ここを見逃すな!クラウド運用の落とし穴

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掲載日 2012/11/27

ザ・キーマンインタビュー ここを見逃すな!クラウド運用管理の落とし穴

クラウドへの流れが加速する中、運用管理の現場でも様々な課題が浮上しつつある。仮想基盤管理の延長として取り組んでいけばいいのか、それとも全く異なる取り組みが必要となるのか。クラウド運用管理の現状や注意点などについて、日立製作所 ITマネジメントソリューション開発部の西部憲和氏にお話を伺った。

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西部 憲和 氏

ITマネジメントソリューション開発部
主任技師 西部 憲和 氏

仮想基盤管理からクラウド管理への移行で、新たなSI業務が上積みされる

Question

多くの企業において、情報システムのクラウド移行が様々な形態で実施あるいは検討されている状況だと思われますが、ITベンダという立場から見て、実際の動向に関してはどのようにとらえていますでしょうか?

Answer

株式会社日立製作所:西部 憲和 氏

ご存じのとおり、ITシステムの仮想化に関しては、既に導入がかなり進んでおり、近いうちに物理環境と仮想環境がほぼ半々くらいの割合になるだろうと言われています。また、レガシーシステムの延命、初期的な導入コスト削減などを目的とした取り組みはひととおり完了した状況だと見ており、現在は、いかにリソースを効率よく使っていくかという、プライベートクラウドとしての導入が増えていく段階にあります。そうした状況の中で、システム管理者の作業は何が違ってくるのか。それは、こうした単なる仮想基盤の管理にクラウド管理というものが上積みされることで、社内での仮想リソースの払い出し/貸し出しといった「新たなSI業務が発生する」ということでしょう。しかも、そうした作業は煩雑で、しかも量も増えていくことになりますが、運用ミスは避けなければならない。そういう意味で、やはり、「自動化」へのニーズが非常に高まっているという状況だと言えます。

Question

具体的には、現在、運用管理の現場においては、どのような負担が生じていると言えますでしょうか?

Answer

運用管理の課題を生じさせている背景を具体的に見るためには、「技術動向」と「顧客動向」という2つの視点に分けるとよいかと思います。技術動向では、「クラウドや仮想化の浸透」「プラットフォームやデバイスの多様化」という側面が大きいでしょう。また、顧客動向に関しては、「増大していく運用コストの抑制(削減)」「IT活用による業務改善」「事業継続性の強化」、そして、「グローバル化」などへの対応を迫られている企業が増えているという状況があります。

 こうした背景を総括して、今、運用管理の現場で何が起きているかということを考えると、「運用ノウハウの不足」「管理業務の複雑化」「運用作業の負担増大」ということではないでしょうか。また、それらの課題の解決を目的として、様々な技術や管理ツールが登場してきていますが、そうした「管理ツールの多様化」自体も実は運用管理者の負担になっており、同時に、「管理業務の属人化」にもつながってきます。

 更に、運用管理の現場というものは、もともと以前から慢性的な「人手不足」に悩まされているということは否めないでしょう。仮想化による集約で物理サーバの台数は減らせるかもしれませんが、それで別に業務の数が減るわけではありません。経営層や管理者は、仮想化で業務が少なくなり、オペレータの人数なども削減していいのではないかと考えがちですが、そうではなく、現場にとっては管理すべき作業がむしろ増えています。仮想化導入で初期コストは削減できますが、このような新たに発生する作業をどう効率よく、ミスなくこなして、ランニングコストを減らせるかが重要なポイントだと考えています。


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IT運用管理自動化の適用により、作業時間を約60%削減できたケースも

Question

そうした運用現場で生じつつある問題を解決するためには、何が必要と言えるでしょうか?

Answer

株式会社日立製作所:西部 憲和 氏

誰でも適切な管理方法が分かる「ノウハウ」、やりたいことややるべきことを迷わず行える「インテリジェンス」という要素を持ったIT運用管理基盤が求められると思います。そのために例えば弊社では、自社の運用ノウハウを活用しつつ、障害の予兆検知から原因究明までをインテリジェントに支援する運用管理ツールの提供に以前から取り組んでいます。例えば、IT運用自動化を実現する「JP1/Automatic Operation」というものがありますが、これを弊社のデータセンタで適用したところ、仮想サーバの追加やデプロイ作業にかかる時間が約60%削減されたという結果も出ています。

 従来の物理環境主体のシステムでは余裕を持った設計というものが基本でしたが、仮想環境ではリソースを生かしきってこそ、効率化につながるという考え方になります。そのため、様々な業務システムが1ヵ所に集約され、いわば、ぎりぎりの状態で稼働しているという面もあるでしょう。ある意味では、危険性は従来よりも増しているという部分もあると言えるかもしれません。そのため、運用管理者には、いかに障害の予兆をとらえて、迅速に、しかも正確に対策を行うかということも求められています。そうした作業をIT運用管理基盤が担う、あるいは支援することで、「やさしい運用管理」を実現しておくべきだと弊社では考えているのです。

Question

先ほど、クラウド化が進むと作業が増大し、ミスも生じやすいというお話がありましたが、それはどういった原因によるものなのでしょうか?

