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掲載日 2012/10/10

ザ・キーマンインタビュー M2Mが目指すべき“水平統合”とは?

企業・団体・業種の枠を超えて、産学官が連携し、クラウド関連サービスの普及・発展を推進することを目的とした「ジャパン・クラウド・コンソーシアム」内に、「M2M・ビッグデータWG」が立ち上げられた。ビッグデータを軸としつつ、必要なデータを収集するための有力な手段の1つとされるM2M(Machine to Machine)分野までをカバーしたワーキンググループ(WG)とされているが、どのような点に対する議論・検討が行われるのか。また、見込まれる具体的な成果とは?同WGの主査(幹事)を務めるNECの奥屋滋氏にお話を伺った。

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奥屋 滋 氏

キャリアサービス事業本部 副本部長
兼 ビジネスインキュベーション本部 スマートシティ推進室
奥屋 滋 氏

垂直統合主体のM2Mでは、皆がイメージする“ビッグデータの世界”を築けない

Question

まず、「ジャパン・クラウド・コンソーシアム」の概要、及び、そのワーキンググループとして「M2M・ビッグデータWG」が設立された経緯をお聞かせいただけますでしょうか?

Answer

NEC:奥屋 滋 氏

「ジャパン・クラウド・コンソーシアム(JCC)」はもともと、総務省が2009年6月から約1年にわたって開催した「スマート・クラウド研究会」をきっかけとして設立された民間団体です。同研究会の検討結果を取りまとめた報告書では、“利用者視点で幅広い分野においてクラウドサービスの標準モデル化などを推進するため、国、地方自治体、民間事業者などが参画する民間コンソーシアムを組成すべき”だという記載がありました。それを現実化すべく、クラウドサービス関連企業・団体などが参画した上で、総務省及び経済産業省がオブザーバとして活動を支援するという体制で、コンソーシアムが結成されたわけです。

 このJCCは、クラウドサービスの普及・発展に向けた様々な取り組みにおける横断的な情報の共有、新たな課題の抽出、解決に向けた提言などを目的とし、参画企業が提案者となって、「クラウドマイグレーション検討WG」「業務連携クラウド検討WG」「次世代クラウドサービス検討WG」などのテーマごとのワーキンググループを立ち上げて活動を行っています。NECでは既にM2Mやビッグデータに関するソリューションを提供しており、また、私が「新世代M2Mコンソーシアム」という別の団体の理事兼会長代行を務めていることもあって、弊社が主査を担うかたちで「M2M・ビッグデータWG」の設立に至りました。

Question

「M2M・ビッグデータWG」ではどのような活動が基本となるのでしょうか?

Answer

基本的な目標としては、M2M基盤の構築、そして、そこから収集されるような各種データを含む、多種多様な情報を活用したビッグデータによるサービスを実現する上での共通課題を検討・抽出し、M2Mとビッグデータのシステムとサービスを実現するためのモデルを明確にすることを目指しています。ただ、それだけではなく、「教育クラウドWG」「農業クラウドWG」「健康・医療クラウドWG」「水産業クラウドWG」「観光クラウドWG」といった、ほかのワーキンググループの連携を図る、いわゆる“横串”としての役割も担うべきものだと考えています。

Question

ビッグデータ分析を本格化していく際には、広範囲かつ大量な情報を効率よく蓄積・活用していくという点で、M2M基盤の役割が重要になると目されていますが、そのためにはどのような課題を解決しなければならないのでしょうか?

Answer

ワーキンググループの活動はまだ始まったばかりで、そうした課題についても今後整理を進めていくことになりますが、現時点では、情報の著作権やセキュリティを含む制度面、情報の公開・開示やクラウド間での情報交換の仕組み、人材育成の要件などに関して、いまだに本格的な議論ができていないこと自体が、第一の課題だと認識しています。

 また、一般論としては、データの収集から蓄積・解析、活用までを、いわゆる垂直統合ではなく、水平統合へと移行させることが必要だと言えるのではないでしょうか。つまり、M2Mへの取り組みは既に様々な分野で始まっているものの、基本的には1社あるいは業種ごとに進められることがほとんどです。このままの状態では、おそらく皆さんがイメージされているような“本当の意味でのビッグデータ利活用を実現した世界”を築いていくことは難しいでしょう。つまり、業種や用途の垣根を越えて、データ収集・活用のネットワークを広げていくことこそが、必要ではないかということです。

 M2Mの具体的な活用例としては、自動販売機の管理システム、エレベータの監視システムなどが挙げられることが多いのですが、これらはあくまでも“アプリケーション”です。それに対して、“基盤”というものは、データを必要なタイミング/間隔で収集しつつ、確実にストアし、必要に応じて加工するという部分までを担うものだと言えます。こうした基盤は、M2Mやビッグデータ関連のソリューションを提供する各ベンダがそれぞれに独自の形式で構築するよりは、共通の仕様を作り上げるか、あるいは別々の仕様だったとしても連携しやすい、横をつなげやすい仕組みを構築しておくことが望ましいということです。

図1 M2M・ビッグデータWGのゴールイメージ
図1 M2M・ビッグデータWGのゴールイメージ
出典:「M2M・ビッグデータWG」活動計画書(NEC、2012年7月)

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データを渡すという部分でモチベーションを形成できるか否かが鍵になる

Question

M2Mとビッグデータのシステムとサービスを実現するためのモデルを明確にするというお話がありましたが、詳しくお教えいただけますでしょうか?

