クラウド普及で進むデータセンタの取り組み

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掲載日 2012/10/30

ザ・キーマンインタビュー クラウド普及でデータセンタが進める取り組みとは

クラウドサービスへの移行、自社ITシステムのクラウド化などを進める企業が増えつつある中で、ユーザ企業がデータセンタに求める要件も多様化・高度化している。そうしたニーズに応えるべく、事業者側ではどのような取り組みを行っているのか。IDCフロンティア ビジネス推進本部の粟田和宏氏にお話を伺った。

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粟田 和宏 氏

ビジネス推進本部 カスタマーコミュニケーション部
部長 粟田 和宏 氏

性能や品質の判断基準はSLAが主体だが、今後は第三者評価も重要な指標になりうる

Question

クラウドコンピューティングの利用が広まる中、ユーザ企業はデータセンタ事業者に対して、どのような要件を求めるようになっているのでしょうか?

Answer

株式会社IDCフロンティア:粟田 和宏 氏

データセンタ事業者は通常、コロケーションサービスとしてお客様の機器や設備をお預かりすることを基本としつつ、設備監視といった一部の運用を肩代わりさせていただくことを主体としています。ただ、そうしたかたちでの利用を続けていくうちに、本来はユーザ側で行う運用・管理の部分に関しても負担を減らしたい、スイッチやロードバランサといった機器の購入・減価償却といったオペレーションの手間すらも省きたいという要望を持つお客様も出てきます。更にいっそのこと、すべてを包括的にサービスとして提供してほしいとまで考える場合もあるでしょう。いわゆる、クラウドへの流れですね。そうした要望にも応えられるよう、弊社としては従来と同じくコロケーションを提供する一方で、クラウドサービスにも注力しています。

 コロケーションにおいては「安心して預けられる」環境が整っていることが必要とされますが、では今、何が求められているかというと、やはり「安定性」だと思います。コロケーションもクラウドサービスも、その上でビジネスを継続して行うものです。だから、いずれにしても、「安心して任せられる」サービスだということが一番に求められているのではないでしょうか。もちろん、利用されるお客様がすべて安定性を第一に考えているとは言えませんし、要望も多様化しています。しかし、安定性を基本中の基本、ベースとした上で、ほかの部分を実現していくことが必要だと考えます。

Question

そうした安定性を向上させるために、事業者側ではどのような取り組みがなされているのでしょうか?

Answer

当然ながら、技術的な部分での研鑽や運用面での工夫にはかなり力を入れています。そうした中で非常に重要なのが“コミュニケーション”だと考えています。顧客対応の最前面に立つサポートスタッフや営業担当だけではなく、技術担当、サービスや基盤を開発している部署なども含めて、すべての部署が密に連携して情報やノウハウを蓄積しながら、オペレーションを行う。そうした、いわゆる“製販一体”という体制がデータセンタやクラウドサービスを提供する事業者にも求められています。お客様が営業担当に問い合わせた場合にも、すべてを持ち帰ったり、たらい回しにするのではなく、ある程度のレベルまでであれば、その場できちんと答えられる。いただいた要望や指摘を即座にサービスサイドに反映できる。そうしたスピードが求められていると実感しています。

Question

ユーザ側では、そうした対応の迅速さや柔軟さに加えて、SLA(Service Level Agreement)を主な判断基準としているという状況でしょうか?

Answer

そうですね。やはり、品質保証制度であるSLAを主体としていただいていると思います。弊社でもクラウドサービスに関しては、「月間仮想マシン稼働率」「月間インターネット接続可用性」の双方において99.995%というSLAを提示していますし、データセンタサービスにおいても、サーバコネクション、マネージド・ロードバランシング、マネージド・ファイアウォール、不正侵入検知/防御サービス、マネージド・L3スイッチのSLA保証値を各々に定めています。

 また、第三者による調査やベンチマークなども、今後はより重要になっていくと考えています。例えば、クラウドサービスに関しては、米国のCloudHarmonyが事業者からサービスの提供を受けて第三者視点による公正なパフォーマンスや稼働率の測定を行い、そのベンチマーク結果をWebサイトで公表しており、海外では利用者がクラウドサービスを選定する際の1つの指標となっています。今年6月には、弊社もCPU、ディスクI/O、LAMPといった各性能の指標値について高い評価をいただきました。

 同社のベンチマークは自動的に実行されており、ごまかしはききませんし、海外の事業者も含めて、参加している全クラウドサービスと性能を比較できます。もちろん、特にパブリッククラウドなどに関しては、試しに使ってみて満足できなければすぐにやめられるという利点もあるわけですが、業務で本格的に使うものではなかなか難しいですし、サービス選定者の中にはそんな余裕はないという方も多いでしょう。そういう意味でも、今後はこのような外部の評価結果が標準的な選定基準になっていくと考えています。


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郊外型データセンタは都市型と同じ感覚で利用可能になっている

Question

最近は郊外型のデータセンタにも注力されていますが、これはどのような目的で実施されているのでしょうか?

