VDIをスムーズに導入するための道筋とは

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掲載日 2013/04/22

ザ・キーマンインタビュー クライアント仮想化をスムーズに導入するための道筋

モバイル環境でのIT活用、セキュリティ/内部統制、ビジネスの俊敏性の確保、コスト削減など、様々な目的でクライアント仮想化を導入する企業が徐々に増えつつある。とりわけ、デスクトップ仮想化は高い成長率が見込まれているが、実際に導入する際には障壁も少なくない。どのように検討・導入を進めれば、既存のクライアント環境からスムーズに移行できるのだろうか?

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渋谷 寛 氏

PC、携帯端末&クライアントソリューション
シニアマーケットアナリスト
渋谷 寛 氏

2つの契機によって、クライアント仮想化市場が更に拡大する

Question

クライアント仮想化市場は現在どのような状況にあると言えるでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:渋谷 寛 氏

クライアント仮想化ソフトウェアに関しては、アプリケーション仮想化、デスクトップ仮想化、プレゼンテーション仮想化の3つを主な対象分野として市場調査を行っています。市場全体の成長率としては、集計が完了している2011年までは概ね大幅な伸びになっていますが、2012年前半をピークにやや落ち着くのではないかと見ています。ただし、2013年以降は大きな契機が2つあります。IDCが算出している法人向けPCの買い替えサイクルでは4〜5年に1回ピークを迎えますが、2013年がそのピークを迎えると見ています。そして先日正式発表されたWindows XPのサポート終了、これが2014年4月に実施されます。この2つ契機によって、該当市場は大きく拡大すると考えられます。なぜならPCの買い替えやOSの更新のタイミングでシンクライアントやクライアント仮想化への移行が選択肢の1つに入るからです。具体的には2011年から2016年の5年間のCAGR(年平均成長率)を19.3%と予測しています。ただ、内訳としては、これまではプレゼンテーション仮想化が大部分を占めていたのですが、今後はデスクトップ仮想化が増えてくるでしょう。同期間におけるデスクトップ仮想化のCAGRは38.7%と高い成長率で推移し、2016年には全体の49.3%を占めると見ています。

図1 クライアント仮想化ソフトウェア市場概況、2008年〜2016年
図1 クライアント仮想化ソフトウェア市場概況、2008年〜2016年
出典:「国内クライアント仮想化市場動向分析」(IDC Japan、2013年4月)

Question

これまでプレゼンテーション仮想化を導入していた企業が、デスクトップ仮想化へと移行するという流れでしょうか?

Answer

もちろん、そういうケースもあるでしょうが、現在の市場の状況を見ている限りでは、従来の環境で十分だという企業も多く、そうしたところでは継続してプレゼンテーション仮想化を使い続けていくだろうと考えています。デスクトップ仮想化の伸びを支えるのは、これから新たにクライアント仮想化に取り組もうという企業、あるいは、既にプレゼンテーション仮想化などを導入済みではあるものの、先進的な技術を積極的に取り込みたいという企業になるでしょう。例えば、ITリソースを更に有効に使いたい、マルチデバイスに柔軟に対応したいといった場合には、やはりVDIのほうが有効になってくると考えられます。

Question

デスクトップ仮想化が増加する一方で、プレゼンテーション仮想化も依然として高い割合を占め続けるというのは、どのような要因からなのでしょうか?

Answer

システム管理者にとって、VDIと比較すると技術的に容易で、扱いやすいという点が挙げられます。また、コストも比較的安価に済ませられるでしょう。現在では、仮想基盤上にクライアントOSを人数分だけ構築するという、VDIによるデスクトップ仮想化が注目を集めていますが、プレゼンテーション仮想化の場合は、「仮想化」というよりもむしろ「共用」で、サーバOSやその上のアプリケーションを複数人で共有するというものです。その分、用途やユーザ数がある程度固まっており、あらかじめ枠組みを決めて導入・利用するというケースには非常に適しており、管理もしやすいと言えるでしょう。ただ、時代に沿ってニーズも変化してきたことで、今後はリソースを流動的に使う場合に適したVDIの利用が拡大していくだろうと見ているのです。

 また、現時点では先ほどの3分野に分けて扱っているのですが、将来的にはデスクトップ、アプリケーション、データなどが、いわゆるWaaS、つまり「Workplace as a Service」という考え方のもとに統合され、それをユーザ企業は各々に最適な環境・形態で使う、あるいは状況に応じて使い分けるという方向性になっていくと考えます。また、われわれは「モバイルの仮想化」と呼んでいますが、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスで仮想化技術を活用する分野に関しても、BYOD(Bring Your Own Device)ソリューションの需要増加、あるいはワークスタイルの変革により、クライアント仮想化との関連性がこれまでにも増して深まっていくでしょう。既に双方を同時に取り組むことで、導入メリットを相乗的に向上させている企業も出てきています。


