ビッグデータが生み出す“潮流”に注目せよ

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掲載日 2013/05/08

ザ・キーマンインタビュー ビッグデータが生み出しつつある“潮流”に注目せよ

ビッグデータを取り巻く状況はいまだ混沌としている。既に自社のビジネスにフル活用している企業もあれば、バズワードに過ぎないと考える向きも少なくないだろう。客観的に見て、ビッグデータを取り巻く動きの本質とは何なのか。また、今後はどのような運命を辿っていくのか。一部の企業だけのものであり続けるのか。ガートナー ジャパンの鈴木雅喜氏にビッグデータの現状と今後の展望を伺った。

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ガートナー ジャパン株式会社:鈴木 雅喜 氏


リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ リサーチ ディレクター
鈴木 雅喜氏

ビッグデータという言葉にとらわれず、本質的な部分に注目すべき

Question

ビッグデータに対する企業の意識は、どのように変遷していると考えますか?

Answer

ガートナー ジャパン株式会社:鈴木 雅喜 氏

ビッグデータ自体が誤解されていると言いますか、やはり分かりにくい側面はあるかと思います。そのまま訳すと“大きなデータ”となりますが、それが一体何を意味するのかととまどうのも当然でしょう。単に大きいだけで、ゴミかもしれないではないかという意識もあるかもしれません。ただ、その一方で、ご存知のとおり、大企業などを中心に具体的な取り組みや検討も始まっています。モバイルデバイスのビジネス利用のように、急速にすべての企業に広がるものではないにせよ、認識は着実に広がってきている状況と言えるのではないでしょうか。そして、それをきっかけに、IT活用というものを改めて見直す潮流が生まれつつあり、「製品の売上を高める」「お客様によりよい体験を提供する」といったプラスアルファの効果を目指している段階にあるととらえています。

 もともと、ビッグデータという概念が広まった背景には、ストレージやメモリの容量、あるいはCPUの処理能力などの大幅な進化、そして、Hadoopなどを中心としたオープンソースソフトウェアの充実といった要因が挙げられます。先ほどもお話したように、ビッグデータという言葉は分かりにくいですから、違う言葉に変わっていく可能性もあるでしょうが、データ活用を起点とした「ITをビジネスに活かすための活動」「ITの進化を企業の発展につなげるための活動」といった本質的な部分は、今後も変わらないはずであり、つなげていかなければならないと考えます。ビッグデータという言葉だけにとらわれて、関係ないとか、意味がないというふうに済ませるのではなく、経済状況が少しずつ良化しつつある今だからこそ、この機会を活かして真剣にIT活用に取り組むべきではないかということです。


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必要な人材は実は社内のあちこちに埋もれている?

Question

そういった観点でとらえた場合には、今、企業には何が必要だと言えるでしょうか?

Answer

ガートナー ジャパン株式会社:鈴木 雅喜 氏

ビッグデータ活用においては、データサイエンティストが必要だと言われていますが、ビッグデータ自体と同様に、こうした名称にはどうもピンと来ないという方もいるでしょう。ただ、要は、企業内のデータを眺めた上で、それらを分析すれば、どのようなものが得られるかというシナリオを作る専門家が必要だということです。しかし、ここでポイントとなるのは、数学や統計、あるいはITなどの知識だけではありません。データ活用をビジネスに関連づけていくためには、現場を分かっていなければならないし、経営層や業務部門の人々に説明し、価値を理解させる役割を果たさなければならないのです。そのために最も重要なのは経験であり、それも失敗した経験ではなく、データを活用して新しい何かを生み出した経験を持つ人が必要なのです。

 もちろん、そういった人材は表面的には少ないと言えるのですが、ひょっとしたら、社内に眠っているかもしれません。例えば、品質保証部門などで、長年にわたって製品の不良率のデータなどを管理してきた人が、何か独自の高度な分析ノウハウを持っている可能性もあるでしょう。まずは、そういった人たちを見出し、そのスキルを活かす取り組みから始めて、最初は小さな規模のプロジェクトでもいいから、データ活用を試行し、その幅を徐々に広げていったり、データの蓄積や統合などを図っていく。必ずしも方向性は1つではありませんから、自社のビジネスに応じたやり方でよく、それを着実に進めていけば、どこかの時点で一気にブレイクスルーが起こせるのではないでしょうか。

Question

人材の確保に加えて、組織の整備なども必要と言えるでしょうか?

