電通の考えるマーケティング・クラウドとは

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掲載日 2013/07/31

ザ・キーマンインタビュー 電通が考える“マーケティング・クラウド”とは

ビッグデータ活用は、ソーシャルメディアの分析をはじめとする、マーケティング領域での広がりも期待される。同分野の主要企業である電通では、どのような考えのもとにビッグデータやソーシャルメディアの活用に取り組んでいるのか。同社の「マーケティング・クラウド」などのサービスを手がける、プラットフォーム・ビジネス局の平川健司氏、加藤剛輔氏、魚住高志氏にお話を伺った。

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電通:魚住高志氏、平川健司氏、加藤剛輔氏

プラットフォーム・ビジネス局
事業企画部長
平川 健司 氏

プラットフォーム・ビジネス局
事業企画部 チーフ・プランナー
加藤 剛輔 氏

プラットフォーム・ビジネス局
開発部 プロデューサー
魚住 高志 氏

もはやマスマーケティングだけをやっていればいい状況ではない

Question

広告・マーケティングを中心に、幅広いビジネスを展開している貴社では、ビッグデータ利活用の現状や今後に関して、どのような認識・展望をお持ちでしょうか?

Answer

電通:平川 健司 氏

従来までは“物”の動きに関してはデータが蓄積されていたものの、“人”に関しては、いわゆる視聴率などといったサーキュレーションを数字で測る、全体的な動向を把握するのみでした。そうした状況の中では、マーケティングも多かれ少なかれ勘に頼っていた部分はあったかと思います。しかし、現在では、例えばウェブサイトでは閲覧履歴をリアルタイムで見られるようになっていますし、更にインタレストグラフに代表されるような興味関心情報など、人に関するログが大量に収集・蓄積され始めました。特にeコマースの世界では、投げた情報に対して、誰がどう反応して、その次にどう行動し、最終的に購買までに至るという過程が詳細にトラッキングできる時代になっています。

 しかも、こうした流れはオンライン上の世界にとどまるものではありません。ログと言えば、オンライン上の話だというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、電子決済などの普及にともない、リアルな世界にもログがつくようになっています。当然ながら、経済規模で見ればオンラインよりもリアルのほうがまだ圧倒的に大きいわけですし、データ量も膨大になります。しかも、そこでは、ウェブリテラシーの高い人たちだけではなく、一般層も含めて、全生活者の行動履歴がログ化される可能性があるわけですから、リアルな世界においても、もはやマスマーケティングだけをやっていればいい状況ではなく、1人ひとりの動きにも注目しつつ、マーケティングのPDCAを繰り返す時代になっているのです。

 また、広告などの表現においては、クリエイティビティが非常に重要で、そこには当然、経験や感覚というものが大きく介在しているわけですが、そのクリエイティビティすら、実際にどういう部分が効果を生んでいるのか、何が消費者の気持ちを動かしているのかがデータで見られるようになっています。こうしたデータ分析とクリエイティビティとの関係性こそが、ある意味でビッグデータとデジタルマーケティングの時代を象徴するものだと感じています。

Question

よく言われるように、サンプリングではなく、全データを対象に分析を行えることが非常に重要ということでしょうか?

Answer

サンプル性が正確に保てるのかという問題はありますが、統計学的に見れば、全量データも有意なサンプルデータも本来的には同じとされています。それよりもPDCAの回し方が重要で、まず全量データを見ながら仮説検証を行い、その上で全量を対象にし続ける必要がないものに関しては、従来どおりにそこからはサンプルデータを用いてPDCAを回していけばいいわけです。

 あとは、仮説検証型ではない、検索型探索型での有効性が挙げられるでしょう。これはデータを見ながら何かを見つけるという手法ですが、データ分析が高速化されたことで、より細かく高頻度でPDCAを回せるようになっています。この場合、扱うのはさほど巨大なデータでなくても、トランザクションの量で見れば、結果的にビッグデータになっています。全量データを扱うビッグデータに加えて、こうした、データを高頻度で回すという量感としてのビッグデータという2種類が出てきていると思います。


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デジタルマーケティングでは当たり前のことを、リアルなセールス活動にも適用

Question

貴社では、情報システム系子会社の株式会社電通国際情報サービスとセールスフォース・ドットコムとの業務提携契約を機に、2010年10月から「マーケティング・クラウド」というコンセプトを打ち出していますよね?

Answer

電通:加藤 剛輔 氏

これは、クラウドコンピューティングを活用することで、例えば、自動車であれば、新車販売、保険、メンテナンスなど、別々に扱われていたお客様の情報のデータ統合を図ったり、先ほどのPDCAサイクルにおけるマーケティング・プロセス全体の管理をスムーズに行えるようにしようというものです。経緯的には、エコポイントなどのプロジェクトを経て、クラウドの潜在能力を感じ、そのパワーをマーケティングにも活用できないかと考えたわけです。その後、スマートフォンの普及により、きちんとした手順を踏みさえすれば、より多彩なパーソナル情報が取得できる可能性が出てきました。その一方で、タブレットを営業現場で活用し、PDCAのサイクルに入れてしまえば、従来は勘や言葉の力に頼っていた営業活動に対して、リアルタイムで必要な情報を引き出したり、その場でデータ分析を実行するといったサポートも行えるようになります。デジタルマーケティングの世界では当たり前だったことが、セールスなどのリアルなコンタクトポイントにも適用していけるのではないかということです。