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導入時に大きな課題となるコスト。解決するためには…

Question

クライアント仮想化に興味はあるものの、実際には取り組んでいないという企業では、どのような点が障壁になっているのでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:渋谷 寛 氏

クライアント仮想化を「未導入の企業」「導入済みの企業」の双方に対して、導入課題を伺ったアンケート結果がありますが、未導入の企業では「経営層やエンドユーザの理解が得られない」「社内調整が難しい」といった人為的要因の割合が高く、導入済みの企業では「パフォーマンスや信頼性に難がある」といった部分が実環境で顕在化しているようです。

 従来のクライアント・サーバ環境をクライアント仮想化環境に移行させる場合、見た目はほとんど変わらないものの、仕組みは根本的に変わるわけですから、当然ながら綿密なリスク点検も必要ですし、更に失敗したときにどう責任をとるのかという問題も生じかねません。そういう意味ではシステム管理者にとっても難しい判断になるかと思いますが、企業全体の利益を考えた場合には、統制のとれたクライアント仮想化の仕組みのほうが原則的に「効率がよく、正しい」と言えるのです。もちろん、エンドユーザから見れば不便な点もあるかもしれませんが、システム管理者は経営的な視点に立って、経営層やエンドユーザ、そして自分自身に対するメリットを洗い出して訴求しつつ、全社的なコンセンサスを得ていくことが求められているのではないでしょうか。

図2 クライアント仮想化の導入課題
図2 クライアント仮想化の導入課題
出典:「国内クライアント仮想化市場動向分析」(IDC Japan、2013年4月)

ただ、やはり最も大きな課題になっているのは「初期導入コスト」です。これは実際にかかる金額だけではなく、「高い」というイメージ的な部分もあるのかもしれませんが、何より、先ほども述べた「見た目はほとんど変わらない」にも関わらず、コストが必要というのは理解しにくい側面もあるのかもしれません。日本企業では原則キャッシュイン、キャッシュアウトを見るので、例えば、TCO、ROIなどの概念を持ちこんでも理解されにくく、見えない部分のコスト(隠れIT管理者など)が一切乗ってこない。結果的に投資対効果やリターンなどをキャッシュ換算できないのが現状です。要は物理的なお金の出し入れだけを見ているだけでは、クライアント仮想化を導入した際のコスト面でのマイナスばかり論じられ、プラスの部分は考慮されないというわけです。管理の効率化、セキュリティの強化、あるいはエンドユーザの生産性向上といった、見えない部分のメリット(リターン)をキャッシュ換算できれば、トータルコストの削減にもつながっていくはずです。

図3 ROI(投資対効果)概要 〜IDCによるROI分析手法〜
図3 ROI(投資対効果)概要 〜IDCによるROI分析手法〜
出典:「国内クライアント仮想化市場動向分析」(IDC Japan、2013年4月)

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Windows Server 2012がクライアント仮想化市場で果たす役割とは

Question

昨年、Windows Server 2012がリリースされましたが、クライアント仮想化市場への影響はどの程度見込まれますでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:渋谷 寛 氏

Windows Server 2012では仮想化周りの機能が向上しており、VDIに関しても高速化などの性能向上が図られています。仮想デスクトップの構築・管理も比較的容易になっていますから、クライアント仮想化の手段としてWindows Server 2012を選ぶ企業も増えてくるかと思います。ただ、CitrixやVMwareなどが既に大きなシェアを確保している状況ですから、そこにいきなり取って代わるのは難しいでしょう。例えば、500人未満の中小規模の企業を押さえていくかたちで展開し、まずは既存ベンダとの棲み分けを図っていくというシナリオが考えられるのではないでしょうか。

 いずれにせよ、クライアント仮想化市場における勢力図がある程度固まっている状況の中で、そこへ食い込んでいくためには、マイクロソフト自身やパートナーベンダがWindows Server 2012を積極的にアピールしていくことが不可欠だと思います。実際のところ、クライアント仮想化市場で一定のシェアを確保している各製品でも、機能や性能の面では横並びになりつつあり、Windows Server 2012もクライアント仮想化の手段として十分に使えるサーバOSだというのは確かでしょう。あとは、先ほどの導入課題でもお話しさせていただいたコスト面の問題ということになりますが、少なくとも別の目的でWindows Server 2012の導入を考えていた企業にとっては、ソフトウェアの追加投資はほとんど考慮する必要はないわけです。そういったコスト面での優位性を活かすことで、これまでクライアント仮想化の導入に踏み切れなかった企業にも利用が広がっていく。そういう役割を果たしてくれるのではないかと期待しています。


●ありがとうございました。


取材協力

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IT専門の調査会社として、1975年に設立以来、国内・外の情報技術・通信産業をはじめ、金融機関、政府機関等など、市場データ、市況分析とそれにもとづいたアドバイスを提供。グローバルに展開するビジネスを品質の高いデータで支援することに取り組んでいる。


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