健康診断結果の紙を持ってきてもらえば、国保の方と同様に「けんこうコンシェル」のサービスを利用できるというアイデアもあります。

 あとは、毎年の健診データを分析して、健康指導や健康サービスを紹介して終わりではなく、健康サービスの利用実績やその結果なども含めて、継続的に分析していくことが重要ではないでしょうか。どういう人が、どの健康サービスを利用したら、数値がどの程度改善されたかということを網羅的に分析し、個人情報ではなく統計情報として蓄積すれば、市民が健康サービスを選ぶ際の参考にもなりますし、サービスを実施する企業側にも有用なデータとして提供できるでしょう。これらがうまく循環して、市民のメリット、そして企業のメリットを生み出すとともに、「千葉市に住めば健康になれる」というイメージが創出できればいいと考えているのです。


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アイデアは募るだけではなく、素早く実現してこそ意味がある

Question

千葉市では単独の施策だけではなく、自治体間連携での取り組みも積極的に行われていますよね?

Answer

まず、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、さいたま市、相模原市と構成する「九都県市首脳会議」では、救急、防災、観光といった分野でのオープンデータ活用、特に広域で連携して臨まないと効果が出にくい用途を対象に、ユースケースの検討、データの統一、利用するためのルールづくりなどに取り組んでいます。また、その一方で、武雄市、奈良市、福岡市とともに「四市協議会」を設けており、そちらでは2013年4月に「ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会」を立ち上げています。

Question

ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会では、現在、主にどのような活動を行っているのでしょうか?

Answer

千葉市:三木浩平氏

これからの街づくりにおけるデータ活用のあり方や可能性を参加者とともに考え、新たな知見の発見につながるきっかけづくりの場を提供することを目的とした、公開シンポジウムやアイデアソンを開催するなど、オープンデータ/ビッグデータ活用の検討・推進に取り組んでいます。直近では、11月10日に公開シンポジウムを開催したのですが、その際、以前から募集していたアイデアコンテストの2次審査となる公開プレゼンテーションを行いました。

 アイデアコンテストは221に及ぶ提案をいただき、当日は8提案を対象に2次審査を実施したのですが、審査委員に加えて、各市長も選定に参加し、最優秀賞のほか、4人の市長がそれぞれに市長賞を選んでいます。授賞発表の際には、トップの判断として「是非、当市で実現したい」と表明されるケースも多く、サービスとして実現されるまでのスピードが早いという点が大きな特長となっています。アイデアを募ることも重要ですが、やはりそれを実現できてこそ、意味があると考えますから、今後も千葉市では「データをいかに利活用するか」「アイデアをいかにサービスとして実現するか」という点を重視しつつ、オープンデータ/ビッグデータ活用に取り組んでいくつもりです。


●ありがとうございました。


取材協力

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総務局 情報経営部 業務改革推進課では、少子高齢化の進展、市民の価値観・ライフスタイルの多様化など社会環境が変化する中、ITやかぎられた人的・経済的資源を有効に活用することにより、市民サービスを維持・向上、行政運営の効率化を図ることができるよう、情報化施策や行政改革を推進している。また、市全体の情報セキュリティを維持・向上するための取り組みも行っている。


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