ネットワーク仮想化が勝負の分かれ目に?

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

掲載日 2013/06/10

ザ・キーマンインタビュー ネットワーク仮想化がハイパーバイザの勝負を決する?

ネットワーク仮想化は、以前からデータセンタ事業者などを中心に注目を集めていた技術だが、Windows Server 2012 Hyper-Vに標準搭載されたことで、より幅広い層が興味関心を寄せつつある。実際の導入状況はどのような状況なのか。また、エンタープライズ分野ではどのようなメリットが得られるのか。

三井情報株式会社 企業サイトへ

三井情報株式会社:陸田 貴秀 氏、後藤 諭史 氏

ビジネスアライアンス部
企画室 室長
陸田 貴秀 氏

IT基盤技術本部
クラウドサービス技術部 第四技術室
後藤 諭史 氏

ネットワークに生じつつある課題をサーバサイドで解決

Question

ネットワークの仮想化は、仮想化やクラウド構築で浮上していた課題を解決するものとして期待されており、Windows Server 2012にも採用されましたが、こうした動きを貴社ではどのようにとらえていますか?

Answer

三井情報株式会社:後藤 諭史 氏

【後藤】 技術的背景としては、特にデータセンタのような大規模環境において、VLANによるネットワークの限界が問題になってきており、それをどう解決していくかという検討の中で浮上してきたものだと言えます。例えば、1つの巨大なL2ネットワークを構築した際に、MACアドレスに起因したハッシュ衝突問題、あるいは、大阪と東京で同一のセグメントを作った場合に管理をどうするのかといった問題です。後者はL2延伸技術などでも解決できるわけですが、もう1つの解としてネットワーク仮想化が注目されつつあり、マイクロソフトでもサーバサイド、つまりハイパーバイザのレイヤでこうした問題の解決を図っていこうという考えのもとで、トンネルプロトコルとしてNVGRE(Network Virtualization using Generic Routing Encapsulation)を提案し、Hyper-Vでサポートしたという流れでしょう。

 【陸田】 弊社のビジネスの中で、ネットワークインテグレーションは大きなウエイトを占めていますから、ネットワーク仮想化のような大きな技術革新はビジネスチャンスと言えます。そのため、積極的にキャッチアップし、人材育成なども含めて、事業化へ向けた取り組みを進めているという状況です。実際、大規模なシステムを運営されている企業における関心度は高くなってきており、とりわけ、先ほど後藤からお話ししたような課題認識を持たれているプロバイダ/データセンタ事業者などのお客様からは、既に引き合いをいただいています。本格的な導入展開は少し先になるかとは思いますが、技術的な興味からの問い合わせなどではなく、本番採用を見据えた具体的なディスカッションが進んでいます。

Question

エンタープライズにおけるニーズに関してはいかがでしょうか?

Answer

【後藤】 いわゆるラージエンタープライズと称される大企業では、プライベートクラウドを構築していく流れとともに、各々の子会社をシステム的に集約する動きが出てきています。ただ、その際に子会社Aと子会社Bが同一レンジのIPアドレスを利用していると問題が生じてくるでしょう。これまでの解決策としては、NATによるIPアドレスの隠蔽を行う、あるいは、子会社に無理を言って、すべてのIPアドレスをデータセンタ側に揃えてもらうといった手段がとられていました。しかし、ネットワーク仮想化を用いれば、同じIPアドレスどうしであったとしても、あたかも独立したLANであるかのように、1つのファブリックの中に共存させることが可能になります。BYOIP(Bring Your Own IP)と呼ぶこともありますが、親会社のプライベートクラウド、あるいは事業者が提供するデータセンタといった、大きなネットワークの中にIPアドレスを持ち込んで、あたかも自社のシステム環境の延長であるかのように使えるといった点で注目が高まってくるだろうと思います。

