ビッグデータ実践のための“5つのヒント”

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掲載日 2013/03/21

ザ・キーマンインタビュー 実践的データ活用に踏み出すための5つのヒント

限定的な範囲でのデータ分析・活用に関しては、これまでにも積極的に取り組んできたという企業や担当者は少なくない。しかし、そうした企業においても、ことビッグデータに関しては、「活用に取り組むのは簡単ではない」と考えているのではなかろうか。第一歩を踏み出すための、よいきっかけになりうるシナリオなどはあるのだろうか。

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中林 紀彦 氏

ソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部
データサイエンス・アーキテクト
中林 紀彦 氏

ビジネス貢献を視野にデータ活用を進めるために必要なこととは?

Question

一般的な企業におけるビッグデータ活用への意識や取り組みは、どのような段階になると見ていますか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:中林 紀彦 氏

今年2月21日に開催した「IT Infrastructure Day」で、来場されたIT部門の管理者・担当者の方を対象にアンケートを実施しています。まず、「あなたの会社で、ITに求められている優先事項は?」という質問に対しては、最も多かった回答は「業務やIT自身のコスト削減」(35%)で、2番目は「売上増大への貢献」(24%)、あとは、「ITシステム自体の品質や性能向上」(18%)、「既存システムの統合性強化」(16%)という結果でした。「コスト削減」が最も多いのは当然とも言えますが、やはり「売上貢献」にも実際に目を向けている方が多いということです。ただ、そのための1つの手段として、「データ活用」が挙げられるわけですが、これに関しては、大まかに分けると「できている」「できていない」が半々という結果になっています。具体的には、「人材不足、スキル不足」「データの活用イメージがわかない」「費用対効果が不明確」などが主な阻害要因となり、売上貢献のためにデータ活用を進める必要があると感じつつも、着手できていないという企業が多いという状況が伺えます。

 一方で、弊社がグローバルで実施した「ビッグデータに対する取り組みの現在のレベル」に関する調査では、取り組みレベルを4段階に分けているのですが、自社は準備段階にあると考えている方は24%、検討段階は47%、試行段階は22%、そして、実行段階にあるという企業は6%という結果が出ています。グローバルでもさほど進んでいないのだなという印象を受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、日本で同様の調査を行ったところ、もっと後ろのほうに寄った、つまり、準備段階がかなりのウエイトを占める傾向が表れました。

 では、どこから始めるべきなのか。これも別の調査なのですが、ビッグデータ活用ではどのような種類の情報を分析することを考えているかという質問に対しては、7割の方が企業内のアプリケーションから生じる情報、トランザクションデータだと答えています。その次に、センサ/マシン/デバイスから生じるデータ、ソーシャルデータなどが続くのですが、割合としてはまださほど大きくはなく、様子見から、実際に着手しようという段階に入った方々は「身近なデータ」から始めていると言えるのではないでしょうか。

図1 データ活用が進まない理由は?
図1 データ活用が進まない理由は?
出典:IBM Infrastructure Day 2013, 「今、取り組んでおくべき課題と解決策」、2013年2月

Question

具体的には、どのような部分から取り組むパターンが考えられるでしょうか?

Answer

弊社では、営業、エンジニア、マーケティングなどの部門が協力し、ビッグデータの市場に対する理解を深められるように、アナリストとの議論やレポート検証、多数の顧客を対象としたヒアリング/ミーティングなどを実施してきました。その結果、導き出されたのが「データを視覚化し、探索する」「顧客に関する視点を広げる」「セキュリティをインテリジェントに改善する」「マシンデータの可視化・分析」「データウェアハウスの拡張」という5つの活用シナリオです。これらが今後、ビッグデータ市場のスイートスポットになっていくと考えており、同時に、どこから着手すればいいのか分からないという情報システム担当者、あるいは管理者・経営者の方にとってはヒントになるのではないでしょうか。つまり、このいずれかを自社に当てはめて検討していただくことで、活用のきっかけの1つになるのではないかと思います。