Answer

1つは拡張性です。都市型データセンタは既に溢れつつある状況で、今後拡張を図っていくにしても、かなり大きな投資が必要になってしまいます。企業がデータセンタを利用する際には、長いスパンでの拡張性を考慮されるものですが、郊外型であれば圧倒的なスケールを実現できるため、安心して利用いただけますし、大型案件にも対応可能です。サーバをはじめとする機器は小型化・省エネ化が図られており、仮想化で性能密度も高まっていますが、その一方で蓄積すべきデータは常に増大化していますから、やはり拡張性への対応は欠かせないというわけです。

Question

そのほかにコスト面でのメリットなどもありますでしょうか?

Answer

株式会社IDCフロンティア:粟田 和宏 氏

そうですね。例えば、弊社では2008年から福岡県北九州市で郊外型データセンタ「アジアン・フロンティア」を運用していますが、ここは環境対応型になっており、商用としてはいち早く大規模な外気空調を採用しました。外気空調は、外気をサーバルームに取り込んでサーバから出る排熱を冷却する空調方式です。最近では、そこで得られたノウハウを生かし、最先端技術を集結することで、世界トップレベルのエネルギー効率を目指した環境対応型大規模データセンタ「白河データセンター」(福島県白河市)も完成し、既に運用を開始しています。

 「白河データセンター」の外気空調では、「アジアン・フロンティア」での運用を通じた高度なノウハウを更に進化させており、データセンタ内の排熱の上昇気流も利用しながら、温湿度に応じて、全量の外気導入から内部循環までの複数の空調モードをコンピュータ制御により自動運転して最適な環境を維持する仕組みです。これにより、年間を通じて90%以上の冷却を外気空調でまかなうことができ、データセンタで消費する電力の多くを占める空調電力を大幅に削減しています。

 また、これらの郊外型データセンタでは、広大な敷地に1棟ずつ建設を行うモジュール方式を採用しています。従来の都市型データセンタではいったん完成してしまうと大規模なリノベーションやイノベーションを実施するのは困難でしたが、棟を増設するたびに最新技術を取り入れられるという点は大きなメリットです。実際、「アジアン・フロンティア」では現在、5号棟が着工しており、2013年2月末に竣工予定ですが、今回は逆に「白河データセンター」のコンセプトを採用することで、1号棟から4号棟までの構造とはまったく異なっています。パフォーマンスや安定性を高めていくとともに、コストを抑制しながらユーザへ提供できることになります。

写真1 白河データセンター1号棟
写真1 白河データセンター1号棟

Question

逆に郊外型のデメリットなどはないのでしょうか?

Answer

何か問題があったときに、実際にそこまで行くのが大変だと感じる方も少なくないでしょう。そうした声にも応えられるよう、「入館不要」「距離を感じさせない」ということを目指して、様々な取り組みを行っています。運用を包括的に代行するというサービスもその1つです。

 また、「白河データセンター」では都市型データセンタと同等のネットワークレスポンスを実現しました。ネットワークの伝送路を最短経路で設計し、中継ノードを可能な限り少なくすることで、東京−白河間のレイテンシは3.5ミリ秒前後と東京近郊に位置するデータセンタと同等の応答速度になっています。都市型といっても、例えば大手町や新宿などの都心ではなく、実際には東京近況などに位置する場合も少なくありません。入館不要の体制を用意しつつ、レイテンシに関しても満足いただけるレベルを確保することで、そうした東京近郊のデータセンタなどと感覚的には同じように利用いただける状況にはなっています。


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クラウド市場は競争が激化している一方、相利共生という面もある

Question

海外の大手クラウドベンダが本格的に進出してくるなど、クラウドサービス、あるいはデータセンタにおいても、競争は激化しつつあるという印象を受けますが、この点に関しては、どのようにお考えでしょうか?

Answer

株式会社IDCフロンティア:粟田 和宏 氏

クラウドサービスの拡大にともない、様々な分野の事業者と競争しなければいけない状況になっているのは事実です。これは弊社のようにデータセンタとクラウドサービスの両方を手がけている事業者だけではなく、データセンタ専業の事業者も同じだと思います。ただ、競争をしいられる一方で、ともにマーケットを作っていく、開拓していくという関係でもありますし、いわゆる相利共生の面もあるのではないでしょうか。

 クラウドサービスを1社だけで独占できるはずはなく、今後もずっと、各々が性能や品質、あるいはサービスメニューなどの充実を図って、切磋琢磨していくことになるでしょうし、例えばSIer様のように立場の異なる方々とは、各々の強みを発揮できるようにパートナーシップを組むということも積極的に行っていますし、似たようなビジネスを展開している事業者の方とも実際には勉強会などで交流を図っています。いずれにせよ、いまはクラウドというものが広がっていく段階ですから、何でもかんでも自社で抱え込むよりは、ある程度はオープンにやっていこうという意識のほうが強いですね。


●ありがとうございました。


取材協力

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Yahoo! JAPANのグループ企業として、長年のデータセンタ運用実績をベースに、パブリック/プライベートクラウドやクラウドストレージサービスを提供している。


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