DevOpsライフサイクル確立で継続的な改善を

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

掲載日 2013/08/20

ザ・キーマンインタビュー DevOpsライフサイクルの確立で継続的な改善・改革を

市場やビジネス課題が複雑化していく中で、IT活用にもスピードが求められている。新たな発想を短期間でアプリケーションやサービスとして完成させ、リリース後も頻繁にリファインしていく。そうした体制を実現するためには、単にDevOpsやアジャイル開発といった概念を取り入れるだけではなく、より大きな枠組みでの取り組みが必要だという。日本アイ・ビー・エム ソフトウェア開発研究所の上村務氏にお話を伺った。

日本アイ・ビー・エム株式会社 企業サイトへ

上村 務 氏

ソフトウェア開発研究所
ディスティングィシュト エンジニア
アジア・パシフィック CTO、IBMラショナル
PH.D. 上村 務 氏

開発と運用の連携は大きな枠でとらえるべき

Question

現在、ソフトウェア開発においては全般的にどのような課題やトレンドが生じていると言えますでしょうか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:上村 務 氏

モバイル、クラウド、ソーシャル、ビッグデータなど、ITの世界には大きな変革が訪れています。しかも、それらの各要素は個々に独立したものではなく、相互に関連性を持っていますから、非常にダイナミックな動きを引き起こします。そうした中で、特にインターネット関連サービスを提供するベンチャー系企業、インターネット上で新しいビジネスに取り組んでいる企業などでは、極めて早いペースで、頻繁に新しいサービスや追加機能をリリースしなければなりません。この状況を受けて、ここ数年で盛り上がってきたのがDevOpsやアジャイル開発などの概念を実践的に取り入れて、サービス提供の迅速化・効率化につなげようという動きだと思います。

 では、こうした流れというのは、ベンチャー系企業、インターネットサービス系企業だけに限ったものなのかと言うと、決してそうではありません。弊社の顧客企業は、金融業、製造業、流通業などを手がける大企業も多いのですが、いわゆる従来型の企業でもITやインターネットを取り巻く波の影響と無関係ではなく、むしろ、積極的に取り入れて、新しい製品・サービスを提供しなければいけないと考える人たちが増え始めています。ただ、ここで重要になるのが、開発だけではなく、実際の製品・サービス投入までの全体を迅速化・効率化しなければ意味がないという点です。

 新しい発想を考えついたら、要件定義、設計、実装、テスト、フィードバックといった工程を経ることになりますが、例えば、実装の部分のみにアジャイルを取り入れても、全体で見れば効果は限定的でしょう。変化の速度が著しく、従来のように、要件定義に多くの時間を費やしてきちんと作り込んでいくという手法では、製品・サービスを投入した時にはニーズに合わなくなってしまう。だったら、とにかくユーザに使ってもらえるレベルのものを早くリリースして、フィードバックをもらい、それを迅速に反映し、ユーザの要求に応えて何度もリファインしていく。本来、アジャイルとはそういうサイクルの確立を目的にしているはずです。

Question

DevOpsなどだけではなく、もっと幅広い範囲で見ていくべきだということでしょうか?

Answer

むしろ、DevOpsは開発と運用の連携だけではなく、もっと大きな、幅広い意味でとらえるべきだということです。重要なのはソフトウェア・デリバリ全体の迅速化であり、アジャイル開発も、あるいはテストの自動化なども、その一部と言えます。弊社ではこう した考えのもとに、DevOpsソリューションとしてRationalの製品やサービスを展開していますが、これはまさしく、先ほどのようなソフトウェア開発のライフサイクル基盤を提供するものです。更に今年4月にはRational事業の一環として、UrbanCodeの買収を発表しました。同社の製品は企業のソフトウェア開発、特にデリバリのプロセス全体を簡易化、高速化するもので、これを機に、開発後の段階、つまり、テスト環境のセットアップやアプリケーションのデプロイ自動化などにもこれまで以上に注力し、より大きなスコープでDevOpsというものを実現していくことになります。

図1 継続的なイノベーションを実現するIBMのDevOpsライフサイクル
図1 継続的なイノベーションを実現するIBMのDevOpsライフサイクル
出典:日本アイ・ビー・エム、2013年8月

このページの先頭へ

クラウドの浸透で、開発と運用が同じ土俵に

Question

開発と運用の連携不足といった問題は昔から存在していたかと思いますが、なぜ、今になってDevOpsという概念に注目が集まっているのでしょうか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:上村 務 氏

やはり、クラウドによるITインフラの変革に起因するところが大きいのではないでしょうか。クラウドというものが企業に浸透していくにしたがって、開発と運用が同じ土俵に乗れる可能性が出てきたというわけです。開発と運用が同じ仕掛けを扱えるようになれば、当然ながら、連携も容易になるでしょう。ただ、そのためには従来の手法や考え方を変える必要もありますし、特に運用側での変革が求められてくると思います。多くの企業において開発と運用は組織的にまったく別になっていますが、それだけではなく、そもそもプライオリティも違いますし、カルチャーも異なります。今になって足並みを揃えようといっても、開発と運用の現場だけでどうこうできるものではないでしょう。

 日本の場合は、現場が非常に優秀で、現場がビジネスの成功をリードしてきたという企業も非常に多いと感じます。現場がイニシアティブを持つことで、うまくいくこともあるでしょう。しかし、開発と運用の連携を本当に推進したいのであれば、やはり企業戦略として取り組むべきだといえます。自社の製品やサービスをどう発展させていくべきか、ビジネスを今後どのように展開していくか、そして、そのためにITをいかに活用していくかという戦略のもとで、ソフトウェア・デリバリの迅速化がビジネスにとって重要だという認識をしたら、トップダウンで組織変革を進めていく。基本的にはそういう流れではないかと思います。

Question

そうした組織変革を行った上で、実務的にはクラウドで同じ仕掛けを使うことで、連携を図っていくということですが、道具が共通化されていくと考えるべきなのか、情報共有の場所だと考えるべきなのか、どちらだと言えるでしょうか?