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ビッグデータ活用の5つのシナリオと、その具体的な進め方

Question

先ほど挙げていただいた5つのシナリオをもとに、具体的にどのようなアクションを行えばよいのでしょうか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:中林 紀彦 氏

まず、「データを視覚化し、探索する」は、まさしく身の周りの情報をもっと活用しようという方向性と言えます。ただ、一口に身の周りの情報といっても、例えば、受発注や在庫管理、物流管理のシステム、商品データベースなど、個別に分かれているケースがほとんどでしょう。1つの商品に関する情報にもかかわらず、各々のシステムに分散したままの状態というわけです。だとすれば、まずは、それを1つのインターフェースから“見える”ようにするのが第1歩となります。いわゆるデータの棚卸しをして一元化を進めるわけですが、具体的には商品などを軸として、それに関連する社内データをまとめていくという流れになるかと思います。ただ、データベースをいきなり統合しようとしても難しいので、まずはデータを集めてきて並べてみるだけ、あるいは粗結合だけでもいいと思います。何にせよ、1つの商品に対して横串を刺して検索したり、情報を深掘りできるようなかたちで、データインテグレートを図っていくことが重要です。更に、そこから軸は変えずに、ソーシャルデータなどのWeb上の情報などへと利用データの範囲を広げていけば、情報の価値をより高めていくことができるでしょう。

 2つ目の「顧客に関する視点を広げる」は、顧客ニーズを理解し、将来の挙動を予測するための顧客アナリティクスを意味します。代表的な例としては、顧客離反のリスクを回避する目的で、顧客の興味の対象、商品購入の動機、競合の会社へと流れてしまう可能性やその要因、あるいは、次に購入予定の商品など、顧客をあらゆる観点、つまり360度から理解するという取り組みが挙げられます。いわゆるOne to Oneマーケティングと呼ばれるものですが、コンセプトにとどまらず、ITの仕組みを用いて実際にできるようになってきたのは、ようやく最近になってのことであり、ビッグデータ活用によって、より具現化したと言えるでしょう。ただ、あらゆる観点から顧客の情報を集めるというと、少しハードルが高く感じるかもしれません。しかし、あくまでも最終的に360度を目指せばいいのですから、まずはいくつかデータを統合してみるだけでも入り口は見つかると思います。

 3つ目は「セキュリティをインテリジェントに改善する」です。ネットワーク上にしても、現実社会においても、多様なリスクが存在するだけではなく、複雑化し、頻度も高まっていますから、その対処にインテリジェンスを持ち込むという使い方です。つまり、これまで活用できなかった様々な種類のデータやデータソースを活用し、既存のセキュリティソリューションの機能を高めていく。例えば、ネットワークのトラフィックを分析すれば、早期に新規の脅威を発見したり、複雑な既知の脅威を検出し、リアルタイムでのサイバー攻撃の予測・防御が可能でしょう。もう少し範囲を狭めて、社内の各種データを用いて、情報漏洩のリスクを洗い出すとともにパターン化し、モニタリングしていく仕組みを構築するといった作業も1つのスタート地点になるのではないでしょうか。

 また、4つ目の「マシンデータの可視化・分析」は、真っ先にセンサデータなどが思い浮かぶかもしれませんが、IT部門の方にとって身近なところでは「ログデータによるエラー検知への取り組み」から始めてみるのはいかがでしょう。ご存じのとおり、現在ではシステム全体が非常に複雑な構造になっており、障害が発生した際の原因究明も困難になっています。例えば、典型的な3階層、Apache、WebSphere、Oracleというシステム環境の場合、Apacheから“500”エラーが出ていたとしても、それだけでは、Webサーバのログを見た管理者は原因は把握できません。そのため、一般的には次の作業として、発生した時間をもとに、アプリケーションサーバのログと見合わせつつ、検証していくことになるでしょう。ここにデータ活用の考え方を取り入れ、RやSPSSでは扱うことができない大量のログデータを機械学習の分析手法を使って、パターンを発見し、確率を分析し結果を可視化することがコーディングなしで可能になっています。アプローチとしては、工場の製造管理におけるセンサデータの活用などでも同様と言えますから、IT部門の方は、まずシステムログを切り口にして、そこからの応用で取り組みを広げていくとビッグデータ活用に着手しやすいと言えるのではないでしょうか。

