鉄道車両の大規模データ分析で見る予兆とは

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掲載日 2012/11/21

ザ・キーマンインタビュー 鉄道車両にも多数のセンサ〜「大規模データ分析」で見る予兆とは?

ビッグデータ活用は、大部分の企業においては「まだまだこれから」という段階だとよく言われるが、実際のビジネス戦略に役立てている企業も出てきている。例えば、日立製作所では、先日、英国高速鉄道の大規模受注を発表したが、車両生産から保守点検、故障対応に至る一連の業務において、ビッグデータを活用することで、“日本品質”を実現しているという。日立製作所 ソフトウェア本部 ビッグデータソリューション部の担当部長である山口俊朗氏にお話を伺った。

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山口 俊朗 氏

ソフトウェア本部
ビッグデータソリューション部
担当部長 山口 俊朗 氏

ITが担う部分と人間が担う部分の両輪が揃わなければ動き出さない

Question

ITベンダという立場から、貴社ではビッグデータ活用の現状や今後に関して、どのような認識・展望をお持ちでしょうか?

Answer

日立製作所:山口 俊朗 氏

弊社のようなITベンダの業務の流れとしては、お客様がある程度、何らかの目的を持っていて、それを実現するために、われわれはプラットフォーム製品を提供して、システムインテグレーションを行い、業務を構築するというのが一般的でした。しかし、ビッグデータに関しては、情報の山として存在するデータを、まず何に利用すべきか、どうやって活用すればいいのかが、お客様の側ではなかなか思いつかないという段階にあります。「ITは単なる道具」ということはよく言われますが、それらを活用しつつ、「人間による価値創造」、つまり、新たな価値を生み出すところは人間がしっかりと担うということが、ビッグデータの場合は特に重要だと言えます。ITが担う部分と人間が担う部分の両輪がきちんと機能しなければ、ビッグデータは動き出さないのです。

 まず、「道具」の部分に関しては、かなり整備が進んでいる状況と言えるでしょう。企業におけるデータ分析は、以前からBIツールの導入、データウェアハウス(DWH)の構築といったかたちで取り組まれてきたわけですが、それなりのコストをともなうゆえに、投資対効果はなかなか見込めないという状況もあったかと思います。しかし、弊社の見方では、それが2010年あたりを境に変わった。つまり、ITリソースを並列活用する方法や、安価なメモリを大量に活用する方法が一般化してきたことで、投資対効果が逆転し、データ分析による収益増加が拡大に転じたということです。

図1 ビッグデータを支える大幅な性能と経済性の向上
図1 ビッグデータを支える大幅な性能と経済性の向上
出典:日立製作所、2012年10月

しかし、「人間による価値創造」については、前述のとおり、まだまだこれからという段階にとどまっています。企業内情報活用の現状というものを考えた場合、ちょうどインターネットの黎明期に似た状態だと言えるのではないでしょうか。当時はWebサイトが続々と立ち上げられる一方で、どこに何があるのかが分からないため、せっかくの情報が「ノイズの山」にしかすぎなかったわけです。企業内情報も、現時点ではそれと同じ状況だと言えます。部門間・システム間のサイロ化、アクセスコントロールの複雑さ、データ構造の多様性などが、取引/業務データ、オフィス文書、メールといった企業内情報の利活用を困難にし、「未収集・未整理」のノイズの山にとどまっているのです。

 ただ、インターネットの世界では、ディレクトリサイトや検索サイトなどが登場したことで、目的の情報が容易に探せるようになり、ごみの山が宝の山に変わりました。そして、それにより、インターネット自体も一挙に普及したというわけです。企業内情報活用も同様に、新たな発見・価値創造への活用を目指したいのですが、多くのお客様がそこに「クエッション」を抱えている状態だと認識しています。

Question

そうした状況を受けて、貴社ではどのような取り組みを進めているのでしょうか?

Answer

お客様の業務を理解し、データ活用のビジョン構築、活用シナリオの策定、実用化の検証、そして、実際のシステム導入まで、お客様とともに取り組む人材が必要だと考え、ビッグデータ活用に関する専門家を200名ほど結集させた組織を設置しています。その中心的役割を担うのが「データ・アナリティクス・マイスター」と呼ばれる人材で、バックエンドとして動くデータ分析の専門家や各種技術者・研究者、SEなどと連携することで、多様な企業のデータ分析ニーズに対応します。弊社ではそうした体制を整えることで、先ほどお話したように、ITが担う部分だけではなく、人が担う部分に関しても支援し、日本の企業や社会におけるビッグデータ活用の促進に貢献していきたいということです。


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車両のセンサデータと商品管理システムの連携で予防保守を実現

Question

貴社で手がけたビッグデータ活用の事例を紹介していただけますでしょうか?

