ビッグデータ投資が膨らまない真の理由とは

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掲載日 2012/12/19

ザ・キーマンインタビュー ビッグデータ活用への投資が膨らまない真の理由とは?

IDC Japanが先日発表した「国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場の市場予測」では、ビッグデータ活用への投資額は2011年は142億5000万円、2012年は前年比成長率38.2%の197億円になると見込まれている。順調に成長は遂げているものの、IT全体の支出と比較した場合には0.5%にも満たないレベルにとどまっている。その理由はどこにあるのだろうか?

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赤城 知子 氏

IDC Japan株式会社
ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャー
赤城 知子 氏

市場をとらえるための“ビッグデータの明確な定義”とは?

Question

先日、貴社では「国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場の市場予測」を発表されましたが、これはどのように調査を進められたものなのでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:赤城 知子 氏

ビッグデータの市場規模についてよく質問を受けることが多いです。でも、ビッグデータ自体は「データの特徴」を指した言葉に過ぎませんので、市場規模を算出するとなると、そういった特定のビッグデータを処理するためのIT市場ということになります。既に国内企業やデータセンタには、たくさんのサーバやストレージ、ネットワーク、ソフトウェアが導入されており、これら既存市場の中で、ビッグデータを処理するためのIT市場とはどの部分なのか? こうした観点から、IDCでは既存市場とビッグデータ向けのIT市場がダブらないように分析しています。そのため、弊社ではビッグデータについて、いくつかの具体的な条件を設定しています。

 まず、ビッグデータ自体については、従来のIT技術では処理しにくかった「100TB以上の大規模なデータ」、または、金融取引などで採用されている「ハイパフォーマンスなストリームデータ」、または、100TB以上でもなく、ハイパフォーマンスストリーミングデータではなくても、「年率で60%以上の増加量があるデータ」をビッグデータであると定義しています。そうしたデータを扱うためのインフラ基盤などについては、少なくとも、スケールアウト型でなければならないと考えています。更に、アプリケーション層に関しても、当然ながら、そうした大規模、あるいは高速に流れるデータソース、多様性を持ったデータフォーマットをそのまま扱えるものであるべきでしょう。このような特徴を持つビッグデータを、活用するために必要なハードウェアやソフトウェア、ネットワーク機器、ITサービスについて、IDCではビッグデータテクノロジー/サービス市場と分類しています。

 このような条件を設定した上で、今回の調査においては、ビッグデータテクノロジー/サービスに企業がいくら使ったか、つまり支出額から市場規模を算出したのですが、2011年は142億5000万円という結果で、2012年は前年比成長率38.2%の197億円になると見込んでいます。IT全体の支出と比較した場合には0.5%にも満たないレベルで、まだまだ市場は黎明期であるということは確かだと思います。また、今後に関しては、2016年までは39.9%の年平均成長率(CAGR:Compound Average Growth Rate)で拡大し、2016年には765億円になると予測しています。

図1 国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場 支出額予測、2011年〜2016年
図1 国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場 支出額予測、2011年〜2016年
出典:「2012年 国内ビッグデータテクノロジー/サービス市場 需要動向分析」(IDC Japan、2012年10月)

Question

ほかの分野では製品視点で市場規模をとらえる場合も多いかと思いますが、ビッグデータ活用に関しては、それだけでは難しいという面もあるのでしょうか?

Answer

そうですね。例えば、先進的なビッグデータ活用例では、HadoopやNoSQL Databaseなどの技術が広く用いられていますが、これらの多くはオープンソースソフトウェアの形態で提供されている技術のため、基本的にはライセンス費用などは発生しません。ただ、こういったビッグデータテクノロジー特有のノウハウを習得する必要や、外部にシステム開発やサポートを依頼するなど、何らかの支出は必要になるでしょう。

 また、サーバやストレージ、あるいはネットワークに関しては、ビッグデータだけのために新たなインフラを構築するというよりは、むしろ、既存資産を活用しながらビッグデータ対応を図る、あるいはIT運用の省力化、クラウド対応といった別のミッションを遂行する一環として、ビッグデータ活用に取り組むという企業が大部分というのが現状ではないでしょうか。ビッグデータの市場規模が限定的なのは、取り組み始めている企業の数そのものがまだまだ少ないということももちろんありますが、こうした“純粋にビッグデータのためだけ、という投資は現状では行いにくい”という理由も少なからずあるかと見ています。

 最近では、ハードウェアからデータベースソフトウェアまでを統合した垂直統合型製品の台頭が目立っていますが、これもそうした企業の意識が背景にあるものと考えられます。つまり、垂直統合型のデータベース製品などを導入することで、IT運用の効率化など、今目前にある課題の解決を図りながら、今後増加していくデータへの対応にも備えておくというアプローチが可能になるわけですから。


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ITベンダが技術面だけで競い合っていても顧客企業には響かない

Question

ビッグデータ活用がより多くの企業に広がっていくためには、どのような条件が整うことが必要だと言えるでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:赤城 知子 氏

