ビッグデータ活用で大事なのは「分析後」

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掲載日 2013/06/05

ザ・キーマンインタビュー ビッグデータ活用で本当に大事なのは「分析後」

ビッグデータ活用を既に実践しているのは、大企業や先進的な企業だけであり、また、その必要性を感じているのも、まだまだごく一部の企業にとどまる。そうした認識を持たれている方も多いかもしれないが、野村総合研究所が実施した「ビッグデータの利活用に関するアンケート調査」では少し異なる結果が出ているようだ。

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村上 勝利 氏

コンサルティング事業本部 経営情報コンサルティング部長
上席コンサルタント
村上 勝利 氏

組織的な検討課題ととらえている企業は全体の6割に及ぶ

Question

貴社では昨年12月に「ビッグデータの利活用に関する企業アンケート結果」を発表されましたが、具体的にはどのような趣旨で調査を行われたのでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:村上 勝利 氏

こうした法人向けのアンケートに関しては、どの部署にお願いすればよいのかが判断しづらい場合も多いのですが、特にビッグデータに関してはそれが顕著と言えます。既に全社レベルで進めているところもあるでしょうが、その一方で、ユーザ部門で小規模に行われているだけで他部署では把握していないというケースもあるかもしれません。そこで今回は、会社全体の窓口になる部署、あるいは情報システム部門などの特定の1部署だけに限定するのではなく、ビッグデータ活用を推進する際に主幹部署となることが多い、経営企画部門、そして、情報システム部門のいずれかに直接答えていただくという趣旨で実施しています。売上高200億円以上の企業を対象とし、1625社にアンケートを送付したところ、228社、242のご担当者様に回答をいただけました。部署の内訳としては、経営企画部門が132、情報システム部門が110となっています。

Question

今回の調査結果に対しては、どのような印象を持たれましたか?

Answer

まず驚かされたのは、約6割の企業がビッグデータ活用を組織的な検討課題に挙げているという点です。「全社レベルの検討課題」だととらえている企業は23%に及び、更に「重要な課題」だとしている企業もその半数以上を占めています(全体の13%)。そのほか、「特定の部門・部署レベルの重要な検討課題」「特定の部門・部署レベルの検討課題」と答えた企業がともに17%となり、合計で57%の企業がビッグデータ活用を検討課題に挙げているというわけです。日頃から付き合いのある弊社の顧客企業様とのやりとりの中で感じていたのは、情報システム部門の、それもごく一部の方が検討を始めているにすぎないという印象でした。ITベンダなどでは声高にアピールをしているものの、現場の企業ではまだまだ将来の話だととらえているのではないかと。この調査は昨年の夏に実施したものですが、その時点でも既にこうした意識にあったというのは予想以上だと言えるのではないでしょうか。

 また、今回の結果では、規模が大きな企業ほど課題意識が高くなっていくという予想どおりの傾向に加え、情報システム部門よりは経営企画部門のほうが課題意識が高いということも把握できました。業種に関しては、「広告・情報通信」「中間流通」「食品・生活用品」「機械・電気製品」で組織的な検討課題に挙げられていることが多く、また、BtoB企業とBtoC企業を比較した場合には、後者のほうが課題意識が高いという傾向も出ています。

図1 貴社ではビッグデータ活用が、組織的な検討課題に挙げられていますか?
図1 貴社ではビッグデータ活用が、組織的な検討課題に挙げられていますか?
出典:野村総合研究所、2012年12月

Question

全般に意識は高いということですが、実際の取り組み状況に関しては、どのような段階にあるのでしょうか?

Answer

具体的な活動としては、「活用を検討している」「情報収集を行っている」段階の企業が大勢を占めており、いまだ情報収集や活用方法の検討にとどまっている企業が多いことを示しています。また、どのような体制で対応しているのかという質問については、ほとんどは既存部署(58%)や個人担当者レベル(31%)で進めているという結果ですが、「新設部門」を設置したという企業が4%、組織横断の時限的組織、つまり、プロジェクトチームやタスクフォースなどを作って進めているという企業が16%、つまり、何かしらの組織を設置している企業が2割に達しています。個人的な印象としては、マーケティング部門、あるいは情報システム部門などが自発的に、あるいは指示を受けて考えているというケースが大半だと思っていましたから、2割というのはかなり多いという印象を持ちましたし、多くの企業が本格的に動き始める兆候として受け止めています。特に売上高1兆円以上の企業では、「新設部門」を設置済みのところが8%、組織横断で時限的なタスクフォースなどを設置している企業が31%に及んでいます。


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分析結果を具体的な施策に活かす体制を構築できるか

Question

具体的に着手済みだという企業に関しても、やはり大企業が中心となっていますでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:村上 勝利 氏