Answer

両方あると思いますが、やはり、まず共通の道具を使うことで、意識的な連携も進んでいくと言えるのではないでしょうか。ソフトウェア・デリバリの迅速化においては、様々な部分の「自動化」が非常に大きな要素になると思いますが、人手が常に介在するようでは当然ながら限界が生じますから、情報の連携だけではなく、ワークフローやオートメーションといった部分での連携を重視していくべきだと思います。


このページの先頭へ

オープンスタンダードへの対応でツール連携・統合を推進

Question

貴社ではそのような考えのもとで、具体的にどのような取り組みを進めているのでしょうか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:上村 務 氏

Rationalではここ数年にわたって、ツールの連携・統合に力を入れています。ソフトウェア開発は非常に複雑であり、最初の要件定義からデプロイまでに非常の多くの人がかかわることになります。こうした様々な人たちが介在することから生じる問題というものは、DevOpsが話題に上る以前から、解決すべき課題として認識されていました。いわゆるステークホルダーと呼ばれる立場の人が何人も存在し、全員の意見を取り込んで、必要なものを作っていかなければならないわけです。

 そうした状況の中では、1つの強力なツールがあればいいわけではなく、各々の役割の人に対して最適なツールを提供しなければいけません。これは先ほどの「同じ土俵に立つ」ということと矛盾しているように思われるかもしれませんが、そうではなく、様々なツールを提供した上で、全体がエンドツーエンドできちんと連携されるべきだということです。相互に整合性をもって機能し、しかも、全体をビジネスプロセスとして見て、全体がうまくいっているか、どこかにボトルネックがないかというふうに、コントロールできるようにしなければならないのです。

 ただ、ツールの連携を図るといっても、簡単に実現できるものではありません。そこでRationalでは、開発ツールの相互運用性を向上させるためのオープンスタンダード、OSLC(Open Services for Lifecycle Collaboration)への対応を進めてきました。Rationalの各ツールは基本的にOSLCをサポートしており、相互に連携できるだけではなく、OSLCに対応するものであれば、他社製品とも連携が可能です。弊社ではクラウドへの取り組みに関しても、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」やPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」などの推進に参画しており、オープンなインフラでクラウドの世界を築き上げていくという取り組みを進めています。それと同様に、IT構築におけるソフトウェアの開発、運用などを整合性のあるビジネスプロセス、エンドツーエンドのプロセスとして組み立て、最適化していくという目的においても、理想的な世界を作り上げていくべく、オープンスタンダードを積極的に取り入れているというわけです。


●ありがとうございました。


取材協力

日本アイ・ビー・エム株式会社 企業サイトへ

企業や公的機関などの顧客向けに、「ハードウェア(システム&テクノロジー)」「ソフトウェア」「サービス」を中心としたビジネスを展開。約40万人の社員が世界170ヵ国の顧客に製品やサービスを提供し、12ヵ所の研究所では科学者や研究者が最先端の技術研究・開発に取り組んでいる。


このページの先頭へ



◆関連記事を探す

開発関連ツール/DevOpsライフサイクル確立で継続的な改善を」関連の情報を、チョイスしてお届けします

※キーマンズネット内の「開発関連ツール」関連情報をランダムに表示しています。

開発関連ツール」関連の特集


ソフトウェア開発を効率的かつ高品質に行うために欠かせない構成・変更管理ツール。基礎をおさえてデグレー…



IT担当751人対象に「OSSの利用状況」を調査。「導入のきっかけ」や「導入メリットデメリット」など…



OSSの利用で十分…。そんなことありません!実際は充実した変更管理機能を備える商用パッケージのほうが…


「DevOps」関連の製品

「気が付いたら取り残されていた」とならないDevOps開発の3要件 【レッドハット】
DevOps
DevOps開発の3要件――「気が付いたら取り残されていた」とならないために

「DevOps」関連の特集


前回は、クラウドの発展に伴って IT 運用が現在より簡素化して行く可能性がある点について述べたが、今…



ITILは英国The Minister for the Cabinet Officeの登録商標および…



2013年頃に小ブームがあったDevOps。クラウド、モバイル、IoTと近年ますます加速するビジネス…


「開発」関連 製品レポート一覧

このページの先頭へ

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この記事に掲載している情報は、掲載日時点のものです。変更となる場合がございますのでご了承下さい。


30006132


IT・IT製品TOP > ズームアップIT クラウド > 開発 > DevOps > DevOpsのIT特集 > 特集詳細

このページの先頭へ

キーマンズネットとは

ページトップへ