先ほど、既存のインフラを流用して取り組む企業が多いという話をしましたが、一方で、ビッグデータ活用のためには新しいITインフラが必要で、予算も途方もなく必要だろうと考えてしまっている企業も少なくないと思われます。そういう状態では取り組みを始めるのは難しいですよね。そもそも、どれほどの効果が得られるのかもまだよく分からない状況ですから。そうした意識など、取り組みの“障壁”となっているものを、まず、ITベンダなどがうまく取り除いていくことが必要だと言えます。

 主要なITベンダ各社では、自社の技術とソフトウェア資産、そして、オープンソースを組み合わせるかたちで、ビッグデータ関連のソリューションなどの提案を行っていますが、顧客から見れば、技術的にはあまり差はないように見えるのではないでしょうか。もちろん、細かな違いはあるわけですが、最終的にはビジネスにどれだけの効果があるかということが重要ですから、技術面だけで競い合っていてもあまり意味はありません。

 ビッグデータに関しては、データサイエンティストのような人材を充実させることが重要だとも言われますが、そうした人たちの仕事を発生させるためには、当然ながら、まずビッグデータについて語れる営業マンが出てこないといけないということです。もちろん、ビッグデータ専門部隊などを設けているITベンダでは、その中に営業担当者も含めているでしょう。ただ、顧客企業が自ら「ビッグデータ活用のためのシステムを買いたい」という問い合わせをしてくるようなものではありませんし、顧客企業へビッグデータを売り込むというよりは、ITベンダとして様々な商品を売り込む一環として、その企業の業種や業務、または現在の課題となっている部分にうまくフォーカスしながら、ビッグデータが持つポテンシャルや可能性をアピールしていく必要があるでしょう。

 ただ、それもビッグデータ活用でソーシャル分析しましょうとか、大規模なログ解析を行いましょうというレベルではなく、そこからどういう予兆をとらえて、いかにビジネスのプロセスにつなげて回していくかという部分まで視野に入れた提案をしなければ、顧客には響かないでしょう。例えばマーケティングでの活用であれば、顧客の購買行動に関してどういうリアルタイムのアラートを立てて、それに対してどのようなアクションを行うようにすれば、その顧客企業にとって利益が見込めるかという話です。そうでなければ、「別にビッグデータ活用などを使わなくても、顧客分析は十分にできている」という結論になってしまう企業も多いでしょうから。


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IT部門で56.8%、業務部門では31.1%という認知度をどのようにとらえるべきか

Question

今回の調査では、ビッグデータの認知度は、IT部門で56.8%、業務部門では31.1%という調査結果も出ていますが、これはどのようにとらえればよいのでしょうか?

Answer

IDC Japan株式会社:赤城 知子 氏

営業やマーケティングの現場は、もっと“わがまま”になるべきだと考えています。例えば、顧客の動向をより正確に把握したいという意向はあるはずなのですが、現状では自分たちの手である程度どうにかしようとしている。しかし、そこは企業全体で取り組むべき重要な課題になってきていますし、ITで解決できる方法があるのならそうしてほしいと、IT部門に要望を出していくべきでしょう。もちろん、IT部門はクラウドへの対応などもあり、ビッグデータへの取り組みに備える余裕はないというのも事実でしょうから、その部分の調整に関しては、経営者/取締役レベルでの戦略的な検討が不可欠です。

 従来のように、IT技術で業務の効率化やコスト削減を図るというケースでは、CIO、あるいはITに比較的詳しい取締役の方などが旗振り役になって推進して成功したという話がよくありました。しかし、今回のようなビッグデータ活用に関しては、むしろコストを投下して、現場の意志決定の自動化や、大規模な情報分析による将来の予測を実現するといった戦略的な取り組みを行うものですから、業務部門のトップから声を上げることが成功につながる可能性は高いと思われます。そういう意味で、業務部門におけるビッグデータの認知度をもっと上げていく努力が必要だと言えます。

 ビッグデータを「大変なもの」という赤信号でとらえる企業も多いでしょう。また、ITベンダがまた新たなバズワードをつくって、お金を使わせようとしていると、「黄信号」でとらえる企業の気持ちも分かります。しかし、市場の変化に対応していかなければ、大成功を収めていた企業でさえも凋落して窮地に追い込まれてしまうというケースもめずらしくなくなっています。企業内部では一生懸命に戦っているつもりでも、外部環境ががらりと変わってしまうことで、急激に後手に回ってしまうというわけです。だからこそ、ビッグデータというものを完全にシャットアウトするのではなく、可能な限りの調査・検討は行っておき、「青信号」に見えるチャンスがあれば、実際に取り組んでみるべきです。ただし、その際にはいいパートナー、例えば、コストリスクをうまく抑えてくれたり、ビッグデータ活用を多く手がけて、豊富な知見を有しているITベンダを見つけることも不可欠と言えるでしょう。


●ありがとうございました。


取材協力

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IT専門の調査会社として、1975年に設立以来、国内・外の情報技術・通信産業をはじめ、金融機関、政府機関等など、市場データ、市況分析とそれにもとづいたアドバイスを提供。グローバルに展開するビジネスを品質の高いデータで支援することに取り組んでいる。


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