そうですね。例えば、売上高1兆円以上の企業では、ビッグデータ活用に関して、「以前から活用している」企業は29%に達しており、「関連のシステムを企画・開発中」「自社で実証実験を行っている」「外部企業と共同で実証実験を行っている」と答えた企業もそれぞれ16%と、1兆円未満規模の各層と比較して、突出して高い傾向を示しています。もちろん、ビッグデータ活用に積極的に取り組むか否かは、企業規模のみに左右されるものではないと思います。クラウドサービスなどをうまく利用することで、中堅・中小企業などでも簡易的なビッグデータ分析であれば、十分に実施可能な環境が整いつつあります。しかし、その一方で、分析から得た結果をどう使うかという部分が大事だということも確かでしょう。

 わざわざビッグデータ分析を行うのは、単にざっくりとしたトレンドを把握したいわけではなく、個々の顧客をより精緻に見たり、製品の動きを細かく把握したいという目的があるはずで、更に、その分析結果をもとに具体的な施策を打っていくことへつなげていかなければ、意味がありません。そのためには、情報システム部門が担う部分で言えば、複数のデータベースからデータを集めて、それを複合的に分析するという環境を整える必要がありますが、これは簡単なことではないですし、それなりのコストもかかります。また、業務部門にとっては、分析結果にもとづいて新たな施策を迅速に打ち出すというのは、既存の業務がある中でなかなか難しいでしょうから、何らかの業務改革を要するでしょう。

 こうした点を乗り越えて、本当の意味でのビッグデータ活用に着手するというのは、よほどの大企業でなければ難しいですし、それ以外の企業では、よほどビッグデータ活用の必要性を感じていたり、経営トップの問題意識が高いという要素がなければ動きにくいというのが実情ではないでしょうか。ただ、ビッグデータにかかわらず、データにもとづいた経営というものは、早く取り組んだ企業ほど、業績にドライブがかかりやすいという傾向も古くから見受けられます。例えば、顧客動向の分析などは競合他社との差にもつながりやすい部分ですから、業界内の動向なども把握しつつ、自社におけるビッグデータ活用の必要性をしっかりと見極めるというのは、どのような規模の企業においても必要なことではないかと思います。


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ITシステム刷新の機に、意図を持ってビッグデータ活用を組み込むべき

Question

ビッグデータ活用に向けて、システムやサービスの導入を進めていく上で留意すべき点などはありますでしょうか?

Answer

株式会社野村総合研究所:村上 勝利 氏

例えば、SNS分析を行いたい、ログ分析のバッチ処理を大幅に高速化できるといった目的で、そのつど場当たり的にシステムやサービスを導入していくというアプローチも考えられます。もちろん、「とにかく始めてみる」という姿勢も重要ですが、それだけではつぎはぎになってしまい、のちのち活用しにくいものになってしまう可能性もあるでしょう。やはり、ビッグデータ活用に本格的に取り組もうとするのであれば、全社の基幹システムを刷新するタイミングに合わせて、データの蓄積のしかたであったり、ユーザがデータを分析・活用するためのアプリケーションなどをどのように設計・構築するかといった要素をシステム化構想・計画の中に盛り込んでいくべきではないでしょうか。つまり、きちんとした意図を持って、自社のITシステムの中にビッグデータ活用を組み込んでいくというのが、正しいやり方ではないかと考えます。

Question

ビッグデータ活用が難しいと考える企業では、どのような点に課題を感じていると言えますでしょうか?

Answer

今回のアンケートの結果では、「ビジネスとして具体的に何に活用するのかが明確でない」が61%と突出しており、その次に「投資対効果の説明が難しい」「担当者のスキルが不足している」という答えがともに45%となっています。特にマーケティング用途の場合には、サプライチェーンの高度化などといったコスト削減効果が見えやすい用途とは異なり、ビジネスメリットが不明瞭になりがちなのは確かです。本当にペイできるのかという疑問が生じても無理はないですし、実際問題として、マーケティングをもう少しレベルアップさせようといった考え方で取り組むのであれば、おそらく元をとるのは難しいでしょう。その場合は、そもそも本格的なビッグデータ活用を行うよりも、より手軽で安価な分析サービスなどを利用したほうがいいと言えます。

 ただ、最近よく言われているオムニチャネル、つまり、店頭やコールセンタ、ダイレクトメール、Webサイト、更にはソーシャルメディアなど、顧客との接点になりうるすべてのチャネルを連携させて顧客とのコミュニケーションを図っていこうというところまで見据えていくのであれば、話は別です。この場合は、しっかりとビッグデータ活用に取り組むことで、本当の意味でのビジネス効果を引き出していけるだろうと思います。


●ありがとうございました。


取材協力

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流通や金融など各産業分野の研究、消費者動向調査、未来予測などを行い、その成果を広く社会に発信。予測、分析、政策提言などによって問題発見から解決策を導くまでの「ナビゲーション」と、その解決策を業務改革やシステムの設計、構築、運用によって実現する「ソリューション」を相乗的に機能させることを軸に、「未来創発」に取り組んでいる。


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