Answer

日立製作所:山口 俊朗 氏

弊社では英国の鉄道事業を受注していますが、その保守サービスにビッグデータを活用する取り組みを進めています。日本の鉄道事業における受注とは異なり、英国の場合はリースのような感覚で、車両を納入するだけではなく、保守業務も請け負うことになります。つまり、時間経過にともなう保守点検、そして、発生した故障への対応などを担うのですが、そのコストを抑え、しかも最適なサービスを提供するためにはどうすればよいか。そうした課題を検討した結果、車両に多数のセンサを取り付け、そこから情報を常時収集することで、車両の状況をリアルタイムに監視し、予防保守を実現するとともに、商品管理などの業務システムと連携させることで、リードタイムや商品在庫も最適化できると考えたわけです。

図2 事例:鉄道設備の保守サービス
図2 事例:鉄道設備の保守サービス
出典:日立製作所、2012年10月

同様の事例として、弊社が製造するガスタービンの予防保全にも役立てています。ガスタービンには1台あたり200〜300のセンサを取り付けており、世界各国の様々な環境で稼働しているガスタービンから、インターネット経由で監視センタへと情報を送るという仕組みです。その稼働情報を分析し、それぞれのガスタービンに適した予防保全を行うことで、稼働率の向上を実現しています。

 もちろん、そのほかに、ビッグデータの活用例として一般的な「センサによる人の行動分析」「ITログの有効活用による顧客の行動分析」などについても、交通量・渋滞分析、駅構内の人流分析、組織内コミュニケーション定量分析など、様々な取り組みを行っていますが、いずれにせよ、弊社の最大の強みは、社会インフラとITの両方を扱っているという点にあると思います。ビッグデータ活用に関しても、その強みを生かした事例が多くなっています。

Question

そうした強みを持った分野でビッグデータ活用に取り組みつつ、そこで得たノウハウなどを、顧客企業に対するビッグデータ活用の支援にも生かすというかたちなのでしょうか?

Answer

そうですね。先ほどの鉄道車両の保守に関しても、自動車、あるいは今後拡大が見込まれるEV(電気自動車)などにも応用が可能でしょう。結局のところは、モノから収集したデータをどのように分析すれば、どんな価値が生まれるのかということを見出すことが重要なわけで、お客様ごとにその対象は異なるにせよ、分析手法やノウハウといった部分は横展開が可能だと考えています。


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分析処理の高速化が、個々の企業の「新たな発想」を後押しする

Question

貴社では様々な規模・業種の顧客を抱えているかと存じますが、ビッグデータ活用に関しては、どういった企業から相談を受けることが多いのでしょうか?

Answer

日立製作所:山口 俊朗 氏

やはり、既に一定量のデータを持っている企業が、それを有効活用したいと考えるケースが多いですね。一般的にはITサービス系や金融系などが挙げられますが、それ以外にも、スーパーマーケットやコンビニエンスストアのチェーンが持っているPOSデータなど、ある程度の量のデータを持っているものの、現状では十分に活用できていない、うまく活用したいという認識を持っている企業は少なくありません。もちろん、さほど大規模な業務データは持っていないという企業でも、いわゆるソーシャル系データ、あるいは気象情報などの様々な外部データと組み合わせることで、新たな価値を見出せるのではないかと検討し始めているところはあります。

Question

同じ業種の小売業などであれば、持っているPOSデータも似たような内容ですから、活用のしかたも同様になると言えるでしょうか?

Answer

POSデータの分析だけにとどまるのであれば、そうなる可能性もなくはないのでしょうが、そこから新たな価値を見出すということを考えると、ほかの様々なデータと組み合わせることが必要になるでしょう。そういう意味で言うと、逆に、ビッグデータ活用というものは、同じ業界でもなかなか横展開はしづらいのではないかという印象を持っています。

 また、POSデータだけを分析するという場合にも、「分析処理の高速化」が進むことで、データ活用のバリエーションは多彩になっていくでしょう。例えば、弊社の高速データアクセス基盤の導入事例として、データマート作成を不要にし、セントラルなDWHだけで高速なPOSデータ分析を実現したケースがあります。従来はPOSデータを収集していたとしても、バッチ処理に多大な時間がかかるため、サマライズしたデータ、集計したデータをもとに分析するしかなかったわけですが、高速化によって、1件ごとの明細を見たり、分析軸の追加なども可能になるというものです。

 このように、1件ごとの明細、つまりジャーナル(客側で言えばレシート)まで分析を行うことができれば、顧客の併売分析なども実現できます。例えば、「麻婆豆腐の素」と「豆腐」を一緒に購入するのは当たり前でしょうが、「豆腐」ではなく、「中華麺」と「茄子」、あるいは「パスタ」と「キャベツ」などを一緒に購入する買い物客が増えていれば、流行の影響があると考えられるでしょう。つまり、何らかのターゲット商品を決めて、顧客の併売分析を行うことで、セット商品化、プロモーション(チラシでの掲載など)、あるいは商品陳列改善などに役立てられるというわけです。


●ありがとうございました。


取材協力

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ICT分野において、各種サービスを提供するとともに、これらを支える最先端、高性能かつ高品質のプロダクト及び電子デバイスの開発、製造、販売から保守運用までを総合的に提供する、トータルソリューションビジネスを行っている。


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