 更に、東日本大震災の際、多くの人が外出を控えざるをえなかったため、幅広い層においてウェブ閲覧能力が向上したということも、企業のマーケティング活動に大きな影響を与えています。つまり、あの時期に幅広い情報の取得方法や正しい情報の見極め方をある程度身につけたことで、消費者が賢く検索をして、賢い選択をするようになりました。広告を鵜呑みにするよりは、世間の声を参考にしようという時代になったわけですから、企業もそれに対応しなければいけません。自社の製品・サービスに対して、正しくない認識が世の中に流れていたら、何らかのかたちできっちりとした情報を伝えていく、より評価されている部分をどうにかして前に押し出すなどして、緊密にコミュニケーションを図っていかなければならないわけです。そうした企業側の情報武装を様々なテクノロジーでサポートしていきたいというのが、「マーケティング・クラウド」の基本的な考え方です。

Question

「マーケティング・クラウド」推進の一環として、ビッグデータ活用領域の事業に関して富士通と協業を行うと発表されましたが、その狙いはどのようなところにあるのでしょうか?

Answer

やはり各顧客企業のバックエンド業務を支える仕組みを持たれているという点と、大量データの利活用に関する知見や技術力を有しているという点が挙げられます。先ほど紹介したような考え方で、顧客企業のマーケティング活動最適化や新しいビジネスの創出を支援していくためには、まず企業内の業務系とマーケティング系のデータをつなげていく必要があります。弊社は顧客企業のマーケティング系を担っており、富士通は業務系を担っていますから、その点が最大の理由と言っていいでしょう。また、先ほどスマートフォンから多彩なパーソナル情報が取得できる可能性があるという話をしましたが、その入り口の1つとなるのがセンサです。富士通はそのセンサ分野においても、パイオニアとも言える存在であり、現在でも先進的な取り組みをされていますから、そうした部分においても大いに期待をしています。


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ネガティブな面ではなく、ポジティブな共感・共有の流れに注目すべき

Question

先日、貴社では情報戦略プランニングツール「くちこみデザイナー」の開発を発表されましたが、こちらはどのような位置づけになるのでしょうか?

Answer

電通:魚住 高志 氏

ビッグデータの一歩手前と言いますか、まずはとにかく、ソーシャルを用いたマーケティングを行いたい、その効果検証を図りたいというニーズの高まりに応えたというかたちです。これまでにも正式な製品名などはつけていないものの、ソーシャルリスニングツールやマッピングに関しては、弊社でも開発に取り組んできましたが、その中でもFacebookやTwitterをなんとかして活用したいという、よりシンプルなニーズを拾ったものと言えます。

 ソーシャルメディア上の生活者の声を企業活動に活用する際には、体系立った手法が確立されているわけではなく、弊社の社内でも個々のプランナーに委ねられている状態でした。勘や経験も含めて、そうした手法を集合知的にシステム化し、誰でも容易にプランニングができるようにすることを目的に開発したという側面もあります。具体的には、ソーシャルメディア上で話題にされている会話の内容、口コミの伝播構造、情報を拡散しているグループやユーザ、オンライン/オフラインの情報源の把握といった多様なデータ分析を実現しています。また、蓄積した過去データの活用により、ソーシャルメディア上での情報拡散のシミュレーションを可視化し、効果的な情報戦略の策定を支援します。

 そもそも、ソーシャルリスニングをするだけで終わりではなく、何かを読み解いて、マス向けのメッセージなどに反映したり、セールストークに活かすなど、ソーシャルプロモーションのデザインをしっかりと行う必要があります。ただ、その部分を完璧に実行できる人は少ないと言いますか、現実的にはほとんどいないわけですから、ナレッジシェアや類型化を図っていくことが不可欠です。また、PDCAサイクルの中でアウトプットへのフィードバックをしていくためにも、リスニングはできるだけ簡単に扱えるようにしています。とにかくリスニングして、こんな感じで発見がありましたという段階から、うまく活用していこう、社内全員が使っていこうという時期に入ったという印象です。

Question

ただ、ソーシャルメディアに関しては、ネガティブなイメージでとらえてしまう企業も多いのではないでしょうか?

Answer

コンタクトセンタなども含めて、顧客の声に耳を傾けるという行為においては、悪い言い方をすれば、過去の経緯から「クレームだけが声」という印象を持っているのではないでしょうか。ただ、もはやそういう時代ではなく、悪い声もいい声も必ずバランスよく出てくるのがソーシャルのいいところだと感じます。その点ではソーシャルサイト上で「いいね」ボタンが作られ、広まったということには大きな意味があったのかなと思います。共感・共有するという流れの中で、マーケティングをポジティブに動かせる余地がありますから。その一方で、ネガティブな声に触れた時には、なぜなのかと火種を探すことも欠かせません。やはり、火のないところに煙は立ちませんし、すごく小さなことでもお客様にとって不利益に感じることがあれば、それをちゃんと見つけられるという意味で、非常に重要なツールになってくると思います。

 あとは、もともとマーケティングというものは、あまり管理されているような取り組み方ではうまくいきません。冒頭でもお話したとおり、スマートフォンなどを中心に、ともすれば、家にも、車にも、ログがつきまとうような状況になっていくのはたしかですから、納得していただいた上で、いかに気持ちよく、生活者にとっても、企業にとっても、有用なサービスとして使っていただけるかを考え、積極的にトライしていくことが必要だと思っています。そのためにも、今後も様々なプロジェクトに参画するかたちで、ノウハウを蓄積していくつもりです。


●ありがとうございました。


取材協力

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コミュニケーション領域を中核にして、広告主やメディア・コンテンツ企業をはじめとする顧客の経営課題・事業課題の解決から、マーケティング・コミュニケーションの実施まで、そのすべてを事業領域とし、日本をはじめとするグローバル市場で統合ソリューションを提供。


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