 【陸田】 あとはやはり、クラウドを使うことが当たり前になってきたことで、ネットワーク仮想化への期待も大きくなっていると言えるでしょう。クラウドを本格的に活用しながら、自社のシステムをより使いやすく効率的にしていこうと考えた場合には、ファシリティが分かれても同じように扱えたほうが便利なわけです。しかし、そこでネットワークの課題が顕在化し、それを乗り越えなければならないという状況が生まれつつある中で、ネットワーク仮想化は非常に親和性が高いものとしてとらえられているのではないかと感じます。

 【後藤】 トラディショナルなシステム環境では、ネットワーク管理者の手を煩わせなければ実現できなかったことが、物理的なファシリティに手をつけることなく、仮想化管理コントローラなどを用いてネットワークをソフトウェア的に設定可能になるわけです。いわゆるSDN(Software Defined Networking)の実現により、サーバ管理者などが「必要なときに必要なネットワークを手に入れられる」のは、エンタープライズのお客様から見ても、大きな魅力ではないかと思います。従来はどんなに早くても1〜2週間はかかっていたようなシステムの立ち上げも、わずか5分で完了する。そんな世界が、もう目の前に来ていると感じています。


このページの先頭へ

どのような視点でネットワーク仮想化技術を選ぶべきか

Question

Windows Server 2012 Hyper-Vによるネットワーク仮想化はどういった特長・利点があると言えますでしょうか?

Answer

【後藤】 先ほど少し触れましたが、Hyper-Vで対応しているのは、NVGREプロトコルを利用したオーバーレイ型のネットワーク仮想化ということになります。このオーバーレイ型では、仮想マシンの通信をエンドポイントでカプセル化し、それを物理ネットワーク上へ通すため、途中経路となるネットワーク機器がネットワーク仮想化のプロトコルに対応している必要は特になく、比較的低コストでの導入が可能です。オーバーレイ型には、NVGREAのほかに、VXLAN、STTといった方式がありますが、相互にどの程度の差があるかと言うと、正直なところ、使っているプロトコルの差にすぎないと言っていいでしょう。もちろん、技術的に言えば、マルチキャストやコントローラの利用など、細かな違いは挙げられます。

三井情報株式会社:陸田 貴秀 氏  【陸田】 やはり、Hyper-Vを主に使うのか、VMwareなのか、Xenなのか、あるいは、複数のハイパーバイザを組み合わせているのかといった、適用しようとする環境によって、どのネットワーク仮想化技術を使うべきなのかが変わってくると思います。つまり、機能面、性能面よりも、むしろ、使いやすさであったり、手間がかからないという観点で、どれが最も現実的なのかという選択のしかたです。こういうことが実現したい、この機能がほしいという見方だけで判断していくと、利用しているハイパーバイザやネットワーク環境との整合性をとるためにコストが非常に高くなってしまう可能性もあります。もちろん、今後はいずれの技術もそうした部分での最適化が図られていくでしょうが、少なくとも現時点ではお客様の環境にとって導入しやすく、使いやすいものを選んでいただくことが重要だと思います。

 【後藤】 インターネットが爆発的に普及した際、Webブラウザが無料化されたことが1つのポイントになりましたが、個人的にはそれと同様の動きにつながる可能性はあると思っています。Hyper-V自体もサーバOSの標準機能として実装されたことで、サーバ仮想化の裾野を急速に広げましたが、同じく、Windows Server 2012が標準対応したことがブレイクスルーとなって、ネットワーク仮想化の普及を後押しする役割を果たすのではないかと考えています。


このページの先頭へ

System Center 2012との組み合わせで効率的な運用が可能

Question

Hyper-Vでネットワーク仮想化に取り組む際に、留意すべき点などはありますでしょうか?