Answer

NEC:奥屋 滋 氏

企業間、あるいは業種間での情報交換を実現することで、ビッグデータ利活用はより本格化すると見込んでいますが、そのためには仕組みを作るだけでは不十分だと思います。やはり、データを渡すという部分でモチベーションを形成できるか否かという点が重要になるでしょう。いくら情報交換だと言っても、自分の側に何らかのメリットが見出せなければ、当然ながら、出してもしかたないという判断でデータを抱え込んでしまうでしょうし、少なくとも民間レベルでは実際にそういう意識が現状ではあると思います。

 データを提供すれば自分も何らかの分析結果が得られるとか、あるいは費用が支払われるなど、アイデアとしては頭の中にいくらでも浮かびますよね。でも、実際にどういうメカニズムにすべきなのか、どういうビジネスモデルが実用的なのかという議論をするだけではなく、その上で実証実験などの段階まで進めていかないと、いつまでたっても机上論で終わってしまいます。ですから、この問題も含めて、今回のワーキンググループでは紙だけの議論をやめたいとも考えています。幅広い情報収集を行うとともに、そうした様々な領域の情報からM2M・ビッグデータを構築する際の課題や問題を抽出した上で、それを解決するための具体的なガイドラインを作成し、更にそのガイドラインに沿って、大学などの研究機関と連携した実証実験を実施するという“具体化”までを行いたいということです。

Question

たしかに、M2Mやビッグデータというテーマ自体が、つかみどころがないという印象もありますから、最初から具体化までを見越しておくということは重要かもしれませんね。

Answer

個々の企業の中でビッグデータ利活用に取り組む場合でさえも、なかなかつかみどころがないかと思いますが、それでも「こういうことがやりたい」というある程度の具体的なゴールを定めて、それに向けて、まずはデータを集めるというかたちで、取り組み始めているケースが増えてきていると感じます。一方で、こうしたコンソーシアムのワーキンググループにおいては、正直なところ、なかなか具体的なレベルまで目標を明確化することは難しいのですが、今回は可能な範囲で絞り込んでいきたいということです。その上で、今回のワーキンググループでは、1回のラウンドを1年程度のスパンにして、しかも、1回で終わりというものではなく、一定の答えを見出せるまで、いくつかのラウンドを回して継続的に取り組んでいきたいと提案しています。なかなか明確な解を出しにくいテーマですし、企業の皆さんも答えがなくて悩んでいるのが、M2Mとビッグデータというテーマですから、議論を行いながら、ラウンドごとに具体的なターゲットを決めていくというやり方が合っているのではないかと思うからです。ソフトウェア開発でいうところの、スパイラルモデルのようなかたちで、まず目標を定め、1回のラウンドごとに進展を評価・分析し、それを反復的に繰り返していくという進め方ですね。

図2 M2M・ビッグデータWGのスケジュール
図2 M2M・ビッグデータWGのスケジュール
出典:「M2M・ビッグデータWG」活動計画書(NEC、2012年7月)

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セキュリティも議論すべき課題だが、データの「精度・信頼性の保証」という視点も重要

Question

M2Mというと、センシングデータを中心に考えてしまいますが、ビッグデータ利活用に有効なデータはそれだけではないですし、「M2M・ビッグデータWG」でもM2Mに限定するのではなく、幅広いデータ活用に関して議論を行っていくという認識でよいのでしょうか?

Answer

NEC:奥屋 滋 氏

そうですね。よく言われるのは、インターネット上でオープンになっているデータ、つまり、いわゆるソーシャルデータと呼ばれる情報の活用でしょう。もちろん、それも重要なのですが、世の中で蓄積されているデータのほとんどはクローズになっているというが現実だと思います。その中でも、国や自治体が持っている膨大なデータを利用したいという要望は多いですから、先ほどのような企業間情報交換の議論に加えて、政府に対しては制度整備や規制緩和、具体的には省庁や自治体が保持している情報の公開に向けた条件の整理に支援をお願いしたいと考えています。

Question

具体的にはプライバシー保護やセキュリティに関する整備が重要ということでしょうか?

Answer

たしかにデータのセキュリティは重要だと思いますし、話題に上ることも多いですね。ソーシャルデータを扱う際には、どこまでを個人情報としてとらえるべきかということが明確に定まっていませんし、企業の論理だけではなく、国としてはどうとらえるのか、個人としてはどう考えるのかという広い視点で、意識を統一していく必要があるでしょう。

 ただ、セキュリティという切り口とも少し関連する課題として、データの信頼性をいかに保つかということも議論しておくべきだと考えています。サイバー攻撃で不正確なデータが流れて、正しい分析結果が得られなくなってしまうというケースも問題になりうるのですが、それ以前に、センサから得られたデータの精度をいかにして保証するのかということは、M2Mの分野では既に問題視され始めています。具体的には、センサ自体の製造年月日が古くなりすぎていないか、きちんと取り付けられているのか、正常に動作しているのかといったことを管理すべきではないかという問題提起ですね。そのあたりは、本質としてどこまで詰め切れるか分からない部分も多いのですが、やはり議論は行っておくべきであり、可能であれば、今回のワーキンググループにおいても検討を行い、何らかの結論に到達できればよいかと思います。


●ありがとうございました。


取材協力

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1899年7月17日設立。ITソリューション、キャリアネットワーク、社会インフラ、パーソナルソリューションを主要事業とし、NECグループビジョン2017として「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」を掲げている。


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