クラウドでコンテンツ管理はどう変わる?

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掲載日 2013/05/14

ザ・キーマンインタビュー クラウド普及で企業のコンテンツ管理はどう変わる?

企業内で扱われる文書には、契約申込書、請求書などの証票、社員が職務上で作成・取得した文書、そして、営業活動やPRに用いられるコンテンツなど、様々な種類のものが含まれる。それらの電子化やライフサイクル管理の必要性は以前から叫ばれているが、更に業務システムなどがクラウドへ移行しつつある中で、どのような状況が生まれつつあるのか。社団法人日本画像情報マネジメント協会の佐藤伸一氏にお話を伺った。

社団法人日本画像情報マネジメント協会 企業サイトへ

社団法人日本画像情報マネジメント協会:佐藤 伸一 氏

副理事長
佐藤 伸一 氏

重要な紙文書とボーンデジタルの双方をいかにマネジメントしていくか

Question

JIIMAでは、統合文書情報マネジメント(ECM)の普及啓発を目的とする「ECM委員会」を設置されていますが、どのような活動を行っているのでしょうか?

Answer

社団法人日本画像情報マネジメント協会:佐藤 伸一 氏

協会は1958年、マイクロフィルムの普及のため、日本マイクロ写真協会(JMA)として設立されたもので、その後、1995年に協会名称を社団法人日本画像情報マネジメント協会(JIIMA)へと改称しています。ECM委員会は比較的新しく設置した委員会で、ECM研究会の開催、ECMに関するポータルサイトの運営などを通じて、ユーザや市場への啓発、そして、技術の標準化、法制度の整備といった基盤整備に寄与すべく様々な活動を行っています。

 ECMは企業における文書情報を統合的に管理するものですが、その対象は非常に幅広く、社員が職務上で作成・取得した一般的な文書だけではなく、契約申込書、請求書などの証票、いわゆるエビデンスも含まれます。重要な業務では必ずこうしたエビデンスを確認しつつ、プロセスが回っていきますし、その中には裁判で必要になるもの、法律で保存が義務付けられているものなども存在するでしょう。ただ、こうしたプロセスの管理を円滑化しようとした際、文書が紙ベースのままではなかなか難しいですし、また個人情報の保護もより厳重に行わなければいけない。そうした様々な問題点を解決するために、文書の電子化を進めて、取得から保管・保存、そして配布までのライフサイクルを一元的に管理しようというのが、ECMの基本的な考え方であり、JIIMAではそれを広めていくために尽力しているというわけです。

Question

日本においては、社内文書・書類のデジタルベースへの移行、及び、その統合管理に関しては、現在、全般的にどのような段階にあると言えますでしょうか?

Answer

JIIMAでは各国における文書電子化の状況を調査してきましたが、日本は相当遅れている状況にあると見ています。特に官公庁ではいまだ大部分が紙文書として保存されており、民間企業ではそれに比べればデジタル化が進んでいると言えるものの、いわゆるIT先進国の中では後れをとっています。しかも、そうした組織内で扱われる重要な紙文書はほとんど減少しておらず、最初からデジタルデータとして作成、あるいは発生し、そのまま保管される、いわゆるボーンデジタルの電子文書は爆発的に増えてきています。この両者をいかにマネジメントしていくかという点が、非常に大きな問題になりつつあるのです。

 また、そのほかに、クラウドサービス、ソーシャルネットワーキングサービス、あるいはモバイルデバイス、そして、ビッグデータなど、何らかのかたちでECMに関連する新たな技術領域も登場しており、これらをいかに活用していくかということも大きなポイントになってくると思います。例えば、営業支援やCRM(顧客管理)を提供するクラウドサービスなどはそれ自体がECMの一種ともとらえられますし、あるいは、社内文書の中でも広告宣伝に用いられる資料などは、タブレット端末などに入れて営業先での説明に利用するといった流れが生じつつあります。ビジネスの中心となるエビデンス系の文書はなかなか紙から脱却しにくい一方で、それ以外の一般的な文書は利便性を高める目的でクラウドへの移行も急速に進みつつある。そうした二極化の状況下にあることもたしかです。

 最終的に目指すべきは電子文書業務モデル、つまり、一部の例外を除いて、すべての実務をボーンデジタルの電子文書を中心に行うという段階への移行なのですが、現実的には、まずは爆発的に増加するデジタルデータと、依然として作成され続ける紙文書の情報を、同一のプラットフォーム上で融合し、効率的に取り扱うハイブリッド業務モデルを実現することが当面の課題だと考えています。


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ECMの普及を妨げている要因の1つは、属人的な情報の管理

Question

先ほど、日本ではECMの普及が遅れているというお話がありましたが、その原因としてはどのようなことが考えられるでしょうか?