Answer

従来のようにリソースやその構成が固定ではなく、柔軟に変化や増減が行えるという点はメリットでもあるのですが、その一方で、全容が見えづらく、例えば、作業の対象範囲が漏れてしまうといったことも起きやすいのです。また、リソースが不足している、増強しなければいけないといった判断は、従来は閾値管理などを用いつつ、ピーク時はこの程度を確保しなければいけないといったふうに、意外と管理者の勘に頼っていて部分も多いかと思います。しかし、構成が複雑化する中で、そういった勘だけではサービスの安定稼働を本当に維持していくことは難しくなっています。

 では、何で判断すべきかというと、データ量の動きやレスポンス応答時間の変化、など、通常と異なる兆候に目を配るということが1つの答えになります。そうした振る舞いによる検知を行いつつ、今後のためにノウハウを溜めていくという必要があるというわけです。そうすることで、リソースの不足に対しても先手先手で対処することが可能ですが、やはり、人手だけでこれを行うのは難しいですから、やはり「自動化」が必要だと言えるでしょう。


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障害やその対策の影響範囲の見極めや、データ量増加に対する配慮が不可欠

Question

そのほかに、運用管理の観点から、従来のシステムを仮想化/クラウド化する際に注意すべきなのはどのような点になりますでしょうか?

Answer

株式会社日立製作所:西部 憲和 氏

物理環境と仮想環境が混在することで、障害の影響範囲が見えにくくなります。どこで本当の問題が起きているかを判断すること自体も難しいと言えますが、それ以上に、問題に対処したり、調査する際に、「どこまで影響を及ぼすのか」という点をしっかり考慮しなければなりません。従来は1つの物理サーバ上で1つの業務が動くという状態が一般的でしたから、例えば、どれかを停止させたり、再起動するといった場合にも、影響範囲は狭く、ある程度は明確に把握できたかと思いますが、そこが非常に難しくなるわけです。そういう意味では、やはり仮想環境も含めたシステム全体の「見える化」を行い、影響範囲が分かりやすい体制を築いておくことが不可欠と言えるでしょう。

 あと、忘れがちなのは、仮想環境にすることで、実は「データ量が増える」ということでしょうか。仮想OSがいくつも動いているにもかかわらず、「1台のサーバだから」という感覚でいると、例えば、バックアップが予定の時間に終わらないというケースもよく耳にします。バックアップ/リストアなどの効率化も含めて、ストレージ管理を中心としたシステム設計を再度見直しておくということも重要だと思います。

Question

ITベンダという立場では、今後どのような取り組みを行っていくべきだと考えていますか?

Answer

弊社の統合システム運用管理「JP1」は、基本的にはお客様のシステムに導入いただき、ITインフラ管理、サービスレベル管理などを実現するもので、当然ながら、クラウド運用にも対応しています。ただ、やはりシステム運用に対する要望というものは顧客企業によって様々ですし、今後、企業システムのクラウド化、クラウドサービスの利用などが拡大するにつれ、その傾向は顕著になっていくでしょう。ですから、運用管理ツール側もより幅広い展開を行っていく必要があると考えています。

 その一環として、弊社ではお客様のシステム監視から対処支援までトータルに提供する「JP1システム監視サービス」もリリースしています。また、スマートデバイスの管理機能をSaaS型で提供する「JP1スマートデバイス管理サービス」も準備しており、資産管理製品「JP1/IT Desktop Management」と連携したPC、サーバなどのIT資産を含めた一元管理を実現しています。更に、今後はエコシステムとしての展開も重要だと考えており、例えば、クラウドサービスを提供している事業者に、われわれの運用管理ソリューションを取り込んでいただくという取り組みも不可欠だと思います。クラウドへの流れなどにより、企業システムが高度化・複雑化していく中で、こういった連携、多彩な提案を図ることで、お客様の選択の可能性を広げていくことこそが、ITベンダに求められることであり、重点的に取り組むべきゾーンだと考えているのです。


●ありがとうございました。


取材協力

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2010年に創業100周年を迎えた総合電機メーカー。IT(情報技術)で高度化された社会インフラを提供する「社会イノベーション事業」を軸に、グローバル市場でビジネスを展開している。情報・通信分野においては、サーバ、ストレージ、ネットワークなど、ITインフラとそのオペレーションに注力するほか、クラウドサービスやビッグデータ活用でも先進的な取り組みを行っている。


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