 最後の「データウェアハウスの拡張」もIT部門向けのシナリオで、業務効率の改善を目的に、ビッグデータ機能とデータウェアハウス機能の統合を図っていくというものです。「データ集計のバッチ処理の高速化」をはじめ、「非構造化データに対応させたい」「データが増大しているので、ほとんど使用しないデータをどこかへ移したい」といった目的を達成するためには、Hadoopなどのビッグデータ処理の仕組みを利用したデータウェアハウス・インフラの拡張が有効な手段となります。

図2 ビッグデータ活用〜5つのシナリオ
図2 ビッグデータ活用〜5つのシナリオ
出典:日本IBM、2013年2月

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今度こそはデータ活用を成功させたいと考えるなら…

Question

今のお話を伺ったかぎりでは、やはりIT部門が積極的にデータ活用の取っ掛かりを作っていくべきだと言えるのでしょうか?

Answer

日本アイ・ビー・エム株式会社:中林 紀彦 氏

これまでお客様とやりとりをして、実際に試行段階や実行段階に至った事例を振り返ると、業務部門にいわゆるデータに関するセンスを持った人がいて、そこから取り組みが始まったというケースが多いかと思います。ただ、それをきちんとIT部門の方が理解をして、プロジェクト化していくという流れも不可欠なのです。また、業務部門からスタートを切れない企業も少なくないでしょうから、そういう場合には、先ほどのようなシナリオをヒントとして活用していただき、IT部門が率先して自分たちの身の周りのデータを業務効率化に役立てるとともに、業務部門にも働きかけ、全社的な売上貢献などへ広げていくことが必要ではないでしょうか。

Question

過去にBIをうまく使いこなせなかった経験があり、今度こそはデータ活用に成功したいと考えている企業も少なくないかと思いますが、失敗を回避するためのポイントなどはありますでしょうか?

Answer

おそらく、そうした失敗は、自主的に分析に取り組んでいたのは実はIT部門だけで、業務部門ははたから見ていただけであったり、自ら分析を行っていたとしても、言われるがままに操作しているだけだったのではないでしょうか。業務部門や経営層の方々も、分析の流れを理解した上で、自分たちが実施したいビジネス活動をデータにもとづいて考え、更にきちんとにアクションにつなげていくことが望ましいと言えます。もちろん、その橋渡しを担う人員として、データサイエンティストという存在に注目が集まっているわけですし、今後、その役割は重要になっていくでしょう。しかし、だからといって、データサイエンティストを確保すれば、それですべていくわけではないと思います。やはり、業務部門や経営層の方々も、単に分析結果だけを見るのではなく、ある程度はどういう流れで分析をしているのかを把握しておくべきではないでしょうか。そうでなければ、BIであれ、ビジネスアナリティクスであれ、ビッグデータ活用であれ、なかなかうまくいかないと思います。そうしたソリューションは決して最終的な答えを出してくれるわけではなく、あくまでも考える材料を提示するものであり、それをもとに判断を下すのは自分たち自身なのですから。


●ありがとうございました。


取材協力

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企業や公的機関などの顧客向けに、「ハードウェア(システム&テクノロジー)」「ソフトウェア」「サービス」を中心としたビジネスを展開。約40万人の社員が世界170ヵ国の顧客に製品やサービスを提供し、12ヵ所の研究所では科学者や研究者が最先端の技術研究・開発に取り組んでいる。


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