Answer

社団法人日本画像情報マネジメント協会:佐藤 伸一 氏

まず、属人的に情報を管理しているケースが少なくないということが挙げられます。仕事に必要な書類は、自分のPCや机の中に全部保管しているという人は多いのではないでしょうか。ただ、それでもマネージャ的な立場の方が、しっかりと情報を統制していればいいのですが、そもそもそこができていないので、デジタルであろうが、紙であろうが、すべてを全社で統合的に管理していく、業務に有用なすべての情報を紐付けして、誰でも活用できるようにしていこうという流れには至ってない。そうしたビジネス文化的な側面が、ECMの普及を妨げているということが1つあるかと思います。

 更に悪い状況としては、基幹業務で扱うエビデンス系の書類に関しても、会社として保管されているもののほかに、自分のお客様の分は手元に置いているケースです。こういう二重管理は記録管理の観点ではまったく意味がないのです。技術的な側面としてはファイルサーバへの保管から始まり、集中管理への方向は進んでいるわけですが、それ以上にマネジメントにおける問題点をまず解消する必要があると言えます。ただ、そこさえ解決すれば、もともと日本人は協調性やリテラシーが高いのですから、一挙にECMの普及が進んでいくのではないかと思います。

Question

文書を管理するだけではなく、業務に有益な情報やコンテンツとして活用する際の利便性みたいなところも必要になってくるわけですよね?

Answer

先ほどソーシャルネットワーキングサービス(SNS)なども関連してくるという話をしましたが、社内SNSなども注目されるようになっていますし、電子メールも既に業務に不可欠な存在となっています。そういう意味では、情報が紙に束縛されていた時代から事情は大きく変わりつつあり、情報をうまく共有していかなければならないという機運も高まっていると感じます。

 文書を活用する際には、情報に付随する情報、つまり、メタを業務の中でどのように標準化していくかということが大事になります。まずはそうした流れを社内で明確にルール化し、システムに反映させていく必要があるのです。そのためには記録管理の知識も求められます。米国では記録管理学という学問が確立されており、企業にもレコードマネージャというポジションが必ずと言っていいほど存在します。CIO(最高情報責任者)の配下で、電子化を担う立場の人とセットになって動いているのです。一方で、日本の大学では、一昨年、九州大学大学院に記録管理学を扱うカリキュラムができたくらいです。こういった状況からJIIMAも企業の文書情報の最適なマネジメントを立案し、改善・改革に取り組むことができる人材を教育・認定する制度(文書情報マネージャー認定制度)を始めたところです。逆に考えれば、そうした仕組みがなくても会社が回っているのは、1人ひとりが優秀で、属人的かもしれないけれど、各々に頑張っていると言えますが、それだけでは難しい状況になってきていることもたしかでしょう。


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ECMにおいて、クラウドはどのような役割を果たすか

Question

先ほどクラウドサービスとの関連に触れられていましたが、文書の確実な保管という意味では、どのように見ていますか?

Answer

社団法人日本画像情報マネジメント協会:佐藤 伸一 氏

クラウドに関しては、チャンスもあるし、課題もあると思います。クラウドを利用するメリットとして最も大きいのはBCPでしょう。米国でECMが大きな注目を集めるきっかけになったのは、アメリカ同時多発テロです。例えば、ある大手保険アドバイザー会社では、すべての紙の記録を電子化してECMで管理し、遠隔地にバックアップされていたので、情報を復旧し、すぐに業務を再開できたということです。多くの従業員に犠牲が出たことは悲劇ですが、そのことによって、情報が失われてしまったり、使い物にならなくなる事態にはならず、企業がつぶれてしまうことを避けられたというわけです。

 ただ、「クラウドそのものがECM普及を牽引するか」という点に関しては、米国などでは必ずしもそうではないという見方が多いようです。少なくとも現時点では、トータルで見た場合、オンプレミスで構築したほうがストレージ単価などが安く済むという理由からです。もっとも、コストに関しては今後の動向次第とも言えますし、ECMを導入しようという企業では、BCPなどのほかのメリットと併せて、どちらがベストなのかを精査していくべきだと言えるでしょう。

 その一方で、やはりクリティカルな情報をクラウド上で扱うのは難しいという意識もあります。個人情報をどれだけ厳重に保管できるか、法定保存文書を必要な年数だけ確実に保存してくれるのか。もちろん、最近ではクラウド事業者も信頼性向上に取り組んでおり、高いレベルのSLAをうたっているところも増えてきています。しかし、前述のような文書は、本当に確実に扱われないと、企業にとって命取りになりうる問題ですから、事業者側では更に高いレベルを目指すとともに、利用企業がより安心して利用できるような何らかの仕組みを構築していく必要があるでしょう。


●ありがとうございました。


取材協力

社団法人日本画像情報マネジメント協会 企業サイトへ

従来からの紙やマイクロフィルムの文書とコンピュータの電磁的記録などの情報を含んだ広い概念の文書情報を、そのライフサイクル全体を通して、より確実でより効果的に活用・保存を可能にする「文書情報マネジメント」の普及・啓発活動を行っている。


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