Answer

三井情報株式会社:後藤 諭史 氏、陸田 貴秀 氏

【後藤】 Windows Server 2012 Hyper-Vでは標準機能でネットワーク仮想化を実現できます。ただし、全物理ホストに対してPowerShellによる設定を実施し、PA(プロバイダアドレス)、CA(カスタマアドレス)、Macアドレスの組み合わせを仮想マシン単位で設定する必要があり、仮想マシンの追加やマイグレーションの際にもその都度、手動で追加設定を行うことになります。より大規模な環境へ展開する場合には、これらの設定作業を人力で行うのは困難ですから、やはり、System Center 2012 Virtual Machine Manager SP1を導入し、コントローラから一元管理を行い、各ホストへ展開していくというのがベストプラクティスとなるでしょう。

 ただ、もともと、Hyper-Vを本格的に活用していくためには、System Center 2012シリーズは欠かせない存在と言えます。各社のハイパーバイザの性能・機能が横並びになってきた中で、いかに運用管理しやすいか、いかに自動化しやすいかという観点で見れば、Windows Server 2012(及びHyper-V)とSystem Center 2012という組み合わせは、非常に親和性が高く、更にクラウドとの連携も見据えたものになっているからです。もちろん、ほかの仮想化ベンダでも同様の動きを進めており、マーケット全体として、もうハイパーバイザの議論はやめにしよう、次の戦いは「運用管理」だという気運が高まっていると感じます。

 【陸田】 そういう動きの中で、今後もネットワーク仮想化への注目が増していくことは確かでしょう。ハイブリッドクラウドなどの複雑な環境に、運用管理者がより対応しやすい体制を提供していくためには非常に重要な要素となるわけですから。


●ありがとうございました。


取材協力

三井情報株式会社 企業サイトへ

2007年、三井物産の子会社であるネクストコムと三井情報開発が合併し誕生。システムの開発・構築を主とする「システムインテグレーション」、ネットワークシステムやボイスシステムのインテグレーションを主とする「プラットフォームインテグレーション」、「データセンター&クラウドサービス」の3つの領域で、コンサルティングから開発・構築、及び、運用・保守に至るトータルサービスを提供し、顧客企業の経営戦略や業務基盤を総合的にサポートしている。


このページの先頭へ



◆関連記事を探す

ネットワーク仮想化/ネットワーク仮想化が勝負の分かれ目に?」関連の情報を、チョイスしてお届けします

※キーマンズネット内の「ネットワーク仮想化」関連情報をランダムに表示しています。

ネットワーク仮想化」関連の製品

PAS-K シリーズ 【パイオリンク】 仮想化基盤とリソースを一元管理「VMware vRealize Operations」 【ソフトバンク コマース&サービス+他】
ADC/ロードバランサ サーバー仮想化
PAS-Kシリーズは、負荷分散機能とセキュリティのための高性能処理、及び、拡張性を高めるために設計されたアドバンストADC製品。 広く使われるようになった仮想化技術だが、仮想マシンなどの乱立で運用管理に悩み、「こんなはずじゃなかった」と嘆く担当者は多い。エキスパートが解決策を指南する。

ネットワーク仮想化」関連の特集


モバイルワークを実現するための方法は1つではなく、多種多様な選択肢の中から、自社の環境や目的に応じて…



普及が進む仮想化。今回は震災以降の経営環境における仮想化の有効性や、導入時のポイントについて、アナリ…



Windows XPやWindows Server 2003のサポート終了に続き、2016年1月にや…


ネットワーク仮想化」関連のセミナー

最新の仮想化技術と高精度な検知で、標的型攻撃を防御 【日立製作所/ヴイエムウェア】  

開催日 12月27日(火)   開催地 東京都   参加費 無料

本セミナーは仮想化業界をリードするVMware社と日立製作所との共同開催です。VMware社からは、市場で注目のネットワーク仮想化製品VMware NSXのマイ…

「仮想化」関連 製品レポート一覧

このページの先頭へ

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この記事に掲載している情報は、掲載日時点のものです。変更となる場合がございますのでご了承下さい。


30006075


IT・IT製品TOP > Windows Server 2012 > 仮想化 > SDN > SDNのIT特集 > 特集詳細

このページの先頭へ

キーマンズネットとは

ページトップへ