Answer

たしかに、ビッグデータ活用に向けて、まずは組織やチームを設置するという例も少なくありませんし、バリューチェーンや命令系統といった意味では必要なことかもしれません。しかし、実際に物事を動かしていくためには何が必要かと考えると、やはり1人ひとりのモチベーションではないかと思います。ただ、ビッグデータのような新しいことに取り組みたい、社内の何かを変えたいという意識を持っている人は、企業の中心軸から外れていると言いますか、少し浮いた存在かもしれない。そのため、例えば、上層部の視点で人材を選び、組織を作ったとしても、そうした本来必要な人材が含まれているとは限らないし、漫然と人員を集めるだけでは「何をすればいいんだ」ということにもなりかねないでしょう。むしろ、本当に新しいことをやりたい人、こうやって変えていけば面白いことが起こせるだろうという意識を持った人たちを「つなぐ」ことが大前提だと考えます。まずは少人数でもいいので、そうした人材をIT部門だけではなく、業務部門、更には経営層にも見出すことで、ビジョンを持った人材、実行能力のある人材、権限を有する人材などを互いにつなげて、そこから徐々に拡大していくというステップをとったほうがうまくいくのではないでしょうか。


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ぼんやりとした目的を共有し、徐々に精度を高めるというアプローチでいい

Question

これまでデータ活用に取り組んできたものの、そこからビッグデータへと発展させていくのは難しいと考えている企業の場合はどうすべきだと言えるでしょうか?

Answer

ガートナー ジャパン株式会社:鈴木 雅喜 氏

まず、従来の枠組みを一度外したほうがいいと思います。特に、BIを推進するためのプロジェクトチームを作って、着実に取り組みを進めてきたにもかかわらず、うまくいかなかったという場合には、そのまま引き続いてビッグデータを検討するのではなく、新たにスタートさせるほうがいいでしょう。先ほどお話したように、ビッグデータのドライバはインフラであり、いかにIT活用を新たな価値に結び付けていくかが本質だという点で、BIへの取り組みとは異なるととらえられるからです。言われるがままにシステムを組んでいくのではなく、社内のITインフラであれ、クラウドサービスであれ、やはり、いかに使わせるか、いかに使うかという意識のもとに、システムを構築・導入していく。そのためには、IT部門だけではなく、業務部門や経営層なども含めて、総力戦で取り組んでいかないと、劇的なスピードで進化しているITのテクノロジーを活かし切ることは難しいですし、自社の競争力を高めることにもつながってこないでしょう。

Question

実際にビッグデータ活用に取り組む際には、システム面ではどのような検討から始めて、どのような作業を進めていくことが必要でしょうか?

Answer

ビッグデータのプロジェクトというものは、最終的なゴールはかなり大きくなりますが、その一方で、最初からミッションクリティカルにはならないものです。1回のプロジェクトで終了するかもしれませんし、定期的に繰り返すプロジェクトであっても、最初から大きなシステムを積み上げてしまうケースは少ないでしょう。むしろ、すぐに使えて、すぐに捨てられる、更に柔軟に拡張できるようなかたちが望ましいと言えます。クラウド基盤などを利用する方向もあるでしょうし、社内で構築する場合でも、クラウド的な迅速性や柔軟性などを重視したシステムにすべきではないでしょうか。

 ただ、これまでお話したような方法論やシステム構築も、目的があってこそのものですし、そこを無視して方法論から入ってしまうと、うまくいきません。目の前の課題を改善する、従来から実践してきたことを更に積み上げていくといった、従来型の取り組みであれば、明確な目的を定めるのも難しくはないでしょう。しかし、今求められているのは、これまでとは異なる、新しい価値やメリットを生み出していくということです。そういう状況においては、必ずしも明確なものではなく、むしろ、コンセプチュアルな方向性、ぼんやりとした目的を共有することが意外と大事なのではないと思います。最初は、いわば低い精度の方向性にしておき、徐々に完成度を高めていく。そんな今までとは異なるアプローチにチャレンジすべき時期だと考えます。


●ありがとうございました。


取材協力

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世界に85の拠点を持ち、約1400人のリサーチ・アナリスト及びコンサルタントを含む5500人以上のアソシエイツで構成されるITアドバイザリ企業。ITプロフェッショナル向けのリサーチ・アドバイザリ・サービス、世界規模で開催されるイベント、CIOや情報担当者に特化したエグゼクティブ プログラム、そして、各顧客向けにカスタマイズされた高度なコンサルティングなどを提供している。


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